ご自身の老後やご家族の将来を考える中で、「自分が元気なうちに子どもや孫へ財産を少しずつ移して、できるだけ相続税の負担を軽くしてあげたい」とお考えになる方は非常に増えています。
暦年贈与の「年間110万円まで非課税」という仕組みは、長年にわたり最も手軽で効果的な節税手法として活用されてきました。しかし、税制改正によって生前贈与を取り巻くルールが大きく様変わりしたことをご存知でしょうか。

2024年(令和6年)1月1日以降に行われた贈与から、相続発生時に生前贈与を遺産へ足し戻す「持ち戻し(生前贈与加算)」の対象期間が、従来の「3年間」から段階的に「最大7年間」へと大幅に延長されました。

【参考】
No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

制度改正を知らないまま昔通りのやり方で生前贈与を続けていると、「節税対策をしていたはずが、まったく節税になっていなかった」「後から想定外の相続税が発生してしまった」という事態に陥るリスクがあります。

今回は、最新ルールである「7年持ち戻し」の仕組みと、法改正後も損をしないための賢い生前対策・手続きについて分かりやすく解説します。

2024年改正で何が変わった?生前贈与「7年ルール」の基礎知識

まずは、今回の法改正によって生前贈与のルールがどう変更されたのか、基本構造を把握しておきましょう。

暦年贈与の「持ち戻し(生前贈与加算)」とは?

 
生前贈与の基本である暦年贈与は、1年間(1月1日〜12月31日)にあげた財産の合計が110万円以下であれば、贈与税がかからないという制度です。

【参考】
生前贈与とは【相続税対策】
https://souzoku-sanguu.com/2022/06/01/358/

しかし、亡くなる直前に駆け込みで大量の財産を家族に贈与し、意図的に相続税を免れる行為を防ぐために法律上のストッパーが用意されています。これが「生前贈与加算(持ち戻し)」というルールです。亡くなった方から一定期間内に贈与された財産は、相続が発生した際に「最初から相続で引き継いだもの」とみなし、相続税の計算対象(遺産総額)に足し戻さなければなりません。

「3年」から「7年」への段階的拡大のルール

 
2023年までの旧ルールでは、持ち戻しの対象となる期間は「死亡前3年以内」でした。これが2024年1月1日以降の贈与からは、以下のように段階的に延長され、最終的に「死亡前7年以内」まで引き上げられます。

相続が発生した時期相続財産に加算される期間概要
2023年12月31日まで死亡前 3年間従来のルールが適用
2024年1月1日以降死亡前 最大7年間2027年以降に段階的に延長され最大7年に

※延長された4年間(過去4〜7年目の期間)に贈与された財産については、合計100万円までは持ち戻し対象から除外される経過措置も設けられています。

この改正により、「高齢になって体調を崩してから、慌てて毎年110万円ずつ子どもに贈与を開始する」という手法は、直前7年分がほぼすべて相続税の計算に連戻されてしまうため、以前のような高い節税メリットを得にくくなりました。

新しくなった「相続時精算課税制度」の活用とメリット

「持ち戻しが7年に伸びたなら、生前贈与での節税はもう無理なのか」と諦める必要はありません。国は暦年贈与の制限を厳しくした一方で、もう一つの贈与方式である「相続時精算課税制度」の利便性を大幅に向上させました。

【参考】
相続時精算課税制度は相続税対策になるのか【生前贈与】
https://souzoku-sanguu.com/2022/06/15/347/

(1)年間110万円までの「基礎控除」が新設!

 
かつての相続時精算課税制度は、「2,500万円まで非課税で贈与できる代わりに、一度選ぶと110万円の非課税枠が消滅し、将来全額が相続税の対象になる」という使い勝手の悪さがあり、選択する人が少ない制度でした。
しかし2024年改正によって、相続時精算課税制度の中に「年110万円までの基礎控除枠」が新しく設置されました。

(2)「年110万円以下」なら持ち戻しゼロ&申告不要

 
新制度のもとでは、相続時精算課税を選んだ後でも、年110万円以下の贈与であれば「7年持ち戻し」の対象から完全に除外されます。つまり、亡くなる前日に行われた贈与であっても、年110万円以下なら相続税の課税対象になりません。
さらに、年110万円以下の贈与であれば税務署への贈与税申告も不要です。
若い時期から計画的に資産を渡したい場合は「暦年贈与」、高齢期に入ってから安全確実に非課税で資産を移したい場合は「新しい相続時精算課税制度」といったように、状況に応じた制度選択が成功の鍵を握ります。

北本市で進める正しい生前贈与の手続きと注意すべき「落とし穴」

改正後の生前贈与を活用して確実に節税成果を上げるためには、税務署から後日否認されないための正しい手続きと証拠管理が必要です。

(1)名義預金と判定されるリスク(契約書がないケース)

 
親が子どもや孫の名義で銀行口座を開設し、親の資金から毎年110万円を振り込んで「贈与完了」と思い込んでいるケースが多発しています。
しかし、通帳や印鑑を親が管理しており、子ども自身が自由に使えない状態にあると、税務署からは「名義預金(形を変えた親の財産)」とみなされてしまいます。名義預金と判定された場合、過去何年分もの合計額がそのまま相続財産と判定され、重いペナルティ(加算税・延滞税)が課されることになります。
対策として、贈与を行うたびに書面で「贈与契約書」を作成し、互いに合意の上でお金を渡したという法的な手続きと記録を残すことが不可欠です。

(2)受取人が「孫」であれば持ち戻しの対象外

 
7年持ち戻しルールの対象となるのは、原則として「相続や遺贈によって財産を取得する人(配偶者や子どもなどの法定相続人)」です。
遺言書などで遺産を渡さない限り、法定相続人ではない「孫」や「子の配偶者」に対する生前贈与は、原則として7年持ち戻しの対象になりません。そのため、「孫への都度贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与(令和9年3月31日まで)」などを上手く組み合わせる手続きを行えば、法改正後であっても大きな節税効果を維持することが可能です。

【参考】
扶養義務者からの「都度の贈与」は非課税になる 仕組みと注意点を解説
https://souzoku-sanguu.com/2025/06/18/1103/

まとめ|税制改正に合わせた最適な生前贈与は、北本市の相続専門税理士へご相談を

今回は、2024年より施行された生前贈与の「7年持ち戻しルール」と、刷新された「相続時精算課税制度」の活用法、失敗しないための手続きについて解説しました。
生前贈与は単に「親から子へお金を移す」だけの手続きではありません。「誰に対して」「いつ」「どの制度を選択し」「どのように証拠を残して渡すか」によって、将来ご家族が負担する相続税額が大きく変わってきます。
間違った知識や自己判断で手続きを進めてしまうと、将来の税務調査で否認され、大きなペナルティが発生する危険性もあります。

「自分の場合は暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶべきか」「過去の贈与が名義預金と疑われないか確認したい」「法的に有効な贈与契約書を作成したい」など、疑問や不安を感じている方は、一人で抱え込まず、まずは相続の専門家である当事務所までお気軽にご相談ください。

当事務所では、年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が親身に対応させていただきます。初回の相談は無料となっておりますので、どうぞ安心してご利用ください。

よくある質問

 

Q:2023年以前に贈与した分も、7年持ち戻しの対象になりますか?

A:なりません。7年ルールの対象は2024年1月1日以降の贈与のみで、それ以前の贈与は従来どおり3年ルールです。また、加算される期間は「相続が発生した日」で決まり、2026年中の相続であれば3年、2031年1月1日以降の相続で完全に7年となります。

Q:持ち戻された贈与について、すでに払った贈与税は二重取りされませんか?

A:されません。加算された贈与財産に課された贈与税は「贈与税額控除」として相続税から差し引けます。ただし控除しきれなかった分は原則として還付されないため、高額な贈与税を払ってまで駆け込み贈与をするのは慎重に判断すべきです。

Q:年110万円以下の贈与でも、相続時精算課税を使うのに手続きは必要ですか?

A:初回のみ必要です。贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に「相続時精算課税選択届出書」を税務署へ提出します。この届出を出していないと暦年課税のままとなり、7年持ち戻しの対象になってしまうため、最初の年の手続きが最も重要です。

Q:相続時精算課税を選ぶと、暦年贈与の110万円枠はもう一切使えませんか?

A:使えなくなるのは「その贈与者からの贈与」だけです。父について相続時精算課税を選んでも、母からの贈与は暦年課税を継続できます。贈与者ごとに選択できるため、父母で制度を使い分けるという設計も可能です。

Q:孫に贈与すれば、必ず持ち戻しの対象外になりますか?

A:原則は対象外ですが、例外があります。孫が代襲相続人になっている場合、遺言で財産を受け取る場合、生命保険金の受取人になっている場合は持ち戻しの対象です。また孫が相続財産を取得すると相続税額が2割加算されるため、事前の確認が欠かせません。