日本国内には農地がたくさんあります。様々な理由から年々減ってきてはいるものの、それでも420万haもの農地が残っています。

農地は不動産の一種であり、財産です。よって、所有者が亡くなれば、相続財産として法定相続人もしくは受遺者に引き継がれることになります。

しかし、農地は通常の土地と同様に扱えません。農地は国の食糧政策の基礎となるものであり、売買や転用に関して制約が課されているからです。要するに、売却したり農業以外の用途に使う場合、事前に許可を取らなくてはならないのです。

 

農地は通常の住宅地とは扱いが異なる

通常の土地の場合、相続不動産として引き継ぐには所有者の名義変更(=相続登記)が必要です。また、他の財産との合計額が基礎控除を超えるのであれば、相続税の申告もしなければなりません。

農地を相続した場合、前述した相続登記と相続税申告に加えて「農業委員会への届け出」も必要です

農業委員会とは農地法に基づいて、農地の売買や貸借の許可、転用の意見具申、遊休農地の調査・指導などをする行政の団体です。

農地法では、売買や相続で所有権移転がされた場合には、農業委員会へ届け出ることが義務付けられています。よって、相続時には必ず届け出をしなければなりません。

届け出をするのは「相続開始を知った翌日から10ヶ月以内」であり、以下の書類を提出します。

  • 農地法の規定による届出書
  • 相続登記後の登記事項証明書

届出をしなかったり虚偽の届出をした場合、10万円以下の過料が課せられますので注意しましょう

管轄の地域によっては書類の様式が異なる場合があるので、管轄の農業委員会のホームページなどで必要な書類を確認すると良いでしょう。

委員会は、基本的に各市町村に設置されていますが、農地面積の少ない地域にはない場合もあります。その際は自治体に問い合わせ、手続きをする窓口を教えてもらいましょう。

なお、法定相続人ではない方(遺贈によって農地を取得する受遺者等)が農地を相続する場合だと、「届け出」だけではなく「農業委員会の許可」を取得する必要があります

農地転用をしたい場合は、これも農業委員会に申請し許可を取得します。農地は個人の意思で勝手に賃貸アパートや駐車場にすることはできないからです。通常の土地よりも、扱いが難しいことは覚えておきましょう。

 

農地にも相続税が課税される

(1)農地の種類

 
農地も、土地の一つなので宅地と同じく相続税がかかります。農地の相続税評価は種類によって評価方法が異なります。

農地の種類には以下のものがあります。

  • 純農地…農業地区域内の農地や第一種農地、甲種農地などが該当
  • 中間農地…第二種農地やそれに準ずる農地が該当
  • 市街地周辺農地…第三種農地やそれに準ずる農地が該当
  • 市街地農地…転用許可を受けた農地や市街化区域内にある農地、各都道府県知事より転用許可を要しないとされた農地が該当

 
相続する農地が上記のどれに該当するのかは、国税庁HPの「倍率表」を見て確認できます。
倍率とは国税庁が毎年発表しているもので、路線価が定められていない地域を評価する場合に用いるものです。

★参考:国税庁 HP 路線価図・評価倍率表

 

(2)相続税計算方法

 
続いて、相続税の計算方法です。
以下の通り、種類によって評価方法は異なります。

  • 純農地…倍率方式
  • 中間農地…倍率方式
  • 市街地周辺農地…該当地が市街地農地である場合の80%相当額
  • 市街地農地…宅地比準方式か倍率方式

倍率方式は固定資産税額について、定められた倍率をかける計算方法です。

評価額=固定資産税評価額 × 評価倍率

すでに述べたように、倍率は国税庁が毎年発表する数値で路線価のない土地評価に使用する計算方法です。数値は国税庁のHPで見ることができます。

固定資産税評価額は、土地所有者に毎年交付される固定資産税の納付書で確認が可能です。

宅地比準方式は以下の計算式で算出します。

評価額=該当農地が宅地だった場合の評価額−造成費

 
造成費は農地を宅地に変える際にかかる金額で、地域ごとに値段が設定されています。
評価倍率と同様に宅地造成費も国税庁のHPで見られます。

★参考:国税庁 HP 路線価図・評価倍率表

 

相続放棄に許可は必要か

相続放棄とは相続財産の権利を全て放棄することです。相続が開始を知ってから3ヶ月以内(熟慮期間内)に家庭裁判所に申し立てをすれば、成立します。

相続放棄をするに当たって農業委員会の許可を得る必要はありません。(届け出自体も不要です。)
ただし、相続放棄は全ての財産を手放すので、農地だけでなく他の不動産屋や預貯金なども受け取れません。そのため、相続放棄はじっくりと検討した上で選択しましょう。

また、他に相続人がいない中で相続放棄をしてしまうと、管理責任が残ります。よって、家庭裁判所に申し出て、相続財産管理人を選任してもらう必要があります。

 

まとめ

農地は通常の土地と扱いが違います。農地の場合、国の食糧政策の基礎となるもののため、国によって売買や転用に関して制約が課されています。

通常の土地であれば、相続で引き継ぐ際には相続税の申告(相続財産総額が基礎控除を超える場合に限る)と相続登記(名義変更)が必要となります。農地相続では、それに加えて「農業委員会」への届け出が必要になることは覚えておきましょう。

また、簡単に転売、転用できないことも押さえておくできです。

 

 


 
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