相続において、配偶者は被相続人に最も近い関係者として優遇されます。
必ず法定相続人になれる上に、相続税額を大幅に軽減する特例制度も設けられています。
このような配偶者への減税措置は贈与税にも設けられています。
制度の内容としては、配偶者へ贈与する財産が「自宅」であったり「住宅の購入資金」であった場合、贈与税が最大で2,000万円まで非課税になるというものです。
非課税額が高額な部分が魅力的に見えますが、夫婦の婚姻歴が20年以上である等、適用には細かい要件を満たさなければなりません。
また、この特例は使っても節税効果の薄い制度となっています。
本コラムを読めば、制度のメリットとデメリットがご理解頂けると思います。
是非、最後までご覧ください。
生前贈与における配偶者控除
生前贈与の配偶者控除とは、配偶者に対し贈与される財産が「居住用の不動産」もしくは「それらの購入を目的とした資金」だった場合、2,000万円まで贈与税が非課税となるものです。
受贈者と贈与者の関係が婚姻期間20年以上の夫婦に限定されるので、「おしどり贈与」とも言われます。
控除制度の要件
(1)夫婦の結婚期間が20年以上あること
受贈者と贈与者は夫婦であり、結婚期間(=婚姻歴)20年以上が条件となります。
婚姻関係は戸籍上のものでカウントされます。内縁の関係では対象になりません。
また、結婚期間のカウント方法については、1年未満の月数は全て切り捨てます。
よって、期間が19年8ヶ月等であれば、要件を満たしません。(入籍日から1日でも足りなければ、非対象です。)
(2)贈与財産は居住用不動産もしくは取得資金
対象となる贈与財産は以下となります。
- 配偶者が居住するための住居
- 配偶者の住居の購入資金
不動産そのものであっても、購入資金で合っても大丈夫です。
ただし、ローン返済を目的とした資金は該当しないので注意しましょう。
不動産は土地でも良いですが、制度適用する場合、下記のいずれかの条件に該当する必要があります。
- 受贈者である配偶者が住居を所有している
- 配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有している
(3)居住期間が決まっていること
贈与された住居には配偶者が実際に住まなければなりません。
不動産には贈与があった翌年の3月15日までに引越しを済ませ、その後もずっと住み続けなければなりません。
つまり、配偶者が住む予定のない家や賃貸アパート等は駄目ということです。
贈与後に対象の不動産を売却した場合も制度は適用されません。
メリット
(1)生前のうちに財産譲渡が可能
贈与税の配偶者控除では最大2000万円まで控除枠があります。
この枠内であれば無税で財産譲渡ができます。
同制度を利用することにより、生前のうちに配偶者へ高額の財産が渡せます。
また、相続では手続きが多いですが、贈与では贈与税の申告のみを行えば譲渡が可能です。
(2)相続税の加算がない
生前贈与では原則相続開始から3年前までの贈与は、相続税の課税対象になります。
しかし、この配偶者控除は、その対象から外れます。
なので、贈与のタイミングも自由にできるメリットがあります。
デメリット
(1)税務署への申告が必須
非課税枠内で贈与したとしても、税務署に必ず申告書を提出しなければなりません。
申告義務があるのは受贈者で、贈与の翌年2月1日から3月15日までの間に申告が必要です。
(2) 一生に1度しか使えない
生前贈与で配偶者控除を使えるのは生涯一度だけです。
贈与を数回に分けることはできません。適用できるのは初回の贈与のみとなります。
(3)不動産取得税や登録免許税がかかる
贈与で不動産を渡す場合、不動産取得税や登録免許税がかかります。
不動産取得税は不動産価格の4%(2021年3月31日までに取得した土地・住宅については3%)、登録免許税は2%が課税されます。
ちなみに、相続での不動産引き継ぎであれば不動産取得税はかかりません。
そして、登録免許税は0.4%まで下がります。
(3)節税効果は低い
生前贈与における配偶者控除は節税から言えば、効果が低いと言えます。
理由としてまず、相続での配偶者控除は最低でも1億6,000万円まで非課税枠があるからです。つまり、相続だと配偶者はほぼ無税(財産総額にもよりますが)で自宅を引き継げるわけです。2000万と比べると、無税にできる金額が全然違います。
また、相続では小規模宅地等の特例を使えば、330㎡まで土地の評価額を最大80%減額できますし、そもそも、相続税の基礎控除額も3,600万円以上あるのです。
こうやって見ると、生前贈与で自宅を配偶者にあげなくても、相続税の控除制度を活用した方が税額は大幅に抑えられて、お得と言えます。
活用する場合の判断基準
(1)生前のうちに自宅をあげたい
ご自身が存命のうちに財産を渡せること=確実性があることが生前贈与の強みです。
税額等を気にしないのであれば、制度を利用する価値があるでしょう。
(2)財産の大半が不動産
財産割合に不動産が多い場合、相続税を払うための現金が少なすぎて、納付が困難になる可能性があります。
その場合、生前贈与で住宅を贈与しておけば、相続税の負担を軽減できます。
ただし、配偶者控除や小規模宅地等の特例によって、配偶者には相続税がかからないケースが多いです。
よって、活用前には相続時の税金もシミュレートした上で行いましょう。
まとめ
本コラムによって、生前贈与における配偶者控除のメリットとデメリットがご理解頂けたかと思います。
控除額は高いものの、節税効果は低いのが同制度の特徴です。
活用については十分に検討してください。判断に迷う場合は、専門の税理士への相談を推奨します。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。
相続では様々な事情で相続人が財産を取得できない場合があります。
財産取得できないケースとしては、「相続放棄」があります。これは相続人が自ら「財産を取得しないこと」を選択し、相続権を手放す行為です。
相続放棄は自発的な行為ですが、そうではないパターンとして「相続廃除」と「相続欠格」があります。
相続廃除と相続欠格においては、被相続人や他の相続人が該当の相続人の資格を剥奪するので、相続放棄とは大きく異なります。
相続廃除について
(1)概要
相続廃除は、相続権を持っている方を相続から外す制度です。
この制度が利用できるのは被相続人のみです。
廃除されるのは、被相続人へ虐待や重大な侮辱を加えるなど、著しい非行をした推定相続人(相続時に相続人となるべき方)です。
廃除が確定すれば、相続権を失います。
廃除が妥当かどうかは、家庭裁判所が判断します。
廃除されるのは、その被相続人が関わる相続のみです。
父親の相続について廃除が確定しても、母親の相続については相続権を失いません。
(2)対象となる推定相続人
相続廃除の対象者は、遺留分権を持つ推定相続人です。
そのため、被相続人の配偶者や子供(孫)・父母(祖父母)のうち推定相続人となる方が対象です。
被相続人の兄弟姉妹には遺留分権が認められていないので、非対象です。
なお、相続廃除は代襲相続権に影響しません。
父親の相続で長男が廃除されても、長男の息子は代襲相続が可能です。
(3)廃除成立の要件
前述した推定相続人が被相続人に対して以下の行為があった場合、相続権が剥奪される可能性が高くなります。
- 被相続人に対して虐待を加えた
- 被相続人に重大な侮辱をおこなった
- その他の著しい非行があった
これらの行為が認定され、かつ廃除が妥当であると裁判所が認めれば、該当の相続人の権利が失われます。
注意したいのは、上記行為があった事実だけでなく、廃除が妥当なレベルだと判断されなければ、廃除は成立しないという点です。
(4)手続き
相続人廃除は被相続人が生前に行う「生前廃除」か、死後に遺言で指定する「遺言廃除」があります。
廃除は、被相続人のみが利用できる権利なので、相続人が他の相続人を廃除することはできません。
なお、遺言廃除をする場合は必ず遺言執行者を指定しましょう。
遺言執行者は被相続人に代わって家庭裁判所への申し立てを行います。
相続人が複数の場合、書類の収集や署名押印手続などが他の手続きで手一杯となりますが、遺言執行者を指定していれば、執行者が相続人代表として手続きを進められるので、安心です。
(5)取り消し
相続廃除は取り消し可能です。取り消しは家庭裁判所が廃除の申立てを受理された後でもできます。
(申立人の意思が変われば、問題なく変更の手続きができます。)
取り消しは家庭裁判所へ「相続人廃除の審判の取消し」を再度申し立てます。
この手続きは生前でも遺言でも可能です。
相続欠格について
(1)概要
法定相続人が一定事由に該当した場合、その資格を剥奪されることを「相続欠格」といいます。
相続欠格が決定すると遺産分割協議に参加できない上、遺留分権もなくなります。
遺言による遺贈であっても財産取得は不可となります。
(2)相続欠格事由
相続欠格に当てはまるかは「相続欠格事由」の有無で判断されます。
相続欠格事由は、以下の項目があります。
- 故意に被相続人や他の相続人を死亡させる、または死亡させようとして刑に処せられた
- 被相続人が殺害された事実を知りながら、告訴、告発をしなかった(ただし、まだ子供で弁別がない場合や、殺害者が自身の配偶者や直系血族であった場合を除く)
- 被相続人に対し詐欺や強迫を行い、遺言の作成・撤回・取消し・変更等を妨げた
- 詐欺や強迫によって、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた
- 相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿を行った
これらの事由に該当すれば、何らかの手続きを経ずに直ちに相続権を失います。
なお、相続廃除と同様に、相続欠格となった相続人は相続権を失いますが、代襲相続には影響がありません。
(3)手続き
相続欠格では手続きは不要です。先述した項目に該当すれば相続欠格者として、遺産分割協議に参加できなくなります。
ただし、欠格者本人が相続欠格の事実を認めていない場合、訴訟を起こす必要もあります。
(他の相続人が原告となって、相続欠格者相手に提起します。)
なお、相続を原因として不動産の名義を変更するときには、相続欠格者であることの証明書を提出しないと法務局が、登記を受け付けないので、相続登記の際に「相続欠格事由に該当することの証明書」を提出することが必要です。
(4)取り消し不可
相続欠格者は欠格事由に該当した時点で要件が成立するので、取り消しは不可です。
相続欠格者になれば、どうやっても財産取得はできません。
ただし、相続放棄した場合と同様に、死亡保険金等は受け取ることができます。
税法上の扱い
「相続欠格」「相続廃除」が決定すると、該当者は法定相続人としてカウントされないので、基礎控除額や非課税枠に影響はありません。
この背景には、被相続人の意思などで基礎控除額や非課税枠の金額などが左右されることは課税の公平の観点から、望ましくないという考えがあります。
ただし、「相続放棄」については、その相続放棄がなかったものとして扱われるので、法定相続人としてカウントされます。
まとめ
相続廃除と相続欠格について解説しました。
どちらも該当すれば相続権を失いますが、代襲相続には影響しません。
また、該当者は相続人になれませんから、相続税における基礎控除額や非課税枠にもカウントされないことも覚えておきましょう。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。
遺言書は手間暇かけて書いても、遺族の方が相続時に発見しなければ効力を持ちません。
遺言書がなければ、相続財産の分配は遺産分割協議にて決めることになります。
しかし、苦労して協議をまとめた後に遺言書が出てくるというケースがあります。
この時、遺言は協議結果とは違う内容である可能性が高いでしょう。
そうなった場合は、どちらを優先させるべきなのでしょうか。
遺産分割協議と遺言書の優先度
最初に答えを言いますと、遺言書は故人の最期の意思であり最大限尊重されなければなりません。
したがって、遺産分割協議の結果よりも、優先されます。
苦労して協議をまとめた後であっても、遺言書が出てくれば、基本的には遺言内容に従って財産を分割することとなります。
状況次第では遺言に従わなくて良い場合も
遺言書内容は遺産分割協議結果よりも優先されますが、相続人全員での合意が取れた場合は遺言に従う必要はありません。
強い効力を持つ遺言ですが、財産を受け取るのは残された家族ですから、それら全員が納得すれば遺産分割協議の結果を採用しても良いのです。
遺言に従わなければならないケース
相続人全員での合意が取れた場合は遺言に従う必要はありませんが、以下のケースでは別です。
(1)受遺者がいる場合
遺言書の中で法定相続人以外の方(受遺者)にも財産を渡す旨が記されている場合、基本的には遺言内容にしたがって分割が行われます。(受遺者の利益を侵害することになるためです。)
受遺者も遺産分割協議結果に合意するのであれば、遺言どおりに遺産を分けなくて良いです。
(2) 遺言執行者がいる場合
遺言執行者がいる状況で、遺言と異なる内容の遺産分割を行いたい場合、遺言執行者の同意も必要です。
遺言執行者は、相続人および受遺者の合意が、遺言趣旨に反しないものであれば、同意をしたとしても、執行者義務に反したとはいえないでしょう。
(3)遺言により遺産分割が禁止されている場合
遺言では、相続開始時から5年以内の間、遺産分割の禁止を指定できます。
禁止の指定がされている場合、遺産分割はできませんので、期間中の遺産分割協議そのものが無効です。
遺言書は早急に発見されるように工夫を
遺言書は遺言者の死亡後、遺族によって早急に発見されるのが理想です。
発見が遅れれば、相続手続きの手間も余計にかかります。そうなれば、遺族にとっては負担となります。
相続時にすぐに発見される方法としては以下のものがあります。
- 遺族に遺言の存在と保管場所を伝えておく
- 遺言執行者を指定しておく
- 証人が必要な公正証書遺言を選択しておいて、証人に伝言を頼む
書いたら終わりではなく、相続開始時に遺族がすぐに見つけられるように手を打っておきましょう。
遺言書の紛失にも注意する
遺族によって早急に発見されることも大切ですが、相続までに遺言を紛失しないことも重要です。
紛失を防ぐには以下の二点の方法がお勧めです。
(1)自筆証書遺言の保管制度の利用
自筆証書遺言は作成費用がかからず、個人での作成が可能なため、採用する方が多い遺言書です。
ただし、相続開始時に発見されないことや、紛失、第三者による改ざんのリスクも高いと言えます。
これらのリスクを無くすために、法務局で自筆証書遺言を保管する「自筆証書遺言の保管制度」を利用する方法があります。
同制度では、原本が公的機関に保存されるので、紛失や改ざんのリスクがなくなる上、相続発生後の検認手続きも要らなくなります。
保管制度を利用するのであれば、保管先を遺族に伝えておくと良いでしょう。
(2)公正証書遺言の利用
公正証書遺言は、公証役場にて公証人に作成を代行してもらいます。
公証人が作成するので、様式不備によって遺言書が無効になりませんし、相続開始後の検認も不要です。
また、公正証書遺言のメリットとして原本が公証役場で保管されるので、紛失や第三者による文書改ざんの心配も不要です。
証人を用意するなど、作成に手間はかかりますが、その分受けるメリットも大きいのです。
相続人は遺言書の有無をしっかりと確認しましょう
相続人側も、相続手続きではまず遺言書の有無を確認しましょう。
遺産分割協議後に遺言書が出てくると、一から財産分配をやり直すことになってしまいます。
遺品を整理しつつ、遺言書が保管されていそうな場所を念入りに調べてください。
なお、遺言書を見つけたら、その場で開封せずに法律で決められた手順を守ります。
自筆証書遺言などは、家庭裁判所で検認の手続きをしなくてはならないので、注意しましょう。
検認について…検認は、裁判所が遺言書現況を明らかにして偽造・変造を防ぐ手続きです。遺言書の存在を相続人や受遺者に通達する意味もあります。検認をせずに勝手に遺言を開封すると過料の処分を受ける可能性があります。また検認の済んでいない遺言書だと、相続登記や口座の名義変更もできません。
まとめ
後に遺言書が見つかっても、相続人と受遺者、執行人全員の合意があれば遺産分割協議をすることは可能です。
ただし、遺言書が後から見つかると、ほとんどの場合、遺産分割はやり直しになります。
都合よく全員が「遺産分割協議のままで行こう」というのもハードルが高いからです。
遺産分割がやり直しとなれば、二度手間になるため、相続手続きを進める前に遺言書があるかしっかりと確認したいところです。
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「もの忘れが激しくなってきたのでお金を管理して欲しい」「入院費用などのお金を預かって欲しい」等々、ご高齢の両親からお金や金品を預かることはよくある話です。
この預かったお金はご両親のお金ですから、贈与に該当するのではないかと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
安心してください。ご両親からお金を預かっただけでは、生前贈与とはなりません。贈与ではないので、当然贈与税もかかりません。お金を自分の銀行口座に入金して保管していたとしても、同様です。
贈与とは、贈与者と受贈者の合意の下で成立する契約行為。よって、現金や預金通帳を預かって保管する行為は、贈与とは言えません。
ただし、そうは言っても、相続開始後にそれが贈与ではなかったことを第三者に示すための証拠は持っておいたほうが良いでしょう。
預かり金をする際の対策
お金を預かる際に大切なのは、「それが預かり金だとわかるようにしておくこと」「自身のお金とは明確に分けておくこと」「使用した分の詳細な記録を残しておくこと」です。
これらの処理をしておけば、税務署から贈与と誤解されません。加えて、相続時にも他の相続人から相続財産を使い込んでいたと思われません。
(1)覚書の作成
覚書を作成しておけば、お金を預かった事実を明らかにできます。証拠となるように、必ず預ける側と預かる側の署名をしておきましょう。
文書に細かいルールはないですが、お金を預かっている旨、金額、日付を書いておきましょう。
(2)専用口座の開設
預かった現金を自身の名義の口座で保管するのであれば、専用口座を開設しましょう。手間はかかりますが、口座を別にすることで、ご自身のお金と明確に区別できます。
ご両親の通帳を預かるケースでは、「代理人カード」の発行がお勧めです。代理人カードは名義人本人に代わって、ATM等で入出金ができるキャッシュカードです。
口座名義人が手続きをした後に利用ができます。
(3)使用した分の詳細な記録を残す
預り金を使ったのであれば、使途をメモしておきましょう。領収書やレシートがあれば必ず保管してください。 使途不明金は、税務署から疑われる材料になります。
なお、預かり金を自身のために使ってしまうと、贈与税の対象です。贈与には「みなし贈与」という、双方の合意無しでも、経済的利益の享受があった場合に贈与税が課税されるルールがあるからです。
預けた側が亡くなった場合はどうなる
お金を預けた側が亡くなってしまった場合、残ったお金はどうなるのか。もし預けた側が生前に「使いきれなかった分はあげる」等と言われていた場合、残金は死因贈与によって、取得したことになります。
相続税法では、死因贈与で取得した財産は通常の相続財産と同様のものとなるので、相続税が課税されますが、贈与税の対象ではありません。
もし、残ったお金に関して何の取り決めもされていない場合は、相続時に相続財産として遺産分割の対象になります。
税務署から疑われた場合は税理士に相談を
もし、税務署から相続税に関する問い合わせがあった時には、迷わず税理士に相談してください。税務署からの問い合わせは、電話の場合もあれば、「お尋ね」というアンケート方式で行われる場合もあります。
いずれの場合も、ご自身だけで対応してしまうと、税務調査に発展し余計な税金を支払う可能性が出てきたり、心身的にも大きな負担となります。
相続税の申告を税理士にお願いしている場合には、内容の記載漏れや不備が起きる可能性は少ないかもしれませんが、税務署から問い合わせがあれば、税理士に連絡をして対応してもらいましょう。
まとめ
両親から預貯金等を預かっただけでは贈与税の対象にはなりません。
贈与税は、原則として、双方合意の上、財産を無償で渡された時にかかる税金です。よって、親から通帳や銀行印を預かり、口座を管理するだけであれば、贈与税もかかりません。
しかし、税務署に余計な疑いを抱かせないために、それが預り金である旨の覚書を交わしておくことが望ましいでしょう。
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遺言書では作成者が死後に財産を渡す相手を選択できます。
家族はもちろん、友人や法人でも問題はありません。
しかし、指定していた相手(受遺者)が作成者よりも先に亡くなってしまう場合もあります。
亡くなっていれば、財産取得は当然できないので、該当部分は無効となります。
この時、無効部分については遺言の書き換えで対応しますが、遺言者が認知症等で遺言能力を失っていると書き換えは不可能です。
また、公正証書遺言の場合は、再び公証役場に出向かなくてはなりませんから手間となります。
そんなケースに使えるのが、「予備的遺言」。
予備的遺言は、遺言者より先に受遺者が死亡しても、その子供に代襲相続させることができます。
受遺者が先に亡くなるとどうなるか
受遺者に指定された方が遺言者より先に亡くなられるケースはあります。
もし、受遺者が先に亡くなると、財産譲渡は行われません。(遺贈の効力が生じない。)
その受遺者が取得する予定だった財産は、他の法定相続人に帰属します。
例えば、Aさんが「友人のBに100万円を相続させる」といった遺言を書いたとします。Aさんが亡くなった後の法定相続人がCさん、Dさんで、もしBさんがAさんより先に死亡していた場合、Bさんへの遺贈は無効になり、100万円は遺産分割協議で相続人のCさんとDさんが分配を決定します。
ここで、BさんがAさんの息子だった場合(=法定相続人だった場合)も同様になります。
つけ加えるポイントとしては、Bさんに子供(代襲相続人)がいても、遺贈部分については代襲相続が行われません。
※代襲相続は相続開始前に相続人が死亡して、相続権を失った場合に、その子供や孫が相続権を引き継ぐことです。
予備的遺言とは
遺言書作成から相続開始まではタイムラグがあるので、受遺者が高齢の場合や、重い病気を患っている場合には先に亡くなる可能性も高いでしょう。
そんな状況を見越して、受遺者が亡くなった場合において、代わりに財産を受け取る方を指定することもできます。
この方法は「予備的遺言」と言います。
予備的遺言であれば、受遺者が先に亡くなっても、遺言書を書き直さなくてよくなります。
予備的遺言の作成例
予備的遺言の書き方は以下のようにすれば良いです。
『全財産を息子Aに相続させる。”ただし、私と同時もしくは私より先にAが亡くなった時は、Aの子供に相続させる。”』
予備的遺言をしておけば、受遺者が先に亡くなっていても、遺言書を修正する必要がありません。
特に作成者が認知症を患っている場合、遺言書を修正できなくなる可能性もあるので、是非やっておくべきでしょう。
その他、受遺者が高齢で、遺言作成者とどちらが先に亡くなるか分からない場合も、予備的遺言は活用できます。
遺言作成はお早めに
遺言書があれば遺産分割も円滑に進むので作っておくべきです。
遺言書作成は高齢になってから検討される方が多いですが、できれば早めに書いておく方が良いと言えます。
というのも、病気や事故で寝たきりになる場合や、最悪の場合には死亡する怖れもあります。
そうなってしまうと、遺言を残せません。
また、認知症や脳の病気等、判断能力が著しく低下した状態で書いた遺言書は無効となってしまいます。
身体の不自由であれば遺言書は作成できますが、判断能力がなければ、作成が認められないのです。
このようなリスクを考慮すると、遺言書は早期に作成しておいた方が安心です。
遺言書の紛失をしないために
自筆証書遺言書は紙とペンがあれば作成できますが、要件を満たさないと形式不備となり無効になります。
加えて、紛失や第三者による改ざんのリスクも出てきます。
そのため、自筆証書遺言書を作成する場合、「自筆証書遺言書保管制度」の活用も検討しましょう。
「遺言書保管所」にて遺言書が保管されるので、先のようなリスクは生じません。
また、紛失を避けるには、公正証書遺言の作成も良いでしょう。
これは、公証役場の公証人に遺言を作成してもらう方法です。
公証人が作成するため、書き間違いも起こらず、完成した時点で遺言書は有効となります。
また、保管も公証役場で行うので、紛失や改ざんの心配もありません。
まとめ
予備的遺言について解説いたしました。
せっかく遺言書を作成しても、受遺者が亡くなると遺贈部分は無効になります。
このような事態を避けるために、予備的遺言があります。
受遺者が高齢や病気を患っている場合等は、不測の事態に備えて予備的遺言を含めた遺言書を作ると良いでしょう。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
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相続税には他の税金と同じように「時効」があります。申告期限から一定年数が経過すると、税務署は課税処分をすることができなくなるため、納税者側は無申告や申告額が不足していた状態であっても、相続税を払わずに済むことになります。
ただし、時効が成立するケースはあまりありません。
税務署も多くの情報を持っていますので、相続税申告をしないままでいると、後々、多額の追徴をされるリスクを負うことになります。
相続税の申告と納付の期限
相続税の申告と納付の期限は、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。
「相続の開始を知る」のは多くの場合、相続開始日と同じタイミングですから、「相続開始を知った日=相続開始日」となります。(ただし、被相続人や家族とあまり連絡を取っていない場合や、海外在住の場合、相続開始日と相続開始を知る日が異なることもあります。)
もし、期間内に申告しなかった相続財産があったり、税額の計算誤りをして申告が足りなかったりした場合、国税局や税務署から相続税の課税処分を受けることになります。
相続税の時効は原則5年
相続税の時効は「除斥期間」といいます。
税務署は相続税の申告義務があるのに無申告あるいは申告漏れをした方には、課税処分を命じますが、それができるのは除斥期間内となります。
除斥期間を過ぎてしまうと、税務署は課税処分を行えず、時効が成立します。
除斥期間は相続税の法定申告期限の翌日から、原則「5年」ですが、「偽りその他不正の行為」によって税額を免れ、または還付を受けた場合、除斥期間が7年になります。
ここで言う不正行為とは、税務調査に対して虚偽の回答をしたり、相続財産を故意に隠蔽したり、脱税行為等の行為を指します。
「相続税の申告義務を認識していた」ことが税務署側から見て明らかであるような場合、除斥期間は7年まで延長されると覚えておきましょう。
時効の起算日は、相続税の申告期限の翌日からです。
前述したように、相続税の法定申告期限は相続開始を知った翌日から10ヶ月なので、その時点から5年(もしくは7年)が除斥期間となります。
例えば、相続開始が令和4年1月1日の場合は、法定申告期限は同年11月1日です。
除斥期間はそこを基準とするので、令和9年11月1日(もしくは令和11年11月1日)となります。
逃げ切れる可能性は低い
税務署もプロですから、相続税に関する調査能力は非常に高く、被相続者の死亡情報から預貯金の移動までおおよそ全て把握できています。
かなりの年月を遡った範囲まで確認できるので、無申告や申告漏れは基本的に発覚します。
よって、時効が成立することはほぼありません。
大半が税務署に知られて、高額の税金を支払わされます。
金融機関を使わず自宅に現金を保管する「タンス預金」ならば大丈夫と考える方もいますが、税務署は口座の入出金履歴を確認できるので、多額の使途不明な出金が見つかれば、税務調査が入ります。
タンス預金が税務調査で見つかった場合、悪質と判断されれば、より重い追徴を課される可能性も高くなります。
追徴税の種類
申告及び納付をしないままでいると、延滞税や加算税といった追徴が行われます。
税務調査の事前通知前に期限後申告書を自主的に提出…一律5%
税務調査の事前通知以後に期限後申告書を提出…50万円まで10%、50万円超の部分に15%
調査による更正など予知以後に期限後申告書を提出…50万円まで15%、50万円超の部分に20%
税務署から事前通知を受けて調査前に修正申告をする…当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分に5%、それらを超える部分に10%
税務調査を受けてから修正申告をする…当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分に10%、それらを超える部分に15%
相続税の申告書を提出していた場合…35%
相続税の申告書を提出していなかった場合…40%
延滞税=追加で納める税額×延滞税の税率×日数÷365
税率は、相続税の納付期限の翌日から2ヶ月までは年2.4%でそれを過ぎると年8.7%が課されます。(税率は令和4年1月1日から12月31日までの期間のものです。)
このように、通常よりも多くの税金を払うことになります。申告をしておらず、申告漏れに気づいた場合は、1日でも早く手続きをすることが大切です。
まとめ
相続税にも時効がありますが、残念ながら時効を迎えるケースはほとんどありません。
「このくらいなら申告しなくても大丈夫」という考えは通用しないので、ペナルティーを受ける前に一刻でも早く申告や納税を済ませたほうが良いでしょう。
手続きが難しい場合は、相続専門の税理士に相談してください。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます。
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。
お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。
自身の子供だけでなく、孫にも相続財産を渡したいと考える方もいるかと思います。
ただし、相続税には「孫や兄弟姉妹等が財産を取得した場合、税額が2割加算となる」ルールがあります。
2割という負担は大きく、仮に相続税が500万円だった場合、2割加算によって600万円になってしまいます。
相続税の2割加算
相続税額の2割加算とは、配偶者や一親等の血族(被相続人の子供・親)以外が相続財産を取得した場合、本来の相続税より2割分増しで支払うという取り決めです。
2割加算となってしまう対象者は以下のとおりです。
- 孫やひ孫
- 兄弟姉妹
- 甥や姪
- 子供の配偶者
- 内縁の妻や夫
- 遺言で財産をもらう人(受遺者)
逆に対象でない方は以下のとおりです。
- 配偶者
- 子供
- 両親
- 養子(孫を養子にした場合を除く)
- 子供が亡くなっている場合の代襲相続人(=被相続人の孫)
- 親が亡くなっている場合の代襲相続人(=被相続人の祖父母)
同制度の目的
「どうして2割も相続税が加算されるのか」と思われますが、この制度の目的は、「相続税額の負担調整」にあります。
通常であれば、相続財産を取得すれば、相続税が発生します。被相続人の子供が財産を取得しても相続税はかかりますし、その子供が亡くなって孫が財産を相続した場合も同様です。
しかし、最初の相続で孫に財産を渡す場合、相続税が本来であれば二世代分かかるはずが、一世代分だけでよくなってしまいます。これは、いわゆる世代飛ばしになりますが、税金の負担が公平にされているとは言えないでしょう。
よって、孫など本来相続人ではなかった方などが相続財産を取得する場合、「税金を2割多めに負担する」ことで公平性を保っているのです。
代襲相続人の場合、2割加算の対象外
前述のように、被相続人の孫は相続税2割加算の対象となりますが、代襲相続人である場合は、加算対象から外れます。
代襲相続とは、推定相続人が死亡等の理由で相続ができない場合に、その人の子供が代わりに相続人となる制度です。
代襲相続人が加算対象にならないのは、親(被相続人にとっては子供)が先に亡くなっている等の特殊な状況下で、税額を2割も加算するのは流石に可哀想だからです。
なお、代襲相続は元々の相続人に非行があって相続欠格や相続廃除で相続資格を失った場合にも認められます。
このケースで、被相続人の孫が代襲相続をしても2割加算の対象外です。
孫を養子にする場合は2割加算となる
孫を養子とした場合は、原則として2割加算が適用されます。
養子となれば、戸籍上は被相続人の子供になりますが、実際は世代飛ばしによる財産移転になるからです。
なお、被相続人の甥や姪を養子にした場合は、2割加算の対象外になります。
加えて、相続人の人数が増えるので、その分の節税効果が高まるでしょう。
しかし、節税対策を目的とした養子制度の活用は相続人同士のトラブルを誘発する怖れもあるので注意が必要です。
トータルの相続税が下がったとしても、分割する際には人数が増えた分だけ一人の取り分は少なくなる上に、相続人にとって関係性の薄い人物であれば気持ちの問題で良いものとは言えません。
養子を検討される際には、十分に家族間で話しあうべきです。
相続税額の2割加算の計算方法
相続税額の2割加算の計算式は以下のとおりです。
「各相続人の税額控除前の相続税額×0.2=相続税額の2割加算で加算される金額」
例えば、被相続人の兄が相続人となり、税額控除前の相続税額が1,000万円の場合、1,000万円×0.2=200万円とトータルで1,200万円の相続税が課税されます。
他に、税額控除できる項目がある場合は1,200万円から差し引きとなります。
遺言は2割加算を想定しておく
遺言書を作成する場合には、2割加算による相続税の負担を考慮すべきです。
2割加算が起こると、相続ではなく贈与する方が良い場合もあるからです。
他の相続人とのバランスもありますが、2割加算の相続税を十分に払える(負担の少ない)内容で残してあげることが大切でしょう。
まとめ
税の公平性を保つために、相続税では税額が2割加算となるルールがあります。
対象となる方が相続人となる場合や、遺言で受遺者を指定する場合は、その点に注意しましょう。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。
故人が生前に遺言書を書いていない場合は、「遺産分割協議」によって遺産の配分や方法を決定します。(遺言書があっても、法定相続人と受遺者が合意すれば遺産分割協議で配分を決定しても良いです。)
遺産分割協議は、法定相続人間のものであり、親族同士の話し合いですから、円満に解決される場合もありますが、大きな争いとなる可能性もあります。中には泥沼化し、数年経っても遺産配分が決まらないケースもあります。
配分が決まらないと厄介なのが、相続税の申告と納付です。
相続税の申告と納付の期限は遺産分割協議の結果の如何を問わず、相続開始後からカウントされるからです。期限を破ってしまうと、追徴課税となります。
相続税申告と納付の期限
相続税の申告と納付は相続人が「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となっています。例えば、2023年1月2日に相続開始を知った場合、2023年11月2日までに税務署で相続税の申告書を提出し、同時に納税も完了しなければなりません。
もし、期限を過ぎてしまうと、申告を怠ったことによる「無申告加算税」や納付が遅れたことによる「延滞税」が課せられ、従来の金額よりも多い税金を払うこととなります。
なお、相続税申告には特殊な事例がある場合のみ、期限を延ばせるようになっていますが、安易な理由による延長は認められません。
特に、「家族間で分割協議が終わっていないから」という理由では税務署も延長を認めないでしょう。よって、期限内に申告と納付は必ず終わらせるべきなのです。
相続税申告には時間がかかる
相続税の申告は思ったよりも時間がかかります。
被相続人が亡くなった時点で保有していた財産や債務を確認しなければなりませんし、不動産や株式などは相続税評価のために複雑な計算を用いるからです。
それらに遺産分割協議も加わるとなると、期限に間に合わなくなる可能性は高いと言えるでしょう。
申告期限に間に合わなさそうな場合の対処法
遺産分割協議が思ったように進まなくても、相続税の申告・納税期限には間に合わせなくてはなりません。
では、どうすれば良いのかというと、「遺産は法定相続分に従って分割した」とし、相続税の申告と納付をします。
概算の申告・納税にはなりますが、加算税および延滞税を払うことは避けられます。なお、一部の控除制度が使えないので、大抵の場合は本来の税額よりも高い金額で申告と納税をします。
控除制度とは特定要件を満たすことで利用できるもので、遺産分割が終わっていないと適用できません。
主に以下のものがあります。
- 相続税の配偶者控除…被相続人の配偶者が取得する財産は最大1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分まで非課税にできる
- 小規模宅地等の特例…自宅や貸付用として利用している土地については相続税評価額を最大80%まで減額できる
これらの制度は税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」提出していれば、後々、遺産分割協議がまとまった際に申告書を再提出することで、適用可能となります。
申告期限後3年以内に遺産分割が完了しないなら、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月が経つ前に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。
やむを得ない事由は、「遺産分割で訴訟等がある」、「調停もしくは審判の申立てが行われている」、「遺言で遺産分割が禁止されている」といったものが該当します。
それらが解決した際に、その日の翌日から4か月以内に遺産分割を行う必要があります。
遺産分割協議が終わらない事のデメリット
前述したように遺産分割が終了しなくても、相続税の申告と納付をしなければなりません。
そして、様々なデメリットを考慮すると、分割協議は申告期限までに完了させておいて、本来の税額を申告した方が良いと言えるのです。
遺産分割協議が完了しない場合、相続税額は一旦、法定相続割合に応じた割合で算出し、申告することになります。
そして、遺産分割完了後に実際に分配された財産額に従い、相続税の申告を再度します。
結果的に申告の回数が2回となるわけですから、その分は手間になります。
また、還付の手続きをしないと納め過ぎた税金は返ってこないので、損となります。
まとめ
遺産分割協議が終わっていなくても、相続税の申告と納付期限は守らなくてはなりません。
くれぐれも他の手続きに気を取られて期限を過ぎないように注意しておきましょう。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
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税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。
相続財産の中には現金・預貯金だけでなく、被相続人の住宅や別荘地等の不動産が含まれる場合もあります。
相続税算出における不動産評価は買った時の価格でもなければ、相続開始時の時価となるわけでもありません。
土地と不動産それぞれの評価方法について、本コラムでご説明いたします。
土地の相続税評価方法
相続財産に土地がある場合、相続税評価方法としては「路線価方式」と「倍率方式」の二つのどちらかになります。
基本的には路線価方式を採用し、路線価が設定されていない土地については倍率方式を使います。
(1)路線価方式
路線価は、国税庁が決めた土地価格であり、相続や贈与で取得した土地の評価に適用します。毎年1月1日に価格が更新され、8月頃にHP内で公表されています。
この方式による相続税評価額は以下の数式で算出します。
路線価が40万円、奥行価格補正率が1.0、面積が500㎡の土地なら40万円×1.0×500㎡=2億円となります。
(2)倍率方式
路線価が設定されていない土地もあります。その際は倍率方式によって価格を算出します。
倍率方式による相続税評価額算出は以下の通りです。
固定資産税評価額が1,000万円で、倍率が1.2の土地なら1,000万円×1.2=1,200万です。
路線価と評価倍率は国税庁公式HPから確認しましょう。
建物の相続税評価方法
建物の相続税額評価は固定資産税評価額を基に、建物の「利用状況」によって設定された利率をかけます。利用状況とは個人利用なのか、人に貸していたかに分かれます。
各計算式は以下の通りです。
- 個人利用…固定資産税評価額×1.0
- 第三者に貸していた…固定資産税評価額×(1-借家権割合)
- 賃貸アパート・マンションとして運用していた…固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
相続不動産が被相続人の住宅であったなら、相続税評価額は固定資産税評価額とイコールになります。別荘の場合も同様です。
固定資産税評価額は4月ごろに各市区町村役場から送付される納税通知書を見ましょう。通知書を失くした場合は、役所にある固定資産税台帳で価格を調べましょう。
貸していた場合や、賃貸物件として運用していたなら、借家権割合や賃貸割合によって評価額は下がります。
借家権とは「賃借人として建物を利用する権利」であり、割合は全国一律で30%です。賃貸割合とは「貸し出されている部屋の床面積の割合」です。多く貸し出されているなら、その分、安くなります。(そもそも、借家権割合が30%もあるので、個人利用でないなら固定資産税評価額よりも3割は価格が下がります。)
注意点としては、無償で貸している場合は個人利用と同じ扱いになることです。賃料をもらっていたとしても、固定資産税程度しか払われていない場合も同様となります。
建設中の建物の評価方法
建設中の建物は固定資産税評価額が決まっていないので、相続開始までの費用原価を基に評価額を計算します。
建物の費用原価は以下の通りになります。
建物の費用原価=請負金額×工事進捗率
工事進捗率の確認は工事担当の建設会社から「進捗率証明書」を発行してもらいましょう。
土地・不動産共に相続税評価額は時価よりも安い
不動産の時価とは、実際の取引における価格ですが、相続税評価額は時価よりも低いものとなります。
土地であれば、路線価方式および倍率方式で算出した価格はおよそ20~30%は安くなります。建物の場合でも、固定資産税評価額は課税目的の不動産評価ですから、時価よりも低い価格設定がされています。
このように土地・不動産共に相続税評価額は時価よりも低くなります。そのために、この仕組みを利用した相続税対策もあります。
具体的には、現金や預貯金を不動産に変えておく方法です。現金を不動産に変えるので、多少の手間や売却リスクは生じますが、「小規模宅地等の特例」等の控除制度も使えるので、上手く活用すれば、大幅に税金を安くすることも可能です。
まとめ
相続不動産の評価方法について解説いたしました。
相続不動産の評価はご自身でもできますが、できれば専門の税理士に依頼しましょう。というのも、税理士に不動産評価を依頼することで、煩雑さもなくせますし、自身で評価するよりも評価額が下がる可能性もあります。
というのも、土地評価には価値を下げる減価補正に関する取扱いが規定されているからです。(不整形地や敷地内に高低差がある土地は通常の土地よりも減額となります。)
税理士に相談することで、節税対策もできますので、是非検討してください。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。
年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます。
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。
お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。