人の死は予想できません。母親と父親が同時期に亡くなり、「立て続けに相続が発生する」といったケースも起こり得ます。

この一定期間内に、相続が起きることを「相次相続」と言います。

相続財産の引継ぎをする場合は遺産総額次第で相続税が課税されます。課税は相続ごとに行われるので、本来なら2回分の税金を支払わないといけません。

しかし、短期間で相続税の支払いを行うとなると、二重の税金がかかるため、相続人の負担も相当のものになってしまいます。

そのため、相続の制度では、2度目の相続において相続税を軽減する「相次相続控除」が設けられています。

本コラムでは相次相続控除の概要や制度要件、控除額の計算方法について述べていきます。

 

相次相続について

冒頭でも言いましたが、相次相続とは立て続けに発生する相続を指しますが、具体的には前の相続から10年以内に起きる相続を指します。

例えば、ある家庭で父親が亡くなり、相続で母親とその息子兄弟が財産を取得したとします(1次相続)。後に、母親が亡くなれば、兄弟間で遺産を分割することになります(2次相続)。

母親が亡くなったのが、父親の相続から10年以内であれば、相次相続となります。

なお、父親と母親が同時に死亡した場合は相次相続になりません。どちらが先に死亡したか不明な場合も同時死亡と推定されます。

 

相次相続控除制度とは

(1)概要

 
相次相続控除は、相次相続(10年以内に連続で起こる相続)について、後に起きた相続(2次相続)にかかる相続税額から一定額を控除するものです

短期間で立て続けに相続税を支払えば、相続人の今後の生活に支障をきたす怖れがあります。

相次相続控除は、そういった相続人負担を軽減する目的で設けられた制度なのです。

 

(2)要件

 
制度適用には以下の項目を満たす必要があります。

 
相続人が対象のため、相続放棄や相続廃除・欠格などで相続資格を失っている場合は対象外です

また相続権を持たない方(被相続人の血縁関係以外)が遺贈で財産を取得しても、相次相続控除を利用できないので注意してください

 

相次相続控除での節税効果

相次相続控除では、1次相続での相続税のうち、1年ごとに10%の割合で減額したものを2次相続から控除します。

計算式は以下の通り。

各相続人の相次相続控除額=A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10
※A×C/(B-A)で算出した割合が100/100を超える時は、100/100とする。

 
A:2次相続の被相続人が1次相続で課税された相続税額
※相続時精算課税等の贈与税額控除後の金額で、延滞税などの加算税額は含みません。

B:被相続人が1次相続で取得した純資産価額
※「取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務および葬式費用の金額」で計算。

C:2次相続で財産を取得した相続人全ての純資産価額合計
※遺贈・相続税課税対象の贈与も含む。

D:2次相続におけるその相続人の純資産価額

E:前の相続から今回の相続までの年数
※1年未満は切り捨てとなります。

 

相次相続控除の手続き方法

(1)手続きのタイミング

 
相次相続控除は、2次相続で相続税申告を行う際に手続きをします。

そのため、相続税申告と同様に「相続開始を知った翌日から10か月以内」に手続きをします。手続きをする場所は、2次相続の被相続人住所地を管轄する税務署です。

 

(2)提出書類

 
2次相続での書類に加え、1次相続で提出した書類も用意します。

★参考:国税庁HP 相次相続控除額の計算書

 

1次相続の書類は申告に使った書類のコピーで大丈夫です。

 

注意すべきこと

(1)控除額は各相続人で振り分けられない

 
控除額は1次相続で課税された金額を元に計算します。そのため、相続人同士で控除額を振り分けることはできません。

 

(2)更正の請求や修正申告でも適用可能

 
相次相続控除の申請は2次相続の相続税申告時に手続きをしますが、修正申告や更正の請求の際に手続きをしても大丈夫です。

 

(3)遺産分割が未完了でも適用できる

 
相次相続控除は遺産分割協議が終わっていなくても適用可能です。

その場合は、法定相続分通りに分配したものと仮定して、相続税を算出します。

 

まとめ

短期間のうちに連続で相続が起こると、相続税負担も二重となり、税金の支払いが大変な負担となります。

しかし、相次相続控除を使えば、相続税額を抑えることができますので、是非申請しましょう。

もし、やり方がわからないといった場合は、相続専門の税理士へ相談しましょう。

税理士は申告の代行もできますから、節税相談に加えて手続きの代行も依頼すれば、期限に遅れずに、安心して相続を終えることができます。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
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紙・ペン・印鑑さえあれば、1人で作成できる「自筆証書遺言書」。費用もかからず、手軽に作成できるメリットがありますが、反面、一定の要件を満たさないと形式不備となり効力が無効になってしまいます。

また、自宅で保管する際に紛失したり、第三者が内容を改ざんするリスクも出てきます。

自筆証書遺言のこのような部分を解消するため、法務局では「自筆証書遺言書保管制度」をスタートさせています。

同制度では全国にある「遺言書保管所」で自筆証書遺言書を保管してくれます。

 

自筆証書遺言書保管制度とは

冒頭でも述べましたが、自筆証書遺言書保管制度は遺言書における保管の問題を解消してくれる制度です。各地方にある法務局で手続きをすれば、遺言書の原本と画像データを保存してくれます。

相続人は遺言者の死後に初めて遺言書の閲覧が可能となります。
逆に言えば、遺言者が生きている間は遺言書を閲覧できませんから、内容を知られることはありません。

 

自筆証書遺言書保管制度のメリットとデメリット

(1)メリット

最大のメリットは紛失や偽造・改ざんのリスクが無くなることです。自筆証書遺言書における最も悩ましい部分が解消されることは非常に良いと言えます。また、法務局の担当者が遺言の形式チェックを行うので、形式不備による遺言書無効も起こりません。

相続人が遺言書を閲覧できるのは、遺言者死亡後です。閲覧だけでなく、写しの交付を請求することも可能です。

相続人の一人が遺言書情報証明書の交付を請求したり、原本の閲覧をした場合、他の相続人にも遺言書保管の事実が通知されます。このように、遺言者だけでなく、相続人にとっても利便性のある制度と言えるでしょう。

裁判所での検認手続きも不要になる点も相続人側にとっては良い点と言えるでしょう。

 

(2)デメリット

申請は遺言者本人が遺言保管所で行います。出張サービスはしていませんので、必ず窓口に行く必要があります

また、遺言者が亡くなっても法務局から遺族に遺言書保管の事実を連絡することはありません。なので、遺言書が生前に遺言保管をしていることを相続人に伝えておくか、相続人が遺言保管所に問い合わせなければ、遺言発見がしにくくなります。なお、相続人の一人が遺言書の閲覧や写しの請求を行った場合は、他の相続人にも保管の通知がなされます。

これも注意点になりますが、法務局職員は遺言の様式はチェックするものの、内容にはノータッチです。なので、財産情報が正しく書かれているか、遺留分を侵害していないかといったことは作成者の自己責任です。

 

申請の流れ

(1)遺言書の作成

遺言は自筆証書遺言書作成のルールに従いますが、保管制度を利用する場合は、下記の要件も満たさなければなりません。

データ化することが前提なので、ホッチキス留めなどはNGです。

★参考:法務省HP 遺言書の様式等についての注意事項

 

(2)管轄の法務局を調べる

法務局は上記三つより選択します。

全国の法務局が遺言保管をしているわけではないので、手続きができるのか事前に専用サイトで調べておきましょう。

★参考:法務省HP 遺言書保管所一覧

 

(3)書類準備・予約

保管申請書は法務省のHPよりダウンロードできます。手書きでもパソコン入力でも構いません。

★参考:法務省HP 自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等

 
書類が揃ったら、申請予約を取ります。専用のHPか、法務局へ直接電話して予約を取りましょう。(予約なしでの手続きは受け付けていません。)

★参考:法務局手続案内予約サービス

 

(4)申請を行う

申請は予約した法務局の窓口で、遺言者本人が行います。

手数料は収入印紙を手数料納付用紙に貼って提出します。法務局の多くは印紙売り場を設けているので、もし買い忘れても大丈夫です。

書類不備がなければ、当日中に「遺言書保管証」が交付されます。なお、保管された遺言書は、相続開始まで遺言者しか閲覧できません。

 

まとめ

遺言書は自身の死後に財産分割を円滑にさせる大切な書類です。苦労して作ったものでも、きちんと遺族に届かなければ意味がありません。

紛失などのリスクを回避するなら公正証書遺言を作成するか、当記事で説明いたしました自筆証書遺言書保管制度を利用しましょう。

 

 


 
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故人の自宅などから遺言書が出てくるケースがありますが、その際に遺言書を勝手に開封してはいけません。なぜなら、遺言書開封には、家庭裁判所での「検認」手続きが必要だからです。

検認は、相続人全員に遺言書があることと、その内容を認知させる手続きです。遺言書の偽造や改ざんを防止する意味もあります。

本コラムでは、検認の手続き方法について説明いたします。

 

検認が必要な遺言書とは

遺言には一般的なものが三種類ありますが、検認手続きが必要なものは以下になります。

逆に不要なのは以下です。

 
検認手続きが不要かどうかは、偽造・改ざんのリスクがあるかどうかで分かれます。

公正証書遺言は原本が公証役場に保存されるので、そのようなリスクはありません。したがって、検認手続きは不要となります。

自筆証書遺言も通常であれば、検認が必要となりますが、法務局の保管制度を利用した場合、原本が遺言保管所にて保存されるため、検認が不要となります。

この制度は「自筆証書遺言の保管制度」といいます。同制度を利用すると、紛失や破棄のリスクがなくなる上、相続発生後の「検認手続き」も不要になるメリットもあります。

各遺言書の特徴については、以前のコラムを参考にしてください。

★参考記事:遺言書の種類について

 

遺言書の確認手続きとは

遺言書には特別方式遺言というものもあります。特別方式遺言は遺言者の死期が迫っているなど、普通方式による遺言が作成できない場合に限って認められるものです。

こちらの場合、検認でなく裁判所での「確認」が必要となります。

確認は、遺言が「遺言者の真意に出たものかどうか」を判定するものです。期限内に証人または利害関係人から、申立てを行います。

 

遺言書の開封はしないこと

遺言書を開封する場合、客観性や公正性がなければなりません。そのため、家庭裁判所で相続人全員の立会いの中で行われる検認作業が必要となるのです。

もしも、自筆証書遺言を勝手に開封した場合は、5万円以下の過料を科される可能性があります

過料とは、行政上、軽い禁令を犯した場合に支払わされる金銭罰です。刑事罰である罰金と違って、過料は行政上の罰則となります。

ただ、実際のところ、遺言書を開けてしまったからといって、過料を課されるケースは少ないと言えます。検認手続きが一般の方には広く認知されておらず、誤って開封する方も多いからです。

もし、間違って開封をした場合には、早急に家庭裁判所に相談し、検認手続きを進めましょう。

 

破棄や改ざんをした場合

見つけた遺言書を破棄したり、改ざんした場合は相続人資格を失うことになります。民法においては、遺言書を偽造・変造・破棄、もしくは隠匿した者は相続人となることができないと定められています。

相続人資格を失えば、財産を引き継ぐこともできません。

改ざんを疑われるリスクを避けるためにも、遺言書は開かない方が良いのです。

 

検認の手続き

遺言書の保管を任されている方がいる場合、相続開始を知った後に遅滞なく、検認の申し立てをします。保管者がいない場合は、遺言者が亡くなった後に遺言書を発見した方が、検認の申し立てを行います。

申し立てを行うのは、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

検認手続きでは、全ての相続人の立ち会いを求められますが、参加の有無は相続人個人の判断で決定します。(遠方に住んでいる方が無理に参加しなくても大丈夫です。)

申し立てには以下の書類が必要です

検認手続きが完了すると、検認済証明書を添えて遺言書が返されます。

検認手続きを終えたことで、遺言に従った財産分割が可能となります。(ただし、相続人全員・遺言執行者・受遺者の同意があれば遺言書の指定とは異なる分割を進めても構いません。)

 

まとめ

検認が必要な遺言書が見つかったときは、早いうちに裁判所での手続きをしましょう。

検認には1か月程度かかるので、その間は相続手続きがストップしてしまいます。他の手続きの期限は延長されないので注意しましょう。

 

 


 
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本来遺産を取得するはずの相続人が不慮の事故や病気によって亡くなっているケースもあります。そのような場合、その相続人の子どもが代わりに遺産を相続することになります。

これは「代襲相続」といわれる制度ですが、相続人が亡くなる他にも、一定の事情で生じる制度です。言い換えれば、条件を満たさなければ代襲相続は起きません。

 

代襲相続とは

本来、相続権を持つはずだった方(推定相続人)が死亡等によって相続権を失くしている場合、その相続人に代わって相続権を割り当てられる制度を「代襲相続」と言います。

例えば、被相続人の子供がすでに死亡している場合、遺産の取得権はその子供の子供(=被相続人にとって孫に当たる人物)が承継することになります。

代襲相続が起きた場合、代襲相続人の財産取得分(法定相続分)は、代襲される被代襲相続人と同じです。例えば、元々の相続人が被相続人の妻・長男の二人で長男が死亡していたケースを考えると、代襲相続人として長男の子供(被相続人の孫)が受け取る相続財産分は2分の1となります。

配偶者と子どもの法定相続分
配偶者:1/2
子ども:1/2(代襲相続者も同じ1/2)

 

代襲相続の要件

(1)相続人が相続権を失っている

 
代襲相続の要件の一つに、本来の相続人が一定の理由で相続権を失っていることがあります。これは、「死亡」だけでなく、「相続欠格や相続廃除」であった場合にも認められます。

相続欠格は欠格事由に該当して相続権を失うことであり、相続廃除は被相続人の意思によって相続人の権利を剥奪する制度です。

 

(2)被代襲者が被相続人の子どもや兄弟姉妹

 
被代襲者になれるのは、被相続人の子どもや兄弟姉妹の関係にあたる相続人です。配偶者や父母等の直系尊属が亡くなっていても代襲相続は起こりません。

 

(3)代襲者が被代襲者の直系卑属である

 
代襲者は被代襲者の子供です。なお、被代襲者が被相続人の子どもなら、代襲相続は何代に渡って行えます。

例えば、子どもの子ども(=被相続人の孫)も亡くなっていた場合、被相続人のひ孫が代襲相続することとなります。これは「再代襲」と言われ、代襲相続と同じ条件で相続が行われます。

ただし、再代襲ができるのは、被代襲者が被相続人の子どもの場合に限られます。兄弟姉妹が被代襲者の場合、代襲相続は兄弟姉妹の子どもである被相続人の甥や姪までとなります。

 

代襲相続における注意点

(1)相続放棄では代襲相続不可

 
相続放棄とは、相続人自ら相続権を手放す行為です。相続放棄すれば最初から相続権を持たなかったことになるので、代襲相続も生じません

なお、相続権は次の順位の方に移ります。

 

(2)法定相続人の人数が増える場合もある

 
被代襲者に子どもが複数いる場合、法定相続人が増えます

法定相続人が増えれば、相続税の基礎控除額や死亡保険金の非課税限度額を算出する上での法定相続人数も増えます。相続税の申告を間違えないように注意しましょう。

 

(3)養子縁組との関係

 
養子縁組が行われていた場合、被相続人の養子も被代襲者になります。ただし、養子の子どもが代襲者になるかどうかは、その出生時期が縁組の前か後かで変わってきます。

養子の子が養子縁組前に生まれていたなら、養親とは親族関係とならないので代襲相続人になりません

 

まとめ

代襲相続が起きると、主に被相続人の孫やひ孫、甥・姪が相続人となります。相続分は代襲相続が起きる前と変わりません。

しかし、被代襲者に子どもが複数いる場合は法定相続人が増えます。

法定相続人が増えれば、相続税の基礎控除額や死亡保険金の非課税限度額も変わります。これらは相続税の申告額に影響するので、注意しましょう。

代襲相続が発生する場合は、誰が相続人になるかを事前に把握しておきましょう。

 

 


 
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相続にも様々なケースがあります。中には、幼いお子さんを残して亡くなる方もいるでしょう。

そのような場合、残されるお子さんの今後の生活も気がかりですが、何より相続税も心配になります。子供の将来を考えたときに、1円でも多くの財産を残してあげたいと思うのが親心でしょう。

相続税では、遺族の生活を保障する観点から、いくつかの優遇制度が設けられています。その中に「未成年者控除」という、未成年者が相続人となる場合に、その方が払う相続税が減額となる仕組みがあります。

 

相続税の未成年者控除とは

相続における未成年者控除とは、未成年者である相続人が遺産を取得する際に相続税が減額される制度です

控除額は「相続人が満18歳になるまでの年数×10万円」で計算します。

控除が適用されるのは基本的には未成年者が払う相続税のみですが、もし該当相続人の相続税が控除額を下回る場合、その差し引いた金額を未成年者の「扶養義務者」が払う相続税からも減額することも可能です。

例えば、成年者の兄と未成年者の弟の計2名が法定相続人となった場合、弟の未成年者控除のうち差し引けなかった残額がある場合、兄の相続税額から控除することができます。

 

控除の適用要件

未成年者控除が適用されるには以下の要件全てを満たす必要があります。

 
相続人の年齢については、財産取得時に18歳の誕生日を迎えていなければ未成年者控除の適用が可能です。

なお、以前では成年者の年齢は20歳でしたが、現在では民法改正法によって成人年齢が18歳となっているので、適用年齢が下がっています

また、母親のお腹の中にいる胎児についても、無事に生まれてきたことを条件に未成年者控除の適用が認められます。この場合、控除額は満額の180万円となります。

 

控除額の計算方法

未成年者控除は以下の順番で計算していきます。

①未成年者の相続税額からの控除
②未成年者の扶養義務者の相続税額からの控除

 
数式から見てもわかるように相続人の年齢が若ければ若いほど控除額は大きくなっていきます。もし、18歳に達するまでの年数が1年未満や1年未満の端数があるときには、これを1年として計算します。(端数は切り上げとなります。)
 

【計算例】
相続人が未成年者(6歳)の弟と成年者の兄の2人で、それぞれの相続税額が100万円の場合

①未成年者の控除額については(18歳−6歳)×10万円=120万円となるので
未成年者の相続税額は控除額を差し引き100万円−120万円=▲20万円となり
相続税はかからない計算となります。

未成年者控除額が相続税額を上回る場合は、扶養者に当たる相続人の相続税額からも控除できるので、成年者の兄が弟の扶養義務者の場合は②の未成年者の扶養義務者の相続税額からの控除は▲20万円となり
兄の相続税額100万円-20万円=80万円となります。

 

未成年者が相続する場合の注意点

未成年者は原則として法律行為を行えません

相続における遺産分割や相続放棄も法律行為に当たるので、原則、未成年者は代理人を立てて遺産分割協議等に参加することになります。

この代理人は「法定代理人」と「特別代理人」の2つがあります。

法定代理人は未成年者に代わって法律行為をする方を指します。基本的には親等が代理人になりますが、親も相続人だと「利益相反行為(一方の利益が生じると自身が代理した者に不利益が生じること)」となり法定代理人にはなれません。

よって、その場合は法定代理人ではなく、家庭裁判所への手続きで選任する特別代理人を立てる必要があります。

 

まとめ

相続人が未成年者の場合、優遇措置として相続税額が控除される制度を利用できます。

扶養義務者の申告額も減額できるので、覚えておきましょう。

 

 


 
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故人の財産である預貯金や不動産は相続財産として相続人が取得し、相続税の課税対象となります。

しかし、故人から直接継承したものではなくても、制度上「相続財産と同様」とみなされ、相続税計算の対象とされるものが存在します。このような財産は「みなし相続財産」と言います。

民法では、みなし相続財産は相続財産ではありません。
しかしながら、「被相続人の死亡により相続人のものになる」という部分から、税法上で通常の相続財産と変わりないとされるのです

 

みなし相続財産も相続税申告が必要

税法上で相続財産となるので、みなし相続財産にも相続税が課税されます
そのため、相続税計算をして、基礎控除額を超える場合は、税務署へ申告と納付をしなければなりません。

相続税の計算では、法定相続人の人数に応じて基礎控除を差し引くことができます。
基礎控除の計算式は次の通りです。「相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人数

法定相続人が妻と子ども2人が法定相続人となる場合には、基礎控除として「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」を相続財産から差し引けることになります。

相続税の基礎控除を差し引いた課税遺産額が0円以下なら申告は不要です。
もし、申告が必要な場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に納付と合わせて手続きを完了させます

 

主なみなし相続財産の例

みなし相続財産に当たる主なものは以下になります。

 

(1)死亡保険金および死亡退職金

 
被保険者が死亡すると保険会社から支払われる死亡保険金はみなし相続財産として相続税がかかります。
勤務先から支払われる死亡退職金も同様です。

ただし、これらのお金には特別に非課税枠が設定されています

非課税となる金額は「相続で取得した死亡退職金や保険金−500万円×法定相続人数」の算式で計算します。

死亡退職金が1500万円で法定相続人が3名の場合は、課税金額は0円となります。
1,500万円−(500万円×3)=0万円

死亡保険金については、過去のコラムでも説明していますので、参考にしてください。

★参考記事:相続放棄しても受け取り可能 相続における死亡保険金の扱い

 

(2)信託受益権

 
銀行や信託会社などにお金を預けて、運用させることが信託であり、信託受益権は、信託財産から生じた利益を受け取る権利です。

遺言で信託がされた場合、信託を委託した人以外の相続人が、利益を受け取る場合に相続税が発生し、権利の評価方法は、国税庁の通達によって定められています。

 

(3)低額の譲受

 
低額譲受は、個人から資産を低い価額で譲り受けることを指します。

例えば被相続人が生前に、所有する不動産を相続人に本来の価格(この場合は時価)よりも、著しく低い金額で譲った場合、相続人が利益を受けたものとみなされ、相続税の対象になります。

時価4,000万円の不動産を1,000万円で譲り受けた場合には、3,000万円が、相続財産となります。

 

(4)債務の免除

 
相続人が被相続人に対して負っていた借金などを、遺言で全額免除もしくは大幅に減額してもらった場合が該当します。
相続人にとっては、免除してもらった金額分の利益を被相続人から受け取ったようなものであり、税金が課されるのです。

ただし、ケースによっては債務免除が遺贈によるものではないとされ、課税対象にならない場合もあります。

 

(5)定期金

 
生命保険会社の個人年金等の掛け金を被相続人本人が支払っていて、受取人を相続人に設定していた場合も、みなし相続財産されます。

相続開始時に年金の給付がされていなくても、相続税は課税されます。

 

まとめ

みなし相続財産について解説しました。
民法上は相続財産ではありませんが、相続税の課税対象になるので注意が必要です。

ただし、死亡保険金や死亡退職金には一定の非課税枠も設けられているため、活用方法によっては節税に繋げることもできます。

節税につなげたい場合は専門知識を持った是非、相続専門の税理士に相談してください。
経験豊富な税理士であれば、手続きもスムーズに進むので安心です。

 

 


 
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相続によって財産を取得した場合、相続税額に応じて申告と納付をします。

もし、期限までに手続きをしないと加算税という罰則を科せられます。申告しない場合は、「無申告加算税」が科せられ、納税額の50万円までの部分に15%、50万円を超えた部分に20%の税率をかけた罰金を払うことになります。

加算税を支払わなくても良いように、期限は守らなければなりません。

しかし、ケースによってはどうしても期限を守れない場合もあるでしょう。そのような場合、一定の条件に該当していると、例外的に申告の期限延長が認められます

 

申告期限の延長は基本できない

相続税の申告期限は、相続人が相続開始を知った日の翌日から「10か月以内」です。(厳密には相続開始日=被相続人が亡くなった日ではありません。)

もし、11月10日に相続開始の事実を知った場合は、翌年の9月10日が申告期限になります。

なお、相続税額の納付についても同じ日です。申告と同様に期限を破れば、こちらもペナルティとして延滞税が生じるので注意しましょう。

相続税の申告期限は基本的に延長が認められません。延長を簡単に認めてしまえば、様々なケースで延長の申し出が発生し、申告期限もバラバラとなります。そうなれば公平性も無くなるでしょう。

「財産調査に時間がかかっている」「遺産分割協議が完了していない」「他の相続人との連携が上手くいっておらず書類が集まっていない」など、申告期限に間に合わない理由には様々なものがあります。

しかしながら、これらの理由では、延長は認められないのです。手続きが未完了のまま期限が過ぎると、冒頭で述べたように、ペナルティの税金を負担することになります。

 

間に合わない場合の対処

申告期限の延長は基本できないので、財産調査や遺産分割協議が未完了の場合は、以下の方法で対処します。
 

(1)申告期限内に一旦、概算申告を行う

 
財産調査が終わっていない場合、正しい相続税評価額もわかりません。
このような場合、とりあえず期限内に多めの金額で申告と納付をします。

多めの金額で期限内に申告と納付を済ませておけば、過少申告加算税や延滞税もかかりません

多めに支払った税金については、後に相続財産が確定された際に還付請求すれば、返してもらえます。

 

(2)申告期限後3年以内の分割見込書で未分割申告

 
遺産分割協議が完了していない場合には、一旦、財産を法定相続分で分割したとして未分割の相続税申告書を作成し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して税務署に申告します。

後に遺産分割が確定したら改めて還付請求や修正申告をして、相続税額を調整します。

「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に遺産分割が決着すれば、各種の相続税控除の特例も使えるようになります

 

例外的に申告期限を延長できる場合も

相続税申告は例外的に、最大で2ヶ月間の延長にできるケースもあります。
 

(1)相続人の異動があった

 
相続人の異動とは、相続人の人数が変更されることです。

相続人数が変わるのは、相続人本人の問題行為で相続廃除や相続欠格となって相続権を失ったり、生死不明で失踪宣告を受けた場合などです。

また、母親のお腹にいる胎児は相続権が認められています。
そのため、相続人に胎児がいる場合は、生まれたときから2ヶ月の延長が認められます。

 

(2)遺留分の侵害額請求があった

 
遺留分は、法定相続人に認められ、最低限の遺産を取得する権利です。

遺留分について調停や訴訟が行われている場合、相続税申告の有無が確定できませんし、遺留分が認められると、各相続人の申告内容も変わるため、申告期限が延長されます。

 

(3)遺贈に係る遺言書が見つかった

 
遺言書では法定相続人以外にも遺産を取得させることができます。

申告期限の直前になって遺言書がみつかり、相続人とは別の第三者の方へ遺贈する旨の記載があった場合、各相続人が負担する相続税額も変わり、申告書の作成もやり直さなければなりません。

また、受遺者についても期限内の申告手続きは難しいとみなされ、申告期限の延長が認められます。

 

まとめ

相続税申告期限の延長は基本できませんが、例外的に延長が認められる場合もあります。

ただし、相続廃除や欠格によって相続人数が変動するケースや、遺贈に係る遺言書が申告の直前になって見つかるケースはそんなにありません。
そのため、延長を前提に考えず、あくまで期限内に手続きを終えましょう。

申告期限に間に合わなくなりそうな場合は、専門の税理士に相談してください。
専門の税理士であれば、正確かつ素早く手続きを完了できるからです。

相続税の申告期限は10か月ありますが、決して十分な時間ではありません。
特に、自分で相続税申告を行う方は、しっかりスケジュールを調整して進めていかなければ難しいでしょう。

安全に手続きを終えるなら、税理士に相談されることをおすすめします。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

遺言書にもいくつかの種類がありますが、その中でも確実に遺言を残す方法として、広く利用されているのが「 公正証書遺言 」です。

この公正証書遺言は、個人(もしくは法人)からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成するため、書き損じや抜け漏れなど、不備による無効のリスクがありません
加えて原本も、役場に保管されるので、紛失も防げます

このような点から、安全に遺言書を残せるので、多くの方が利用するのです。
なお、公正証書遺言は、作成時に二人の証人を必要としますが、証人は家族や友人など誰でもなれる訳ではありません。

 

公正証書遺言とは

自筆証書遺言は自筆(一部、PCで作成可能)で作成しますが、公正証書遺言は、公証役場にて公証人に作成を代行してもらいます。
※公証役場とは、法務省管轄の役所で、公正証書の作成、私文書の認証を行います。全都道府県に置かれています。

公正証書遺言の特徴は以下の通りです。

 
公正証書遺言最大のメリットは公証人が作成するので、不備による遺言書無効のリスクが無くなる他、原本が公証役場で保管されるので、紛失や第三者による文書改ざんの心配も不要です。
加えて、相続開始後の検認も不要です

遺言書の検認は、全ての相続人に遺言書の存在と内容を認知させる手続きで、偽造や変造防止の目的があります。
(遺言書が有効か無効かを判断するものではありません。)

良い部分が目立つ公正証書遺言ですが、デメリットもあります。
それは作成に手間がかかることです

公証役場へ突然行ってもその日のうちに遺言を作ってくれることはありません。
事前にどういった内容の遺言にするのか等、打ち合わせをしておかなくてはなりません。

また、証人を用意しなくてはならないので、その分の手間もかかってしまいます
加えて、作成費用もかかります。費用は遺言書に記載する財産の合計額によって変わります。

 

作成の流れ

作成は以下の流れを組みます。

 

(1)証人2名の選定

 
公証役場での遺言書作成には、2名の証人の立ち合いが必要です。

証人は、遺言が間違いなく本人のものであること、遺言者の意思と正常な判断のもとで作られていることを証明する役割があります。
(相続開始後に、裁判で有効な遺言であることの証言を求められることもあります。)

そのため、事前に証人を集めておきましょう。

ただし、以下の人は証人になれません。

 
遺言者の配偶者やその子供は、公正証書遺言の証人になれません。
これは証人が相続において、利害関係の無い第三者でなくてはならないからです。

遺言者の親類はほとんど証人になれないと考えましょう。
もし、ご自身の周りに証人になれそうな人がいない場合は、士業や公証人役場に依頼して証人となってもらうことも可能です。

 

(2)公証人との打ち合わせ

 
証人が用意できたら、公証人と遺言書の内容について事前に打ち合わせを行います。

打ち合わせには、以下の資料等が必要になります。

 

(3)遺言者の本人確認、口述と意思確認

 
本人確認には印鑑登録証明書と実印を用います。

意思確認は遺言者が遺言書内容を口述で読み上げた後に行います。

 

(4)遺言者と証人2名の署名捺印

 
遺言者が署名と実印での捺印した後、証人2名が署名および捺印します。
障害等で遺言者による自書が不可能な場合には、公証人に代筆してもらうこともできます。(その場合は打ち合わせの段階で了承を得ておきましょう。)

 

(5)公証人の署名および捺印

 
公証人も署名捺印をすれば遺言書は完成です。

 

(6)遺言書の完成・保管

 
完成した公正証書遺言は三つ作成されます。一つは原本となり、公証役場に保管されます。
残りは正本および謄本として遺言者のものとなります。(遺言者の希望で増やしてもらうこともできます。)

遺言者が亡くなって相続が開始されたら、相続人が最寄りの公証役場で遺言書の内容を確認し、相続手続きをおこないます。

 

まとめ

遺言書の中でも確実に遺言を残す方法として、広く利用されているのが「公正証書遺言」です。

メリットの多い、公正証書遺言ですが、作成に手間がかかるので注意しましょう。
また、証人は誰でも良いわけではないことにも留意しましょう。

 

 


 
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被保険者の死後に遺族に支払われる 死亡保険金 には一定の非課税枠が設けられているので、これを利用した相続税対策が可能です。

このページでは死亡保険金を利用した相続税対策の仕組みやメリットについてもご紹介いたします。

 

死亡保険金はみなし相続財産

保険金とは、被保険者に死亡や入院、通院といった対象事柄が生じた際に、保険金が支払われるサービスです。
保険金の支払い先は契約者が設定した受取人です。

保険金の中でも、被保険者が亡くなった後に支払われるものが「死亡保険金」です。

死亡保険金は本来、相続財産ではありません。
しかし、契約者の死によって金銭が取得される部分が通常の相続財産と同じであるとされ、「みなし相続財産」として、相続税が課税されます。

みなし相続財産は民法では相続財産扱いではないものの、相続税法上で相続財産とされるのです
みなし相続財産に当たる主なものは死亡退職金や死亡保険金以外にも信託受益権、低額の譲受、債務の免除、定期金などがあります。

 

死亡保険金の非課税枠

死亡保険金が他のみなし相続財産と違う点は、一定の非課税枠が設けられている所です
これは死亡保険金や死亡退職金のみが持っている特別な部分です。

非課税金額は以下の数式で算出されます。

死亡保険金の非課税額=500万円×法定相続人

 
例えば、夫婦2人と子ども2人の4人家族がいたとします。
夫が亡くなった後、妻が2,000万円の保険金を得た場合、死亡保険金の非課税額は500万円×3人=1,500万円となり、元々の保険金2,000万円から差し引けば、課税対象額は500万円となります。

 

死亡保険金を活用するメリット

(1)受取人だけで手続きができる

 
前述した通り、死亡保険金は通常の相続財産ではないので、分割の対象ではありません。

また、受取人固有の財産なので、受取人のみでの支払い手続きが可能で、他の相続人の合意を得る必要もありません。

 

(2)遺留分を侵害しない

 
法定相続人が最低限の相続財産を取得する権利を「遺留分」といいます。

先ほども述べましたが、死亡保険金はそもそも分割するものでもないので、遺留分の対象外です。
よって、その保険金額に対して侵害請求を受けることはありません。

 

(3)相続放棄しても受け取れる

 
死亡保険金は受取人本人が相続放棄していても受け取ることができます。
(これも通常の相続財産ではないという理由からです。)

加えて、非課税額についても影響はなく、一部の人が相続放棄をしていても数式の法定相続人数に含んで計算しても良いのです。
例えば、夫婦2人と子ども2人の4人家族で、子供の一人が相続放棄しても、非課税枠は500万円×3人=1,500万円から変わりません。

ただし、相続放棄した人が保険金の受取人だった場合は、非課税枠自体が使えなくなってしまいます。

 

(4)口座凍結の心配もなく早期に受け取れる

 
相続開始すると、被相続人の銀行口座は凍結されますが、死亡保険金は1週間程度で問題なく受け取りが可能です。

口座の凍結を解除するには多くの時間と手間が必要になります。
また、相続財産内容によっては、多額の相続税がかかり、納付額(現金)を用意することが困難なケースもあります。

その点、早期に資金を受け取れる死亡保険金はメリットがあります。
通夜や葬儀の準備も安心して行うことができます。

 

保険料負担者の設定によって税金が変わる

死亡保険金には、被保険者、保険料負担者、保険金受取人の三者の関係によってさまざまな契約形態があります。

契約形態によって、死亡保険金に相続税ではなく贈与税や所得税が課税され、相続税対策として機能しない場合もあります。

もし、保険料を被相続人以外が負担していた場合、以下のように課税される税金の種類が変わります。
課される税金が相続税でなくなると、非課税枠も利用できなくなってしまいます。


※以下は父親が被相続人で、妻と子が相続人の場合を想定しています。

死亡保険金の非課税枠を活用するのであれば、契約形態については十分に注意してください。

 

まとめ

相続における節税対策に絶対的な正解はありません。相続時の家族状況や遺産内容によって、取るべき手段が変わってくるからです。

確実な節税をしたいのであれば、専門の税理士に相談することがベストです。
節税対策はもちろん、相続税の申告も代行できるので、安心です。

 

 


 
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