相続 では各相続人が「遺産をどのように引き継ぐか」選択することで、その後の手続き方法が変わります。
遺産の引き継ぎ方法は主に三つのパターンになります。

このうち、最後の方法は「限定承認」といいます。
全ての相続権を放棄する「相続放棄」と違って、一部の遺産を相続できます。

今回はこの限定承認について解説いたします。

 

相続方法はどのように決定するか

(1)熟慮期間内に手続きをするかどうか

 
どの方法で財産を引き継ぐか、それを選択するには熟慮期間内に手続きをしなければなりません
熟慮期間はその方が「相続が開始されたこと」と「自身が相続人であること」を認識した翌日から3ヶ月以内です。

この熟慮期間内に手続きをしないと、自動的に単純承認を選んだことになり、通常通り相続財産を取得することになります

なお、熟慮期間は財産整理に時間がかかる(被相続人が多方面に借金を抱えている、財産評価に時間がかかるものが多い)等、相応の理由がある場合は、延長も可能です。延長の判断は最終的に家庭裁判所が行います。

 

(2)法定単純承認に該当するかどうか

熟慮期間内が過ぎれば、自動的に単純承認が選択されますが、期間内でも「財産を処分する」等の特定行為をすると単純承認が成立してしまいます

このルールは「法定単純承認」と言います。
成立したら、相続放棄も限定承認も選択できません

 

限定承認とは

限定承認とは、遺産の範囲内において借金を相続する方法です。

例えば、分割後に相続するプラスの遺産が2,000万円で、借金等のマイナスの遺産が3,000万円の場合、プラスの遺産である2,000万円分しか債務を負わなくて良いことになります。これにより遺産と借金を相殺してゼロにすることが可能です。

 

限定承認と相続放棄の違い

限定承認も相続放棄も、「自身のための相続開始があったことを知ってから3ヶ月以内」の熟慮期間内に手続きしなければならない点は同じです。しかし、限定承認は「相続する」選択肢の1つであるのに対し、相続放棄は「相続しない」選択肢ということで、その手続きの方向性は全く異なります。

また、相続放棄はプラスもマイナスの遺産も全て相続せずに相続権を放棄することですが、限定承認はプラスの遺産の限度分のみマイナスの遺産を相続するので相続権は残ります。

つまり、残したい財産は限られた範囲で残せる部分も限定承認の特徴です

 

限定承認のメリット

(1)相続権が残る

 
限定承認では相続権が残ります。
そのため、あとからプラスの財産の方が多かったことが発覚した場合でも、借金を精算すれば余剰分の財産は引き継ぐことができます。

財産調査が不十分で債務超過しているかどうかがわからない場合、有効な手段と言えるでしょう。

 

(2)住宅など不動産を確保できる

 
遺産の中に自宅などの不動産があって限定承認を行った場合、債務分を弁済できなければ不動産は換価処分となりますが、相当する金銭を支払うことができる場合、換価処分を免れ、手元に残すことが可能です。

不動産買取が可能な程度の資力が求められますが、相続放棄の場合では対象の不動産を確保できません。

 

(3)先買権

 
先買権は不動産が競売にかけられたときに優先的に購入できる権利のことです。

限定承認をした相続人に対してこの先買権が認められるため、重要な不動産を取り戻すチャンスができます。

 

デメリット

(1)手間がかかる

 
相続放棄は個人で手続きが完結しますが、限定承認は相続人全員でする必要があります

裁判所への申し立ては相続人全員の戸籍謄本が必須で、手続きも相続人全員の合意が必要です。
もし、反対する相続人が一人でもいる場合は、手続きができません。

裁判所に申請が受理された後も、裁判所の手続きに従って債務を清算する必要があるので相続放棄と比較して、手間と時間が大幅にかかります。

 

(2)譲渡所得税が課税される

 
限定承認を行うと、相続手続き開始時点で、被相続人が全ての財産を相続人に時価で売却したものとみなされるので、譲渡所得税がかかります

譲渡取得税は,譲渡価格(相続開始日の時価)から取得費、譲渡費用を引いた額に課税されます。
課税されるものは、古くから所有している不動産が中心となります。

 

(3)相続税の各種減税制度を受けることができない

 
限定承認をすると、居住用不動産に関する相続税の控除制度である「小規模宅地等の特例」を受けることができません。

よって、単純承認を選択し、マイナスの財産を別個に相続して返済をした方が、結果的に得になるケースもあります。

 

まとめ

相続開始後、相続放棄や限定承認の手続きをしなければ、単純承認が成立し、故人の遺産をそのまま相続することになります。

しかし、単純承認では借金等も引き継ぎますから、相続で損をしないためにも遺産全容を早期に明らかにするべきです。
熟慮期間は限られるので、適切な相続方法を選択できるように準備しておきましょう。

熟慮期間内の手続きは基本的に取り消し不可なので、慎重な判断が求められます。

 

 


 
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相続における財産調査は、相続手続きに大きく影響するため、可能な限り迅速に進めないといけません。
また、漏れがあるといけないので正確性も同時に求められます。

本コラムでは、相続財産調査の必要性と各財産の具体的な探し方について説明いたします。

 

財産調査はどうして重要なのか

(1)相続放棄を判断するための指標となる

 
相続が開始後、相続人は単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかの相続方法を選択することになります。
単純承認とは、故人の現金や預貯金、不動産やローンなど、プラス財産もマイナス財産もすべて引き継ぐことです。

限定承認とは、プラスの相続財産の範囲で債務も受け継ぐことです。
例えば、相続財産が、1,000万円の土地と、1,500万円の借金だった場合、債権者に土地と同額の1,000万円を支払えば、土地を取得することができます。

相続放棄は相続の権利を手放す行為のため、被相続人の財産一切を引き継ぎません。
なお、限定承認および相続放棄は「自己のために相続開始を知ったときから3ヶ月以内」という熟慮期間内に家庭裁判所に申述しなければなりません。

その判断をするためには、相続財産の全容を明らかにする必要があります
マイナスの財産が多ければ、相続放棄を選択する材料になるからです。

ただし、熟慮期間があるので、財産調査はスピーディーかつ正確に行わなければなりません

 

(2)正しい相続税申告をするため

 
相続税申告には正確な税額計算が求められます。
それには財産全容を明らかにした上で、不動産や株式などの財産を正しく評価しなければなりません。

不動産や株式の相続税評価方法はそれぞれ方法が異なります。
不動産であれば、土地には路線価方式や倍率方式が採用され、建物には固定資産税が評価基準となります。

株式は上場株式の場合、相続開始日の終値(おわりね)を基準に評価額を算出します。
非上々株式の場合、市場価格が存在しないので、評価は少し複雑になります。

ここで言いたいのは、預貯金と違ってこれらの評価には時間も手間もかかるということです。
つまり、早い段階で遺産内容を明らかにしていないと、相続税申告も間に合わないということです

相続税申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
期限を過ぎれば、加算税などのペナルティが課せられます。

 

預貯金の探し方

被相続人の預貯金の探し方ですが、まずは被相続人がどの金融機関を利用していたか調べます。

全ての支店にある故人の口座を調べてもらえますから、まずは亡くなった方が利用していた金融機関を特定しましょう。
通帳、キャッシュカード、郵便物が見つかれば、特定は容易です。

特定できれば、残高証明等を発行してもらえます。

ただし、手続きには、被相続人の死亡や請求者(相続人)との関係を示す書類(戸籍や除籍謄本など)が必要です。
金融機関によって他の必要書類は異なるので、事前確認を必ずしましょう。

手続きをするのが面倒だという方は専門家に代行してもらいましょう。
専門家に代行させたほうが、慣れている分手続きもスムーズです。また、時間の短縮にもなります。

 

相続不動産を探す方法

(1)最初に納税通知書を確認

 
被相続人が不動産を所有していたなら、「固定資産税」「都市計画税」がかかるので、4月から6月ごろに「納税通知書」が役所から送られていたはずです。

納税通知書には不動産の地番や家屋番号が記されているので、故人の自宅を探してみましょう。

 

(2)権利証・登記識別情報の確認

 
私道など、一部の不動産は納税通知書に記載されません。
その際は、権利証もしくは登記識別情報通知を探します。

どちらも不動産の権利等を取得した場合に発行されますが、取得時期によってどちらが発行されるか変わります。
(権利証は現在、廃止されています。)

 

(3)名寄帳の写しで確認

 
不動産がある場所=市区町村が判明している場合、管轄の市町村役場で、「名寄帳(なよせちょう)」の写しを請求しましょう。
名寄帳は市区町村管理の課税台帳であり、該当地区の不動産情報が記載されています。

名寄帳の良い点は、私道のような非課税不動産も載っている上、共有名義での物件も把握できる点です。
(納税通知書では共有名義の不動産は確認できません。)

名寄帳の写しを取得したら、役場にて「固定資産評価証明書」も請求します。
固定資産評価証明書とは、所有不動産の価値の目安を記したものです。

不動産の名義変更の際の添付書類でもあるので、取得しておきましょう。

 

(4)法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する

 
いずれかの方法で、地番か家屋番号を特定できたら、法務局で登記簿謄本を発行してもらいます。

登記簿謄本を発行する目的は、故人が本当にその不動産の所有者であるかどうかを確認するためです。
所有者であれば、その人の名前と住所、取得原因や年月日が記載されているはずです。

 

美術品や車などの動産の探し方

美術品や車といった動産は被相続人の自宅に保管されている場合が多いですが、稀に貸金庫等に保管されている場合もあります。
貸金庫の存在が確認された場合は、漏らさないよう注意しましょう。

他にも貴金属なども相続財産になります。
価値の低いものは他の財産とまとめて良いですが、価値の高いものはリスト化しておき、専門の業者に鑑定を依頼しましょう。

 

債務の探し方

マイナス財産の大きさは、相続放棄や限定承認を判断する指標になるため、こちらも重要です。
債務については、被相続人の自宅に督促状や返済の明細書、消費者金融のキャッシュカードがないか調べます。

また、各信用情報機関(CIC・JICC・JBA)に対して、被相続人の信用情報の情報開示を求めて、過去のローンやキャッシングの契約等を把握する方法もあります。

 

まとめ

遺産の全容を明らかにする財産調査は相続でとても重要です。

相続放棄をするかどうかの判断もそうですし、正しい相続税申告をするためにも必要です。
解説した通りの方法で、ご自身で調査することもできますが、時間も手間もかかるので、専門家に任せてしまうのも良いでしょう。

 

 


 
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相続において、配偶者は被相続人に最も近い関係者として優遇されます。
必ず法定相続人になれる上に、相続税額を大幅に軽減する特例制度も設けられています。

★参考記事:配偶者は 相続税 負担なし?配偶者控除の良い点と注意点

 
このような配偶者への減税措置は贈与税にも設けられています
制度の内容としては、配偶者へ贈与する財産が「自宅」であったり「住宅の購入資金」であった場合、贈与税が最大で2,000万円まで非課税になるというものです。

非課税額が高額な部分が魅力的に見えますが、夫婦の婚姻歴が20年以上である等、適用には細かい要件を満たさなければなりません。

また、この特例は使っても節税効果の薄い制度となっています。
本コラムを読めば、制度のメリットとデメリットがご理解頂けると思います。

是非、最後までご覧ください。

 

生前贈与における配偶者控除

生前贈与の配偶者控除とは、配偶者に対し贈与される財産が「居住用の不動産」もしくは「それらの購入を目的とした資金」だった場合、2,000万円まで贈与税が非課税となるものです。

受贈者と贈与者の関係が婚姻期間20年以上の夫婦に限定されるので、「おしどり贈与」とも言われます。

 

控除制度の要件

(1)夫婦の結婚期間が20年以上あること

 
受贈者と贈与者は夫婦であり、結婚期間(=婚姻歴)20年以上が条件となります。
婚姻関係は戸籍上のものでカウントされます。内縁の関係では対象になりません。

また、結婚期間のカウント方法については、1年未満の月数は全て切り捨てます。
よって、期間が19年8ヶ月等であれば、要件を満たしません。(入籍日から1日でも足りなければ、非対象です。)

 

(2)贈与財産は居住用不動産もしくは取得資金

 
対象となる贈与財産は以下となります。

 
不動産そのものであっても、購入資金で合っても大丈夫です。
ただし、ローン返済を目的とした資金は該当しないので注意しましょう。

不動産は土地でも良いですが、制度適用する場合、下記のいずれかの条件に該当する必要があります。

 

(3)居住期間が決まっていること

 
贈与された住居には配偶者が実際に住まなければなりません
不動産には贈与があった翌年の3月15日までに引越しを済ませ、その後もずっと住み続けなければなりません。

つまり、配偶者が住む予定のない家や賃貸アパート等は駄目ということです。
贈与後に対象の不動産を売却した場合も制度は適用されません。

 

メリット

(1)生前のうちに財産譲渡が可能

 
贈与税の配偶者控除では最大2000万円まで控除枠があります。
この枠内であれば無税で財産譲渡ができます。

同制度を利用することにより、生前のうちに配偶者へ高額の財産が渡せます。
また、相続では手続きが多いですが、贈与では贈与税の申告のみを行えば譲渡が可能です。

 

(2)相続税の加算がない

 
生前贈与では原則相続開始から3年前までの贈与は、相続税の課税対象になります。
しかし、この配偶者控除は、その対象から外れます

なので、贈与のタイミングも自由にできるメリットがあります。

 

デメリット

(1)税務署への申告が必須

 
非課税枠内で贈与したとしても、税務署に必ず申告書を提出しなければなりません

申告義務があるのは受贈者で、贈与の翌年2月1日から3月15日までの間に申告が必要です。

 

(2) 一生に1度しか使えない

生前贈与で配偶者控除を使えるのは生涯一度だけです。

贈与を数回に分けることはできません。適用できるのは初回の贈与のみとなります

 

(3)不動産取得税や登録免許税がかかる

 
贈与で不動産を渡す場合、不動産取得税や登録免許税がかかります。
不動産取得税は不動産価格の4%(2021年3月31日までに取得した土地・住宅については3%)、登録免許税は2%が課税されます。

ちなみに、相続での不動産引き継ぎであれば不動産取得税はかかりません
そして、登録免許税は0.4%まで下がります

 

(3)節税効果は低い

 
生前贈与における配偶者控除は節税から言えば、効果が低いと言えます

理由としてまず、相続での配偶者控除は最低でも1億6,000万円まで非課税枠があるからです。つまり、相続だと配偶者はほぼ無税(財産総額にもよりますが)で自宅を引き継げるわけです。2000万と比べると、無税にできる金額が全然違います。

また、相続では小規模宅地等の特例を使えば、330㎡まで土地の評価額を最大80%減額できますし、そもそも、相続税の基礎控除額も3,600万円以上あるのです。

こうやって見ると、生前贈与で自宅を配偶者にあげなくても、相続税の控除制度を活用した方が税額は大幅に抑えられて、お得と言えます。

 

活用する場合の判断基準

(1)生前のうちに自宅をあげたい

 
ご自身が存命のうちに財産を渡せること=確実性があることが生前贈与の強みです。

税額等を気にしないのであれば、制度を利用する価値があるでしょう。

 

(2)財産の大半が不動産

 
財産割合に不動産が多い場合、相続税を払うための現金が少なすぎて、納付が困難になる可能性があります。
その場合、生前贈与で住宅を贈与しておけば、相続税の負担を軽減できます。

ただし、配偶者控除や小規模宅地等の特例によって、配偶者には相続税がかからないケースが多いです。
よって、活用前には相続時の税金もシミュレートした上で行いましょう。

 

まとめ

本コラムによって、生前贈与における配偶者控除のメリットとデメリットがご理解頂けたかと思います。

控除額は高いものの、節税効果は低いのが同制度の特徴です。
活用については十分に検討してください。判断に迷う場合は、専門の税理士への相談を推奨します。

 

 


 
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相続では様々な事情で相続人が財産を取得できない場合があります。

財産取得できないケースとしては、「相続放棄」があります。これは相続人が自ら「財産を取得しないこと」を選択し、相続権を手放す行為です。

相続放棄は自発的な行為ですが、そうではないパターンとして「相続廃除」と「相続欠格」があります。
相続廃除と相続欠格においては、被相続人や他の相続人が該当の相続人の資格を剥奪するので、相続放棄とは大きく異なります。

 

相続廃除について

(1)概要

 
相続廃除は、相続権を持っている方を相続から外す制度です。
この制度が利用できるのは被相続人のみです。

廃除されるのは、被相続人へ虐待や重大な侮辱を加えるなど、著しい非行をした推定相続人(相続時に相続人となるべき方)です。
廃除が確定すれば、相続権を失います。

廃除が妥当かどうかは、家庭裁判所が判断します。

廃除されるのは、その被相続人が関わる相続のみです。
父親の相続について廃除が確定しても、母親の相続については相続権を失いません。

 

(2)対象となる推定相続人

 
相続廃除の対象者は、遺留分権を持つ推定相続人です。

そのため、被相続人の配偶者や子供(孫)・父母(祖父母)のうち推定相続人となる方が対象です。
被相続人の兄弟姉妹には遺留分権が認められていないので、非対象です。

なお、相続廃除は代襲相続権に影響しません
父親の相続で長男が廃除されても、長男の息子は代襲相続が可能です。

 

(3)廃除成立の要件

 
前述した推定相続人が被相続人に対して以下の行為があった場合、相続権が剥奪される可能性が高くなります。

 
これらの行為が認定され、かつ廃除が妥当であると裁判所が認めれば、該当の相続人の権利が失われます。
注意したいのは、上記行為があった事実だけでなく、廃除が妥当なレベルだと判断されなければ、廃除は成立しないという点です。

 

(4)手続き

 
相続人廃除は被相続人が生前に行う「生前廃除」か、死後に遺言で指定する「遺言廃除」があります。
廃除は、被相続人のみが利用できる権利なので、相続人が他の相続人を廃除することはできません。

なお、遺言廃除をする場合は必ず遺言執行者を指定しましょう。
遺言執行者は被相続人に代わって家庭裁判所への申し立てを行います。

相続人が複数の場合、書類の収集や署名押印手続などが他の手続きで手一杯となりますが、遺言執行者を指定していれば、執行者が相続人代表として手続きを進められるので、安心です。

 

(5)取り消し

 
相続廃除は取り消し可能です。取り消しは家庭裁判所が廃除の申立てを受理された後でもできます。
(申立人の意思が変われば、問題なく変更の手続きができます。)

取り消しは家庭裁判所へ「相続人廃除の審判の取消し」を再度申し立てます。
この手続きは生前でも遺言でも可能です。

 

相続欠格について

(1)概要

 
法定相続人が一定事由に該当した場合、その資格を剥奪されることを「相続欠格」といいます

相続欠格が決定すると遺産分割協議に参加できない上、遺留分権もなくなります。
遺言による遺贈であっても財産取得は不可となります。

 

(2)相続欠格事由

 
相続欠格に当てはまるかは「相続欠格事由」の有無で判断されます。

相続欠格事由は、以下の項目があります。

 
これらの事由に該当すれば、何らかの手続きを経ずに直ちに相続権を失います。

なお、相続廃除と同様に、相続欠格となった相続人は相続権を失いますが、代襲相続には影響がありません

 

(3)手続き

 
相続欠格では手続きは不要です。先述した項目に該当すれば相続欠格者として、遺産分割協議に参加できなくなります。

ただし、欠格者本人が相続欠格の事実を認めていない場合、訴訟を起こす必要もあります。
(他の相続人が原告となって、相続欠格者相手に提起します。)

なお、相続を原因として不動産の名義を変更するときには、相続欠格者であることの証明書を提出しないと法務局が、登記を受け付けないので、相続登記の際に「相続欠格事由に該当することの証明書」を提出することが必要です。

 

(4)取り消し不可

 
相続欠格者は欠格事由に該当した時点で要件が成立するので、取り消しは不可です。
相続欠格者になれば、どうやっても財産取得はできません

ただし、相続放棄した場合と同様に、死亡保険金等は受け取ることができます。

 

税法上の扱い

「相続欠格」「相続廃除」が決定すると、該当者は法定相続人としてカウントされないので、基礎控除額や非課税枠に影響はありません。

この背景には、被相続人の意思などで基礎控除額や非課税枠の金額などが左右されることは課税の公平の観点から、望ましくないという考えがあります。

ただし、「相続放棄」については、その相続放棄がなかったものとして扱われるので、法定相続人としてカウントされます。

 

まとめ

相続廃除と相続欠格について解説しました。
どちらも該当すれば相続権を失いますが、代襲相続には影響しません。

また、該当者は相続人になれませんから、相続税における基礎控除額や非課税枠にもカウントされないことも覚えておきましょう。

 

 


 
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遺言書は手間暇かけて書いても、遺族の方が相続時に発見しなければ効力を持ちません。
遺言書がなければ、相続財産の分配は遺産分割協議にて決めることになります。

しかし、苦労して協議をまとめた後に遺言書が出てくるというケースがあります。
この時、遺言は協議結果とは違う内容である可能性が高いでしょう。

そうなった場合は、どちらを優先させるべきなのでしょうか。

 

遺産分割協議と遺言書の優先度

最初に答えを言いますと、遺言書は故人の最期の意思であり最大限尊重されなければなりません。
したがって、遺産分割協議の結果よりも、優先されます。

苦労して協議をまとめた後であっても、遺言書が出てくれば、基本的には遺言内容に従って財産を分割することとなります

 

状況次第では遺言に従わなくて良い場合も

遺言書内容は遺産分割協議結果よりも優先されますが、相続人全員での合意が取れた場合は遺言に従う必要はありません

強い効力を持つ遺言ですが、財産を受け取るのは残された家族ですから、それら全員が納得すれば遺産分割協議の結果を採用しても良いのです。

 

遺言に従わなければならないケース

相続人全員での合意が取れた場合は遺言に従う必要はありませんが、以下のケースでは別です。
 

(1)受遺者がいる場合

 
遺言書の中で法定相続人以外の方(受遺者)にも財産を渡す旨が記されている場合、基本的には遺言内容にしたがって分割が行われます。(受遺者の利益を侵害することになるためです。)

受遺者も遺産分割協議結果に合意するのであれば、遺言どおりに遺産を分けなくて良いです。

 

(2) 遺言執行者がいる場合

 
遺言執行者がいる状況で、遺言と異なる内容の遺産分割を行いたい場合、遺言執行者の同意も必要です。

遺言執行者は、相続人および受遺者の合意が、遺言趣旨に反しないものであれば、同意をしたとしても、執行者義務に反したとはいえないでしょう。

 

(3)遺言により遺産分割が禁止されている場合

 
遺言では、相続開始時から5年以内の間、遺産分割の禁止を指定できます。

禁止の指定がされている場合、遺産分割はできませんので、期間中の遺産分割協議そのものが無効です。

 

遺言書は早急に発見されるように工夫を

遺言書は遺言者の死亡後、遺族によって早急に発見されるのが理想です。
発見が遅れれば、相続手続きの手間も余計にかかります。そうなれば、遺族にとっては負担となります。

相続時にすぐに発見される方法としては以下のものがあります。

 
書いたら終わりではなく、相続開始時に遺族がすぐに見つけられるように手を打っておきましょう。

 

遺言書の紛失にも注意する

遺族によって早急に発見されることも大切ですが、相続までに遺言を紛失しないことも重要です。
紛失を防ぐには以下の二点の方法がお勧めです。
 

(1)自筆証書遺言の保管制度の利用

 
自筆証書遺言は作成費用がかからず、個人での作成が可能なため、採用する方が多い遺言書です。
ただし、相続開始時に発見されないことや、紛失、第三者による改ざんのリスクも高いと言えます。

これらのリスクを無くすために、法務局で自筆証書遺言を保管する「自筆証書遺言の保管制度」を利用する方法があります。
同制度では、原本が公的機関に保存されるので、紛失や改ざんのリスクがなくなる上、相続発生後の検認手続きも要らなくなります。

保管制度を利用するのであれば、保管先を遺族に伝えておくと良いでしょう。

 

(2)公正証書遺言の利用

 
公正証書遺言は、公証役場にて公証人に作成を代行してもらいます。
公証人が作成するので、様式不備によって遺言書が無効になりませんし、相続開始後の検認も不要です。

また、公正証書遺言のメリットとして原本が公証役場で保管されるので、紛失や第三者による文書改ざんの心配も不要です。
証人を用意するなど、作成に手間はかかりますが、その分受けるメリットも大きいのです。

 

相続人は遺言書の有無をしっかりと確認しましょう

相続人側も、相続手続きではまず遺言書の有無を確認しましょう。
遺産分割協議後に遺言書が出てくると、一から財産分配をやり直すことになってしまいます。

遺品を整理しつつ、遺言書が保管されていそうな場所を念入りに調べてください。

なお、遺言書を見つけたら、その場で開封せずに法律で決められた手順を守ります。
自筆証書遺言などは、家庭裁判所で検認の手続きをしなくてはならないので、注意しましょう。

検認について…検認は、裁判所が遺言書現況を明らかにして偽造・変造を防ぐ手続きです。遺言書の存在を相続人や受遺者に通達する意味もあります。検認をせずに勝手に遺言を開封すると過料の処分を受ける可能性があります。また検認の済んでいない遺言書だと、相続登記や口座の名義変更もできません。

 

まとめ

後に遺言書が見つかっても、相続人と受遺者、執行人全員の合意があれば遺産分割協議をすることは可能です。

ただし、遺言書が後から見つかると、ほとんどの場合、遺産分割はやり直しになります。
都合よく全員が「遺産分割協議のままで行こう」というのもハードルが高いからです。

遺産分割がやり直しとなれば、二度手間になるため、相続手続きを進める前に遺言書があるかしっかりと確認したいところです。

 

 


 
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「もの忘れが激しくなってきたのでお金を管理して欲しい」「入院費用などのお金を預かって欲しい」等々、ご高齢の両親からお金や金品を預かることはよくある話です。

この預かったお金はご両親のお金ですから、贈与に該当するのではないかと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

安心してください。ご両親からお金を預かっただけでは、生前贈与とはなりません。贈与ではないので、当然贈与税もかかりません。お金を自分の銀行口座に入金して保管していたとしても、同様です。

贈与とは、贈与者と受贈者の合意の下で成立する契約行為。よって、現金や預金通帳を預かって保管する行為は、贈与とは言えません。

ただし、そうは言っても、相続開始後にそれが贈与ではなかったことを第三者に示すための証拠は持っておいたほうが良いでしょう

 

預かり金をする際の対策

お金を預かる際に大切なのは、「それが預かり金だとわかるようにしておくこと」「自身のお金とは明確に分けておくこと」「使用した分の詳細な記録を残しておくこと」です。

これらの処理をしておけば、税務署から贈与と誤解されません。加えて、相続時にも他の相続人から相続財産を使い込んでいたと思われません。
 

(1)覚書の作成

 
覚書を作成しておけば、お金を預かった事実を明らかにできます。証拠となるように、必ず預ける側と預かる側の署名をしておきましょう。

文書に細かいルールはないですが、お金を預かっている旨、金額、日付を書いておきましょう。

 

(2)専用口座の開設

 
預かった現金を自身の名義の口座で保管するのであれば、専用口座を開設しましょう。手間はかかりますが、口座を別にすることで、ご自身のお金と明確に区別できます。

ご両親の通帳を預かるケースでは、「代理人カード」の発行がお勧めです。代理人カードは名義人本人に代わって、ATM等で入出金ができるキャッシュカードです。

口座名義人が手続きをした後に利用ができます。

 

(3)使用した分の詳細な記録を残す

 
預り金を使ったのであれば、使途をメモしておきましょう。領収書やレシートがあれば必ず保管してください。 使途不明金は、税務署から疑われる材料になります。

なお、預かり金を自身のために使ってしまうと、贈与税の対象です。贈与には「みなし贈与」という、双方の合意無しでも、経済的利益の享受があった場合に贈与税が課税されるルールがあるからです。

 

預けた側が亡くなった場合はどうなる

お金を預けた側が亡くなってしまった場合、残ったお金はどうなるのか。もし預けた側が生前に「使いきれなかった分はあげる」等と言われていた場合、残金は死因贈与によって、取得したことになります。

相続税法では、死因贈与で取得した財産は通常の相続財産と同様のものとなるので、相続税が課税されますが、贈与税の対象ではありません。

もし、残ったお金に関して何の取り決めもされていない場合は、相続時に相続財産として遺産分割の対象になります。

 

税務署から疑われた場合は税理士に相談を

もし、税務署から相続税に関する問い合わせがあった時には、迷わず税理士に相談してください。税務署からの問い合わせは、電話の場合もあれば、「お尋ね」というアンケート方式で行われる場合もあります。

いずれの場合も、ご自身だけで対応してしまうと、税務調査に発展し余計な税金を支払う可能性が出てきたり、心身的にも大きな負担となります。

相続税の申告を税理士にお願いしている場合には、内容の記載漏れや不備が起きる可能性は少ないかもしれませんが、税務署から問い合わせがあれば、税理士に連絡をして対応してもらいましょう。

 

まとめ

両親から預貯金等を預かっただけでは贈与税の対象にはなりません。

贈与税は、原則として、双方合意の上、財産を無償で渡された時にかかる税金です。よって、親から通帳や銀行印を預かり、口座を管理するだけであれば、贈与税もかかりません。

しかし、税務署に余計な疑いを抱かせないために、それが預り金である旨の覚書を交わしておくことが望ましいでしょう。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

遺言書では作成者が死後に財産を渡す相手を選択できます。
家族はもちろん、友人や法人でも問題はありません。

しかし、指定していた相手(受遺者)が作成者よりも先に亡くなってしまう場合もあります。
亡くなっていれば、財産取得は当然できないので、該当部分は無効となります。

この時、無効部分については遺言の書き換えで対応しますが、遺言者が認知症等で遺言能力を失っていると書き換えは不可能です
また、公正証書遺言の場合は、再び公証役場に出向かなくてはなりませんから手間となります

そんなケースに使えるのが、「予備的遺言」。
予備的遺言は、遺言者より先に受遺者が死亡しても、その子供に代襲相続させることができます。

 

受遺者が先に亡くなるとどうなるか

受遺者に指定された方が遺言者より先に亡くなられるケースはあります。
もし、受遺者が先に亡くなると、財産譲渡は行われません。(遺贈の効力が生じない。)

その受遺者が取得する予定だった財産は、他の法定相続人に帰属します。

例えば、Aさんが「友人のBに100万円を相続させる」といった遺言を書いたとします。Aさんが亡くなった後の法定相続人がCさん、Dさんで、もしBさんがAさんより先に死亡していた場合、Bさんへの遺贈は無効になり、100万円は遺産分割協議で相続人のCさんとDさんが分配を決定します。

ここで、BさんがAさんの息子だった場合(=法定相続人だった場合)も同様になります。
つけ加えるポイントとしては、Bさんに子供(代襲相続人)がいても、遺贈部分については代襲相続が行われません。

※代襲相続は相続開始前に相続人が死亡して、相続権を失った場合に、その子供や孫が相続権を引き継ぐことです。

 

予備的遺言とは

遺言書作成から相続開始まではタイムラグがあるので、受遺者が高齢の場合や、重い病気を患っている場合には先に亡くなる可能性も高いでしょう。

そんな状況を見越して、受遺者が亡くなった場合において、代わりに財産を受け取る方を指定することもできます。
この方法は「予備的遺言」と言います。

予備的遺言であれば、受遺者が先に亡くなっても、遺言書を書き直さなくてよくなります

 

予備的遺言の作成例

予備的遺言の書き方は以下のようにすれば良いです。
『全財産を息子Aに相続させる。”ただし、私と同時もしくは私より先にAが亡くなった時は、Aの子供に相続させる。”』

予備的遺言をしておけば、受遺者が先に亡くなっていても、遺言書を修正する必要がありません。
特に作成者が認知症を患っている場合、遺言書を修正できなくなる可能性もあるので、是非やっておくべきでしょう。

その他、受遺者が高齢で、遺言作成者とどちらが先に亡くなるか分からない場合も、予備的遺言は活用できます。

 

遺言作成はお早めに

遺言書があれば遺産分割も円滑に進むので作っておくべきです。
遺言書作成は高齢になってから検討される方が多いですが、できれば早めに書いておく方が良いと言えます。

というのも、病気や事故で寝たきりになる場合や、最悪の場合には死亡する怖れもあります。
そうなってしまうと、遺言を残せません。

また、認知症や脳の病気等、判断能力が著しく低下した状態で書いた遺言書は無効となってしまいます。
身体の不自由であれば遺言書は作成できますが、判断能力がなければ、作成が認められないのです。

このようなリスクを考慮すると、遺言書は早期に作成しておいた方が安心です

 

遺言書の紛失をしないために

自筆証書遺言書は紙とペンがあれば作成できますが、要件を満たさないと形式不備となり無効になります。
加えて、紛失や第三者による改ざんのリスクも出てきます。

そのため、自筆証書遺言書を作成する場合、「自筆証書遺言書保管制度」の活用も検討しましょう。
「遺言書保管所」にて遺言書が保管されるので、先のようなリスクは生じません。

また、紛失を避けるには、公正証書遺言の作成も良いでしょう。
これは、公証役場の公証人に遺言を作成してもらう方法です。

公証人が作成するため、書き間違いも起こらず、完成した時点で遺言書は有効となります。
また、保管も公証役場で行うので、紛失や改ざんの心配もありません。

 

まとめ

予備的遺言について解説いたしました。

せっかく遺言書を作成しても、受遺者が亡くなると遺贈部分は無効になります。
このような事態を避けるために、予備的遺言があります。

受遺者が高齢や病気を患っている場合等は、不測の事態に備えて予備的遺言を含めた遺言書を作ると良いでしょう。

 

 


 
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相続税には他の税金と同じように「時効」があります。申告期限から一定年数が経過すると、税務署は課税処分をすることができなくなるため、納税者側は無申告や申告額が不足していた状態であっても、相続税を払わずに済むことになります。

ただし、時効が成立するケースはあまりありません

税務署も多くの情報を持っていますので、相続税申告をしないままでいると、後々、多額の追徴をされるリスクを負うことになります

 

相続税の申告と納付の期限

相続税の申告と納付の期限は、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。

「相続の開始を知る」のは多くの場合、相続開始日と同じタイミングですから、「相続開始を知った日=相続開始日」となります。(ただし、被相続人や家族とあまり連絡を取っていない場合や、海外在住の場合、相続開始日と相続開始を知る日が異なることもあります。)

もし、期間内に申告しなかった相続財産があったり、税額の計算誤りをして申告が足りなかったりした場合、国税局や税務署から相続税の課税処分を受けることになります。

 

相続税の時効は原則5年

相続税の時効は「除斥期間」といいます。
税務署は相続税の申告義務があるのに無申告あるいは申告漏れをした方には、課税処分を命じますが、それができるのは除斥期間内となります。

除斥期間を過ぎてしまうと、税務署は課税処分を行えず、時効が成立します。

除斥期間は相続税の法定申告期限の翌日から、原則「5年」ですが、「偽りその他不正の行為」によって税額を免れ、または還付を受けた場合、除斥期間が7年になります。

ここで言う不正行為とは、税務調査に対して虚偽の回答をしたり、相続財産を故意に隠蔽したり、脱税行為等の行為を指します。
「相続税の申告義務を認識していた」ことが税務署側から見て明らかであるような場合、除斥期間は7年まで延長されると覚えておきましょう。

時効の起算日は、相続税の申告期限の翌日からです。
前述したように、相続税の法定申告期限は相続開始を知った翌日から10ヶ月なので、その時点から5年(もしくは7年)が除斥期間となります。

例えば、相続開始が令和4年1月1日の場合は、法定申告期限は同年11月1日です。
除斥期間はそこを基準とするので、令和9年11月1日(もしくは令和11年11月1日)となります。

 

逃げ切れる可能性は低い

税務署もプロですから、相続税に関する調査能力は非常に高く、被相続者の死亡情報から預貯金の移動までおおよそ全て把握できています。
かなりの年月を遡った範囲まで確認できるので、無申告や申告漏れは基本的に発覚します

よって、時効が成立することはほぼありません
大半が税務署に知られて、高額の税金を支払わされます。

金融機関を使わず自宅に現金を保管する「タンス預金」ならば大丈夫と考える方もいますが、税務署は口座の入出金履歴を確認できるので、多額の使途不明な出金が見つかれば、税務調査が入ります。

タンス預金が税務調査で見つかった場合、悪質と判断されれば、より重い追徴を課される可能性も高くなります。

 

追徴税の種類

申告及び納付をしないままでいると、延滞税や加算税といった追徴が行われます。
 

①無申告加算税(税金の申告を期限内に行わなかった)
税務調査の事前通知前に期限後申告書を自主的に提出…一律5%
税務調査の事前通知以後に期限後申告書を提出…50万円まで10%、50万円超の部分に15%
調査による更正など予知以後に期限後申告書を提出…50万円まで15%、50万円超の部分に20%

②過少申告加算税(本来の納税額より少ない金額を申告した)
税務署から事前通知を受けて調査前に修正申告をする…当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分に5%、それらを超える部分に10%
税務調査を受けてから修正申告をする…当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分に10%、それらを超える部分に15%

③重加算税(明らかな隠匿行為等、悪質とされる場合)
相続税の申告書を提出していた場合…35%
相続税の申告書を提出していなかった場合…40%

④延滞税(相続税の支払いを延滞している場合)
延滞税=追加で納める税額×延滞税の税率×日数÷365
税率は、相続税の納付期限の翌日から2ヶ月までは年2.4%でそれを過ぎると年8.7%が課されます。(税率は令和4年1月1日から12月31日までの期間のものです。)

 
このように、通常よりも多くの税金を払うことになります。申告をしておらず、申告漏れに気づいた場合は、1日でも早く手続きをすることが大切です。

 

まとめ

相続税にも時効がありますが、残念ながら時効を迎えるケースはほとんどありません。

「このくらいなら申告しなくても大丈夫」という考えは通用しないので、ペナルティーを受ける前に一刻でも早く申告や納税を済ませたほうが良いでしょう。

手続きが難しい場合は、相続専門の税理士に相談してください。

 

 


 
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自身の子供だけでなく、孫にも相続財産を渡したいと考える方もいるかと思います。
ただし、相続税には「孫や兄弟姉妹等が財産を取得した場合、税額が2割加算となる」ルールがあります。

2割という負担は大きく、仮に相続税が500万円だった場合、2割加算によって600万円になってしまいます。

 

相続税の2割加算

相続税額の2割加算とは、配偶者や一親等の血族(被相続人の子供・親)以外が相続財産を取得した場合、本来の相続税より2割分増しで支払うという取り決めです。

2割加算となってしまう対象者は以下のとおりです。

 
逆に対象でない方は以下のとおりです。

 

同制度の目的

「どうして2割も相続税が加算されるのか」と思われますが、この制度の目的は、「相続税額の負担調整」にあります。

通常であれば、相続財産を取得すれば、相続税が発生します。被相続人の子供が財産を取得しても相続税はかかりますし、その子供が亡くなって孫が財産を相続した場合も同様です。

しかし、最初の相続で孫に財産を渡す場合、相続税が本来であれば二世代分かかるはずが、一世代分だけでよくなってしまいます。これは、いわゆる世代飛ばしになりますが、税金の負担が公平にされているとは言えないでしょう。

よって、孫など本来相続人ではなかった方などが相続財産を取得する場合、「税金を2割多めに負担する」ことで公平性を保っているのです。

 

代襲相続人の場合、2割加算の対象外

前述のように、被相続人の孫は相続税2割加算の対象となりますが、代襲相続人である場合は、加算対象から外れます
代襲相続とは、推定相続人が死亡等の理由で相続ができない場合に、その人の子供が代わりに相続人となる制度です。

代襲相続人が加算対象にならないのは、親(被相続人にとっては子供)が先に亡くなっている等の特殊な状況下で、税額を2割も加算するのは流石に可哀想だからです。

なお、代襲相続は元々の相続人に非行があって相続欠格や相続廃除で相続資格を失った場合にも認められます。
このケースで、被相続人の孫が代襲相続をしても2割加算の対象外です。

 

孫を養子にする場合は2割加算となる

孫を養子とした場合は、原則として2割加算が適用されます
養子となれば、戸籍上は被相続人の子供になりますが、実際は世代飛ばしによる財産移転になるからです。

なお、被相続人の甥や姪を養子にした場合は、2割加算の対象外になります。
加えて、相続人の人数が増えるので、その分の節税効果が高まるでしょう。

しかし、節税対策を目的とした養子制度の活用は相続人同士のトラブルを誘発する怖れもあるので注意が必要です。

トータルの相続税が下がったとしても、分割する際には人数が増えた分だけ一人の取り分は少なくなる上に、相続人にとって関係性の薄い人物であれば気持ちの問題で良いものとは言えません。
養子を検討される際には、十分に家族間で話しあうべきです。

 

相続税額の2割加算の計算方法

相続税額の2割加算の計算式は以下のとおりです。

各相続人の税額控除前の相続税額×0.2=相続税額の2割加算で加算される金額

例えば、被相続人の兄が相続人となり、税額控除前の相続税額が1,000万円の場合、1,000万円×0.2=200万円とトータルで1,200万円の相続税が課税されます。

他に、税額控除できる項目がある場合は1,200万円から差し引きとなります。

 

遺言は2割加算を想定しておく

遺言書を作成する場合には、2割加算による相続税の負担を考慮すべきです。
2割加算が起こると、相続ではなく贈与する方が良い場合もあるからです。

他の相続人とのバランスもありますが、2割加算の相続税を十分に払える(負担の少ない)内容で残してあげることが大切でしょう。

 

まとめ

税の公平性を保つために、相続税では税額が2割加算となるルールがあります。

対象となる方が相続人となる場合や、遺言で受遺者を指定する場合は、その点に注意しましょう。

 

 


 
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