相続では、遺産はいったん相続人全員の共有となります。相続人間で遺産を分けるためには、遺産分割の方法を決めなくてはいけません。遺産分割の方法は四つありますが、それぞれの方法にはメリットもデメリットもあるため、どの方法にするかは慎重に検討しましょう。

前回のコラムでは現物分割と代償分割は前編で解説しましたので、本件では「換価分割」「共有分割」の二つの方法について解説します。

★参考記事:遺産の分割方法とは 各分割方法の違いとは 前編【 現物分割・代償分割 】

 

換価分割

換価分割とは財産を一度売却し、その売ったお金を相続人間で分割する方法です

財産がお金に換えられるので、公平な分割方法と言えます。また、現金が手に入るため、納税の資金を確保できるメリットもあります。相続税は原則として現金納付なので、相続する財産が不動産等に偏っていて、現金が少ない場合に便利です。

また、活用する予定のない土地や建物を相続した場合、固定資産税や維持管理費がかかります。使わない以上、それらは無駄な負担金になりますから、換価分割によって処分してしまう方が良いとも言えます。

 

(1)メリット

 

  • 納税の資金を用意できる
  • 公平な遺産分割ができる

 
換価分割は財産を現金化するため、相続税の納税資金として活用することもできます。

相続税の納付は現金での納付が原則です。例えば、相続財産の中身が土地や建物しかなく、遺族の方に十分な資金がない場合、相続税の支払いが遺族にとって大きな負担になるケースもあります。

その点、換価分割は分割過程で現金化されるので、そのお金を納税資金にできます。

また、財産を現金化するので、分配は1円単位で可能です。よって、公平性のある分配方法とも言えるでしょう。

 

(2)デメリット

 

  • 財産を売却する必要がある
  • 売却で税金などがかかる

 
換価分割では、財産を一度売却しなければならないので、そのまま残すことはできません。住宅や形見の品など、売りたくないものは換価分割すべきではありません。

なお、売るにしても売却価格が希望値で売れる保証もありません。駅から遠かったり、使い勝手の悪い土地であれば、売値も下がります。

また、相続税の納付期限までに売れない場合もあります。そうなれば、納税資金が確保できない可能性もあります。

加えて、注意したい点として、不動産の売却については、手数料などの諸々の費用がかかりますし、税金が課される可能性もあります。

不動産は売却価格から利益がでれば課税所得として所得税の対象になるからです。譲渡所得税が生じれば、換価後の現金を受け取った相続人全員が確定申告をする必要があり、同時に住民税も増額となります。

 

共有分割

相続における共有分割とは、故人の土地や建物を複数の相続人で共同所有する(共有名義とする)方法です。

法定相続分に応じ、それぞれの持分を決めて、名義変更(相続登記)をするのが基本のパターンです。例えば、相続人が長男と次男の2人なら、それぞれ2分の1ずつの共有名義とします。
 

(1)メリット

 

  • 公平な遺産分割ができる
  • 該当の財産を残せる

 
共有分割におけるメリットは公平性です。不動産は分割が難しい財産ですが、共有すれば平等な遺産分割となります。また、換価分割とは違って、該当の財産を売らずに残せることも大きなメリットです。

取得する不動産が賃貸用の物件であれば、家賃収入についても持分に応じて平等に分配が可能です。

 

(2)デメリット

 

  • 相続が起きれば権利が細分化されていく
  • 売却に同意が必要となる
  • 単独所有とすることも難しい

 
通常では相続が起きる度に、遺産は分割されていきます。不動産で考えると、その所有の権利も細かく分配されていきます。となれば、権利関係者が増えて、内容が複雑になってしまいます。

例えば、一次相続で長男と次男が土地を半分ずつ共有したとします。その後、どちらかが亡くなると配偶者や次世代の子供達(被相続人にとって孫)で持分を分割することになります。それが数回繰り返されれば、共有者が増えていきます。

共有者は多ければ多いほど、権利関係を複雑なものにしてしまいます。
不動産の売却には名義者全員の同意が必要になりますが、関係者の数が多いと、まとまらずにトラブルに発展しやすいのです。

自身の持ち分を売却する「一部売却」も可能ですが。不動産全部を売却するよりも、土地利用などがしにくくなるので、買い手が見つけにくいという欠点があります。そして、売却が成立しても相場より安くなりやすいのです。

分割の後に、単独所有に変更したくても、その際には結局共同所有者全員の同意を得なければなりません。そうなれば、遺産分割協議をやり直すことにもなるので、相当な手間です。

共有分割はデメリットの部分が大きいので、基本的には選択せずにほかの分割方法を検討することをお勧めします

 

まとめ

2部に渡って、遺産相続における分割方法を解説いたしました。

どの分割方法が最適なのかは、相続人の人数や家族構成、他の遺産状況によるので、不安な方は相続手続きの専門家にご相談してください。

専門の税理士であれば、相続税の節税対策や代理申告も可能ですから、色々と便利です。

 

 


 
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