相続税申告期限の延長はできるのか【間に合わない場合の対処も解説】
相続によって財産を取得した場合、相続税額に応じて申告と納付をします。
もし、期限までに手続きをしないと加算税という罰則を科せられます。申告しない場合は、「無申告加算税」が科せられ、納税額の50万円までの部分に15%、50万円を超えた部分に20%の税率をかけた罰金を払うことになります。
加算税を支払わなくても良いように、期限は守らなければなりません。
しかし、ケースによってはどうしても期限を守れない場合もあるでしょう。そのような場合、一定の条件に該当していると、例外的に申告の期限延長が認められます。
申告期限の延長は基本できない
相続税の申告期限は、相続人が相続開始を知った日の翌日から「10か月以内」です。(厳密には相続開始日=被相続人が亡くなった日ではありません。)
もし、11月10日に相続開始の事実を知った場合は、翌年の9月10日が申告期限になります。
なお、相続税額の納付についても同じ日です。申告と同様に期限を破れば、こちらもペナルティとして延滞税が生じるので注意しましょう。
相続税の申告期限は基本的に延長が認められません。延長を簡単に認めてしまえば、様々なケースで延長の申し出が発生し、申告期限もバラバラとなります。そうなれば公平性も無くなるでしょう。
「財産調査に時間がかかっている」「遺産分割協議が完了していない」「他の相続人との連携が上手くいっておらず書類が集まっていない」など、申告期限に間に合わない理由には様々なものがあります。
しかしながら、これらの理由では、延長は認められないのです。手続きが未完了のまま期限が過ぎると、冒頭で述べたように、ペナルティの税金を負担することになります。
間に合わない場合の対処
申告期限の延長は基本できないので、財産調査や遺産分割協議が未完了の場合は、以下の方法で対処します。
(1)申告期限内に一旦、概算申告を行う
財産調査が終わっていない場合、正しい相続税評価額もわかりません。
このような場合、とりあえず期限内に多めの金額で申告と納付をします。
多めの金額で期限内に申告と納付を済ませておけば、過少申告加算税や延滞税もかかりません。
多めに支払った税金については、後に相続財産が確定された際に還付請求すれば、返してもらえます。
(2)申告期限後3年以内の分割見込書で未分割申告
遺産分割協議が完了していない場合には、一旦、財産を法定相続分で分割したとして未分割の相続税申告書を作成し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して税務署に申告します。
後に遺産分割が確定したら改めて還付請求や修正申告をして、相続税額を調整します。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に遺産分割が決着すれば、各種の相続税控除の特例も使えるようになります。
例外的に申告期限を延長できる場合も
相続税申告は例外的に、最大で2ヶ月間の延長にできるケースもあります。
(1)相続人の異動があった
相続人の異動とは、相続人の人数が変更されることです。
相続人数が変わるのは、相続人本人の問題行為で相続廃除や相続欠格となって相続権を失ったり、生死不明で失踪宣告を受けた場合などです。
また、母親のお腹にいる胎児は相続権が認められています。
そのため、相続人に胎児がいる場合は、生まれたときから2ヶ月の延長が認められます。
(2)遺留分の侵害額請求があった
遺留分は、法定相続人に認められ、最低限の遺産を取得する権利です。
遺留分について調停や訴訟が行われている場合、相続税申告の有無が確定できませんし、遺留分が認められると、各相続人の申告内容も変わるため、申告期限が延長されます。
(3)遺贈に係る遺言書が見つかった
遺言書では法定相続人以外にも遺産を取得させることができます。
申告期限の直前になって遺言書がみつかり、相続人とは別の第三者の方へ遺贈する旨の記載があった場合、各相続人が負担する相続税額も変わり、申告書の作成もやり直さなければなりません。
また、受遺者についても期限内の申告手続きは難しいとみなされ、申告期限の延長が認められます。
まとめ
相続税申告期限の延長は基本できませんが、例外的に延長が認められる場合もあります。
ただし、相続廃除や欠格によって相続人数が変動するケースや、遺贈に係る遺言書が申告の直前になって見つかるケースはそんなにありません。
そのため、延長を前提に考えず、あくまで期限内に手続きを終えましょう。
申告期限に間に合わなくなりそうな場合は、専門の税理士に相談してください。
専門の税理士であれば、正確かつ素早く手続きを完了できるからです。
相続税の申告期限は10か月ありますが、決して十分な時間ではありません。
特に、自分で相続税申告を行う方は、しっかりスケジュールを調整して進めていかなければ難しいでしょう。
安全に手続きを終えるなら、税理士に相談されることをおすすめします。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。