– 香典は 相続税 の対象? –

人が亡くなれば、葬儀が行われますが、葬儀費用は故人の相続財産から差し引くことが可能です

というのも、「葬儀費用は故人(被相続人)が自分で支払うもの」という考えに基づきます。
死後に発生する葬儀代は相続人が負担する債務ではないし、社会通念上、死後の葬儀は当然のこととされていますから、それらにかかる費用は必要経費として相続財産から差し引くことができるわけです。

しかし、葬儀の時に受け取る「香典」はどうでしょう。
葬儀費用が相続税の対象外と知っていても、香典についての取り扱いについては知らない方も多いかと思われます。

そこで、本記事では、葬儀の際に受け取る香典について解説していきます。
また、控除可能な費用として葬儀費用に何が含まれるかも併せて解説していきます。

 

香典には相続税がかからない理由

葬儀やお通夜で受け取る香典は相続財産になるのでしょうか。
結論を言うと、香典は相続財産には含まれませんし、相続税の対象でもありません

と言うのも、香典はご家族を亡くされた遺族の負担を少しでも軽くするよう、参列者の方々から喪主に対して渡される「お気持ち」であると考えられます。
そのため、そのお金は故人に贈られるものではないのです。

これらの考えから香典は故人の財産=相続財産に含まれることはなく、相続税も課税されないのです。
相続財産ではないので、遺産分割の対象でもありません。)

なお、贈与税に関しても香典は非課税対象です

贈与税は、原則として贈与された全ての財産に対してかかります(非課税枠を超えて贈与された財産に限る)が、香典はその性質や目的などからみて社会通念上必要と認められるものであり、贈与税がかからないことになっています。

 

注意したい事項

(1)常識を超える高額の香典の場合

 
社会通念相当ではない、一般常識を大きく越える額の香典の場合、税法上では贈与と見なされる危険があります
(ケースによっては一時所得とみなされ、所得税が課税される場合もあります。)

社会通念相当かどうかは、金額に加えて故人もしくは喪主の地位によっても判断されます

一般のご家庭における葬儀では、香典額が大きくなるケースは中々ありませんが、社葬の場合は注意が必要です。
社葬では、故人の親族や友人知人の他に、会社の同僚や上司、取引先の方々など、多くの人が参列するため、一般の葬儀に比べて香典の総額も高くなりやすいからです。

社葬でも金額が高額の場合は課税対象となるケースもあります。
なお、喪主が法人で香典を会社の収入に計上した場合には、法人税の対象となります。

 

(2)トラブル回避のために収支は記録する

 
通夜や葬儀に参列者から受け取った香典は、「葬儀費用」や「香典返し」に使うのが一般的です。

ただし、後々のトラブルを回避するために香典の収支はしっかりと記録しておきましょう。
故人の財産から葬儀費用等を引き出したり、香典を受け取ったりすると、他の相続人から必要以上にお金を下ろしていないかなどと、疑いをかけられることがあるからです

元々、香典は喪主に送られるお金でもありますが、後の相続でのやりとりを考えれば、トラブルのきっかけを作らないことが重要です。
香典はもちろん、葬儀等で使った費用についても収支をつけておけば、安心です。

 

控除できる葬儀費用の項目とは

葬儀費用は相続財産から支払うことができますが、葬儀にかかった全ての費用が対象となるわけではありません

以下に控除対象となるものとならないものをまとめました。
 

(1)差し引けるもの

  • 遺体や遺骨の運搬費
  • 葬式や葬送費
  • 火葬や埋葬、納骨のための費用
  • お通夜にかかる経費
  • お布施や読経料、戒名料
  • その他、通常の葬式に必要な費用(会葬御礼、飲食代、交通費など)

 

(2)差し引けないもの

  • 香典返しの費用
  • 墓石や墓地等の購入費用
  • 法要の経費
  • 医学上または裁判上の特別の処置に要した費用等

 
香典は相続財産ではないので相続税はかかりませんが、受け取った香典の額に応じて金品を贈る「香典返し」にかかる費用は、相続税の課税対象です。

なお、香典返しと同じ返礼品ではあるものの、会葬御礼は相続税の課税対象外となります。

会葬御礼はお通夜やお葬式に参列していただいた弔問客に対して、お礼として差し上げる品のことです。
香典返しとは違って、葬儀費用として扱えることを覚えておきましょう。

 

まとめ

通常、葬儀に関する費用は相続財産から差し引けますし、香典も相続財産には含まれません。
香典の金額も社会通念上の範囲内であれば、税金がかかることはないので安心してください。

ただし、香典返しの費用等、一部の費用は控除の対象外となることに注意しましょう。

相続税関連で迷った時は、専門の税理士に相談してください。
 

 


 
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