涼しい風が吹き始め、秋の気配が深まるこの時期。もし突然、税務署から「亡くなったお父様の相続税申告について、お伺いしたいことがあります」と電話がかかってきたら、あなたはどう感じますか?「何か申告漏れがあったのだろうか」「高い税金を払わされるのではないか」と、パニックになってしまうという疑問が浮かぶかもしれません。

国税の事務年度が7月から翌年6月であることから、一般に秋(9月から11月頃)は税務調査が本格化する時期といわれています。「うちは普通の家庭だから、税務調査なんて大金持ちの家にしか来ないはず」と考える方が多くいらっしゃいます。しかし、ここには大きな「落とし穴」が潜んでいます。相続税の税務調査は、一部の富裕層だけが対象になるというわけではありません。一般的なご家庭であっても、申告した内容に不審な点や漏れがあれば、容赦なく調査の対象となります。

今回は、秋の税務調査シーズンに向けて、税務調査で選ばれやすいケースと、北本市周辺で相続手続きをされた方がペナルティを受けないための対策について分かりやすく解説します。

税務調査とは?選ばれやすい家庭の基本ルール

そもそも、税務調査とはどのような目的で行われるのでしょうか。相続税の申告は、相続人(財産を受け継ぐご遺族)が自ら財産を計算して申告する「申告納税制度」をとっています。しかし、一般の方が複雑な財産の評価や計算をすべて完璧に行うのは難しく、意図的でなくても計算間違いや、財産の申告漏れが発生してしまうことが多々あります。税務署は、提出された申告書の内容が本当に正しいかどうかを確認し、適正な税金を納めてもらうために調査を行います。

税務署には、過去の膨大な申告データや、各金融機関の口座情報など、個人の資産に関する強力な情報収集能力があります。亡くなった方(被相続人)の収入や生前の預金残高の推移などを調べ、「この収入状況なら、もっと預貯金が残っているはずだ」と推測するのです。ご遺族が申告した財産額と、税務署が把握している情報に大きなズレがあるご家庭が、税務調査のターゲットとして選ばれやすくなります。

実際、国税庁の統計では、相続税の実地調査を受けた8割以上のご家庭で申告漏れなどの指摘を受けています。なお実地調査は原則として事前に通知され、その際に日時・場所・対象となる税目が伝えられますので、通知を受けたら慌てずに税理士へご相談ください。

【参考】
税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)|国税庁
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan.htm

令和6事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_chosa/index.htm

ここに注意!税務調査で狙われる「落とし穴」とペナルティ

税務調査官がご自宅にやってきたとき、彼らはどのようなポイントを重点的にチェックするのでしょうか。特に一般のご家庭が陥りがちな3つの注意点について解説します。

(1)名義預金(配偶者や子供名義の通帳)の判定リスク

 
申告漏れが見つかった相続財産のうち最も多いのは「現金・預貯金等」で、有価証券や土地を上回っています。その中核となるのが「名義預金」と呼ばれるものです。名義預金とは、口座の名義は配偶者やお子さん、お孫さんの名前になっているものの、実質的には亡くなった親がお金を出し、通帳や印鑑も管理していた預金のことです。「家族のために良かれと思って、子供名義の口座に少しずつお金を貯めていた」と考える方が多くいらっしゃいますが、これが大きな問題となります。税務署は、「名義が誰か」ではなく「実質的に誰の財産か」で判断します。具体的には、①その資金を誰が出したか②通帳や印鑑を誰が管理していたか③名義人本人が贈与を認識し自由に使える状態だったか、という点から判定されます。親が勝手に貯めていたお金であれば、それは「亡くなった親の財産(相続財産)」とみなされ、相続税申告に含めなければなりません。ここから漏れていると、税務調査で厳しく指摘されることになります。これを防ぐためには、生前贈与の手続きを正しく行い、贈与契約書などの客観的な証拠を残しておくことが不可欠です。

【参考】
名義預金は相続税の課税対象になってしまう必要な対策とは
https://souzoku-sanguu.com/2024/08/21/861/

税務署に否認されない生前贈与の方法【追徴課税を避ける】
https://souzoku-sanguu.com/2022/08/17/408/

(2)タンス預金や直前の引き出しの指摘

 
「銀行に預けたままだと口座が凍結されてしまうから、親が亡くなる直前に現金を引き出しておいた」というケースも非常に多く見受けられます。また、引き出した現金を自宅の金庫などに保管しておく、いわゆる「タンス預金」にしている方もいらっしゃいます。「現金にして手元に隠しておけば、税務署にはバレないだろう」と思われがちですが、税務署は過去数年分の口座の入出金履歴をすべて把握しています。「亡くなる直前に引き出された500万円は、何に使いましたか?手元に残っていませんか?」と確実に追及されます。葬儀費用や病院代として使ったのであれば、必ず領収書を残して証明できるようにしておかなければなりません。使わずに残っていた現金は、当然ながら相続財産として申告する必要があります。
なお、葬式費用として相続財産から控除できるのは、通夜・火葬・埋葬・納骨の費用や読経料などです。香典返しの費用、墓石や墓地の購入費、初七日以降の法事費用は控除できません。領収書を残すだけでなく、控除できる費用かどうかの区分も必要です。

【参考】
No.4129相続財産から控除できる葬式費用|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm

(3)調査で指摘された場合の重いペナルティ(加算税・延滞税)

 
もし税務調査によって申告漏れや財産隠しが発覚した場合、本来納めるべきだった相続税を追加で支払うだけでなく、重いペナルティが科されるという点には注意が必要です。単なる計算ミスや申告漏れと判断された場合は「過少申告加算税」が課されます。しかし、意図的に財産を隠したり、証拠を偽造したりしたような悪質なケースと判断されると、最も重い「重加算税(追加本税の35%〜40%)」が課されることになります。さらに、過去5年内に同じ税目で無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、10%が上乗せされます。
これに加えて、本来の納付期限からの遅延に対する「延滞税」も上乗せされます。令和8年中の延滞税は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降は年9.1%です。令和7年までは年2.4%/年8.7%でしたので、今年から引き上げられている点にもご注意ください。

ただし、救済の余地もあります。調査の事前通知が届く前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。通知後であっても、調査で指摘される前なら5%(一定額を超える部分は10%)に軽減されます。「申告内容に不安がある」と感じた時点で早く動くほど、負担は確実に軽くなります。

【参考】
相続税で一番怖いペナルティで「重加算税」とは【追加負担35~40%】
https://souzoku-sanguu.com/2026/03/18/1325/

延滞税の割合|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm

No.2026確定申告を間違えたとき|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm

税務調査の不安は一人で抱え込まず、北本市の相続専門税理士へご相談を

今回は、相続税の税務調査で狙われやすいケースや、申告漏れによるペナルティについて解説しました。「うちの申告内容は大丈夫だろうか」「税務署から連絡が来たらどう対応すればいいか分からない」という不安を抱えている方も多いでしょう。税務調査官からの鋭い質問に対して、一般の方が適切に答えるのは非常に困難であり、言わなくてもいいことまで話してしまい、不利な状況に追い込まれることもあります。
正しい財産の評価や、漏れのない申告書を作成するためには、専門的な知識が不可欠です。万が一税務調査が入ることになった場合でも、相続手続きに強い税理士が立ち会うことで、税務署との交渉を有利に進め、ご遺族の精神的な負担を大幅に軽減することができます。
「過去に申告した内容を見直したい」「これから相続税の申告を控えている」という方は、一人で抱え込まず、まずは相続の専門家である当事務所までお気軽にご相談ください。当事務所では、年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が親身に対応させていただきます。初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

【参考】
相続税申告内容が間違っていた場合の対応方法とは【訂正申告・修正申告】
https://souzoku-sanguu.com/2024/12/18/951/

よくある質問

 

Q:税務署から調査の連絡が来たら、日程を変更してもらうことはできますか?

A:合理的な理由があれば協議は可能です。実地調査は原則として事前通知が行われ、その際に日時・場所・対象となる税目などが伝えられます。税理士に税務代理を依頼していれば税理士にも通知されるため、税理士を通じて日程調整や立ち会いの手配ができます。

Q:申告に漏れがあったと自分で気づいた場合、どうすればいいですか?

A:調査の事前通知が来る前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。通知後でも調査で指摘される前なら5%(一定額を超える部分は10%)に軽減されます。ただし延滞税は別途かかるため、気づいた時点で早く動くほど負担が軽くなります。

Q:相続税の税務調査は、申告してから何年後まで来る可能性がありますか?

A:税務署が更正・決定できる期間は原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年とされています。実務では申告の1〜2年後に行われるケースが多いといわれますが、この期間内であれば数年後の調査もあり得ます。

Q:税務調査を受けにくくする方法はありますか?

A:税理士法第33条の2の「書面添付制度」を利用する方法があります。税理士が申告書をどう作成したかを記載した書面を添付すると、調査通知の前に税理士への意見聴取が行われ、そこで疑義が解消すれば実地調査に至らない場合もあります。ただし調査の省略が保証される制度ではありません。

Q:亡くなる直前に引き出した現金を葬儀に使った場合、全額を控除できますか?

A:全額ではありません。通夜・火葬・埋葬・納骨の費用や読経料は控除できますが、香典返しの費用、墓石・墓地の購入費、初七日などの法事費用は控除できません。領収書を残すだけでなく、控除できる費用かどうかの区分も必要です。