相続税対策として活用される「生前贈与」。
しかし、前回のコラムで述べた通り、生前贈与の非課税枠は将来的に使用できなくなる可能性があります。

★参考記事:暦年贈与は使えなくなる?今後の生前贈与対策について

 
そのため、生前贈与の利用は早めにするべきです。
ただし、やり方を間違えると税務署から贈与を否認されて、相続税が課税されてしまう怖れもあります。
 
生前贈与には成立要件があり、以下のポイントを意識しておかなくてはなりません。

  • 贈与側と受贈側の双方の意思表示
  • 贈与を受けた側が財産を自由に使える
  • 贈与者が亡くなっても、受贈側が贈与行為を証明できる

贈与は契約行為ですので、受け取る側が贈与について知らなかったり、了承していなければ無効となります。
必ずお互いの合意の上で行わなければなりません

また、受け取った財産は受贈者が自由に利用できるようにしておきます。
例えば、贈与金を管理する口座の通帳も印鑑も親が持っていて、子供がおろせないといった状況では、その口座は実質的には親のものと見なされます。

親のものであれば、贈与はなかったものとなり、相続時に相続税の対象となります

 

対策1:贈与の度に契約書を作成

お互いの合意があれば贈与は成立するので、原則として契約書は不要です。
では何のために契約書を用意するかというと、贈与者が亡くなった時に、客観的に贈与があった事実を証明するためです

贈与者がいなくても、証拠の書類があれば、税務署も贈与を否定できません。
よって、贈与の度に契約書を作成しましょう。

なお、贈与契約書の書式は決まっていません。
しかし、以下の項目は書類に記載した方が良いでしょう。

  • 贈与者および受贈者の署名と押印
  • 贈与する財産の内容
  • 贈与の条件
  • 贈与の方法

 
実印でなくとも贈与契約書は有効ですが、信頼性が高まるので契約書には実印を押印することを推奨します。
また、確定日付を取ることも良いでしょう。

確定日付とは変更のできない確定した日付のことで、その日にその証書が存在していたことを証明するためのものです。
確定日付は一件について700円にて公証人役場で押してもらうことができるので、可能な場合は手続きをしましょう。

 

対策2:毎年同額の贈与は避ける

毎年同じ額を渡していると定期贈与とみなされるリスクがあります。

定期贈与とは毎年一定の金額を贈与することがあらかじめ決まっている贈与です。
(1,000万円を100万円ずつに分けて10年間贈与するという取り決めで、贈与を行った場合などが該当します。)

暦年課税方式では年間110万円まで非課税となります。
しかし、毎年同じ110万円を同じ日に贈与し続けると定期贈与の契約関係があると見なされて課税対象となる場合があります。

よって、贈与を行う日程や金額については、できる限り変更してください。

 

対策3:受贈者側が通帳や印鑑の管理を行う

贈与の成立要件として、贈与した財産は受贈者が自由に使えなければなりません。

そのため、預貯金を子供や孫に贈与する場合、通帳や印鑑は受贈者側で管理しましょう。
もちろん口座の名義も受贈者のものにしてください。

 

対策4:通帳の運用は受贈者が行うこと

受贈者名義の口座にお金が振り込まれても、そのお金が長い間手付かずの場合、実質の所有者は贈与側ではないかと疑われる場合があります。

そのため、生前贈与を行う際には、受贈者が現在運用している口座に振り込む方が良いと言えるでしょう。
受贈者が頻繁に引き落としや預金を行う口座であれば、贈与者の管理を疑われることもありません。

 

対策5:あえて納税を行い証拠を残す

毎年の非課税枠110万円をわざと超える金額の贈与を行って、少額の贈与税を納税することも一つの対策です。
贈与税申告の手間と支払いは発生しますが、税務署に対して贈与の証拠を残すことになるからです。

ただし、贈与税の申告と納税を行ったからといって、絶対的に生前贈与が認められるわけでもありません。
前述した成立要件が守られていない場合は、贈与が否認されます。

この方法は、あくまで対策の一つであるということです。

なお、贈与税の申告書提出の際には贈与契約書のコピーを添付しましょう。
贈与契約書が生前贈与の際に作成されたものであるという証明になります。

 

まとめ

生前贈与を税務署に否認されない方法について解説いたしました。
生前贈与は相続税対策として取り組みやすい手段ですが、無効になってしまうケースも少なくありません。

もし、生前贈与が否認されると、多額の相続税が課税されてしまうので、かえって損をすることになってしまいます。
合意はあったか、受贈側が自由に使えるのか、何よりその行為が贈与であったか証明できるのか、諸々の要件をクリアするために正しい方法で行いましょう。

 

 


 
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