「遺言書」が存在しない相続では、遺産の配分・分割方法は相続人全員参加の遺産分割協議で話し合います。

スムーズにいけば、各相続人の取り分は、「法定相続分」によって決まります。しかし、誰がどの遺産を取得するのか等、細かい部分を決める段階で揉める可能性はあります。

遺産分割を円滑かつ円満に進めるには、やはり遺言書があった方が良いと言えます。遺言書があるから遺族同士の争いが絶対に起きないとも言えませんが、財産配分等の手続き自体はかなりスムーズになるでしょう。

遺言書は故人の最期の意思であり、相続では強い効力を持つためです。

この遺言書は遺言者様が高齢になられてから、作成の検討をするケースが多いです。しかし、遺言はできるだけ早めに書いておく方が、メリットもあって良いのです

 

早いうちに遺言を作るメリット

早期に遺言書を作るメリットは以下の二点です。

  • もしもの事態に備えるため
  • 遺言者の判断能力があるうちに作るため

遺言を書こうとしても、病気にかかってしまう、交通事故に遭う、自然災害などに巻き込まれてしまう場合もあります。そこで、運悪く命を落としてしまうと、遺言を残すことができません。

人生では何が起きるか予測できないので、万が一のことを考えて、遺言を書いておくのです。遺言書を残しておけば、ご自身の意思をご家族に残せるでしょう。

また、遺言書は意思能力・判断能力がある状態でなければ書けません。

例えば、加齢を原因とした認知症や脳の病気等で遺言能力が著しく低下してしまうと、その状態で書いた遺言は無効となる可能性が高くなります。(遺言能力の有無は、医師の医学的判断を尊重しつつ、最終的には裁判官の法的判断で決められます。)

身体的な不自由でも遺言作成はできますが、意思能力・判断能力がないと遺言は書けないのです。このようなリスクもあるので、遺言は早めに作成しておいた方が安心と言えます。

 

遺言書は15歳から書ける

遺言作成は民法961条で「15歳」から可能とされています。遺言作成には遺言能力が必要ですが、民法ではその能力が備わるのが15歳となっているのです。

よって、成人でなくても遺言を残せるのです。

海外派遣等、危険な地域で仕事をされる方は、若い時から遺言を残すケースがあるようです。

 

遺言書は撤回・変更が自由にできる

遺言書を何回も書きたくないという理由で、作成を渋る方がいます。

しかし、遺言書は作成した後で何度でも書き直せますし、撤回や変更も簡単にできます。遺言書は日付が新しいものが優先されるので、考えや財産・家族状況が変われば、その時に書き直せば、撤回・変更が完了します。
 

    ■遺言書の撤回・変更の方法(共通)

  • 撤回のみしたい場合、以前の遺言を撤回するという旨の遺言を作成する
  • 内容を変更したい場合は、新しい遺言書を作成する

    ■自筆証書遺言の場合

  • 手元に自筆証書遺言がある場合は遺言書を破棄すれば撤回となる
  • 変更したい場合、修正前の内容が読めるように該当箇所に二重線を引き、その付近に修正文言を記載する

    ■自筆証書遺言の場合(保管制度利用の場合)

  • 法務局で原本が保管されている場合、撤回書を作成し、法務局に提出をする
    (この作業は、原本を破棄したい場合。新しい遺言書を作成すれば、古い遺言は無効になる。)

    ■公正証書遺言

  • 撤回の申述を公証役場でする
    (あくまで原本を破棄したい場合の作業。新しい遺言書を作成すれば、古い遺言は無効になる。)

 

最適な遺言を選択すること

ここまで読んだ方は、遺言書の早期作成のメリットが分かったかと思います。遺言を作る気になった場合、作成の前にご自身に合った遺言書の種類を押さえておく必要があります。

遺言書も三つの種類があり、作成ルールも異なります。また、それぞれにメリットとデメリットもあります。

代表的な遺言書は「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」です。

自筆証書遺言は、お一人で作成可能ですが、形式の不備で無効となる場合や、保管による問題で紛失する可能性が高いのです。第三者に不備を確認してもらうことは大丈夫ですが、本文の代筆はNGです。(財産目録のみ可。)

公正証書遺言は、公正役場で公証人が遺言者と内容を話し合った上で作成するので、不備は起こりません。原本も公正役場にて保管されるので、紛失や変造といった怖れもありません。

ただし、作成の費用がかかること、証人2人を用意する手間もあります。

秘密証書遺言は遺言内容を秘密にしたうえで存在のみを公証役場で証明してもらいます。パソコンでの作成や代筆が可能なメリットがありますが、作成費用が必要、証人2人を用意する手間もかかる上、保管は自身で行うため紛失リスクが高くなります。

また、公証人による内容確認もないので無効になる怖れもあります。(秘密証書遺言ははっきり言ってデメリットだらけです。)

このように各遺言書にはそれぞれの特性がありますので、それらを理解した上で最適なものを選ぶべきなのです。きちんとした人であれば、自筆証書遺言でも良いですが、それ以外の方は、自筆証書遺言の保管制度を利用したり、公正証書遺言を選択したりしましょう。

 

遺言書作成で迷った場合は専門家を頼る

遺言作成で迷った場合は、専門の税理士へサポートを依頼しましょう。

サポートを受けることで、無効のリスクを無くすことができます。ご自身で作成すると、間違いが多くなり、それによって形式不備となるリスクが生じます。専門家に内容と形式をチェックしてもらえば、誤りも無くなります。

なお、税理士のすべてが相続専門とは限りません。よって、税理士に遺言作成を依頼する場合は、相続担当件数が多い税理士を選びましょう。

税理士は税金のプロなので、相続税対策の方法も多く知っています。遺言書作成とセットで相談すれば、節税を見据えた遺言作成をサポートしてもらえます。

納税額はできる限り抑えたいという方が多いと思いますが、相続専門の税理士に依頼することで、相続で生じる税額を安くすることができます。

 

 


 
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