生前贈与の財産は2種類に分かれる それぞれの特徴とは
生前贈与とは、「生きている間に特定の誰かに財産を渡すこと」です。渡す相手は誰でも良く、配偶者や子供や孫はもちろん、友人等でも構いません。
生きている間に財産の一部を移動させれば、自身の死後に相続で引き継がれる遺産も減ります。この仕組みのため、生前贈与は相続税の節税対策として活用されます。
ただし、生前贈与でも、贈与額が一定額を超えると税金が課税されてしまいます。贈与税は相続税と比較して課税率が異なりますが、場合によっては多額の税金を支払うこともあります。
なお、贈与財産は「特例贈与財産」と「一般贈与財産」の2種類に分けられます。どちらになるかは、受贈者と贈与者の関係によって変わりますが、特例贈与財産の方は税率が低く、贈与税負担が軽くなる特徴があります。
贈与財産は2種類に分かれる
生前贈与によって取引される財産は「特例贈与財産」と「一般贈与財産」の二つに分けられます。
特例贈与財産とは、贈与者が受贈者の親や祖父母などの直系尊属であり、受贈者が18歳以上である場合に取引される贈与財産です。つまり、両親や祖父母などから18歳以上の子供や孫に贈与された財産は特例贈与財産となります。
贈与者と受贈者の条件を詳しく書くと以下の通りです。
- 贈与者…受贈者の直系尊属
受贈者…贈与者の直系卑属(養子も含まれます)かつ18歳以上
一般贈与財産とは特例贈与財産以外の贈与財産を指します。よって、前述の贈与者・受贈者の条件に該当しない財産は全て、一般贈与財産です。
特例贈与財産と一般贈与財産では税率が異なります。特例贈与財産の方が、税率が低いため贈与税の負担が軽くなります。
特例贈与財産および一般贈与財産の税率は以下です。
贈与税の計算方法
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間にもらった贈与財産の合計金額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残額に贈与税の税率を掛けて計算します。
前述のように贈与財産は2種類あります。よって、年間に父親と叔父から贈与を受けた場合では、贈与税の税率が変わるので、正しい税率をかけて計算しなくてはなりません。
■父親と叔父からそれぞれ500万円ずつ贈与された場合の贈与税計算例
- ①一般贈与財産の贈与税額を計算する
(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円
231万円×500万円÷1,000万円=115.5万円
②特例贈与財産の贈与税額を求める
(1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円
177万円×500万円÷1,000万円=88.5万円
③一般贈与税額と特例贈与税額を合計する
115.5万円+88.5万円=204万円
贈与に一般贈与財産と特例贈与財産が混同している場合、まずは、すべて一般贈与財産もしくは特例贈与財産として受け取った場合の贈与税額を計算します。そして、贈与財産の割合に応じて税額を決定します。
贈与税がかかるボーダーラインは同じ
贈与税の申告と納付義務があるのは、受贈者側です。そして、個人が年間110万円を超える財産をもらった場合、贈与税が発生するので、申告と納付が必要になります。
特例贈与財産と一般贈与財産では税率が異なりますが、贈与税が発生するボーダーラインは一緒です。
父親と叔父からそれぞれ100万円ずつ贈与された場合には、合計額が200万円となるので、前述した計算に基づいて税額を算出しなければなりません。
生前贈与の課税方式の種類
生前贈与は一般的な暦年課税の方式の他にも、特殊なものがあるので注意しましょう。
(1)暦年課税
一般的な課税制度であり、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された資産に対して贈与税が課税されます。110万円までは非課税であり、110万円を超えれば金額に応じて贈与税が課されます。
暦年課税をうまく利用して、年間に110万円ずつ生前贈与されれば、無税で財産移転が可能です。
(2)相続時精算課税
この課税方式は受贈者が選択することになっています。利用する場合、贈与金額に関わらず贈与税の申告書と相続時精算課税選択届書を税務署に提出しなければなりません。書類の提出がないと、制度適用されず、暦年課税方式での課税となります。
なお、贈与者は60歳以上の父母もしくは祖父母、受贈者は18歳以上の子供や孫でなければなりません。厳しい条件ですが、贈与税が合計2,500万円分まで非課税になります。
2,500万円を超えた場合にかかる贈与税は一律で20%となります。
この課税方式は非課税額が大きくお得に見えますが、贈与者が亡くなった時に贈与財産は相続財産と合計され、相続税が課税されます。つまり、税金の支払いを相続時にまで延ばしているに過ぎません。
なお、同制度は2024年1月から、年間110万円の基礎控除が認められています。この基礎控除枠は前述の特別控除枠(2,500万円)の対象外であり、相続時にも加算されません。
特例贈与財産として申告するには
特例贈与財産の贈与税申告書を提出する際には「贈与者と受贈者の関係を証明する書類」も添える必要があります。
受贈者と贈与者が親子の関係であるなら、受贈者の戸籍謄本もしくは抄本を添えれば大丈夫です。贈与者が祖父母の場合、受贈者の戸籍謄本のみでは情報が不足するので、受贈者の親の戸籍謄本も必要になります。
戸籍謄本は本籍地のある市区町村役場で取得しましょう。親の戸籍謄本の取得には委任状などは不要です。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。