人が亡くなった時、その故人が所有されていた財産は遺族=法定相続人同士で分割されて引き継がれます。

しかし、中には独身で兄弟もいない、両親も既に他界している等、法定相続人が全くいないケースもあります。そのような場合では、遺産は一体どうなるのでしょうか。

 

法定相続人や受遺者が存在しないケースとは

(1)身寄りが全くいない

 
法定相続人となる親族の範囲と順位は民法で決められています。

ですが、被相続人が独身者で、兄弟姉妹もおらず、両親も他界しているなら、法定相続人はいないことになります。

 

(2)法定相続人が全員相続放棄をした

 
相続放棄をすればその相続人は最初からいなかったことになります。また、相続放棄をすると、その相続人の子供に相続権が移る代襲相続はできません。

よって、法定相続人となれる範囲の方全員が相続放棄をした場合、相続人は不在となります。

 

(3)遺言書がない

 
身寄りが全くおらず、遺言書によって財産の渡し相手を指定していないのであれば、受遺者も存在しません。

なお、受遺者は遺言者が自由に選べるので、家族以外の知人や恩師、法人でも指定が可能です。

 

(4)法定相続人が行方不明の場合

 
法定相続人と全く連絡が取れず居場所もわからない場合、不在者財産管理人を立てて相続手続きをすることになります。不在者財産管理人は、行方不明者の財産を本人に代わって管理する方のことで、家庭裁判所への申し立てで選任されます。

7年以上といった長期的に行方がわからない場合や、災害に遭っている場合は、死亡の可能性が高いために家庭裁判所に失踪宣告を申し立てます。失踪宣告が認められれば、該当者は死亡したことになります。

そのため、他に法定相続人がいなければ相続人不存在になります。

 

遺産は最終的に国庫に帰属

相続人が全くいないことが確認されれば、相続財産の管理のために「相続財産管理人」が選定されます。これは家庭裁判所によって選定されますが、大抵は地域の弁護士が担当します。

この相続財産管理人が相続人や相続債権者が本当にいないか改めて捜索します。捜索しても見つからなければ、相続財産は最終的に国庫に帰属することになります

もし、捜索中に相続人が名乗り出た場合は、手続き後に財産が引き継がれます。

 

特別縁故者の存在

法定相続人や受遺者でなくても、一定要件を満たせば遺産を取得できる場合があります。

というのも、相続人がいない場合では、被相続人の身の回りの世話をしていた等の「特別縁故者」に相続財産を与えることが認められるからです。

特別縁故者に該当するかどうかは家庭裁判所の判断に委ねられますが、下記のいずれかの要件を満たしていることが必要です。

  • 被相続人と同一生計にあった
  • 被相続人の療養看護に努めていた
  • 前記2項目に準じて特別の縁故があった

 
特別縁故者がいる場合、債権者や受遺者に遺産を精算した後に、遺産が分け与えられます。

ただし、特別縁故者が遺産をもらうためには、相続人不在確定後の3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続財産分与の申し立て」をしなければなりません

 

故人の遺体は市区町村で埋葬

身寄りがない場合、故人の遺体は住所を管轄する市区町村が引き取って、埋葬を行います。法務局長の許可を得た後に、戸籍に死亡の記載が行われます。

諸々の費用は、遺産の一部から割当てられますが、不足分は市区町村が一時的に立て替え、最終的に都道府県が負担します。

 

相続手続きは誰がするのか

通常は相続が発生すると、法定相続人が手続きを進めます。しかし、相続人がいない場合はどうでしょうか。

相続人不在の場合は相続財産管理人が相続手続きをします。前述したように相続財産管理人とは遺産管理と清算を行う方です。また、清算後に残った財産を国庫に帰属させる役割もあります。

国庫に帰属するまで、被相続人の債権者や特別縁故者が見つかれば、その方々に財産を分配します。

 

遺言書の必要性

法定相続人がいない場合、基本的に遺産は国庫のものとなります。そのため、身寄りがいなくても友人やお世話になった方に財産を渡したいと考えるなら、遺言書の作成をすべきです

前述したように受遺者の指定は遺言者の自由です。つまり、遺言書があれば、親族でなくても受遺者として財産を受け取れるのです。

被相続人の療養看護に務めていた「特別縁故者」であれば、財産を受け取れなくもないですが、遺言書がある方が遺産受け取りの手続きは遥かにスムーズになります。

 

 


 
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