障害者の控除制度とは【 相続税 の節税対策】
相続が起こると相続財産の総額によって相続税が発生しますが、その相続税を減額できる控除制度がいくつかあります。
最も有名なものが基礎控除です。これは法定相続人の人数に応じて控除額が変わる制度で、全ての相続で利用できます。
基礎控除は無条件で利用できますが、適用要件を満たすことで利用可能な減額制度がいくつかあります。その中の一つに「障害者控除」という制度がありますが、これは相続人の中に障害者がいる場合にその方にかかる相続税を減額するものです。
控除の対象者は、障害者手帳を持っていたり要介護認定を受けている等、一定条件に該当する方です。要件をクリアすれば、相続開始時の満年齢に応じて相続税が減額されます。
相続税の障害者控除とは
相続税の障害者控除は、相続人が障害者の場合、相続税の納税額から一定の金額が差し引かれる制度です。
同制度は、障害を持って今後生活しなければならない相続人のために、遺産取得後の負担を軽減してあげるという目的があります。
そのため、被相続人が障害者であっても控除がされるわけではありません。
あくまで、「相続人」が障害者の場合に適用されるので注意しましょう。
また、控除額は相続財産の総額から差し引くのではなく、相続人(制度適用者)が払う相続税から直接減額されます。数式にすると「対象者の相続税額−障害者控除額=納税額」になるわけです。(遺産総額から一定額を差し引く基礎控除とは計算方法が異なります。)
なお、未成年者控除と同じように控除枠が余る場合(=該当相続人の相続税が控除額を下回る場合)、制度適用者の親や兄弟といった扶養義務者が払う相続税から余剰分を差し引くことが可能です。
扶養義務者は、本人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹の他、3親等内の親族で裁判所から扶養義務者と認められた方です。(ただし、実務では、三親等内の親族で生計を一にするような者がいれば、家庭裁判所の審判がない場合であっても扶養義務者に該当するものとして取り扱っています。)
控除額の仕組み
障害者控除における控除額は以下の条件によって変わります。
- 制度適用者(相続人)の年齢
- 「一般障害者」か「特別障害者」か
控除額の計算式は以下となります。
- 一般障害者の場合…(85歳-相続開始時の満年齢)×10万円
特別障害者の場合… (85歳-相続開始時の満年齢)×20万円
特別障害者とは、日常生活で常に介護が必要なほど重度の障害を持つ方が該当します。一般障害者の方よりも控除額は高くなります。
各控除額は、障害者が85歳になるまでの年数に10万円もしくは20万円を掛けて計算します。
満年齢でカウントするので、相続開始時点で60歳10ヶ月であった場合には60で計算します。
先ほど述べましたが、控除額が障害者の相続税額を上回る場合には、他の扶養義務者である相続人の相続税額からも控除できます。
なお、扶養義務者が複数人いる場合、いずれかで控除額を振り分けます。
- 扶養義務者全員の協議によって控除する配分を決める
- 扶養義務者全員で相続税額によって按分する
計算方法
障害者控除の計算方法について、具体例を示しながら説明いたします。
もし、制度の適用者が40歳3ヶ月の一般障害者なら、計算は次のようになります。
【10万円×(85歳−40歳)=450万円】
特別障害者の場合だと以下になります。
【20万円×(85歳−40歳)=800万円】
制度要件
制度適用には相続人が障害者であること以外にも満たすべき要件があります。
- 取得財産が相続あるいは遺贈によるものである
- 相続人本人が法定相続人であること
- 財産取得時点で日本国内に住所があること
もし、日本国内に住所がない場合、以下の両方を満たします。
- 日本国籍を有している
- 被相続人と相続人のどちらかが、相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していた
障害者に該当するかの判定基準
そもそも、障害者控除適用者の要件には「財産取得時に障害者であること」とあります。
「財産取得時」とは「相続開始時期」であると相続税法によって決まっていますから、被相続人が亡くなって相続が発生した段階と判断します。
この段階で障害者手帳を持っていれば制度適用者となりますが、障害者手帳の交付を受けていなくても医師の診断書があれば証拠書類として認められる場合があります。
- 相続税の申告書を提出する際に、障害者手帳の交付を申請中
- 障害者手帳の交付を受けるための医師の診断書や精神障害を支給事由とする給付を現に受けていることを証する書類がある
- 相続開始時において医師の診断書通りの障害があると認められる
上記の全てに該当していれば、障害者控除を利用できるので、制度利用を諦めなくて大丈夫です。
まとめ
相続税の障害者控除についての制度要件や控除額について解説しました。
相続税の障害者控除は節税効果の高い制度です。
もし、要件に該当するのであれば、相続税申告を行う際に忘れずに適用しましょう。申告方法がわからない場合は、相続税に強い税理士に相談した方が良いでしょう。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。