人が亡くなると、その人の財産は配偶者や子供などへ相続されることになります。
そして、相続によって財産を取得すると相続税が生じるので(遺産の金額によっては発生しない場合もあります)、税務署へ申告をしなければなりません。
申告には、当然ながら期限が決まっています。期限を守れない場合にはペナルティーが科せられるので、注意が必要です。
相続税の申告期限
相続税の申告期限は、「相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。
例えば、被相続人が1月1日に亡くなり同日に相続の開始を知った場合、11月1日が期限になります。仮にその日が土日・祝日などだった場合、翌日が期限となります。
なお、相続税の納付期限も同じく相続開始を知った翌日から10ヶ月以内です。納付方法は現金での一括支払いが原則です。
相続の開始日とは
相続開始日とは「被相続人が亡くなった日」です。
死亡の判断は、医師作成の死亡診断書に従うケースが大半ですが、失踪期間が長かったり、遺体が見つからない状況で死亡が認定される場合もあります。
死亡の判断がされれば、相続開始日が決まり、各種の相続手続きができるようになります。
相続開始を知った日とは
「相続の開始を知る」というのは、「被相続人の死亡と自身が相続人であるという事実を認識すること」です。
多くの場合、その二つの事実を認識するのは相続開始日と同タイミングであるので、「相続開始日=相続開始を知った日」になります。
しかしながら、法定相続人の順位が2位以下となる被相続人の父母や兄弟姉妹は、被相続人の死亡を知っても、先順位の相続人(被相続人の子供)が相続放棄等を行わないと、自分が相続人であると認識できません。そのため、必ずしも被相続人の死亡=相続開始を知った日にはならないのです。
また、長い間音信不通で遠方に住んでいたり、長期の海外旅行に出かけている場合、連絡が取れないケースがあるので、被相続人の死亡日と相続開始を知った日は同日になりません。
なお、相続開始日とそれを知った日にズレがあるかどうかの最終判断は税務署が行います。
もし相続開始日とそれを知った日にズレがあり、相続開始日起算の相続税申告期限に間に合わない場合は、その事実を税務署に知らせるために、申告書の書き方を工夫するか、証拠の郵便物やメール等を添付する方法を取ります。
特別な理由がある場合、期限延長も可能
相続税申告期限は、原則として延長できません。簡単に延長を認めてしまうと、様々なケースで申告期限がバラバラとなってしまい、不都合な事例が生じるからです。
しかし、特別な事情がある場合には、例外として最大2ヶ月間の期限延長ができます。
特別な事情とは以下の四項目です。
- 相続人の異動があった
- 遺留分の侵害額請求があった
- 遺贈に係る(相続人以外への財産譲渡)遺言書が見つかった
- 相続人となる胎児が生まれた
の4つです
相続人の異動とは、相続人の人数が変わることです。相続人の人数が変わると、各相続人の取り分が変化し、相続税の計算をし直す必要が出るからです。
他にも自己の最低限の財産取り分を主張する「遺留分の侵害額請求」があった場合には、取り分の確保が審議に時間を要するため、相続税の申告期限の延長が認められています。
申告期限を過ぎたら、多くのペナルティがある
相続税申告の期限を破ると、ペナルティーが科せられます。具体的には「申告が正しくされなかったことへの追徴課税」と「納税が遅れたことへの追徴課税」の二つです。
(1)延滞税
延滞税とは、納付が遅れた相続税に対して法定納期限の翌日から課税されます。年率で課税されるので、納税が後になればなるほど、税率は高くなります。
たとえば、令和3年1月1日から12月31日の場合、「申告期限から2か月以内は年2.5%」「申告期限から2か月経過以降は年8.8%」です。
※ 延滞税の税率は原則として、納期限の翌日から2ヶ月を経過するまでは「年7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、2ヶ月以後については「年14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となる。令和3年1月1日以降の特例基準割合は1.5%となっている。
(2)加算税
加算税とは、申告が適正にされなかった場合に課せられる税金です。相続税に関しては以下の三つのペナルティーがあります。
- 過少申告加算税…正しい申告額より金額が低かった場合に課される。税務調査の事前通知前に自主的に申告を行うと課税なし。税務署の指摘により申告を行った場合は追加納付した相続税の10%が課税される。追加で納付した相続税額が50万円と期限内に申告した相続税額のいずれか少ない方を超える場合には15%が課税。
- 無申告加算税…正当な理由がなく、期限内に申告を行わなかった場合に課される。税務調査の事前通知前に自主的に申告を行うと納付税額の5%、税務署の指摘により申告を行った場合は納付税額の15%(50万円を超える部分には20%)が課税されます。
- 重加算税…財産の仮装隠ぺいを行った場合に課税される。加算税の中でも最も重い。「申告書を提出している場合は追加で納付した税額の35%」「申告書を提出していない場合は追加で納付した税額の45%」が課税される。
まとめ
相続税の申告にも期限があり、期限内にきちんと申告と納税を済ませておかないと、延滞税と加算税を払わなくてはなりません。
「10ヶ月もある」と考える方もいますが、他の相続手続きや遺族同士の話し合いにも時間がかかるのであっという間に過ぎてしまいます。
慣れない手続きにはどうしても時間がかかるもの。不安な場合には、相続専門の税理士などに手続きを代行してもらうのも良いでしょう。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。 年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます。初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。
お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。
口座凍結とは「銀行口座から、現金を下ろすことはもちろん、引き落としや振込なども一切できなくなる状態」を指します。
被相続人の銀行口座についても、相続トラブルを避ける目的で、凍結され、原則的に取引ができなくなります。
何故、凍結されるのか
相続時に被相続人の口座が凍結されるのには理由があります。
- 相続財産の確定
- 相続人同士のトラブル回避
- 口座が不正に利用されるのを防ぐ
口座に入っている預貯金は相続財産であり、遺産分割が行われるまでは、法定相続人同士の共同所有物となります。
遺族であっても自由に引き出せる状態だと、相続人間でのトラブルを引き起こす可能性があります。そのため、口座凍結の処置が行われるのです。
凍結されるタイミング
口座凍結は相続開始後すぐにされるわけではありません。死亡届が市町村役場に提出されても、役場から金融機関に連絡がされることはないからです。
金融機関は以下の方法で名義人の死亡を確認してから、口座凍結を行います。
- 相続人等からの連絡
- 残高証明書の取得申請
- 新聞等のお悔やみ欄
- 葬儀の看板
中には名義人の死亡が確認されないため、口座がそのままになっているケースもあります。
引きおろせる状態にあえてしておくのも良いですが、色々なリスクを考えれば、名義人が亡くなった時点で、遺族側から銀行に連絡を入れた方が良いでしょう。
相続開始後の手続き
凍結された口座を再度利用するには、名義の変更を行います。必要な書類等は金融機関によって若干異なるので、事前確認が必要です。
書類に不備がなければ1~2週間程度で凍結が解除されます。
(1)遺言書がある場合
遺言書で預貯金の取得者が指定されているなら、遺産分割協議が不要となるので、凍結解除は簡易に行えます。
手続きに必要な主な書類は以下の通りです。
- 遺言書(検認済証明書あり)
- 遺言者の戸籍謄本
- 遺言執行者の印鑑証明書
- 遺言執行者の実印を押印した払戻依頼書
- 通帳及びキャッシュカード
(2)遺言書がない場合
遺言書がなければ、遺産分割協議で相続人全員が財産分割に同意する必要があります。同意がなければ、口座の凍結解除は不可能です。
手続きに必要なものは以下の通りです。
- 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名押印があるもの)
- 被相続人の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の実印が押印された銀行所定の用紙(相続届)
- 通帳及びキャッシュカード
相続開始前にしておくべき対策
口座の凍結解除には簡単ではないので、お金を引き出すまでに時間がかかります。
被相続人の死後にある程度の現金が必要になる場合、凍結されてから困らないように、被相続人が存命のうちから対策をしておくべきです。
(1)口座からお金を引き出しておく
葬儀費用や生活費が必要なら、相続開始前にいくらか引き出しておきましょう。
引き出す時は、トラブル防止のために推定相続人全員の承諾を得ましょう。
(2)生命保険など死亡保険金等に加入しておく
死亡保険金は被保険者の死後に手続きを行えばすぐにお金を受け取れます。
手間がかからないので、相続開始直後の手元資金を増やす方法としてお勧めです。
(3)遺言書を作成しておく
遺言書がある場合、口座凍結解除の手続きも円滑に進みます。
遺言書がなければ遺産分割協議を行わなければならず、協議が長引けば凍結解除の手続きもできません。
(4)口座を整理しておく
故人の口座数が多いと管理や手続きが大変になるので、生前にできる限りまとめておいた方が良いでしょう。
外国の金融口座を所有している場合は、言語の違いから手続きも面倒になるので、できる限り解約をしておきましょう。
預貯金の仮払い制度とは
凍結口座が行われると、出金および振込や引き落としができませんが、実は一定限度までであれば遺産分割前でも出金が可能です。
この制度は、「預貯金の仮払い制度」と言って、近年の法律改正によってできました。
この制度を利用すれば、相続人たちは出金したお金で葬儀を出したり生活費を補ったりできます。引き出せるのは、以下の二項目のうち低い金額に該当するものです。
- 被相続人死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1まで
- 150万円まで
上限額は金融機関単位なので、金融機関を跨って複数の口座がある場合は、出金可能な金額も増えます。
なお、この金額ではお金が足りないという場合、家庭裁判所で「仮処分」の手続きを行なえば、上限額を増やすことができます。
ただ、裁判所の認可をもらうには、必要性や妥当性を提示しなければならず、仮処分の決定を受けるまでのハードルは高いと言えます。
払戻しに必要な書類
各金融機関ごとに手続きや必要書類は異なりますが、以下の書類は必須です。
- 被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本もしくは法定相続情報一覧図
- 相続人の身分証明書、印鑑証明書
- 引き出しの申請書
注意点
故人の口座から預貯金を引き出して使用すれば、相続財産を処理したことになり、「単純承認」が成立します。単純承認は財産を相続したことになるので、相続放棄はできません。
ただし、預貯金の仮払い制度を利用して払い戻したお金の使用先が葬儀代等であれば単純承認とはなりません。生活費など自身のために使用すれば、成立します。
もし、相続放棄を検討しているなら、安易に預金の仮払いを利用するのは避けましょう。
また、制度利用には他の相続人の同意を得る必要はありませんが、遺産分割協議時にもめごとにならないよう、できる限り利用前に事前に連絡をしておくべきでしょう。
まとめ
相続した預金口座が凍結されてしまうと、お金は引き下ろせません。
預貯金の仮払い制度を使うのも良いですが、相続放棄ができなくなる可能性もあるので、慎重な対応が必要です。迷った場合は専門家に相談することをお勧めいたします。
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。 年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます。初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。