人が亡くなった時、その故人が所有されていた財産は遺族=法定相続人同士で分割されて引き継がれます。

しかし、中には独身で兄弟もいない、両親も既に他界している等、法定相続人が全くいないケースもあります。そのような場合では、遺産は一体どうなるのでしょうか。

 

法定相続人や受遺者が存在しないケースとは

(1)身寄りが全くいない

 
法定相続人となる親族の範囲と順位は民法で決められています。

ですが、被相続人が独身者で、兄弟姉妹もおらず、両親も他界しているなら、法定相続人はいないことになります。

 

(2)法定相続人が全員相続放棄をした

 
相続放棄をすればその相続人は最初からいなかったことになります。また、相続放棄をすると、その相続人の子供に相続権が移る代襲相続はできません。

よって、法定相続人となれる範囲の方全員が相続放棄をした場合、相続人は不在となります。

 

(3)遺言書がない

 
身寄りが全くおらず、遺言書によって財産の渡し相手を指定していないのであれば、受遺者も存在しません。

なお、受遺者は遺言者が自由に選べるので、家族以外の知人や恩師、法人でも指定が可能です。

 

(4)法定相続人が行方不明の場合

 
法定相続人と全く連絡が取れず居場所もわからない場合、不在者財産管理人を立てて相続手続きをすることになります。不在者財産管理人は、行方不明者の財産を本人に代わって管理する方のことで、家庭裁判所への申し立てで選任されます。

7年以上といった長期的に行方がわからない場合や、災害に遭っている場合は、死亡の可能性が高いために家庭裁判所に失踪宣告を申し立てます。失踪宣告が認められれば、該当者は死亡したことになります。

そのため、他に法定相続人がいなければ相続人不存在になります。

 

遺産は最終的に国庫に帰属

相続人が全くいないことが確認されれば、相続財産の管理のために「相続財産管理人」が選定されます。これは家庭裁判所によって選定されますが、大抵は地域の弁護士が担当します。

この相続財産管理人が相続人や相続債権者が本当にいないか改めて捜索します。捜索しても見つからなければ、相続財産は最終的に国庫に帰属することになります

もし、捜索中に相続人が名乗り出た場合は、手続き後に財産が引き継がれます。

 

特別縁故者の存在

法定相続人や受遺者でなくても、一定要件を満たせば遺産を取得できる場合があります。

というのも、相続人がいない場合では、被相続人の身の回りの世話をしていた等の「特別縁故者」に相続財産を与えることが認められるからです。

特別縁故者に該当するかどうかは家庭裁判所の判断に委ねられますが、下記のいずれかの要件を満たしていることが必要です。

 
特別縁故者がいる場合、債権者や受遺者に遺産を精算した後に、遺産が分け与えられます。

ただし、特別縁故者が遺産をもらうためには、相続人不在確定後の3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続財産分与の申し立て」をしなければなりません

 

故人の遺体は市区町村で埋葬

身寄りがない場合、故人の遺体は住所を管轄する市区町村が引き取って、埋葬を行います。法務局長の許可を得た後に、戸籍に死亡の記載が行われます。

諸々の費用は、遺産の一部から割当てられますが、不足分は市区町村が一時的に立て替え、最終的に都道府県が負担します。

 

相続手続きは誰がするのか

通常は相続が発生すると、法定相続人が手続きを進めます。しかし、相続人がいない場合はどうでしょうか。

相続人不在の場合は相続財産管理人が相続手続きをします。前述したように相続財産管理人とは遺産管理と清算を行う方です。また、清算後に残った財産を国庫に帰属させる役割もあります。

国庫に帰属するまで、被相続人の債権者や特別縁故者が見つかれば、その方々に財産を分配します。

 

遺言書の必要性

法定相続人がいない場合、基本的に遺産は国庫のものとなります。そのため、身寄りがいなくても友人やお世話になった方に財産を渡したいと考えるなら、遺言書の作成をすべきです

前述したように受遺者の指定は遺言者の自由です。つまり、遺言書があれば、親族でなくても受遺者として財産を受け取れるのです。

被相続人の療養看護に務めていた「特別縁故者」であれば、財産を受け取れなくもないですが、遺言書がある方が遺産受け取りの手続きは遥かにスムーズになります。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
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不動産は持っているだけで、税金や維持管理費が生じます。また、古い空き家等の場合は倒壊による損害賠償のリスクもあります。よって、相続財産に不要な不動産が含まれる場合は、売却等、早急な対策を取るべきです。

借金などマイナスの財産が多い、他に欲しい財産もないといったケースであれば、相続放棄をする選択もありますが、相続放棄には注意点があります。

相続放棄すると相続権がなくなるので相続財産は取得できなくなりますが、全ての相続人が相続放棄をすると、不動産管理をする方がいなくなります。

そのため、民法では、「相続放棄者は、ほかの相続人等が相続財産の管理を始めることができるようになるまで、自己の財産と同一の注意をもって財産の管理を継続しなければならない。」とも定めています。

つまり、相続放棄をしたからといって相続財産の管理義務から解放されるわけではないということです。

 

不動産所有にかかる費用

(1)固定資産税、都市計画税がかかる

 
未使用の空き地でも、所有していれば毎年税金が課税されます
課税される税金は「固定資産税」と「都市計画税」で、各税額は下記数式にて算出されます。

固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
都市計画税=固定資産税評価額×0.3%

 
もし、固定資産税評価額が2,000万円の空き地を所有していた場合は
固定資産税 2,000万円×1.4%=28万円
都市計画税 2,000万円×0.3%=6万円
となり毎年34万円もの税金を支払うことになります。

また所有している空き地が更地であれば、「非住宅用地」に該当するので「住宅用地」よりも固定資産税が高くなります。

 

(2)維持費用がかかる

 
不動産の維持には当然費用がかかります。

清掃等の費用がかかってくる他、不法投棄の被害にあった場合、その処分費用を負担しなければならない可能性もあります。

 

(3)近隣トラブルの原因となる

 
空き家や空き地の放置によって害虫が発生したり、天災が原因で建物が倒壊して隣地に損害を与えたりした場合、損害賠償が発生する可能性があります。

 

相続放棄とは

相続放棄とは遺産を引き継ぐ権利を手放す行為です。財産の中に借金が多く含まれるケースによく使われますが、他の財産も取得できなくなるので、扱いには慎重さが求められます。

手続きは相続開始を知ってから3ヶ月以内の熟慮期間内に行います。申し立てをすれば原則取り消しできません。

財産内容は関係ないので、相続財産に不動産があっても相続放棄はできます。

 

全員の相続放棄は要注意

不動産が財産に含まれるケースで全員が相続放棄をした場合は注意が必要です。

相続人全員が相続放棄をし、財産を誰も引き継がない場合、その財産は最終的に国庫に帰属します。しかし、不動産は「相続財産管理人(相続財産清算人)」が選任されるまで、相続人にその不動産を管理する義務が残ります

不動産の持ち主ではないので、固定資産税は支払わなくても良いのですが、管理責任があるので建物が倒壊などしないようにしなければなりません。

ただし、2023年のルール改正により、相続放棄の管理義務の対象者が明確になりました

これまでは全員が相続放棄した場合、最後に相続放棄した相続人が遺産を管理しなければなりませんでしたが、現行では「現に占有している」実態があった相続人に、管理責任が伴います

「現に占有」とは例えば、被相続人の自宅に、被相続人と一緒に暮らしていた相続人です。または事務所として建物を借りていた等の場合は、相続財産である不動産を「現に占有」していたと言えるため、次に管理する人が見つかる間までに管理義務が生じます。

 

相続不動産の管理を免れるには

前述した通り、現行(2023年4月以降)は、相続放棄をした場合、現に占有している者でない場合には管理責任が免れることになっています。もし、占有していた場合、管理責任が残るので家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任してもらわないといけません

相続財産管理人は、相続人がいない場合に相続財産を管理・清算する存在で、申し立てを行うと、裁判所が弁護士などから選任してくれます。

ただし、選任には数十万円~100万円程度の予納金がかかってきますので、大きな負担となります。

現に占有する者が誰もいない空き家を、相続人すべてが相続放棄した場合、利害関係者(債権者など)や検察官が、清算人の選任申立てを行います。清算後、残った財産は国庫に帰属します。

 

相続放棄は慎重に

管理責任の問題が出てくるので、不要な不動産が財産に含まれているからといって、安易に相続放棄を選択するのはお勧めしません。

相続放棄は基本的に取り消しが効かないので、慎重に検討しましょう。

不動産が相続で問題になる場合は、できるだけ早いうちから対策をしておくべきです。

 

 


 
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相続にも色々なケースがあります。多いのは、法定相続人が故人(被相続人)の配偶者と子供というパターンですが、家族構成次第では故人の兄弟姉妹が相続人となる場合もあります。

法定相続人に兄弟姉妹が含まれる場合、遺産配分の目安となる法定相続分や、手続きの内容が若干異なってくるので注意が必要です。

 

故人の兄弟姉妹は相続順位の第3順位

法定相続人においては民法の中で優先順位が定められています。つまり、故人の血縁者全員が相続人になれるわけではありません。

この優先順位は「相続順位」と言われます。

まず、配偶者は必ず法定相続人になります。そして、他の血縁者は以下の順位に従って法定相続人の権利を有することになります。

第1順位…子供(孫・ひ孫)
第2順位…両親(祖父母)
第3順位…兄弟姉妹(甥・姪)

 
上の順位の方が1人でもいるなら、下位の方に相続権は与えられません。順位の移動は、その順位の方が亡くなっているか、相続放棄などがあった場合です。

なお、該当順位の相続人が亡くなっていてもその子供がいる場合は「代襲相続」が起こるので、順位は変わりません。被相続人の子供が先に亡くなっている場合は、その子供(被相続人にとっての孫)が代わりに相続人となります。

故人の兄弟姉妹は第3順位となるので、故人に子供がおらず、両親・祖父母も亡くなっている場合に、相続権を持つことになります。

 

兄弟姉妹の法定相続分

兄弟姉妹が法定相続人になるのは、前述したように順位がありますから、相続人が「配偶者と兄弟姉妹」もしくは「兄弟姉妹のみ」のケースになります。

それぞれのケースにおける、相続財産の割合は、以下の通りです。

※兄弟姉妹が複数人いる場合は、取得分は人数で等分割します。

 

法定相続人が兄弟姉妹となる際の注意点

(1)兄弟姉妹に遺留分は認められていない

 
遺留分は最低分の遺産を取得する権利です。この権利があるのは、故人の配偶者と子供、両親だけで、兄弟姉妹には認められていません。(故人との関係性を考慮した上での取り決めです。)

そのため、遺言書によって『遺産の全額を配偶者に渡す』等の記載があった場合は、兄弟姉妹は全く受け取れません。

逆に考えると、遺言書を上手く活用しないと相続トラブルにつながる可能性が高くなるとも言えます。争いを生まないためにも、遺言書を準備しておいた方が良いでしょう。

 

(2)代襲相続は一代のみ

 
代襲相続について、故人の子供であれば、ひ孫・玄孫(やしゃご)等、直系卑属の場合、何代でも代襲ができます。

しかし、兄弟姉妹は、その子供である甥・姪までの一代のみしか許されません。

代襲相続は相続放棄だと不可です。相続人自身が相続権を手放す相続放棄ですと、最初からその方は相続権を持たなかったこととされるので、代襲相続が起こらないのです。

相続放棄があり、同順位に他の方がいなければ、相続権の順位は次に移ります。

 

(3)相続税は2割加算となる

 
相続財産の総額が基礎控除の金額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税が発生します。

相続税は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に所定の税務署に申告し、税金を納付しなければなりません。

この時、故人の兄弟姉妹が相続人の場合、通常の相続税額の2割に相当する額を加算した金額を納めなければなりません。相続税には「2割加算」のルールがあるからです。

2割加算が適用される理由としては、被相続人との血縁関係が薄いからです。兄弟姉妹が相続財産の取得をすることは、偶発的であると考えられるためです。

なお、故人の孫が相続財産を取得する場合でも、この2割加算の適用対象です。孫が財産を取得する場合、1世代分跨いで財産が移動するので、相続税課税を1回分免れるからです。

税金は公平に負担するべきという考えから、故人の孫にも相続税が通常よりも多めに加算されるのです。

 

(4)通常よりも戸籍謄本を集めなければならない

 
通常の相続手続きの場合、相続人の確定のために、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取得します。しかし、兄弟姉妹が法定相続人になる場合、先の戸籍謄本に加えて、被相続人の両親の戸籍謄本も取得しなければなりません。

これは、兄弟姉妹と被相続人の関係を明らかにし、尚且つ先の順位の方がいないことを証明する必要があるからです。

このように、通常の相続での戸籍収集と比較して、兄弟姉妹が相続人となる相続では、戸籍収集の量が多く、手続きも煩雑となるので注意しましょう。

手続きが煩雑になるということは、相続手続き完了までに多大な時間がかかるということです。不安な場合は、専門家に手続きを代行してもらった方が良いでしょう。

 

まとめ

相続は一人の人生でそう何度も経験するものではありません。そのため、多くの方が手続きに慣れておらず、想像していたよりも多くの時間がかかってしまいます。

相続手続きには期限付のものも多く、時間をかけすぎたために期限を破ってしまうケースもあります。特に相続税の申告は遅れてしまうと、追徴課税というペナルティを受けることになります。

よって、出来る限り専門家に相談をして、手続きを代行してもらった方が良いでしょう。

 

 


 
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相続で取得した土地が「遠方にある」「管理が大変」といった理由で不要になることがあります。売却しようにも、いつ売れるかわからないという問題もあるでしょう。

そのような場合に、土地を国へ寄付できる制度が利用できます。

本コラムでは2023年度より始まった「相続土地国庫帰属制度」について解説します。

 

相続土地国庫帰属制度とは

(1)概要

 
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって取得した土地を国庫に返還する制度です。土地であれば無条件で引き取ってくれるわけではありません。当然ながら、寄付できる土地には条件が定められています

諸々の条件をクリアした上で、その土地管理に要する10年分の費用を負担しなければなりません。審査も緩くはないこと、それなりの負担金があることを考慮すると、安易に利用できるものでもありません。

相続土地国庫帰属制度の施行日は2023年の4月27日であり、既に実施されている状態です。同制度の創設によって、民法における所有権放棄に関しての新たな規定は設けないこととなりました。

 

(2)申請資格者の要件

 
申請者は相続や遺贈によって、その土地の所有権(全部または一部)を取得した方です。よって、売買もしくは贈与等で土地を取得した場合には、制度の対象外となります。

また、土地を数人で共同所有している場合、共有者全員の同意を得なければ申請ができません。

 

(3)土地要件

 
国に寄付できる土地は通常管理・処分するにあたって高額の費用や労力を要しないものに限定されます

例えば、木や草が生い茂っている荒れ地、廃棄物等が散乱している土地だと、国は引き取ってくれません。そのような土地は活用するために、更地にしなければなりませんが、更地にするのにも手間と費用がかかるからです。

具体的に制度の対象にならない土地は以下の項目に該当するものです。

 
以下のものはケースごとに判断されます

 
後述の項目に該当したとしても、一つずつ整理すれば、審査に合格できる可能性はあります。

 

(4)費用

 
同制度には申請手数料と負担金がかかります。

申請手数料は、登記上の土地の個数を表す単位である1筆の土地当たり1万4000円がかかります。

法務局によって承認された後、負担金として土地の管理費用(土地に応じて金額は異なる)10年分を納付します。負担金は、宅地でも田畑でも面積に関係なく1筆20万円がベースです。森林の場合は面積に応じ算定されることになります。

 

相続土地国庫帰属制度は安易に利用できない

相続土地国庫帰属制度で国に返還できる土地は、前述したように通常管理や処分に際し、高い費用や労力が不要なものに限られます。面倒な土地の場合、国は引き取らないのです

土地は基本的には更地であることが条件です。崖地や適切な造林などが実施されていない森林などの場合、活用が難しいと判断されれば審査に通りません。

審査もすぐに終わるのではなく、半年〜1年程度の期間を要します。

加えて、10年分の管理費に相当する金額を支払う必要もあります。100m2の住宅地の場合だと、審査料と合わせて40万円程度かかります。

 

面倒な手続きは専門家に任せましょう

今回の相続土地国庫帰属制度や銀行口座の凍結解除、相続税申告もそうですが、相続手続きはどれも面倒です。担当の部署へ出向いたり、郵便で書類を送付したり、それぞれの手続きを着実に完了させていかねばなりません。

また、担当の部署ごとに、必要な書類は異なりますから、手続き方法を調べたり、必要書類を集めたり、他の相続人から署名捺印をもらったり、不備がある度にやり直したり、このようなことを重ねていくうちに負担も大きくなります。

相続人同士の連携が悪ければ、上手く進みません。そのような理由もあり、相続の手続きはできる限り専門家へ任せた方が良いでしょう。

専門家に任せることでお金はかかりますが、手続きの負担もありませんし、手続き不備によるペナルティも起こりません。

 

まとめ

相続で取得した土地の寄付は簡単ではありません。「不要な土地は寄付すれば良い」と考えるのは危険です。

いずれにせよ土地は持っているだけで税金が発生しますので、早期に処理できるように対策をしておくべきです。

 

 


 
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相続 では現金や預貯金の他に、不動産が相続財産に含まれているケースが多いです。

中にはその不動産が賃貸アパートやマンションの場合もあります。賃貸用物件は住宅とは異なり、家賃が発生します。その収入はもちろん相続財産に含まれることになります。

家賃収入は相続後に該当の不動産を引き継ぐ方のものになりますが、取得者が確定していない間に生じるものについては、扱いが変わります。

 

家賃収入については相続開始前後+遺産分割協議前後で考える

家賃収入が誰のものになるかについては、「相続開始前」「相続開始後」「遺産分割成立の前後」の3つに分けて考えます。

相続開始前であれば、その家賃収入は被相続人のものですので、相続財産として相続人全員に分配されるものと考えます。

相続開始後に発生した家賃収入について、遺産分割成立していない場合、不動産の取得者が決定していませんから、これも相続人間で分配されることになります。

遺産分割成立後で不動産の取得者が決まっている場合、取得が決定した段階から発生する家賃について取得者のものになります。

 

遺言の有無で家賃収入を受け取る人は変わる

取得者が確定しているかどうかで家賃収入の扱いが変わるため、遺言の有無によって家賃の受取人は変わると言えます。

 

(1)遺言書がある場合

 
遺言書があり、対象の賃貸物件を相続する人が決まっているのであれば、「相続開始から」発生する家賃はその相続人のものです。

なお、遺言書は法的な効力を持つ正式なものでなくてはならないので、不備があると、無効になってしまいます。

被相続人が自筆で作成する「自筆証書遺言」は不備が起こりやすいので、注意が必要です。不安な場合は、専門家に作成サポートを依頼する、また、作成不備が起こらない「公正証書遺言」を利用するなどの対策をした方が良いでしょう。

 

(2)遺言書がない場合

 
遺言書がない場合、取得者を遺産分割協議で決定します。その間に発生する家賃は不動産と共に、相続財産は相続人全員の共有財産となります。

よって、家賃収入は相続人全員のものであるため、法定相続分に応じて相続人全員が受け取ることができます。

繰り返し言いますが、取得者が受け取れるのは分割決定後に発生した家賃のみとなります。ただし、協議での取り決めがある場合は、協議前のものであっても取得者が受け取れます。

 

準確定申告を怠らないこと

準確定申告とは、亡くなった方の確定申告です。相続人が代理で、相続開始から4ヶ月以内に手続きしなければなりません。相続税申告の期限より早いので、注意が必要です。

前述したように相続開始前に発生した家賃は未収でも被相続人の所得です。そのため、一定期間(1月1日から死亡した日まで)内の所得金額及び税額を計算して、税務署に申告しなければなりません。

手続きを怠ると、納税がされていないことに課される「延滞税」と、期限内に申告されない場合に課される「無申告加算税」を負担することになります。

また、家賃収入を得る相続人にも確定申告が必要ですので、こちらも忘れずに。不動産所得が20万円以下の場合、確定申告は義務ではありませんが、税金が返ってくることもあるので、検討するべきです。

 

不動産の立ち退きには正当な理由と入居者の合意が必要

賃貸用物件を取得した際に、すぐに売却したいと考える方もいるでしょう。

しかし、借地借家法によって入居者の権利が保護されているので、住んでいる方がいる場合は、正当な理由がない限り貸主側からの解約ができないのです。

賃貸借契約時に定期借家契約をしていた場合、事前に定めた契約期間が過ぎれば解約できますが、一般的な賃貸契約の場合、貸主側からの解約を通すには以下のような正当事由が必要です。

 

相続登記も忘れずに

相続によって不動産を取得した場合は名義変更をしなければなりません。現在、罰則はありませんが、令和6年4月1日から義務化される予定で、施行日前に生じた相続についても遡って適用されるため、早めに手続きを行うべきです。

相続登記を行わないと相続した不動産の売却もできませんし、他の相続人に不動産を処分されるリスクもあります。そういった意味でも、相続登記はできる限り早くしておく必要があります。

 

まとめ

相続不動産に賃貸アパートやマンションがある場合、その家賃収入は取得者が確定しているかどうかで受取人が変わります。

また、相続開始前の一定期間内に生じた家賃については準確定申告の対象となるため、手続きを忘れないようにしましょう。

 

 


 
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相続財産には金銭・不動産といった「プラス」の財産だけでなく、借金などの「マイナス」の財産もあります。マイナスの財産は債務として、相続人の負担となってしまいます。

よって、相続税評価ではこれらマイナスの財産をプラス財産から差し引いて、評価額を計算します。評価額から差し引かれるので、その分相続税も安くなるこの仕組みは「債務控除」といいます。

計算としては単純ですが、どういったものが債務控除対象なのか、どういった方が適用できるのか、分かりにくい部分もあります。

本コラムでは、それら債務控除について詳しく解説いたします。

 

債務控除とは

相続税額を算出する過程として、まず遺産の総額から「基礎控除」を差し引きます。

そして、被相続人に借金などの「債務」があった場合、これも総額より差し引きます。遺産総額が減れば、相続税額も減るので当然ながら税負担が軽減されます。

この仕組みが「債務控除」です。

債務控除に当てはまるものとしては、「相続時に存在」し、「確実と認められるもの」に限られます。わかりやすいのは被相続人の借金ですが、未納付の税金や、滞納している光熱費も対象となります。

 

債務控除を活用するには申告が必要

債務控除を受けるためには、相続税申告書の第13表に控除対象の債務と、費用を記載して、申告をしなければなりません

債務控除と基礎控除と合わせて、財産総額を超えるので申告が不要とはならないので注意が必要です。

例えば、財産総額が1億円、基礎控除が3,600万円、債務控除が7,000万円のケースだと、基礎控除よりも財産総額が高いので、申告は必要になります。

 

債務控除を活用できる人とは

債務控除を活用できる人は、相続人と包括受遺者になります。

包括受遺者とは遺言によって相続財産の遺贈を受ける際に、財産に対して一定の割合分を取得する方を指します。

これら包括受遺者と相続人はプラスの財産だけでなくマイナス財産も一定割合分承継しなければならない。そのため債務控除が認められているのです。

逆に指定された権利のみ承継する特定受遺者には、債務控除は認められていません

相続放棄をした方や相続権のない方も、同様に債務の控除が認められていませんが、相続放棄者には葬式費用に関して、例外的に控除が認められます。

死亡保険金は相続放棄者でも受け取れるので、その方が葬式費用を負担していた場合は債務控除を適用できます。

 

債務控除の対象

(1)借入金

 
被相続人が生前に借りたお金で支払いが済んでいないものは債務控除対象です。

借入金や住宅ローンが該当します。

家族から借りていたお金も同様ですが、借入の経緯、借りた金額がわかる書類などが必要です。借入の事実が第三者に証明できないと、税務署に債務控除と判断してもらえないからです。

 

(2)連帯債務

 
夫婦や親子など、2者以上が連帯して負担する債務も、負担金額が明らかな部分については債務控除の対象になります。

 

(3)未払い分の医療費

 
被相続人が支払うべきもので、支払いの済んでいない入院費や治療費も債務控除の対象です。

死亡診断書についても債務控除の対象です。ただし、保険金請求等を理由に遺族が追加発行する死亡診断書は対象ではありません。

 

(4)準確定申告で支払う所得税や消費税

 
故人の生前所得等における税金関連は債務控除対象です。

準確定申告は手続き期限があるので注意しましょう。手続きは法定相続人の誰がしても問題ありません。

 

(5)固定資産税

 
不動産に課税される固定資産税で被相続人が亡くなった時点で未納付のものについては控除可能です。

被相続人が8月に亡くなったケースでは、同年12月の3期分と翌年2月の4期分が未納付となるので、2回分は債務控除の対象になります。

また、それ以前であっても被相続人が滞納していた分、それにより課せられる延滞金も対象です。

 

(6)預かり敷金・保証金の控除

 
被相続人が賃貸アパートやマンションを運営していた場合、入居者から一時的に預かっている敷金や保証金も債務に該当するので、控除の対象です。

償却がある場合にはその部分を抜いた金額が控除対象です。事前に不動産賃貸借契約書の内容を確認しておきましょう。

 

(7)水道光熱費

 
被相続人の住居の水道光熱費で支払いが済んでいないものについては、生前の部分のみ債務控除対象です。相続開始後にかかる費用は相続人間での負担になります。

住宅などを相続後に使わないのであれば、早めに停止手続きをしましょう。

 

(8) 建築やリフォーム等の未払金

 
建築や増築、リフォーム代については、工事の進捗によって扱いが変わります。

既に引き渡しが完了しており、お金のみ未払い状態であるなら、全額が債務控除となります。

 

(9)葬儀費用

 
葬式費用も債務控除の対象です。

 
これ以外のもの、香典返しのお金や、お墓の購入費は対象外となります。

 

債務が多すぎる場合は相続放棄も検討すること

すでに述べたように相続財産には被相続人の負債も含まれます。その金額が金銭や不動産などの合計額を上回る場合、そのまま財産を相続すると、相続人にとって大きな負担となります。

負債のみ受け取らないという選択は残念ながらできません。

負債額が大きいと、相続後に返済ができず自己破産しなければならない可能性もあります。

このように、相続で大きな不利益を被ることが明確な場合、「相続放棄」を検討します。相続放棄は相続人としての資格を捨て、財産取得をしないことです。

ただし、相続放棄ができるのは「熟慮期間」内で、自身が相続人であることを知ってから3ヶ月以内です。期限を過ぎてしまうと、自動的に相続を「単純承認」したという扱いになり、相続放棄ができませんから、早期にどうすべきか検討してください。

 

まとめ

被相続人が亡くなった際、借金などの債務がある際には、相続財産から控除して相続税を安くできます。

どんなものが対象なのかは本記事で説明した通りです。

詳しく知りたい方や、相続税の節税相談がしたい場合は、弊所までお問い合わせください。初回の相談は無料です。

 

 


 
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「生前贈与」とは、相続が起きる前、つまり相続で被相続人となる方が存命のうちに財産の一部もしくは全部を他者に渡すことです。相続とは違い、財産を贈与する相手とタイミングは贈与者の好きなようにできます。

贈与税の課税方式の一つである暦年課税では、年間110万円までの基礎控除が設定されていますから、この仕組みを利用して相続人となる方に毎年少しずつ財産を渡せば、相続税の節税となります。(この方法は取り組みやすく、活用される方も多いので、ベターな節税法とされています。)

ただ、この方法だと毎年110万円の範囲でしか贈与できないため(その範囲を超えると贈与税が課税されます)、高額の財産移転をする場合は時間がかかってしまいます。

実は生前贈与には課税方式の異なるもう一つの制度があります。それは「相続時精算課税制度」と言って、何と2,500万円を一括かつ非課税で贈与できるものです。

「2,500万円を一括かつ非課税で」と聞くとかなりお得な制度に感じますが、そんなにうまい話でもありません。実際には節税効果が薄く、活用には注意が必要になります

ただ、2023年度の税制改正大綱によって相続時精算課税制度はほんの少しだけ使いやすくなりました。ただし、従来のデメリットが大きく改善されたわけではないので、扱いにくいことは変わっていません。

 

相続時精算課税制度について

(1)今までの制度内容

 
相続時精算課税制度は生前贈与の1種であり、「生前贈与で得た財産の合計金額が2,500万円を超えない場合、非課税となる」制度です。通常の生前贈与と課税方式が異なるのです。

通常の生前贈与は暦年の課税方式であり、年間110万円が贈与額から控除されます。この時の「年間110万円」というのは受贈者1人あたりの贈与額合計です。もし、複数人から同年に110万円ずつ贈与されたら、受贈者1人の贈与額合計が110万円を超えるので、贈与税が発生し、申告と納税をしなければなりません。

これに対し、相続時精算課税制度では一人の贈与者について贈与合計額に非課税枠が設けられています。よって、複数人の贈与があった場合、最大2,500万円の控除が人数分、非課税となります。

そして、贈与は一括であっても、年をまたいでの分割贈与でも構いません。もちろん、財産の内容について金銭はもちろん、不動産や株式等、形に制限はありません。(金銭以外の場合、財産の評価は贈与があった年の価値を基準にします。)

もし、2,500万円の範囲を超えた贈与があった場合、一律20%の贈与税が課税されます。これも暦年課税制度と異なる点です。(暦年課税制度では課税標準額が高いほど、高い税率が適用される累進課税制となっています。)

相続時精算課税制度には受贈者と贈与者それぞれに要件があります。

この制度は本来、高齢の方が所有する高額の資産を次世代に移転させる目的で設けられました。次世代に財産が渡ることで消費の増大など、経済的な効果も期待できるからです。そのため、暦年課税方式と比べて、一括贈与で高額の控除を付けるようにしたのです。

 

(2)贈与分は相続時に課税対象に

 
同制度は2,500万円の非課税枠があることが魅力ですが、実は贈与された財産は、相続時に相続財産に含まれるため、相続税の課税対象になってしまいます

この仕組みから、相続時精算課税制度とは贈与時に無税なだけで、税金の支払いを相続時に先送りにしているだけとも言えます。

もし、相続財産に加算された後の遺産総額が相続税の基礎控除額を超えるなら、相続税の申告と納付をしなければなりません。

 

改正後の相続時精算課税制度

今までは、相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与に変更することが不可能でした。

しかし、2023年の税制改正では、相続時精算課税制度を利用しても暦年課税方式と同様に毎年110万円は控除することができることになりました。この控除分の110万円は相続開始時の相続財産加算の対象からも外れます。

加えて、年間の贈与額が110万円を超えないならば、申告も不要となりました

従来の相続時精算課税制度であれば、相続時にすべての贈与を相続財産に加算され、年間の贈与が少額贈与でも毎年申告をする必要がありました。今回の改正で、これらのデメリットが解消されたため、相続時精算課税制度は使いやすくなったと言えます。

なお、制度変更は2024年1月1日以降の贈与からとなっています。

 

やはり、相続時精算課税制度は使いにくい

暦年課税との併用が可能となり、少額贈与での申告が不要になったため、相続時精算課税制度は活用しやすくなりました。

ただし、いくつかの利点が増えたとはいえ、「一度相続時精算課税制度を選ぶと、変更ができない」点は変わりません。要するに相続時精算課税制度を利用して移転した財産は、全てではないにせよ、年間の控除分を除いた分は相続時に相続税の課税対象となるのです。

つまり、節税の点では非常に効果が薄く、はっきり言えばそのような目的で使用すべきではありません。

そもそも、相続時精算課税制度は「早いうちに子供や孫に財産移転をしたい」と思う方のための制度です。また、贈与と遺産との合算が基礎控除額を下回る(=相続税がかからない)ことが想定されるのであれば、活用してもメリットがあります。

相続での手続きに比べ、贈与の手続きの方が簡単に済むからです。

繰り返しますが、節税目的であるなら、相続時精算課税制度ではなく、暦年課税方式を選択するべきです。

 

まとめ

相続時精算課税制度は多少使いやすくなりますが、節税効果としては従来の制度と同じく、あまり期待できません。

相続での節税をお考えの場合は、早いうちから専門の税理士に相談をすることがベストです。まずは無料相談等を利用してみては如何でしょうか。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

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生前贈与は自身の生前に配偶者や子供等に財産を渡す行為を言います。

生前贈与では渡された贈与額に応じて贈与税が課税され、受贈者が申告と納付をしなければいけません。ただし、1月1日から12月31日までの1年間で得た財産の合計額が110万円以下の場合、贈与税は生じません。

この仕組みが相続税の節税に活用できます。毎年コツコツと無税で財産を譲渡していけば、相続時の課税対象財産が減り、相続税課税額も少なくて済むからです。

しかし、この生前贈与にも穴があります。贈与者死亡前の直近数年間に渡された財産は、「相続財産」として相続税が課税されるからです。これは生前贈与加算と言います。

この生前贈与加算、今までの加算期間は相続前3年間となっていましたが、2022年12月に公表された令和5年度(2023年度)税制改正大綱では、加算期間の延長が決定されました。

加算延長期間が長くなったため、相続税の税額にも大きく影響することが予想されます。

 

生前贈与加算について

生前贈与加算とは、被相続人死亡前の一定期間内に同人から贈与を受けていた場合、該当財産が相続税課税価格に加算されるというものです。

2023年現行のルールだと、該当期間は亡くなる3年前までとなっています。

つまり、相続開始前の近い期間での贈与は相続財産になるのです。

相続財産に加えて相続税が課税されるために、控除分を利用した節税効果はなくなってしまいます。なお、贈与税額を払っていた場合、払った分は相続税額から差し引けます。(二重課税となるため)

 

加算対象者

加算対象となる方は、相続や遺贈によって財産を受け取る方です。生前贈与を受けていても、相続放棄などで遺産は取得しない場合、生前贈与加算の対象になりません。

他にも以下の方が生前贈与加算の対象者となるので注意です。

 

2024年から該当期間が延びる

2023年度における税制改正では、加算期間が3年から7年に延長されることが決まっています。期間が増えるため、多くの相続で相続課税財産が増えやすくなり、相続税の増税が予想できます。

しかし、延びた4年分について全て加算するわけではなく、「合計100万円までは相続財産に加算しない」という緩和措置も用意されています

具体的には相続開始3年以内に贈与で得た財産以外=相続開始前4~7年の間に得た財産で100万円分を控除するというものです。3年分については対象ではないので注意しましょう。

なお、今回の改正でも対象者は現行と同じく「相続もしくは遺贈により財産を取得した者」とされています。税制改正の前後で生前贈与加算の対象者は変わりません。

この加算期間延長の適用は2024年1月1日以降の贈与からとなっていますが、それ以降の贈与の加算期間はいきなり7年になるのではなく、相続開始年に合わせて段階的に延びていくように設定されています。

詳しくは下記をご覧ください。

 

改正後の影響

このように生前贈与加算のルールは、2023年度税制改正で大きく変更されました。加算期間延長によって、相続税の負担率は全体的に上がるものと予測されます。

また、早めの贈与の後押しにもなるので、若い世代に資産が移転しやすくなり、消費増大を狙うのも改正の理由の一つのではないかと思います。

 

まとめ

今回は相続税と贈与税の一体化の一環としての「生前贈与加算が3年から7年に延長」等について解説しました。生前贈与での節税は必ず専門家である税理士にご相談ください。生前贈与はやり方を間違えると税務署から否認される可能性もあるからです。

税理士に相談すれば、他の節税対策もアドバイスしてもらえるのでオススメです。

 

 


 
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前回のコラムで教育資金一括贈与の特例を解説しました。

★参考記事:教育資金一括贈与の特例とは 令和5年度改正で何が変わった

 
条件を満たすことで高額の非課税枠が使える贈与制度は教育資金だけでなく、結婚や子育て用の資金にも存在します。

結婚式費用は一般的に400〜500万円とされており、かなりの費用負担をすることになります。
結婚後の出産や育児についても、出産に伴う医療費、保育料や託児費等、こちらも高額の負担があります。

そのため、結婚や子育て用の資金については条件付きで贈与特例が用意されています。
要件を満たせば最大1,000万円まで贈与税が非課税となります。

 

結婚・子育て資金の一括贈与とは

結婚・子育て資金の一括贈与」は直系尊属から結婚および子育て資金の贈与を受けた場合、最大1,000万円の控除が受けられる制度です。

直系尊属のため、受贈者は両親か祖父母になります。

同制度は資金対象の広さが特徴です。
教育資金と違って、結婚・子育ての両方がカバーされているので、制度利用による恩恵は大きいでしょう。

非課税枠内で贈与すると、その分相続税課税の財産が減るので、節税対策にもなります。

ただし、贈与として渡したお金が余った場合は贈与税が課税されます
また、使う前に贈与者が亡くなった場合は遺産総額に加算され、相続税対象となる点にも注意です

 

利用期限

結婚・子育て資金の一括贈与は、2025(令和7)年3月31日までとなっています。

令和5年の税制改正で適用期間が2年間延長されています。

 

結婚資金の範囲とは

(1)対象資金

 
結婚資金に含まれるお金は、「結婚式費用」と「新居に関する費用」の二つに分かれます。

結婚式費用は会場代や衣装、写真撮影など一般的な結婚式をあげるためのものが対象となります。
新居に関する費用については、新居契約の敷金・礼金や、引越し費用が該当します。

結婚式費用…会場費用・衣装代・ビデオ撮影代・引き出物代など
新居費用…敷金・礼金・仲介手数料・契約更新料、引越し代など

 
これらの結婚資金の上限は300万円までとなっています。

 

(2)対象外の資金

 
結婚式費用に結婚指輪代や新婚旅行代は含まれません。

新居に関する費用も、家具代や光熱費、インターネットの開通費用は対象ではありません。

 

子育て資金の範囲とは

(1)対象資金

 
子育て費用は「出産費用」と「育児費用」で構成されます。
資金対象範囲が広いので様々なものに使えます。

出産費用…不妊治療費、妊婦検診費、入院費用、薬剤費、産後ケア費用など
育児費用…子供の医療費、保育園などの入園費、託児費用など

 
これらの資金上限は1,000万円までです。
ただし、結婚関連資金との合計額であることに注意してください

例えば、結婚式費用で300万円分使用したのであれば、子育て資金で非課税にできる上限は700万円までになります。

 

(2)対象外の資金

 
病院に通うための交通費や、処方箋に基づかない薬代などは含みません。

また、オムツやベビーフードなどの子ども用品の購入代金も対象外です。

 

適用するための要件

(1)贈与者と受贈者の要件

 
贈与者は受贈者の直系尊属(曽祖父母や祖父母・父母)であること。

受贈者は18歳以上50歳未満で、前年の合計所得金額が1,000万円以下でなければなりません。

なお、最大1,000万円の非課税枠は、受贈者一人が使用できる上限額です。
母親から1,000万円、祖父から1,000万円貰えば、半分は贈与税がかかります。

 

(2)金融機関で専用口座を開く

 
教育資金の一括贈与と同じように、こちらも取り扱いのある金融機関で専用口座を開設しなければなりません
結婚・子育て資金の専用口座を取り扱っているかどうかは、事前に必ず問い合わせをしましょう。

口座の引き出しには領収書などが必要になるので、他の用途で引き出すことは不可能です。

 

令和5年度税制改正のポイント

令和5年度税制改正により、残額の贈与税計算が変わっています。

贈与者が50歳になった際に贈与したお金が余っていた場合は、残額に対して贈与税が課税されますが、改正後には「一般贈与財産として」贈与税の計算を行うこととされました。


以前では、受贈者は直系尊属から贈与を受けた成人であることから、特例贈与財産として低い税率で計算して良いことになっていました。
しかし、税率が低くなれば、節税目的の贈与が増えるので、法改正によって一般贈与財産として贈与税の計算をすることになったのです。

なお、贈与者が亡くなった時点での残額は相続税対象ですが、受贈者が「孫」や「ひ孫」など(子以外の直系卑属)である場合は、相続税額の2割加算が適用されます。

 

まとめ

同制度は要件があるものの、最大1,000万円までの一括贈与が可能です。
年間110万円まで非課税となる暦年贈与との併用も可能なので、単年で1,110万円を無税で贈与することもできます。

しかし、贈与額が大きすぎて資金残額が多くなった場合には、高額の税金負担を課せられる怖れがあります。
また、金融機関で専用口座を開設しなければならず、手間もかかります。

ケースによっては、メリットが得られる場合もありますが、安易に使うのは危険です。
相続税専門家に事前に相談することをお勧めいたします。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

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初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

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