自身の死後の遺産について、配偶者や子供だけでなく、孫に対しても渡したいと考える方はいると思います。しかし、孫は法律の定めるところの「法定相続人」に該当しませんから、何もしなければ遺産取得は不可能です。

ただし、遺言書等のいくつかの方法を用いれば、孫に遺産を相続させることが出来ます。

本コラムでは孫に遺産を渡す方法を解説いたします。是非、参考にしてください。

 

孫に遺産を相続させる方法

(1)遺言書を作成する(遺贈)

 
民法では法定相続人の優先順位(=相続順位)が決まっています。配偶者は必ず法定相続人になり、他の血縁者は順位に従って権利を有します。

相続順位を考慮すると、被相続人に子供がいる場合、孫は法定相続人にはなれません。そうなれば、遺産の取得はできません。

しかし、法定相続人でなくても遺言書で指定すれば、遺産を受け取ることができます。遺言書によって遺産を渡すことは遺贈と言います。遺贈では特定の財産を指定して渡す「特定遺贈」や、財産の割合を指定して渡す「包括遺贈」があります。

なお、遺贈の場合、他の相続人の遺留分を超える財産を渡すことはできません。遺留分とは、法定相続人に最低限保障される遺産の取得分です。よって、遺留分を侵害するような遺言内容、例えば、遺産の全てを孫に渡すといった内容は不可能です。(ただし、法定相続人及び受遺者全ての同意があれば認められます。)

 

(2)代襲相続

 
代襲相続は本来法定相続人となる方が相続開始前に死亡等で相続権を失っている場合、その相続人の子供が代わって相続権を得る制度です。

例えば、相続開始前に、被相続人の長男がすでに死亡していると、財産取得権は長男の子ども(被相続人の孫)に移ります。代襲相続人の法定相続分は、被代襲相続人と変わりません。

代襲相続は本来の相続人が死亡している他にも、「相続欠格や相続廃除」によって相続権を失っている場合にも認められます。

ただし、相続放棄では代襲相続は起こりません。相続放棄をすれば相続権は次の順位に移るだけです。

被代襲者は、被相続人の子どもや兄弟姉妹のみです。配偶者や父母等の直系尊属が亡くなっていても代襲相続は起こりません。また、代襲者は被代襲者の子どもや孫(被相続人の孫やひ孫)になります。

なお、被代襲者が被相続人の子どもなら、代襲相続は何代でも可能です。対して、兄弟姉妹が被代襲者の場合は、代襲相続は1世代まで、つまり、被相続人の甥や姪までしか代襲相続ができません。

 

(3)死亡保険金

 
保険金は保険契約に基づいて支払われます。よって、分割対象の財産ではなく、受取人の固有の財産として扱われます。つまり、相続人でなくても受け取れるのです。遺言書での指定ももちろん不要です。

保険の新規加入や受取人設定は、簡単なので、孫に遺産を渡す方法としては手間がかかりません

ただし、死亡保険金はみなし相続財産なので、相続税の課税対象です。

 

(4)養子縁組

 
養子縁組制度を利用して、孫と養子縁組している場合、孫は実子と同じ扱いになるので「被相続人の子ども」として相続権を得ます。

法定相続分も実子と変わりません。例えば相続人が実子2人、孫が1人のケースで孫を養子にしていた場合、各相続人の法定相続分は3分の1ずつとなります。

 

相続前に孫に財産を渡す方法

相続前に財産を渡す方法として、生前贈与があります。

生前贈与とは、生きている間に財産を特定の誰かに贈ることです。財産を渡す相手は贈与者の自由ですので、孫に生前贈与をしても問題ありません。

相続手続きと比較して簡単で自由度も高いことが特徴ですが、年間に受け取る金額が110万円を超えれば贈与税が課税されてしまいます。この110万円は受贈者一人における金額です。もし、複数人から110万円ずつ贈与された場合、受贈者1人の贈与額合計が年間110万円を超えるので、超過分に贈与税が課税されます。

逆に言えば、この非課税枠をうまく利用して、年間に110万円ずつ生前贈与されれば、無税で財産移転も可能です

 

孫への相続では相続税が2割加算されてしまう

孫への相続で注意したいのは、「相続税の2割加算」です。これは、遺産取得者が配偶者や一親等の血族(被相続人の子供・親)以外の場合、相続税が2割増しになってしまうというルールです

対象者と非対象者は以下の通りとなります。

 
孫が遺産を受け取ると相続税は2割加算になります。孫を養子とした場合でも同様です。これは、2割加算をしないと、相続税の回数を1回免れる、いわゆる世代飛ばしになってしまうからです。

よって、基本的に孫が相続で遺産を受け取ると2割加算の対象になるものと覚えましょう。ただし、例外として、代襲相続の場合では対象にはなりません。

 

孫を養子にした場合の注意点

孫を養子とすると、実子と同じく遺産を受け取れますが、相続税の2割加算の対象になります。孫を養子にする場合、他にも注意点があります。それは、基礎控除の計算への影響です。

相続税では基礎控除があり控除額は以下のように計算します。
相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人の数が多ければ控除額も高くなりますが、それを無制限にすると養子制度の悪用により不当に相続税が減らせてしまいます。

よって、「実子がいる場合、養子は1人まで」・「実子がいない場合、養子は2人まで」しか、計算に算入できないというルールがあるのです

なお、民法上は養子の数には制限はなく、何人でも養子にして構いません。ですが、相続税法上では、制限があることは覚えておきましょう。

 

贈与の場合、生前贈与加算に注意

生前贈与加算とは、死亡前の一定期間内に故人から贈与を受けていた場合、相続税課税価格に贈与額を加算するものです。

これまでは亡くなる3年前までの生前贈与が加算対象でしたが、2024年からの変更で、この期間が7年間に延長されています

該当期間の贈与分は全て相続財産に加えて相続税計算をするので、相続税対策で行なった生前贈与の効果はなくなってしまいます。

なお、生前贈与の際に贈与税額を払っていれば、その分は相続税額から差し引くこととなります。

 

まとめ

孫は自動的に遺産をもらえませんが、いくつかの方法を用いれば遺産の取得ができます。ただし、代襲相続以外では相続税が2割加算になることに注意が必要です。

税金を抑えたいのであれば、やはり生前贈与が有効です。贈与金を控除額内にすれば非課税での財産譲渡ができるからです。

他の節税方法が知りたい場合は、相続専門の税理士に相談してアドバイスをもらいましょう。

 

 


 
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年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
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高齢になると、認知症にかかるリスクが高くなっていきます。認知症になれば、日常生活が困難になり、法的な手続きについても様々な問題が起こります。

そもそも、法的な手続きは、意思能力がある状態でしかできません。意思能力がなければ、法律行為の効力要件を満たさないからです。

そういった点も考慮すれば、相続において相続人の一人が認知症を患っている場合、遺産分割協議等に重大な影響を及ぼします

 

相続人が認知症のケースも多い

相続では被相続人のみならず、相続人も認知症を患っていたというケースがあります。

よくあるのは、被相続人の配偶者が認知症のケースです。冒頭でも述べたとおり、認知症リスクは年齢によって上がります。被相続人が高齢ですと、その配偶者も高齢であることが多いため、認知症を患っている場合が多くなります。

なお、認知症は40歳の初老期段階で発症することもあるので、年齢がある程度離れている配偶者や、被相続人の子供であっても、認知症にかかっている場合もあります。

 

認知症=判断能力がないわけではない

相続人が認知症を患っており判断能力に問題がある場合、遺産分割協議の参加等、法的な手続きは無効とされてしまいます

ただし、認知症と診断されていれば、判断能力が無いとも言い切れません。認知症は軽度なものから重度なものまであるからです。

よって、認知症であっても、レベルが軽度で、判断能力に問題がなければ遺産分割協議の参加もできます。判断能力の有無は、医者から診断書をもらっておくと良いでしょう。

 

相続人が認知症だった場合に起こる問題点

(1)遺産分割協議への参加ができない

 
遺言書によって財産分割の指定がない場合、遺産分割協議を開く必要があります。

協議を完了させるには相続人全員の合意を得なければなりません。よって、一部の相続人が不参加ですと、協議結果は無効となります。

また、相続人の一人が病気などで判断能力が低下している場合も同様です。判断能力がなければ、法的な手続きができないからです。遺産分割協議での合意も無効です。

遺産分割協議が完了しなければ、預貯金の凍結解除ができませんし、相続不動産の名義変更もできません。

なお、認知症の相続人に代わって他の相続人が遺産分割協議書への署名をすると私文書偽造罪に問われる可能性があります。

 

(2)相続放棄できない

 
遺産分割協議への参加同様に、判断能力がなければ、相続放棄もできません。

他の相続人が代理で申し立てをしようとしても、家庭裁判所が受理しないのです。

 

法的手続きをするには成年後見制度の利用が必要

重度の認知症を患らっている場合、自らの意思で遺産分割協議に参加することも、相続放棄をすることもできません。

手続きをするには、「成年後見制度」の利用が必須となります

成年後見制度は、認知症などで自身の財産管理が困難な方に代わって、後見人が財産管理や重要な契約などをする制度です。

 

実は問題の多い成年後見制度

(1)家族が後見人になれるわけではない

 
成年後見人になるには特別な資格は不要ですが、誰がなるかは裁判所の判断に委ねられます

親族を成年後見人候補者として希望したとしても、第三者の専門家が選任される可能性があります。近年では、親族が選任される割合は減少傾向にあります。

そして、一度選任された後見人の変更は余程の理由がない限り認められていません。

家族は裁判所から選任された後見人と長く付き合っていくことになります。

なお、家族が後見人になれたとしても、遺産分割に代理人として参加できません。後見人も相続人の場合、利益相反関係になるからです。

よって、遺産分割協議のために再び家庭裁判所に申し立てをして、特別代理人を選任しなければなりません。

 

(2)成年後見人に対する報酬も必要

 
成年後見人は裁判所が決めるため、外部の専門家が選任された場合には、報酬を払わなければなりません

これは一生涯続くので、今後収入が増える見込みがなく、貯金から医療費や生活費が毎月目減りしてしまう高齢の相続人にとってかなりの負担にもなってしまいます。

 

まとめ

相続人に重度の認知症の方がいる場合、遺産分割協議等、相続手続きができません。成年後見制度を利用すれば良いですが、同制度はデメリットも多く、問題も多いのです。

そのため、前もって遺言を用意しておいた方が良いと言えます

遺言があれば、遺産分割協議をしなくて良いので、ご家族に認知症の方がいても問題ありません。口座凍結の解除や不動産名義変更もかなり進めやすくなります。

メリットも多いので、できる限り作成しておいた方が良いのです。

 

 


 
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相続で財産を引き継いだ場合、相続財産の総額によっては相続税が生じます。相続税が生じる場合、税務署に対して相続税の申告と納付が必要です。

この相続税の申告と納付の期限は「被相続人が亡くなったこと・自信が相続人であることを知ってから10ヵ月以内(ほとんどの場合では、相続開始日と同じになります)」です。もし、期限内に手続きを済ませないと、ペナルティとして加算税や延滞税を追徴税として払うことになります

また、申告と納付が期限内であっても、その内容が間違っているケースがあります。申告した額が本来の相続税の金額よりも大きければ、納税者が税金を多く負担しただけですから、問題ありません。

しかし、少ない金額で申告してしまった場合は、申告をやり直さなくてはいけません

 

相続税申告は間違いが起こりやすい

そもそも一般の方が相続税の申告をする場合、申告内容を間違えがちです。

というのも、相続税の計算には各財産を調査し、それぞれの財産を正しく評価します。その上で、相続税額が算出されますが、一連の作業には専門知識が必要です。

逆に知識がなければ、非常に難しく、申告額に誤りが生じやすいのです。

 

やり直しが期限内であれば、訂正申告

もしも、すでに提出した申告書の間違いに気づいた場合はどうすれば良いのでしょうか。

間違いに気づいたのが申告の期限内であるなら、単純に申告書を作りなおして再提出すれば良いです

相続税法でも、申告期限内に相続税の申告書を提出した方が、さらに、同期限内に、その申告にかかる課税価額、相続税額もしくは贈与税額を修正した申告書を提出した場合、国税通則法第19条第1項の修正申告書とはせずに「期限内申告書として取り扱われる」とされています。

つまり、後に再び出した申告書であっても、「期限内に出された正しい申告書」として処理されます。よって、間違いに気づいた場合は、急いで申告を出し直した方が良いでしょう。

期限内の提出なので、もちろんペナルティはありません。

 

期限後であれば修正申告となる

もし、期限後に申告の間違いに気づいた場合、申告内容を訂正する手続きは「修正申告」となります。修正申告では、相続税の本来の納付期限を守っていないため、「過少申告加算税」と「延滞税」を負担しなければなりません

過少申告加算税の課税率は修正申告をどのタイミングでするかで異なります。
 

 
過少申告加算税は、調査の通知が来るまでに修正申告をしないと、課税されてしまいます。

延滞税は従来の納期限日から修正申告をした日(この日が修正した相続税の納期限となります)までの期間に、年「7.3%」もしくは「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合が適用されます。

2カ月を超えると、
年14.6%か「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合が適用されます。

令和6年の場合、2カ月内なら2.4%、2カ月を超えると8.7%となっています。

 

修正申告はどうすれば良いのか

修正申告の場合でも、申告書や添付書類は国税庁のホームページからダウンロードできます。
書類を正しく記入したら、速やかに税務署に提出しましょう。

修正申告書の提出は、管轄の税務署窓口に直接持って行っても良いですし、郵送や、e-Taxを利用した電子申告でも構いません。

相続税の修正申告については既に述べた通り、遅れれば遅れるほど延滞税が課せられていくシステムです。また、加算税の負担率も上がるので、早めに出しましょう。

 

相続税申告後に新たな財産が見つかった場合も対応が必要

相続税の申告後に新しい財産が発見される場合もあります。
発見された財産が高価なもので、相続税額に影響する場合には、申告と納付をやり直す必要があります。

こちらの場合も、やり直しが申告期限内であれば、新たな財産を含めたものに作成しなおした申告書を提出し、納税すれば、問題ありません。

期限後であれば、修正申告となり、調査通知前に自主的に修正申告をする場合には加算税は課されませんが、延滞税はかかります。

なお、無申告の状態で、法定期限後に修正申告をする場合、調査通知前に自主的に修正申告をしても、加算税の割合は5%となります。

 

まとめ

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内で、納付の期限も同じです。

この期限は思ったより早くやってきます。相続では必要な手続きがたくさんあるからです。

各手続きは一つ一つ時間がかかり、すぐには終わりません。よって、申告のための作業は早期に取り掛かる必要があります。

早めに手続きをしていれば、もし間違いに気づいた場合、申告期限内に申告書を提出できる可能性も高くなります。期限内であれば、ペナルティを受けることはありません。早めに手続きをするのは、このように大きなメリットがあるのです。

もし、手続きが難しいと感じるのであれば、相続税専門の税理士に手続きを代行してもらいましょう。報酬はかかりますが、余計な手間や不安がなくなるため、お勧めです。

 

 


 
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農地は不動産の一種であり、財産ですから、所有者が亡くなると、相続財産として法定相続人や受遺者に引き継がれます。

前回のコラムでも述べましたが、農地は通常の土地と同じように扱えません。農地は法律によって取り扱いに関して制約が課されているからです。農地を売却、転用する際は、その地域を管轄する農業委員会や都道府県知事に許可をもらわなければいけません。

また、不動産を相続すると、評価額に応じて相続税の申告と納付が必要です。農地も相続税が課税される対象の財産なので、評価額を計算しなければなりません。

農地には税制の特例が設けられています。具体的には「一定の金額について納税を猶予もしくは免除する」というものです。

 

農地における相続税の納税猶予の特例とは

農地については、宅地などの普通の土地とは違って特別な納税猶予の制度が認められています。(同制度は相続税における納税猶予・免除のため、控除制度とは意味合いが異なります。)

特例が適用されれば、一定期間は相続税を支払う必要がなくなります。また、条件に該当すれば猶予されていた相続税そのものの支払いが不要になる場合もあります

この特例ができた目的は、相続による農地の細分化を止める他、生活の圧迫による農業従事者の減少を防ぐためです。

「農業の後継者」は土地同様に食料供給源の大切な要素です。相続によって重い相続税を課せられると相続人は農業の継続に支障をきたします。それらを防止し、安定して農業経営ができるようにこの特例はあるのです。

農業の継承者は税金が優遇される」と覚えておきましょう。

 

どれぐらいの相続税が猶予されるのか

猶予される相続税は以下の方法で算出します。

 
各農地の相続税評価方法は以下の通りです。

 
各評価方法の細かい説明は前回のコラムで述べていますので、そちらを参照ください。

 

★参考記事:農地を相続する場合に覚えておきたいこと【農業委員会への届け出】

 
農業投資価格とは、「ずっと農業を継続する」という条件で売買が成立する土地価格のことで、価格の決定は国税局長がします。

農業投資価格は通常の宅地評価額よりかなり低く設定されます。差し引かれる金額が低くなるので、猶予される税額は農地価格の比率からしても、高くなります。

 

被相続人と相続人の適用要件

(1)被相続人の要件

 

身体障害等により農業継続ができず、農地の貸付けをする場合があります。この場合でも納税猶予は適用されます。

条件はどれか一つでも該当すれば良いです。

 

(2)相続人の要件

 

こちらについてもどれか一つでも該当すれば良いです。

 

農地の適用要件

特例の対象となる農地は、以下の通りです。

被相続人が農業をしているもしくは特定貸付を行っていることが前提条件で、上記事項いずれかに該当すれば問題ありません。

 

猶予された税金が免除されるには

相続税の納税猶予の特例では、条件次第で猶予された税金が最終的に免除されます。免除される条件は以下の通りです。

 
上記いずれかに該当すると、猶予された税金は支払いが不要です。つまり、農業を今後ずっと続けていく(もしくは後継者を見つける)のであれば、免除は確実であり、納税猶予制度はかなりお得と言えます

逆を言えば、途中で農業経営を廃止してしまうと、特例の適用がなくなります。その場合、猶予されていた税金に加えて、利子税を支払わなければならないので、かなりの損となります。

この点には注意すべきです。

 

まとめ

農地に関する相続税の納税猶予の特例は、農地特有の優遇制度です。

相続後も農業経営を続けていくのであれば、納税猶予はとても得な選択となるのでお勧めです。是非利用しましょう。

 

 


 
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日本国内には農地がたくさんあります。様々な理由から年々減ってきてはいるものの、それでも420万haもの農地が残っています。

農地は不動産の一種であり、財産です。よって、所有者が亡くなれば、相続財産として法定相続人もしくは受遺者に引き継がれることになります。

しかし、農地は通常の土地と同様に扱えません。農地は国の食糧政策の基礎となるものであり、売買や転用に関して制約が課されているからです。要するに、売却したり農業以外の用途に使う場合、事前に許可を取らなくてはならないのです。

 

農地は通常の住宅地とは扱いが異なる

通常の土地の場合、相続不動産として引き継ぐには所有者の名義変更(=相続登記)が必要です。また、他の財産との合計額が基礎控除を超えるのであれば、相続税の申告もしなければなりません。

農地を相続した場合、前述した相続登記と相続税申告に加えて「農業委員会への届け出」も必要です

農業委員会とは農地法に基づいて、農地の売買や貸借の許可、転用の意見具申、遊休農地の調査・指導などをする行政の団体です。

農地法では、売買や相続で所有権移転がされた場合には、農業委員会へ届け出ることが義務付けられています。よって、相続時には必ず届け出をしなければなりません。

届け出をするのは「相続開始を知った翌日から10ヶ月以内」であり、以下の書類を提出します。

届出をしなかったり虚偽の届出をした場合、10万円以下の過料が課せられますので注意しましょう

管轄の地域によっては書類の様式が異なる場合があるので、管轄の農業委員会のホームページなどで必要な書類を確認すると良いでしょう。

委員会は、基本的に各市町村に設置されていますが、農地面積の少ない地域にはない場合もあります。その際は自治体に問い合わせ、手続きをする窓口を教えてもらいましょう。

なお、法定相続人ではない方(遺贈によって農地を取得する受遺者等)が農地を相続する場合だと、「届け出」だけではなく「農業委員会の許可」を取得する必要があります

農地転用をしたい場合は、これも農業委員会に申請し許可を取得します。農地は個人の意思で勝手に賃貸アパートや駐車場にすることはできないからです。通常の土地よりも、扱いが難しいことは覚えておきましょう。

 

農地にも相続税が課税される

(1)農地の種類

 
農地も、土地の一つなので宅地と同じく相続税がかかります。農地の相続税評価は種類によって評価方法が異なります。

農地の種類には以下のものがあります。

 
相続する農地が上記のどれに該当するのかは、国税庁HPの「倍率表」を見て確認できます。
倍率とは国税庁が毎年発表しているもので、路線価が定められていない地域を評価する場合に用いるものです。

★参考:国税庁 HP 路線価図・評価倍率表

 

(2)相続税計算方法

 
続いて、相続税の計算方法です。
以下の通り、種類によって評価方法は異なります。

倍率方式は固定資産税額について、定められた倍率をかける計算方法です。

評価額=固定資産税評価額 × 評価倍率

すでに述べたように、倍率は国税庁が毎年発表する数値で路線価のない土地評価に使用する計算方法です。数値は国税庁のHPで見ることができます。

固定資産税評価額は、土地所有者に毎年交付される固定資産税の納付書で確認が可能です。

宅地比準方式は以下の計算式で算出します。

評価額=該当農地が宅地だった場合の評価額−造成費

 
造成費は農地を宅地に変える際にかかる金額で、地域ごとに値段が設定されています。
評価倍率と同様に宅地造成費も国税庁のHPで見られます。

★参考:国税庁 HP 路線価図・評価倍率表

 

相続放棄に許可は必要か

相続放棄とは相続財産の権利を全て放棄することです。相続が開始を知ってから3ヶ月以内(熟慮期間内)に家庭裁判所に申し立てをすれば、成立します。

相続放棄をするに当たって農業委員会の許可を得る必要はありません。(届け出自体も不要です。)
ただし、相続放棄は全ての財産を手放すので、農地だけでなく他の不動産屋や預貯金なども受け取れません。そのため、相続放棄はじっくりと検討した上で選択しましょう。

また、他に相続人がいない中で相続放棄をしてしまうと、管理責任が残ります。よって、家庭裁判所に申し出て、相続財産管理人を選任してもらう必要があります。

 

まとめ

農地は通常の土地と扱いが違います。農地の場合、国の食糧政策の基礎となるもののため、国によって売買や転用に関して制約が課されています。

通常の土地であれば、相続で引き継ぐ際には相続税の申告(相続財産総額が基礎控除を超える場合に限る)と相続登記(名義変更)が必要となります。農地相続では、それに加えて「農業委員会」への届け出が必要になることは覚えておきましょう。

また、簡単に転売、転用できないことも押さえておくできです。

 

 


 
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相続税の申告と納付には期限があります。この期限は基本的に延長できないため、期限内に申告と納付を完了できるようにしなければなりません

もし、期限を過ぎてしまうと、「延滞税」や「無申告課税」等の追徴課税がなされ、従来の納付額よりも多い税金を負担することになります

 

相続税の申告期限は10ヶ月以内

相続税の申告と納付期限は「相続人が相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となります。

期限の起算は「相続の開始を知った日の翌日から」とありますが、これは法定相続人が何らかの理由で、被相続人の死亡及び自身が法定相続人である事実を知ることが遅れる場合があるからです。

例えば、被相続人が一人暮らしで孤独死した場合、家族の元に連絡が行くのは、実際の死亡日(=相続開始日)とは異なります。よって、警察から連絡があった日の翌日から10ヶ月後が申告と納付の期限となります。

「10ヶ月もあれば、遅れないのでは?」と思われる方もいますが、相続では相続税の手続き以外にも、被相続人の通夜・葬儀、戸籍の収集、相続財産の調査、準確定申告など、やることが多いです。

それらを含めると、10ヶ月という期間は意外に少ないのです

加えて、仕事をされていて平日に手続きをする時間がない場合はさらに大変です。役所や金融機関の窓口は平日にしか空いていないので、時間の確保にも苦労するでしょう。

 

申告期限の延長は基本できない

相続税の申告と納付期限については原則延長が認められません。安易に延長を認めてしまえば、延長の申し出が大量に発生します。そうなると、税の公平性の観点から、良くありません。

「財産調査に時間がかかっている」「遺産分割協議が完了していない」「他の相続人との連携が上手くいっておらず書類が集まっていない」などの理由で期限に間に合わなくなるケースはありますが、これらの理由では、延長は認められません。

そのまま期限を過ぎると、加算税と延滞税を負担することになります。

 

例外的に申告期限を延長できる場合も

相続税の申告期限は絶対に延長できないわけでもありません。相応の理由があれば、最大で2ヶ月間の延長にできる可能性もあります。

以下に例を挙げておきます。
 

(1)相続人の異動

 
相続人の異動は、法定相続人の数が変更されることです。

人数が変わるのは、相続人本人の問題行為で相続廃除や相続欠格となって相続権を失ったり、生死不明で失踪宣告を受けた場合などです。

また、母親のお腹にいる胎児は相続権が認められています。そのため、相続人に胎児がいる場合について、生まれたときから2ヶ月の延長が認められているのです。

 

(2)自然災害等

 
地震や水害といった自然災害が原因で申告期限が延長される場合があります。

また、近年では新型コロナウイルス感染症によって税金関連の延長措置が取られています。

 

(3)遺贈に係る遺言書が見つかった

 
遺言書で法定相続人以外の方に財産を譲渡する旨(=遺贈)が書かれていることがあります。

この遺言書が申告期限の直前になって発見された場合、受遺者を探す手間がかかり、申告書の再作成もしなければなりません。加えて受遺者の期限内の申告も困難となるため、申告期限の延長が認められます。

 

どうして期限内申告ができないのか

(1)遺産分割が完了しない

 
遺言書がない場合や、相続人全員が同意した場合は「遺産分割協議」で相続財産の配分を話し合います。

遺産分割協議は、あくまで血縁者や関係者との話し合いなので、何事もなく円満に解決されることもありますが、大きなもめごとに発展する可能性もあります。

不要な不動産の押し付け合いや、隠し子といった予期しない相続人の発生等が原因となり、それまで仲の良かった家族同士で紛争が起きることも少なくありません。中には、数年経っても決着しない場合もあります。

遺産分割協議が完了しないことにより、期限内の申告ができなくなります。

 

(2)相続手続きに時間がかかる

 
相続税の申告は思ったよりも時間がかかります。

被相続人が亡くなった時点で保有していた財産や債務を確認しなければなりませんし、不動産や株式などは相続税評価のために複雑な計算を用いるからです。

それらに遺産分割協議も加わるとなると、期限に間に合わなくなる可能性は高いと言えるでしょう。

 

期限内に申告できなかった場合の罰則

期限内に申告できなければ、それは無申告の状態です。無申告だった場合、「無申告加算税」が以下の税率で課せられます。

無申告加算税は、税務調査の事前通知前後で税率が変わります。期限を破っただけでも、5%の税金が追加で課せられてしまいます。

また、納付が遅れた場合には延滞税が課せられます。申告と納付は同じ期限なので、申告が遅れれば納付も遅れるので、延滞税が課せられる可能性は高いでしょう。

延滞税では以下の数式で計算された税金が課せられます。

延滞税=追加で納める税額×延滞税の税率×日数÷365

 
税率は以下のとおりです。

 
令和6年の現在ですと、延滞税は、納期限の翌日から2ヶ月までは「年2.4%」でそれを過ぎると年「8.7%」となります。

 

期限内にはとりあえず概算申告する

財産調査や遺産分割協議が未完了であっても、期限内には申告を終えなければなりません

そのため、期限内に一旦、概算申告をします。この際、申告の金額としては多めに設定しておきます。多めの金額で期限内に申告と納付をしておけば、過少申告加算税も延滞税もかからないからです。

後日、財産調査や遺産分割協議がきちんと完了した際に、還付請求をすれば多く払った税金を返してもらえます。

相続税の還付を申し立ては、被相続人が亡くなってから5年10ヶ月以内です。

なお、遺産分割協議が未完了の場合、各相続人は法定相続分で遺産を分割したものとして、概算申告書を作ります。また、この申告書と共に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておきます。この書類があれば、遺産分割完了後に各種の相続税控除の特例も使えるようになるからです。

 

まとめ

相続税申告期限の延長は基本できません。よって、期限内に必ず申告と納付を終えるようにしましょう。

もし、申告期限に間に合わない場合、専門の税理士に相談してください。専門の税理士であれば、正確かつ素早く手続きを完了できるからです。

なお、期限直前で依頼すると報酬も高くなるので、不安な方は、相続開始後すぐに税理士に相談されることをおすすめします。

 

 


 
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民法では血液関係がなくても親と子の関係になれる「養子縁組制度」があります。

養子は法的には養親の「子供」ですが、相続手続きにおいて「実子」と比較してどのような立ち位置になるのか、またかかってくる相続税がどうなるのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

今回はそんな養子と相続手続きの関係についてご紹介いたします。

 

民法における養子縁組の種類

養子縁組制度は2種類に分かれます。二つの違いは主に養子縁組後の実親との関係によります。
 

(1)普通養子縁組

 
世間一般で言われる、養子縁組はこちらの制度になります。

普通養子縁組では、成立すると養親と養子の間に親子関係が認められます。そして、「養子と実の両親との親子関係はそのまま」となります。

つまり、養子には養親と実親、二つの親子関係ができるのです。そうなれば、養子は養親と実親どちらの相続においても法定相続人となることができます。

 

(2)特別養子縁組

 
特別養子縁組が普通養子縁組と違う点は、養子と実親との親子関係が無くなることです。

実親との親子関係を無くすことには、子供を保護する目的があります。虐待や育児放棄など実親に問題がある場合に、この制度は使われます。

なお、実親との親子関係が無くなるので、養子は実親が死亡した場合には法定相続人になれません。

 

法定相続人となった養子は実子と同じ権利を持つ

相続において養子は、実子と全く同じ権利を持ちます。養子であっても法律上は親子関係が認められているからです。

相続では法定相続人になれる順位が決まっていますが、養子は相続順位や法定相続分も実子と同じで、普通養子縁組でも特別養子縁組でも違いはありません

○法定相続人の順位
第一順位:死亡した人の実子・養子
第二順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
第三順位:死亡した人の兄弟姉妹
(配偶者は必ず法定相続人となります。)

 
このように相続では、実子と養子は同じ扱いになりますが、既に述べたように、養子縁組の種類によっては特徴が少し異なる点に注意しましょう。

 

養子を利用した節税効果

(1)基礎控除額が高くなる

 
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人」で計算される基礎控除額が設定されています。相続財産総額がこの金額を超えないのであれば、相続税は生じません。

この基礎控除額は、法定相続人数に応じて高くなります。養子は実子と同じく法定相続人としてカウントされるので、養子縁組によって養子が増えれば、基礎控除額も増えて相続税負担が少なくなります。

 

(2)死亡保険金の非課税額が上がる

 
死亡保険金及び死亡退職金は本人(被相続人)の死亡後に対象者にお金が支払われるため、「みなし相続財産」として相続財産と同じく相続税が課税されます。

しかし、死亡保険金及び死亡退職金は「500万円×法定相続人の数」で算出する非課税枠が特別に設けられています。

この非課税枠も法定相続人の数で金額が増えます。よって、養子人数によっては、非課税額が増えてお得になります。

 

法定相続人になれる養子の人数は決まっている

前述したように、法定相続人の数が多いほど基礎控除額や死亡保険金の非課税額は高くなります。よって、養子縁組を活用して法定相続人を増やせば、節税になります。

しかし、養子縁組による節税については「実子がいる場合は1人」「実子がいない場合は2人まで」と法定相続人としてカウントできる人数が決まっています

これは相続税法における取り決めです。養子は全員が法定相続人になれますが、控除額計算で算入できる人数には制限があるのです。(民法における養子縁組制度の人数に制限はありません。)

カウントできる人数を制限しないと、基礎控除額や死亡保険金の非課税枠を無限に増やせてしまうからです。

 

その他の注意点

(1)他の相続人とのトラブルになりやすい

養子を増やせば、法定相続人が増えます。そうなると、各相続人の取り分は減ってしまうので、相続人同士で争いになる可能性も出てきます。

養子縁組を利用する場合、他の相続人としっかりと話し合うなど、十分な配慮もするべきです。

 

(2)死亡直前の養子は認められない可能性がある

相続税法に規定された「相続税の不当減少」の観点から、相続税目的での養子縁組は税務署から認められない可能性もあります。

どのケースが認められないのか、細かい定義はありませんが、被相続人が亡くなる直前に急いで養子縁組をし、法定相続人を増やすようなやり方であれば、認められない可能性が高いと言えます

 

まとめ

遺産相続における養子の扱いについて解説しました。

養子は実子と同じ扱いですが、基礎控除や非課税枠の計算に組み込める人数に制限があります。また、実子との間でトラブルになる可能性もある点にも注意が必要です。

相続で養子がいる場合、不明点や困ったことがあれば、相続の専門家に相談しましょう。

 

 


 
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遺言では遺言内容を実行に移すための「執行者」を指名できます。執行者は遺言者の家族が指名されるケースが多いですが、遺言者の友人や税理士等の士業に依頼しても問題ありません。

遺言執行者になった場合、相続財産の調査や相続財産目録の作成、その他遺言内容に従って預貯金の解約、相続財産の名義変更などをします。

執行者の手続きはたくさんあるので、多くの時間を取られますし、手続きに慣れていない人が多く、負担も大きいと言えます。
このような理由から、遺言執行者になりたくないと考える人は一定数います

 

遺言執行者とは

遺言執行者とは遺言内容を実現する役割を持つ方です。預金口座や不動産の名義変更、財産の分配等、多くの手続きを担当します。

遺言執行者は相続において単独での手続きが可能なため、非協力的な相続人がいても、手続きがストップすることはありません。

遺言執行者は遺言書で指定されていなくても問題ありません。遺言執行者が指定されていない、指定された遺言執行者が亡くなっている場合、家庭裁判所で選任してもらえます。

 

遺言執行者の辞退は自由にできる

遺言書の中で遺言執行者に指定されている場合、指定された方は本人の意思で就任するかどうか決められます。

つまり、就任は強制ではないのです。就任は本人の都合で自由に辞退できます。「仕事が忙しい」、「手続きによる負担を避けたい」といった単純な理由で引き受けなくても良いのです。辞退によるペナルティも、もちろんありません。

なお、執行者を辞退する場合、その旨を相続関係者に必ず書面で伝えましょう。口頭や電話での連絡は、「言った・言わない」でトラブルになる可能性が高いからです。

 

遺言執行者を一度引き受けてしまうと面倒

遺言執行者は就任前であれば、簡単に辞退できます。しかし、一度就任を引き受けると面倒です。就任後に辞めることは「辞任」となりますが、この辞任は正当な事由が必要で、可否の判断も家庭裁判所がするからです。

正当な事由に該当するのは、「病気」や「怪我」「長期出張」等です。つまり、手続きが面倒だからという理由で、辞任は成立しません

辞任と辞退ではハードルが違う点に留意するべきです

よって、執行者に指定された場合、就任については慎重に検討しておきましょう。手続きが無理な場合は、遠慮なく相続人に伝えてください。

なお、相続人側は執行者就任予定の方に、就任決定の催告が可能です。就任予定者がいつまでも承諾の意思を示さないのであれば、相続手続きに遅れが生じるからです。

もし、期間内に回答がない場合、就職を承諾したものとみなします。

 

遺言執行者は誰にすべきか

遺言執行者は未成年や破産者でなければ誰でも指名できます。

相続人と遺言執行者が同一であっても法律上問題はありません。相続制度について定める民法には、遺言執行者に選任可能な人物は明記されておらず、第1009条に遺言執行者になることができない人として、未成年者・破産者が挙げられているだけだからです。

よって、相続人と顔見知りでない第三者を遺言執行者に指定する場合、トラブル防止のためにも、未成年・破産者でない事を確認できる書類を持たせるべきです。破産者かどうかは、本籍地管轄の市区町村役場が発行する身分証明書を見れば証明されます。

なお、国家資格士業の場合、未成年者および破産者は登録ができないので、税理士や行政書士等であれば、執行者の欠格要件を自動的にクリアします。

また、相続実績が多い専門家であれば、執行者の手続き業務も経験豊富なためスムーズにこなせるでしょう。

執行者になれば、相続人への進捗報告や、相続財産目録作成等、多くの手続きがあります。慣れていない方であれば、時間もかかります。そういった点から、経験豊富な専門家を執行者に選ぶことは理に適っています。

専門家に頼むと報酬はかかりますが、相続税の申告の代行など他の手続きもお願いできるため、メリットもあります。

 

遺言執行者の業務は他の人に委任可能

前述したように遺言執行者は一度引き受けてしまうと辞任が難しくなります。

しかし、執行者の職務を第三者に委任することは問題ありません。現行法では特別な事由がなくても委任できるようになりました。

つまり、遺言執行者の業務が難しいと感じたら、他の相続人に手伝ってもらったり、相続の専門家にサポートを依頼しても良いのです。

なお、業務の全部を委任しても良いですし、一部だけ頼んでも問題ありません。業務の委任については、他の相続人からの許可は不要です。

 

まとめ

遺言執行者は相続人と同一でも良いですし、友人や法人を選んでも問題ありません。

ただし、遺言執行者は遺言者の代理として様々な手続きを行うので、平日時間が取れない方や、慣れていない方を選ぶとデメリットがあります。選ばれた方は、難しいと感じれば辞退しても構いません。

遺言執行者については、専門家の選任も検討しましょう。報酬はかかるものの、知識と経験があるので、業務を素早く終わらせることができます。また他の手続きも合わせて依頼できるので、相続がスムーズに行くメリットがあります。

 

 


 
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「遺言書」が存在しない相続では、遺産の配分・分割方法は相続人全員参加の遺産分割協議で話し合います。

スムーズにいけば、各相続人の取り分は、「法定相続分」によって決まります。しかし、誰がどの遺産を取得するのか等、細かい部分を決める段階で揉める可能性はあります。

遺産分割を円滑かつ円満に進めるには、やはり遺言書があった方が良いと言えます。遺言書があるから遺族同士の争いが絶対に起きないとも言えませんが、財産配分等の手続き自体はかなりスムーズになるでしょう。

遺言書は故人の最期の意思であり、相続では強い効力を持つためです。

この遺言書は遺言者様が高齢になられてから、作成の検討をするケースが多いです。しかし、遺言はできるだけ早めに書いておく方が、メリットもあって良いのです

 

早いうちに遺言を作るメリット

早期に遺言書を作るメリットは以下の二点です。

遺言を書こうとしても、病気にかかってしまう、交通事故に遭う、自然災害などに巻き込まれてしまう場合もあります。そこで、運悪く命を落としてしまうと、遺言を残すことができません。

人生では何が起きるか予測できないので、万が一のことを考えて、遺言を書いておくのです。遺言書を残しておけば、ご自身の意思をご家族に残せるでしょう。

また、遺言書は意思能力・判断能力がある状態でなければ書けません。

例えば、加齢を原因とした認知症や脳の病気等で遺言能力が著しく低下してしまうと、その状態で書いた遺言は無効となる可能性が高くなります。(遺言能力の有無は、医師の医学的判断を尊重しつつ、最終的には裁判官の法的判断で決められます。)

身体的な不自由でも遺言作成はできますが、意思能力・判断能力がないと遺言は書けないのです。このようなリスクもあるので、遺言は早めに作成しておいた方が安心と言えます。

 

遺言書は15歳から書ける

遺言作成は民法961条で「15歳」から可能とされています。遺言作成には遺言能力が必要ですが、民法ではその能力が備わるのが15歳となっているのです。

よって、成人でなくても遺言を残せるのです。

海外派遣等、危険な地域で仕事をされる方は、若い時から遺言を残すケースがあるようです。

 

遺言書は撤回・変更が自由にできる

遺言書を何回も書きたくないという理由で、作成を渋る方がいます。

しかし、遺言書は作成した後で何度でも書き直せますし、撤回や変更も簡単にできます。遺言書は日付が新しいものが優先されるので、考えや財産・家族状況が変われば、その時に書き直せば、撤回・変更が完了します。
 

 

最適な遺言を選択すること

ここまで読んだ方は、遺言書の早期作成のメリットが分かったかと思います。遺言を作る気になった場合、作成の前にご自身に合った遺言書の種類を押さえておく必要があります。

遺言書も三つの種類があり、作成ルールも異なります。また、それぞれにメリットとデメリットもあります。

代表的な遺言書は「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」です。

自筆証書遺言は、お一人で作成可能ですが、形式の不備で無効となる場合や、保管による問題で紛失する可能性が高いのです。第三者に不備を確認してもらうことは大丈夫ですが、本文の代筆はNGです。(財産目録のみ可。)

公正証書遺言は、公正役場で公証人が遺言者と内容を話し合った上で作成するので、不備は起こりません。原本も公正役場にて保管されるので、紛失や変造といった怖れもありません。

ただし、作成の費用がかかること、証人2人を用意する手間もあります。

秘密証書遺言は遺言内容を秘密にしたうえで存在のみを公証役場で証明してもらいます。パソコンでの作成や代筆が可能なメリットがありますが、作成費用が必要、証人2人を用意する手間もかかる上、保管は自身で行うため紛失リスクが高くなります。

また、公証人による内容確認もないので無効になる怖れもあります。(秘密証書遺言ははっきり言ってデメリットだらけです。)

このように各遺言書にはそれぞれの特性がありますので、それらを理解した上で最適なものを選ぶべきなのです。きちんとした人であれば、自筆証書遺言でも良いですが、それ以外の方は、自筆証書遺言の保管制度を利用したり、公正証書遺言を選択したりしましょう。

 

遺言書作成で迷った場合は専門家を頼る

遺言作成で迷った場合は、専門の税理士へサポートを依頼しましょう。

サポートを受けることで、無効のリスクを無くすことができます。ご自身で作成すると、間違いが多くなり、それによって形式不備となるリスクが生じます。専門家に内容と形式をチェックしてもらえば、誤りも無くなります。

なお、税理士のすべてが相続専門とは限りません。よって、税理士に遺言作成を依頼する場合は、相続担当件数が多い税理士を選びましょう。

税理士は税金のプロなので、相続税対策の方法も多く知っています。遺言書作成とセットで相談すれば、節税を見据えた遺言作成をサポートしてもらえます。

納税額はできる限り抑えたいという方が多いと思いますが、相続専門の税理士に依頼することで、相続で生じる税額を安くすることができます。

 

 


 
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