遺言書を作成する際、多くの人が不安に思うことがあります。それは、「自分が亡くなった後、家族はこの遺言書を確実に見つけてくれるだろうか?」という問題です。

せっかく法的に有効な遺言書を作成しても、相続人によって発見されなければ、その遺言は存在しないのと同じになってしまいます。また、相続手続きをスムーズに進めるためには、相続開始後、できるだけ速やかに遺言書が相続人の手元に渡る必要があります。

この問題を解決する手段として、2020年から始まった法務省(法務局)の「自筆証書遺言の保管制度」が注目されています。この制度の最大の特長の一つが、遺言者の死亡後に、指定した遺族へ「遺言書が法務局にあること」を通知するシステムです。

この「通知機能」は、自筆証書遺言保管制度ならではの非常に大きなメリットと言えます。

 

「自筆証書遺言の保管制度」とは

「自筆証書遺言の保管制度」とは、ご自身で作成した自筆証書遺言の「原本」を、法務局(遺言書保管所)が有償で預かり、安全に管理する制度です。

この制度を利用することで、従来の自筆証書遺言が抱えていた多くの問題点を解消できます。
 

(1)紛失・改ざんのリスクをゼロに

 
遺言書の原本そのものを法務局が管理するため、自宅での保管と異なり、紛失や盗難のリスクがありません。また、相続人の誰かが自分に不都合な内容を書き換えるといった「改ざん」の恐れも無くせます。

 

(2)形式不備による「無効」を防げる

 
従来の自筆証書遺言では「形式不備」による無効が多発していました。「日付の記載がない」「署名や押印が漏れている」といった単純なミスで、法的な効力を失ってしまうケースです。

本制度では、保管所の担当官が民法の定める形式(日付、署名、押印など)に適合しているかを外形的にチェックしてくれます。これにより、形式不備での無効化を防止できます。

 

(3)家庭裁判所の「検認」が不要

 
従来の自筆証書遺言(自宅保管など)では、遺言者の死後、家庭裁判所に遺言書を提出して「検認」という手続きを経る必要がありました。これは相続人にとって時間と手間がかかる作業でしたが、法務局の保管制度を利用した場合、この検認手続きが一切不要となります。

 

(4)相続人による閲覧と情報共有

 
遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者(遺言で財産を受け取る人)は、全国の法務局で遺言書の内容を閲覧したり、「遺言書情報証明書」(遺言書の写し)の交付を請求したりできます。

 

制度利用の注意点

この制度には、他にも多くのメリットがありますが、同時に利用する上での注意点も存在します。

制度を利用する場合は特定の様式(フォーマット)に従う必要がある、保管を申請できる遺言書は、以下の様式に従っている必要があります。

法務局の担当官がチェックするのは、あくまで日付や署名・押印といった「形式」のみです。遺言の「内容」については一切関与しません。

例えば、記載された不動産情報が登記簿と異なっていないか、特定の相続人の「遺留分(最低限保障される相続分)」を侵害していないか、といった法的な問題点までは確認されません。内容に不安がある場合は、預ける前に第三者や税理士などの専門家に内容を相談しておくことが賢明です。

また、申請は本人が出向く必要があります。代理人による申請は認められていません。ご高齢の方やお体が不自由な方でも、ご自身で法務局へ行く必要があります。

 

「通知システム」の仕組み

(1)死亡時通知(遺言者が生前に指定)

 
これが最も画期的な機能です。遺言者は、遺言書を法務局に預ける際、「死亡時通知」の申し出ができます

これは、遺言者が亡くなった事実が戸籍に記載された時点で、法務局がその死亡情報を把握し、あらかじめ遺言者が指定していた特定の人物(最大3名まで)に対して、「〇〇様の遺言書が法務局に保管されています」という旨を自動的に通知する制度です。

通知の相手は、推定相続人の中から1名、または受遺者(遺言で財産をもらう人)や遺言執行者などを、遺言者が自由に指定できます。(※以前は1名のみでしたが、現在は3名までに拡充されました)

このシステムにより、遺言者が誰にも遺言の存在を告げずに亡くなったとしても、指定された人物には確実にその存在が伝わります。

 

(2)関係者への通知(相続人の誰かが閲覧した時)

 
遺言者が亡くなると、相続人や受遺者などの「関係者」は、法務局で遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けたりすることができます。

そして、関係者のうち誰か1人でも、この閲覧や証明書の交付請求を行うと、法務局は他の全ての関係者(相続人全員など)に対して、「遺言書が保管されています(そして、〇〇さんが内容を閲覧しました)」という事実を通知します

これによって、相続人のうちの1人が遺言書の情報を独占し、他の相続人に知らせない、といった事態を防ぐことができます。全ての相続人に情報が行き渡るため、透明性が担保され、その後の手続きも円滑に進むことが期待できます。

 

まとめ

2つの通知機能が組み合わさることで、

という、確実な情報伝達が実現します。これにより遺言者の最後の意思を確実に実現するための強力なセーフティネットとなります。

もし、ご家族が亡くなられた後に法務局から通知書が届いた場合は、それは故人が大切なメッセージを遺している証拠です。速やかに最寄りの遺言書保管所(法務局)に問い合わせ、その内容を確認するようにしてください。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

大切なご家族が亡くなると、方々への連絡、通夜、葬儀等で慌ただしい日々になります。そんな中で、「相続税の申告」をするとなると、不安になる方もいらっしゃるでしょう。

相続税の手続きは、ルールが厳格で、専門的な作業です。

ご自身でやるのも良いですが、時間がない、何からやれば良いかわからないといった場合は税理士に申告を任せた方が確実です。

「専門家に任せたほうが安心だけど、費用が高そう…」と言うお気持ちもよくわかります。

よって、今回は「相続時の税理士の報酬(費用)」について解説します。
相続の際の参考にしてください。

 

税理士に頼む場合の費用相場

まず知っておいていただきたいのは、「税理士報酬に定価はない」ということです。以前は国の定めた報酬規程がありましたが、現在は自由化され、各事務所が自由に料金を決めています。

だからこそ、「どこに頼むか」で費用が変わり、料金体系が分かりやすい事務所を選ぶことが大切です。

相続税申告の報酬は、「基本報酬」と、状況に応じた「加算報酬(追加料金)」の合計で決まるのが一般的です。トータルの相場は、「遺産総額(財産の合計額)の0.5%~3%程度」が多いです。

相場に幅があるのは、財産の内容や相続人の数によって、税理士の作業量がまったく変わってくるためです。

 

料金が相場より高くなる3つのケース

基本料金だけを見て決めてしまうと、後から追加料金がかさむこともあります。料金が上がりやすい典型的なケースを知っておきましょう。
 

(1)申告期限まで時間がない

 
「期限まであと1ヶ月しかない」といったギリギリの依頼は、「特急料金」が発生する可能性が高いです。短期間で調査・評価・作成を完了させるため、事務所側も最優先でリソースを割く必要があるからです。

 

(2)相続人の数が多い

 
相続人が増えれば、集める書類の数や連絡調整の手間も増えます。「相続人〇人目から1人につき〇円追加」といった形で、加算報酬が設定されていることが多いです。

 

(3)財産に土地が多い、特殊な地形のものがある

 
相続税申告で、税理士の腕が最も試されるのが「土地の評価」です。預貯金と違い、土地には「時価」がありません。「この土地はいくらとして申告するか」を細かく計算する必要があります。

土地の形がいびつだったり、道路付けが特殊だったりした場合は、その状況を細かく反映して評価額を下げられる(=相続税を安くできる)可能性があります

こうした評価は専門知識と手間が必要なため、土地の数が多かったり、地形が複雑だったりすると、追加の報酬が発生します。

 

「相続に強い税理士」の選び方

料金体系がわかったところで、次は「どうやって良い税理士を選ぶか」です。病院にも専門分野があるように、税理士にも得意分野があります。相続税申告は、必ず「相続を専門にしている税理士」に依頼しましょう。

見極めるポイントは4つです。
 

(1)「相続専門」をうたっているか

 
まずはホームページなどで「相続専門」や「相続税申告の実績」をアピールしているか確認しましょう。

相続専門の税理士は、節税につながる特例や土地評価のノウハウに詳しいため、税額を適正に抑える提案が期待できます。また、手続きにも慣れているため、10ヶ月の期限内にスムーズに申告を終えることができます。

 

(2)料金表がハッキリしているか

 
「料金は個別見積もり」として、料金体系を公開していない事務所は少し注意が必要です。後から追加料金を請求されるリスクがないか、しっかり確認しましょう。

ホームページに具体的な料金表や見積もり例を明示している等、明瞭な事務所を選ぶと安心です。

 

(3)「実績」は豊富か

 
「相続専門」とあっても、どのくらいの経験があるかは重要です。

目安として、「実務経験が5年以上」「年間50件以上*の相続税申告を手掛けている事務所なら、経験豊富と言えるでしょう。

相続税は法改正も多く、最新の知識と経験が何より大切です。

 

(4)「土地の評価」をしっかりやってくれそうか

 
相続財産で最も高額になりがちなのが不動産です。

「路線価」という目安を当てはめるだけでなく、「必ず現地調査をします」「土地のマイナス要因も探して評価に反映します」といった、不動産評価に力を入れている税理士を選びましょう。

 

「10ヶ月以内」の申告期限は待ってくれない

相続税申告で最も大切なルールが「期限」です。申告と納税は、「相続の発生を知った日(多くの場合、亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内」に行わなければなりません。

「10ヶ月もあれば十分」と思われるかもしれませんが、この期間は驚くほどあっという間に過ぎ去ります。なぜなら、申告書を作る前の準備が多いからです。

これらをその他の手続きと並行して進める必要があるため、10ヶ月は決して長くありません

 

期限を過ぎれば「ペナルティ」

もし、期限に間に合わなかったり、申告した内容が間違っていたりすると、どうなるのでしょうか?その場合、本来納める税金とは別に、重たい「ペナルティ」の税金が課されます

例えば、期限に遅れたことに対する「延滞税(利息のようなもの)」や、申告しなかった罰金としての「無申告加算税」、申告額が少なかった場合の「過少申告加算税」などです。

せっかく残された大切な財産を、ペナルティの税金で減らしてしまうのは避けたいですよね。

だからこそ、相続税の申告は「期限内に」「正しく」行うことが鉄則。この2つをご自身でクリアするのは、実はとてもハードルが高いのです。

だからこそ税理士を頼って欲しいのです。

 

まとめ

相続税の申告期限は、10ヶ月。この短い期間に、相続人の確定、財産調査、評価、遺産分割協議、そして申告書の作成と納税まで、すべてを完了させなければなりません。

ご自身ですべて処理しようとすると大変なご負担となります。

もし、「何から手をつけていいか分からない」「忙しくて時間が取れない」「手続きが難しそうだ」と感じたら、どうか一人で抱え込まず、専門家にご相談ください。

相続税申告のプロとして、何をすべきか、どう進めるべきかを分かりやすくサポートし、皆様の不安を安心に変えるお手伝いをいたします。初回のご相談は無料で承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

2018年に行われた大規模な相続法改正の一環として、新たに「配偶者居住権」という制度が定められ、2020年4月1日から施行されています。

この制度は、日本の高齢化社会や家族形態の変化を背景として、長年連れ添った被相続人の配偶者が相続後も安心して生活を続けられるよう制定されました。

以前は、自宅が遺産の大部分を占める場合、遺産分割の際に深刻な問題が生じることがありました。法定相続分で遺産を分けるために、住み慣れた家を売らなくてはならず、配偶者が住む場所を失ってしまうという問題や、逆に、配偶者が家のみを相続して、生活費となるはずの預貯金が一切もらえず、その後の生活に困窮する問題等々です。

「配偶者居住権」は、こうした問題を解決し、配偶者の「住まい」を法的に守る仕組みです。

 

配偶者居住権とその仕組み

この制度の一番のポイントは、家の「所有権」と「住む権利(居住権)」を法律上、分けて扱えるようにした点です。

具体的には、被相続人の家に住んでいた配偶者は、原則として生涯、家賃などを払うことなくその家に住み続けられる権利というわけです。

この仕組みにより、配偶者は家の所有権を持っていなくても、住まいを失わずに済むわけです。

 

「長期」と「短期」-二つの配偶者居住権

配偶者の住まいを守る権利には、実は「短期」と「長期」の2種類があります
 

(1)配偶者短期居住権

 
こちらは、遺産分割協議がまとまるまでの間の、いわば「応急措置」としての権利です。

相続が始まってから最低でも6ヶ月間は、家を追い出される心配がなくなります。遺言がなくても法律上自動的に認められ、相続税もかかりません。

ただし、長期の居住権が建物全体に及ぶのに対し、短期の居住権では以前から居住していた部分のみが対象です。

 

(2)配偶者長期居住権

 
こちらが生涯の住まいを保障する権利です。

前述の通り、期間は原則として配偶者の終身までで、範囲は建物全体に及びます。ただし、「短期」と違い、自動で権利は発生しません

適用するには以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

 

配偶者居住権の具体的な活用事例

この制度がどのように役立つのか、具体的な例で解説いたします。

【事例】
相続人:妻・長男
遺産総額:4,000万円
(内訳:自宅2,000万円、預貯金2,000万円)

 

<これまでの問題点>
法律通りの相続分は、妻と長男で半分(各2,000万円)です。

もし妻が住み続けるために自宅(2,000万円)を相続すると、生活費となる預貯金がゼロになってしまいます。かといって預貯金も確保しようとすると、自宅を売るしかありませんでした。

 

<配偶者居住権を使った場合>
話し合いで、自宅(2,000万円)の権利を以下に分けます。
配偶者居住権(妻が住む権利):評価額1,000万円
所有権(居住権の負担付き):評価額1,000万円
※評価額は年齢などで変わりますが、ここでは仮に半々とします。

これにより、以下のような分け方が可能になります。
妻が相続する財産(合計2,000万円)
=「配偶者居住権(1,000万円)」+「預貯金(1,000万円)」

長男が相続する財産(合計2,000万円)
=「所有権(1,000万円)」+「預貯金(1,000万円)」

この結果、妻は「自宅に生涯住み続ける権利」と「当面の生活資金1,000万円」の両方を手に入れることができました。一方、長男も法律通りの財産を受け取れ、将来母が亡くなった後には、居住権の消えた完全な所有権を取得します。

このように、家を無理に売却することなく、関係者全員が納得しやすい形で分割できるのが、この制度の大きなメリットです。

 

注意すべきポイント

配偶者居住権はとても便利なものですが、それに伴う義務や注意点も存在します。

 

まとめ

配偶者居住権は、残された配偶者の生活を守りつつ、他の相続人との公平な遺産分割を助ける、とても有効な選択肢です。

特に、遺産の中心が自宅不動産である場合に役立つでしょう。

ただし、この権利(長期)は自動でもらえるものではなく、生前の遺言書や、相続後の相続人全員との話し合いによる合意が必要です。

相続は非常に専門的で複雑な問題ですので、自分たちだけで判断せず、相続問題に詳しい専門家に相談することをお勧めします。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

亡くなった方の意思を相続に反映させる遺言書は、円満な相続を実現し、手続きを円滑に進めるための重要な書面です。

しかし、遺品整理などの過程で、内容が異なる複数の遺言書が見つかるケースも少なくありません。

そのような場合、どの遺言書を有効とすべきなのでしょうか。ここでは、複数の遺言書が存在するときの優先順位と、関連する注意点について分かりやすく解説します。

 

基本的な遺言書の種類と特徴をおさらい

遺言書には、大きく分けて「普通方式」と「特別方式」の2種類があります。一般的に私たちが目にするのは「普通方式」の遺言です。「特別方式」は、死が目前に迫っているなど特殊な状況下でのみ認められるため、作成されるケースは限定的です。
 

(1)普通方式遺言

 
いつでも作成が可能な一般的な遺言書で、形式によって以下の3つに分類されます。

自筆証書遺言
特徴:遺言者本人が、財産目録以外の全文・日付・氏名を自書し、押印して作成します。
メリット:紙とペンがあればいつでも作成でき、費用がかかりません。内容を秘密にできるという利点もあります。
デメリット:法律で定められた形式を守らないと無効になるリスクがあります。また、自宅などで保管すると紛失、改ざん、隠匿のおそれも考えられます。
補足:紛失や改ざんのリスクを避けるため、法務局で原本を保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」が利用できます。

公正証書遺言
特徴:公証役場で、公証人と証人2名以上の立ち会いのもと作成します。
メリット:専門家である公証人が関与するため形式不備で無効になる心配がありません。原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽造のリスクも極めて低いです。相続開始後の家庭裁判所による「検認」手続きが不要な点も大きな利点です。
デメリット:作成に費用と手間がかかり、証人を探す必要があります。

秘密証書遺言
特徴:遺言者本人が作成・署名押印した遺言書を封筒に入れ、公証役場でその存在を証明してもらう方式です。
メリット:遺言の内容を誰にも知られずに秘密にできます。
デメリット:公証人は内容を確認しないため、形式の不備によって無効となるリスクが残ります。また、作成費用や証人が必要です。

 

(2)特別方式遺言

 
病気や事故で死期が迫っていたり、船の遭難や伝染病による隔離など、普通方式での遺言が不可能な特殊な状況下で認められる遺言方式です。

作成には証人の立ち会いが必要となります。

 

遺言書の優先順位は「日付」で決まる

遺言の形式を説明しましたが、自筆証書や公正証書といった遺言書の種類によって、効力に優劣がつくことはありません

複数の遺言書が見つかった際に最も重要になるのは「作成された日付」です。法律上では、最も新しい日付の遺言書が有効とされます

例えば、古い日付の公正証書遺言と、それより新しい日付の自筆証書遺言が見つかった場合、たとえ1日の違いであっても、新しい日付の自筆証書遺言の内容が優先されます。

ただし、注意点があります。それは、新しい遺言書の内容と矛盾しない(抵触しない)部分については、古い遺言書の効力も維持されるという点です

例:
古い遺言:「預貯金のすべてを長男に相続させる」
新しい遺言:「所有する不動産を次男に相続させる」

→この場合、預貯金と不動産は別の財産であり内容が抵触しないため、両方の遺言が有効となります。しかし、新しい遺言書で「財産の60%を次男に相続させる」といった包括的な指定がされている場合は、それ以前の遺言は効力を失うことになります。

 

関連する重要知識

(1)日付がない等の形式不備の遺言書は無効

 
遺言書には作成年月日の記載が必須です。「〇年〇月吉日」のような日付が特定できない書き方や、日付そのものがない遺言書は無効となります。

その他にも、自筆証書遺言で本文が自筆でなかったり(パソコンで作成など)、署名や押印がなかったりする場合も形式不備で無効と判断されます。

 

(2)遺言と遺産分割協議、どちらが優先か

 
相続において、被相続人の最終意思である遺言は非常に強い効力を持ち、原則として遺産分割協議よりも優先されます。もし遺産分割協議が成立した後に遺言書が見つかった場合は、原則としてその遺言の内容に従う必要があります。

ただし、相続人全員と受遺者(遺言で財産を受け取る人)が合意すれば、遺言の内容とは異なる遺産分割協議を成立させることも可能です。

 

(3)トラブル回避のために新しい遺言書を作成する際のポイント

 
遺言書はいつでも書き直すことができますが、複数の遺言書が残っていると、どの部分が有効なのか解釈が複雑になり、相続人間のトラブルの原因になりかねません。

将来の混乱を避けるため、新しい遺言書を作成する際には、「令和〇年〇月〇日付で作成した遺言は、本遺言をもってすべて撤回する」といった一文を加えておきましょう。

これにより、以前の遺言が無効であることが明確になり、新しい遺言書に従えば良くなります。この方が遺族側も分かりやすいですし、相続手続きもスムーズに進みます。

 

まとめ

今回は遺言書の優先順位について解説いたしました。日付によって、優先順位は決まるものの、抵触しない部分については過去の遺言も有効となります。

そもそも複数の遺言が出てくると遺族側は混乱しますから、遺言者側としては古いものを破棄か撤回してあげた方が良いでしょう。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

大切なご家族が亡くなられて、深い悲しみの中、相続の手続きを進めなければならない…。「何から手をつけていいかわからない」「やるべきことが多すぎて、頭が真っ白…」多くの方が、そんな不安な気持ちでいっぱいになるかと思います。

そんな、途方に暮れてしまいそうな時に、事前にあれば便利なもの、それが「財産目録」です。

財産目録とは、故人の財産のリストです。多くの場合、財産目録の作成は義務ではありませんが、相続時の負担軽減のためにも作成しておくべきものです。

今回は、この「財産目録」がなぜ必要なのか、そしてどうやって作ればいいのかを、一緒に見ていきましょう。

 

そもそも「財産目録」とは

財産目録とは、シンプルに言うと、「故人(被相続人)が所有していた財産のリスト」です。

財産目録に記すのは預貯金、不動産、株式などのプラスの財産だけではありません。マイナスの財産もすべて書き出す必要があります。

 
借金もリストに入れるの?と驚かれるかもしれません。しかしながら、相続ではマイナスの財産も引き継がれます。もし、プラスの財産だけを見て相続を決めてしまい、後から大きな借金が見つかったら大変ですよね。

財産目録は、そうした「知らなかった…」という事態を防ぎ、ご家族が「相続するのか、それとも放棄するのか」を冷静に判断するための、大切な判断材料にもなってくれるのです

 

財産目録作成のメリット

(1)全ての財産が明らかになる

 
相続ではまず、すべての財産を把握することがスタートです。

遺言書で配分が指定されていなければ、法定相続人同士で財産の分配について協議しますが、財産が不明のままでは、話し合えません。

また、相続人間で疑いの気持ちも生まれてしまいます。『兄貴だけ、何か隠してるんじゃないか…』『本当はもっと預金があったはずでは…』等々、財産の全体像がハッキリしないせいで、争いのきっかけになってしまうこともあります。

その点、財産目録があれば、全員が同じリストを見ながらオープンに話し合いができます。「隠し事はない」という透明性が、互いの信頼関係を守り、円満な話し合いの土台を作ってくれるのです。

なお、全ての財産が明らかになっていれば、相続放棄を選ぶ指標にもなります。

前述したように相続ではマイナスの財産も取得します。よって、目録があると、遺産を相続した際に損失が出るかがすぐにわかります。

 

(2)相続手続きをスムーズにする

 
相続では、銀行での預金解約や、法務局での不動産の名義変更など、色々な手続きが必要です。そのため、財産の情報をまとめておかないと、時間も手間もかかってしまいます。

逆に財産目録があれば、必要な情報がすぐに分かり、面倒な手続きがスムーズに進みます

 

(3)遺言書がよりわかりやすくなる

 
遺言書を作成の際には、財産目録を作成しておくべきです。

遺言書には財産の分配方法や内容について書きますが、財産目録があれば、遺言者・受遺者共に財産を把握できて便利だからです

 

財産目録は誰が作るのか

財産目録は誰が作成しても構いませんが、相続手続きがスムーズになるように被相続人が生前に作成しておくと良いでしょう。

財産目録と遺言書があれば、相続手続きはかなり楽になります。

被相続人が目録を作成していない場合は、相続開始後に中心的に手続きを進めていく相続人が作成する場合が多いです。

 

目録作成が必須のケースもある

基本的には「作ったほうがいい」財産目録ですが、以下のケースでは作成が必須となっています。

 
遺産分割の調停の場合、家庭裁判所に財産目録を提出します。また、遺言書で遺言執行者が指定されていると、遺言執行者は相続人に交付するための財産目録を作らなければなりません。

 

目録作成時のポイント

(1)誰が見てもわかるように「具体的」に書く

 
例えば、預金なら「〇〇銀行の預金」だけでは不十分。「〇〇銀行 △△支店、普通預金、口座番号12345、残高〇〇円」というように、手続きする人が迷わないように詳しく書きましょう。

不動産なら、権利証(登記識別情報)や固定資産税の納税通知書を見ながら、正確な情報を書き写しましょう。

 

(2)「抜け漏れ」がないように、しっかりチェック

 
もし、目録を作った後に新たな財産が見つかると、せっかく終わった遺産の話し合いを、もう一度やり直さなければならなくなります。それは、相続人にとって大きな負担です。

よって、目録へは記載漏れがないように気をつけましょう。

 

まとめ

財産目録があるだけで、相続時の手続きがまったく違ったものになります。財産目録があることで遺産が明確になるので、相続人は無用な混乱に巻き込まれずに済むのです。

相続税についても目録を元に申告書を作成できますので、手間が省け、申告漏れも防ぐことができます。

なお、「財産の種類が多くて、どこから手をつけていいか分からない」「忙しくて、調べる時間がない…」という方も、たくさんいらっしゃると思います。

そんな時は、相続の専門家に財産の調査と作成をご依頼ください。専門家に頼むことで、時間の削減と安心を得られます。具体的なお話が聞きたい場合、まずはご相談ください。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

相続税が生じる場合には申告と納付をしますが、納付は原則として「現金での一括納付」となっています。よって、相続税額や遺産の内容によっては一括納付が難しい場合も起こりえます。

相続税が払えない場合の対処方法として、前回のコラムで四つの方法を述べましたが、今回はその中の「物納」について説明いたします。

 

相続税の物納制度とは

相続税の納付は原則「現金一括払い」です。

しかし、相続人に現金がなく、相続財産の多くが土地や建物といった不動産である場合、どうしても納税資金が用意できないことがあります。このようなときに、一定の条件を満たせば、現金の代わりに相続財産を国に納める制度が「物納」です

対象となる財産は土地や国債、株式などです。

 

相続税の物納ができる流れとは

現金で払えないからといって、いきなり物納制度を使えるわけではありません。分割払いである延納を利用しても、納付できない場合にだけ、物納が認められるのです。

上記の流れを汲んでから、物納制度が利用できます。よって、物納制度の要件をまとめると以下の通りになります。

 

物納が認められる財産とは

物納に使える財産は法律で順位が決められており、原則としてその順番に従って提出する必要があります。

該当の財産は相続で取得し、日本国内に所在がある、所轄税務署の事前許可を得ていることも条件となります。
 

(1)第1順位

不動産関連については、何でも良いわけではなく、以下のような条件を満たす必要があります。

条件を満たさない場合は物納申請が却下されます。

 

(2)第2順位

 

(3)第3順位

動産に該当するのは美術品(絵画、骨董品など)や貴金属(地金、宝石類など)です。動産は評価額の妥当性や保管の難しさから、実際に認められるケースは非常に少ないです。
 

★参考:国税庁HP 相続税の物納の手引

 
物納劣後財産とは、物納に充てられるが順位が後れる財産です。
同じ順位の中でも、充てられる順番としては後になります。

 

相続税の物納が減っている理由

かつては、現金の納税が難しい場合に「物納」がよく利用されていました。しかし近年では利用件数が激減し、年間で数十件程度にまで落ち込んでいます。その背景には、次のような理由があります。
 

(1)延納制度が選択されやすい

 
延納制度では、最長20年まで分割して相続税を支払えるようになっています。

利子税の負担はあるものの、物納に比べて手続きが容易で、実務的にも利用しやすいと言えます。そのため、相続では延納が適用されるケースがほとんどです。

 

(2)物納できる財産の要件が厳しい

 
物納が認められる財産は、国にとって「処分が容易で管理しやすい財産」です。

前述したように、境界が不明確な土地、借地権など権利関係が複雑な土地、担保がついている不動産等々では物納申請が却下されます。

要するに、申請のハードルが高いのです。

 

(3)手続きの煩雑さ

 
物納は申請書類の作成も非常に複雑です。財産の詳細な資料、境界の確認、権利関係の証明などを揃える必要があり、専門家のサポートなしでは対応が困難な場合が多いです。
こういった観点からも、物納を選ぶメリットは小さいのです。

 

(4)国側の受け入れ負担

 
国にとっても、物納された財産はすぐに売却できるとは限らず、特に不動産は維持管理コストがかかるという問題があります。

面倒なものは国としても積極的には受け入れたくないのが実情です。そのため審査が厳格化され、認められる件数が減少しているのです。

 

まとめ

これらの理由によって、現在の物納は「相続税納付の最後の選択肢」となっており、利用はほとんど見られなくなっています。

申請のハードルも高いので、利用する場合は、専門家への相談は必須と言えます。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

相続税は相続財産の総額が基礎控除額を超えている場合に生じます。

基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されますが、相続人が配偶者と子ども2人なら法定相続人は3人となり、基礎控除額は4,800万円になります。もし、相続財産総額が5,000万円であれば超過分の200万円に相続税が課されます。

この仕組みを考慮すれば、法定相続人が少なくかつ相続財産総額が高ければ相続税も高額になります。相続税が高額になれば、払えないケースも出てきます

 

相続税が支払えなくなるケースがある

「相続税は相続財産から払えば良い」とたくさんの方が思うかもしれませんが、遺産の内容によっては、それが難しい場合もあります。

代表的な例は遺産総額のほとんどが不動産のケースです。

例えば、法定相続人が子ども1人で相続財産の内訳が以下だった場合。

自宅土地建物:4,900万円
預金:100万円
合計:5,000万円

この時の相続税額は160万円ですから、預金全額を使っても相続税を払えません。不動産を売れば良いという方もいますが、不動産はすぐに売れるわけではありません。相続税は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に現金による一括納付が原則ですから、間に合わない可能性の方が高いのです。

このように、早期の現金化が難しい財産の割合が大きい場合、相続税が払えなくなるリスクも大きくなるのです

他のケースとしては、遺産分割協議がまとまらない場合です。

遺言書がない相続では、遺産分割協議によって相続各人の取り分を決定しますが、折り合いがつかずに協議がまとまらない場合もあります。

故人の口座は基本的には勝手に引き下ろせないように凍結処理がされますが、解除には遺産分割協議の完了が条件となります。そのため、遺産分割協議がまとまっていないと預金が引き出せず、相続税は相続人の個人資産で払うこととなります。

つまり、個人資産が不足する場合には相続税が支払えないこととなります

 

相続税が支払えないとどうなるのか

相続税については期限内に納付できなければ「延滞税」が課されます

延滞税の額は、法定納期限の翌日から、相続税を納付した日までの日数で決まります。

延滞税の税率は2段階方式になっていて、納期限の翌日から2ヶ月以内は年7.3%か「延滞税特例基準割合+1%」、2ヶ月を過ぎると年14.6%か「延滞税特例基準割合+7.3%」になります。

適用される税率はいずれも低いほうです。現在は実際の金利の方が安いため、そちらが適用されます。

令和7年1月1日~令和7年12月31日の期間内であれば、2ヶ月以内は「2.4%」、2ヶ月を過ぎると「8.7%」となります。

★参考:国税庁HP 延滞税の割合

 

相続税が払えない際の四つの対処方法

(1)延納制度の利用

 
延納制度は納付期限までに現金一括での納付が難しいケースに利用できます。「分割納付なら支払える範囲」の相続税額であること、担保を提供すること等々、制度要件を満たした上で税務署が認めれば適用可能です。

延納のメリットは相続税を年ごとに分割で支払うことができる点です。支払い年数は担保によって決まります。

デメリットは、納税額に「利子税」がかかることです。利子税は相続財産に占める不動産の割合や、延納期間によって税率が異なります。(年1.2〜6%程度)がかかります。

 

(2)物納制度の利用

 
物納とは相続税を延納でも支払えない場合、相続財産そのもので納付する制度です。

物納の対象資産は国が処理しやすい不動産や上場株式等に限定されます。物納はもので相続税を払うことから、相続財産内に不動産が多ければ利用しやすいと思いがちですが、実際は申請のハードルが高く、希望通りに制度適用されるとは限りません。

また、納める財産は相続税評価額で評価されるので、不動産は時価より低い金額で評価されることとなります。(個人で売却するよりも損をする。)

 

(3)不動産などの売却

 
相続した土地や建物を自身で売却して現金化し、納税資金に充てる方法です。

遺言書の指定や、分割協議の完了で取得者が決まっているのであれば、不動産の売却は可能です。
ただし、前述したように相続税納付には期限があるので、その期限内に売却できるかは不明です。

 

(4)銀行からの融資(相続税納付資金ローン)

 
これは金融機関等の「相続税納付資金ローン」を利用する方法です。利息はかかりますが、短期間でまとまった現金が準備できます。

ただし、利息負担があるため、延納との比較検討が必要です。融資利率が延納の利子税と比べて低ければ、金融機関から借り入れを行った方が有利です。

なお、融資には借入額にもよりますが、基本的には担保や保証人が必要になります。また、当然ながら審査もあるので、相続税の納付期限までに融資が受けられるように早めに動かなくてはなりません。

 

まとめ

相続税は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に現金一括で納めなくてはなりません。

しかしながら、相続財産内容や、ご自身の状況から、支払い額を工面できない場合もあります。そのようなケースでは、今回ご紹介したいくつかの方法を利用して、相続税の支払いに対処しましょう。

判断が難しい場合には、是非とも相続専門の税理士にご相談ください。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

相続財産が基礎控除額を上回る場合には、相続税の申告手続きと支払いが必要になります。

相続税の金額は相続財産に応じて決まります。相続税には特例控除もあるので、それらを利用して支払額を抑えることもできますが、それでも相続税額が高い、遺産に現金資産がないといった場合には納税が困難となるケースがあります。

一括での納税が困難であっても、通常であれば延納や物納といった制度を利用して支払いをしていきますが、中には支払い自体を拒否する方もいます。

支払いを拒否する考えとしては「そもそも親が築いた財産に税金をかけるのは理不尽だ」という税制への反発もあれば、「税務署も全案件を調べきれないのでは」といった「見つからなければ大丈夫」と考える方もいます。

確かに、相続税の確定と納税義務には時効が設けられていますが、基本的に税務署は支払い逃れを許しません。

逆に相続税の支払いをしないままでいると、後々に多額の追徴課税を受けるリスクを負うことになります。

 

相続税の申告と納付の期限

まず相続税の申告と納付の期限について説明いたします。申告と納付は同じ期限が設けられており、「納税者が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となっています。

相続開始を知った日とは、「納税者である相続人が被相続人の死亡を知った」かつ「自分がその相続の相続人であることを知った」日です。

被相続人や他の家族と疎遠であまり連絡を取らなかったり、海外在住の場合は、相続開始日と相続開始を知る日が異なるケースがあります。

しかしながら、「相続の開始を知る」のはほとんどの場合、相続開始日と同じタイミングですので、「相続開始を知った日=相続開始日」と覚えておきましょう。

「知った日」が大幅に遅れていた場合、証拠として手紙等の郵便物を残しておくか、口頭で知った場合には事実関係をメモにまとめておくことが大切です。

 

相続税の時効は二つある

相続税の時効については二つの時効があります。
 

(1)除斥期間

 
まずは「除斥期間」です。税務署は申告義務があるにもかかわらず無申告あるいは申告漏れをした方には、課税処分を命じますが、それができるのは除斥期間内となります。

つまり、除斥期間を過ぎてしまうと、税務署は相続税の賦課ができなくなります。賦課権の消滅は、納税義務者側から主張せずとも自動で成立します。

除斥期間は相続税の法定申告期限の翌日から、原則「5年」となっています。しかし、「偽りその他不正の行為」によって税額を免れたり、還付を受けた場合は7年に延長されます。

不正行為とは、相続財産を故意に隠したり、財産に関する書類を改ざん・偽造した場合などを指します。また、「申告義務があると分かっていたのに申告しなかった」ことが明らかである場合も、期間は7年に延長されます。

除斥期間には中断や停止はなく、税務署がどのように動いても期間の進行は止まりません。そのため、期間を過ぎれば自動的に時効が成立します。

 

(2)徴収権の時効

 
もう一つは徴収権です。これはそのままの意味で先述の賦課によって確定した相続税を回収できる権利です。

徴収権の時効は、賦課決定から5年間です。この期間を過ぎると、税務署は催促や財産差押えなどの強制的な徴収を行うことができなくなります。

徴収権の時効も、納税者側から主張しなくても自動的に成立しますが、こちらには中断や停止が存在します。

国税庁による催促や差押えなどの手続きが行われると、時効の進行が止まったり、起算日が巻き戻されたりします。これにより、実質的には徴収権の時効は延々と先延ばしにされる可能性があります。

 

時効が成立する可能性は非常に低い

こうした相続税の時効制度を踏まえると、実際に時効が成立して相続税の支払いを免れる可能性はほとんどありません
税務署は相続税調査のプロであり、被相続人の死亡情報から銀行口座の預金移動など、資産の動きを詳しく把握しています。

特に預金の入出金履歴は長期間にわたり遡って調べることができ、怪しい動きがあればさらに詳細な調査が行われます。最終的には税務調査を実施し、無申告や申告漏れを発見します。

現金のまま自宅で保管しておくタンス預金等も、実はバレやすく、見逃されることはありません。タンス預金が税務調査で見つかった場合、悪質と判断されれば、重い追徴を課される可能性も高いのです。

基本的には除斥期間内に課税処分が行われ、その後、徴収期間内に督促や差押えがされるため、最終的には納税を免れることはできません。

 

相続税の申告期限はあっという間にやって来る

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。10ヶ月と聞くと余裕がありそうに思えますが、期限は思ったよりも早くにやってきます

これは相続ではやらなくてはならない作業がたくさんあるからです。

通夜、葬儀、戸籍の収集、財産調査、遺言書の検認等々、各手続きは一つ一つ時間がかかり、すぐに終わるものでもありません。

そのため、相続税の申告に間に合わなくなってしまう可能性は十分あるのです。もし、期限を過ぎてしまった場合、本来の相続税に加えて無申告加算税・延滞税を納めなければなりません。

また、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」など、大幅に税額を減らせる制度も期限内申告が条件です。これらを活用するためにも、期限内の申告・納付が大切です。

 

まとめ

相続税の時効は2つに区分され、それぞれ原則5年で完成します。しかし、期限があると言っても、実際には時効が成立するケースはありません。

「黙っていれば大丈夫」という考えは非常に危険です。

相続税は必ず期限内に正しく申告・納付することが大切です。もし期限内に間に合わないかもしれないと感じたら、早めに税理士に相談しましょう。

税理士に相談することで、正確な申告はもちろん納付についても延納・物納といった制度の活用を含めた適切な対応が可能になります。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。

相続財産に賃貸アパートやマンションなどの不動産が含まれている場合、問題となるのは「その物件を誰が相続するか」だけでなく、「その物件から得られる家賃収入は誰のものか」という点です。

賃貸物件は、継続的に収益を生みます。そのため、相続開始時点で受け取る方が明確でなければ、相続人同士でトラブルになる可能性があります。

今回は相続における賃貸物件の家賃収入の扱いについて解説します。

 

家賃収入はいつ・誰のものになるのか

賃貸物件の家賃収入は、相続開始前後や遺産分割の進行状況によって、受け取るべき相続人が変わります。以下のように3つのパターンに分けて考えるとわかりやすくなります。
 

(1)相続開始前に発生した家賃収入

 
相続が発生する前、つまり被相続人の存命中に発生した家賃収入は、当然ながら被相続人本人の所得です。

よって、そのお金は遺産の一部ですから、相続人全員の分配対象になります

 

(2)相続開始後〜遺産分割協議前の家賃収入

 
相続開始から遺産分割完了までに発生した賃料について、遺産分割前であれば不動産取得者も確定していないので、家賃収入は相続人同士の共有財産と見ることができます

であれば、共有状態にある相続財産から生じた収益は、法定相続分に応じて各相続人のものとなります。

もし相続人全員が「賃料はすべて取得者のものとすること」に合意すれば、家賃収入は遺産分割の対象とはなりません。

 

(3)遺産分割協議が成立した後の家賃収入

 
遺産分割協議が成立し賃貸物件の取得者が正式に決まった後は、家賃収入はその相続人個人のものになります

相続人のうち長男が賃貸アパートを相続することで合意がとれた場合、以後の家賃収入はすべて長男の所得として処理されます。

既に述べたように、遺産分割協議完了前に生じたお金は相続人全員のものですが、協議次第では取得者のものとなります

 

遺言書の有無で取り扱いが変わる

家賃収入を誰が受け取るのかという点に関しては、遺言書の存在も大きな意味を持ちます。
 

(1)遺言書がある場合

 
遺言書の中で賃貸物件の取得者を指定している場合、原則としてその人が相続開始後の家賃収入を受け取ることができます。

 

(2)遺言書がない場合

 
遺言書ない場合、遺産分割協議成立までは、家賃収入は相続人全員の共有財産として分配されるのが基本です。

合意なしに一部の相続人が賃料を独占することは許されません。

 

家賃収入に関する税務手続き──準確定申告とは?

賃貸収入に関して、相続税申告以外に税務上必要な手続きがあります。それが「準確定申告」です。

被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までに得た所得については、相続人が代理で申告する義務があります。これが「準確定申告」で、相続開始から4か月以内に税務署に提出する必要があります。

申告漏れがあると延滞税や加算税が発生するので忘れないようにしましょう。不安な場合は、税理士など専門家のサポートを受けることも検討すべきです。

 

相続後に物件を売却・管理する際の注意点

賃貸物件を相続したものの、「収益物件として維持せず売却したい」と考える人も多いでしょう。しかし、賃貸物件には借主(入居者)という第三者が存在します。法律上、その権利は手厚く保護されているため、相続人が自由に退去を求めることはできません。

定期借家契約であれば契約期間満了で解約できますが、一般的な普通借家契約の場合は、正当事由(例:建物の老朽化、貸主が自宅として使用する予定など)が必要となります。

入居者との交渉は慎重に進める必要があり、時間がかかることもあります。相続した物件をどうするかについては、長期的な資産戦略の視点で冷静に判断しましょう。

 

まとめ

賃貸物件を含む相続では、家賃収入の取り扱いについては誤解が生じやすく、相続人同士でのトラブルの原因になることもあります。

相続開始のタイミングや、遺産分割協議の進捗、遺言書の有無などによって、扱いが変わってくるため注意しましょう。

また、準確定申告などの手続きも必要です。迷う場合は早い段階で専門家に相談しておきましょう。専門家に頼めば、スムーズに相続手続きを進めることができるでしょう。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

年に数回、北本市役所にて税務相談員を受け持っている経験豊富な税理士が対応させていただきます
初回の相談は無料なので、是非ご利用ください。

お電話での対応は[048-592-5533] 受付時間9:00〜18:00です。
メールは[こちら]まで 24時間受付中。