相続財産が基礎控除額を上回る場合には、相続税の申告手続きと支払いが必要になります。

相続税の金額は相続財産に応じて決まります。相続税には特例控除もあるので、それらを利用して支払額を抑えることもできますが、それでも相続税額が高い、遺産に現金資産がないといった場合には納税が困難となるケースがあります。

一括での納税が困難であっても、通常であれば延納や物納といった制度を利用して支払いをしていきますが、中には支払い自体を拒否する方もいます。

支払いを拒否する考えとしては「そもそも親が築いた財産に税金をかけるのは理不尽だ」という税制への反発もあれば、「税務署も全案件を調べきれないのでは」といった「見つからなければ大丈夫」と考える方もいます。

確かに、相続税の確定と納税義務には時効が設けられていますが、基本的に税務署は支払い逃れを許しません。

逆に相続税の支払いをしないままでいると、後々に多額の追徴課税を受けるリスクを負うことになります。

 

相続税の申告と納付の期限

まず相続税の申告と納付の期限について説明いたします。申告と納付は同じ期限が設けられており、「納税者が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となっています。

相続開始を知った日とは、「納税者である相続人が被相続人の死亡を知った」かつ「自分がその相続の相続人であることを知った」日です。

被相続人や他の家族と疎遠であまり連絡を取らなかったり、海外在住の場合は、相続開始日と相続開始を知る日が異なるケースがあります。

しかしながら、「相続の開始を知る」のはほとんどの場合、相続開始日と同じタイミングですので、「相続開始を知った日=相続開始日」と覚えておきましょう。

「知った日」が大幅に遅れていた場合、証拠として手紙等の郵便物を残しておくか、口頭で知った場合には事実関係をメモにまとめておくことが大切です。

 

相続税の時効は二つある

相続税の時効については二つの時効があります。
 

(1)除斥期間

 
まずは「除斥期間」です。税務署は申告義務があるにもかかわらず無申告あるいは申告漏れをした方には、課税処分を命じますが、それができるのは除斥期間内となります。

つまり、除斥期間を過ぎてしまうと、税務署は相続税の賦課ができなくなります。賦課権の消滅は、納税義務者側から主張せずとも自動で成立します。

除斥期間は相続税の法定申告期限の翌日から、原則「5年」となっています。しかし、「偽りその他不正の行為」によって税額を免れたり、還付を受けた場合は7年に延長されます。

不正行為とは、相続財産を故意に隠したり、財産に関する書類を改ざん・偽造した場合などを指します。また、「申告義務があると分かっていたのに申告しなかった」ことが明らかである場合も、期間は7年に延長されます。

除斥期間には中断や停止はなく、税務署がどのように動いても期間の進行は止まりません。そのため、期間を過ぎれば自動的に時効が成立します。

 

(2)徴収権の時効

 
もう一つは徴収権です。これはそのままの意味で先述の賦課によって確定した相続税を回収できる権利です。

徴収権の時効は、賦課決定から5年間です。この期間を過ぎると、税務署は催促や財産差押えなどの強制的な徴収を行うことができなくなります。

徴収権の時効も、納税者側から主張しなくても自動的に成立しますが、こちらには中断や停止が存在します。

国税庁による催促や差押えなどの手続きが行われると、時効の進行が止まったり、起算日が巻き戻されたりします。これにより、実質的には徴収権の時効は延々と先延ばしにされる可能性があります。

 

時効が成立する可能性は非常に低い

こうした相続税の時効制度を踏まえると、実際に時効が成立して相続税の支払いを免れる可能性はほとんどありません
税務署は相続税調査のプロであり、被相続人の死亡情報から銀行口座の預金移動など、資産の動きを詳しく把握しています。

特に預金の入出金履歴は長期間にわたり遡って調べることができ、怪しい動きがあればさらに詳細な調査が行われます。最終的には税務調査を実施し、無申告や申告漏れを発見します。

現金のまま自宅で保管しておくタンス預金等も、実はバレやすく、見逃されることはありません。タンス預金が税務調査で見つかった場合、悪質と判断されれば、重い追徴を課される可能性も高いのです。

基本的には除斥期間内に課税処分が行われ、その後、徴収期間内に督促や差押えがされるため、最終的には納税を免れることはできません。

 

相続税の申告期限はあっという間にやって来る

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。10ヶ月と聞くと余裕がありそうに思えますが、期限は思ったよりも早くにやってきます

これは相続ではやらなくてはならない作業がたくさんあるからです。

通夜、葬儀、戸籍の収集、財産調査、遺言書の検認等々、各手続きは一つ一つ時間がかかり、すぐに終わるものでもありません。

そのため、相続税の申告に間に合わなくなってしまう可能性は十分あるのです。もし、期限を過ぎてしまった場合、本来の相続税に加えて無申告加算税・延滞税を納めなければなりません。

また、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」など、大幅に税額を減らせる制度も期限内申告が条件です。これらを活用するためにも、期限内の申告・納付が大切です。

 

まとめ

相続税の時効は2つに区分され、それぞれ原則5年で完成します。しかし、期限があると言っても、実際には時効が成立するケースはありません。

「黙っていれば大丈夫」という考えは非常に危険です。

相続税は必ず期限内に正しく申告・納付することが大切です。もし期限内に間に合わないかもしれないと感じたら、早めに税理士に相談しましょう。

税理士に相談することで、正確な申告はもちろん納付についても延納・物納といった制度の活用を含めた適切な対応が可能になります。

 

 


 
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相続財産に賃貸アパートやマンションなどの不動産が含まれている場合、問題となるのは「その物件を誰が相続するか」だけでなく、「その物件から得られる家賃収入は誰のものか」という点です。

賃貸物件は、継続的に収益を生みます。そのため、相続開始時点で受け取る方が明確でなければ、相続人同士でトラブルになる可能性があります。

今回は相続における賃貸物件の家賃収入の扱いについて解説します。

 

家賃収入はいつ・誰のものになるのか

賃貸物件の家賃収入は、相続開始前後や遺産分割の進行状況によって、受け取るべき相続人が変わります。以下のように3つのパターンに分けて考えるとわかりやすくなります。
 

(1)相続開始前に発生した家賃収入

 
相続が発生する前、つまり被相続人の存命中に発生した家賃収入は、当然ながら被相続人本人の所得です。

よって、そのお金は遺産の一部ですから、相続人全員の分配対象になります

 

(2)相続開始後〜遺産分割協議前の家賃収入

 
相続開始から遺産分割完了までに発生した賃料について、遺産分割前であれば不動産取得者も確定していないので、家賃収入は相続人同士の共有財産と見ることができます

であれば、共有状態にある相続財産から生じた収益は、法定相続分に応じて各相続人のものとなります。

もし相続人全員が「賃料はすべて取得者のものとすること」に合意すれば、家賃収入は遺産分割の対象とはなりません。

 

(3)遺産分割協議が成立した後の家賃収入

 
遺産分割協議が成立し賃貸物件の取得者が正式に決まった後は、家賃収入はその相続人個人のものになります

相続人のうち長男が賃貸アパートを相続することで合意がとれた場合、以後の家賃収入はすべて長男の所得として処理されます。

既に述べたように、遺産分割協議完了前に生じたお金は相続人全員のものですが、協議次第では取得者のものとなります

 

遺言書の有無で取り扱いが変わる

家賃収入を誰が受け取るのかという点に関しては、遺言書の存在も大きな意味を持ちます。
 

(1)遺言書がある場合

 
遺言書の中で賃貸物件の取得者を指定している場合、原則としてその人が相続開始後の家賃収入を受け取ることができます。

 

(2)遺言書がない場合

 
遺言書ない場合、遺産分割協議成立までは、家賃収入は相続人全員の共有財産として分配されるのが基本です。

合意なしに一部の相続人が賃料を独占することは許されません。

 

家賃収入に関する税務手続き──準確定申告とは?

賃貸収入に関して、相続税申告以外に税務上必要な手続きがあります。それが「準確定申告」です。

被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までに得た所得については、相続人が代理で申告する義務があります。これが「準確定申告」で、相続開始から4か月以内に税務署に提出する必要があります。

申告漏れがあると延滞税や加算税が発生するので忘れないようにしましょう。不安な場合は、税理士など専門家のサポートを受けることも検討すべきです。

 

相続後に物件を売却・管理する際の注意点

賃貸物件を相続したものの、「収益物件として維持せず売却したい」と考える人も多いでしょう。しかし、賃貸物件には借主(入居者)という第三者が存在します。法律上、その権利は手厚く保護されているため、相続人が自由に退去を求めることはできません。

定期借家契約であれば契約期間満了で解約できますが、一般的な普通借家契約の場合は、正当事由(例:建物の老朽化、貸主が自宅として使用する予定など)が必要となります。

入居者との交渉は慎重に進める必要があり、時間がかかることもあります。相続した物件をどうするかについては、長期的な資産戦略の視点で冷静に判断しましょう。

 

まとめ

賃貸物件を含む相続では、家賃収入の取り扱いについては誤解が生じやすく、相続人同士でのトラブルの原因になることもあります。

相続開始のタイミングや、遺産分割協議の進捗、遺言書の有無などによって、扱いが変わってくるため注意しましょう。

また、準確定申告などの手続きも必要です。迷う場合は早い段階で専門家に相談しておきましょう。専門家に頼めば、スムーズに相続手続きを進めることができるでしょう。

 

 


 
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遺言書は、遺言者の思いや意志を、相続という形で具体的に反映させるための大切な手段です。その実現を担うのが「遺言執行者」と呼ばれる人です。遺言に書かれた内容に従って、必要な手続きを行っていく役割を担います。

遺言執行者には、遺産の管理や処分など、遺言の実現に必要な範囲で、法律上の権限と義務が認められています。

こう聞くと、遺言執行者が相続に関するほとんどのことを代行できるのではないか?と思うかもしれません。しかし実際には、できることとできないことがあります

とくに気をつけたいのが、「相続税の申告」です。時間も手間もかかるこの手続き、遺言執行者にお願いできるのでしょうか?

 

遺言執行者を立てる意味とは

遺言執行者とは、遺言書の内容をきちんと実現させるために活動する人です。相続人や受遺者の代理人として動くことができ、手続きの円滑化に一役買ってくれます。

例えば、複数の相続人がいるケースでは、各自が書類に署名・押印したり、必要書類を集めたりするのはなかなか大変です。しかし、遺言執行者がいれば、その人が代表として手続きを進められるため、相続人の負担を大きく減らすことができます

また、遺言執行者を選任しておくことで、不動産の名義変更を放置することを防いだり、他の相続人が勝手に財産を処分するのを抑止したりする効果もあります。

執行者は、相続人の中から選んでもいいですし、それ以外の第三者でも問題ありません。未成年者や破産者といった法律上の欠格事由に該当しない人であれば、誰でも就任可能です。

 

遺言執行者ができること・できないこと

遺言執行者に認められている主な業務は、以下のようなものです。

これらの手続きは、遺言書の内容に基づいて動くものなので、執行者が行うことができます。
一方で、「相続税の申告」については、遺言執行者であっても行うことができません

というのも、相続税の申告・納税義務は、財産を実際に受け取る相続人や受遺者に個別に課されているからです。執行者が代理で申告する権限は認められていません。

相続税の申告は、相続が始まったこと(=死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。申告が遅れると、延滞税や加算税が課されることもあるため、注意が必要です。

 

遺言執行者にしかできないこともある

執行者にしかできない手続きもあります。代表的なのが次の3つです。

 

専門家に執行者を依頼するメリット

遺言執行者は誰でも選べるとはいえ、実際には弁護士や司法書士、税理士といった専門家に依頼するケースも多く見られます。

相続は多くの人にとって初めての経験ですし、必要な手続きが複雑で分かりにくい場面もあります。その点、相続のプロに依頼すれば、手続きがスムーズに進み、ミスや遅れの心配も少なくなります。

さらに、家族や親族間のトラブルを防ぐという面でも、専門家が中立的立場で動いてくれることは大きな利点です。感情的になりやすい相続の場面で、相続人の一人が執行者になることで軋轢が生まれてしまうこともあります。

もちろん、専門家に依頼する場合は報酬が発生します。しかし、費用以上の安心感や効率性が得られる可能性は高いでしょう。いくつかの事務所に相談し、信頼できるところを選ぶことをおすすめします。

 

まとめ

遺言執行者は、遺言内容の実現に向けて必要な手続きを進める大切な役割を担います。ただし、相続税の申告だけは相続人や受遺者にしかできないため、注意が必要です。

トラブルを避け、スムーズな手続きを目指すなら、遺言書の作成時に遺言執行者の指定も検討しましょう。

そして、可能であれば、相続の専門家に依頼するのも一つの安心材料になります。

 

 


 
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自分の死後、大切な人たちに想いをきちんと届けるために、遺言書を準備しておこうと思う方は増えています。

遺言書にはいくつかの種類があり、その形式によって作成方法や必要な手続きが異なります。中でも「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」では、法律上、証人を立てなければなりません

ただし、証人であれば誰でも良いというわけではなく、選ぶ相手にはいくつか条件や注意点があります。ここでは、証人が必要な遺言の種類と、それぞれにおける証人の役割、選び方のポイントについて解説します。

 

証人が必要な遺言の種類と特徴

遺言書の中でも「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」は、作成時に2人の証人の立ち会いが求められています。
それぞれの遺言方式について、特徴を簡単に整理しておきましょう。
 

(1)公正証書遺言

 
こちらは、公証役場で公証人が作成を代行する遺言です。手続きを進める際には、あらかじめ遺言内容について公証人と打ち合わせを行い、当日は2名の証人を同席させて作成します。

主な特徴は以下の通りです。

メリットは、何よりも遺言が確実に残る点です。作成ミスによる無効や改ざんのリスクが極めて低いので、実際に多くの人がこの形式を選んでいます。

一方で、費用がかかり、証人の依頼や日程調整などの手間がある点はデメリットとも言えるでしょう。

 

(2)秘密証書遺言

 
秘密証書遺言は、遺言内容そのものを他人に知られたくない場合に選ばれる方法です。

中身は本人が作成し(手書きでもパソコンでも可)、封をした状態で公証役場に持参し、そこで「確かに遺言書は存在します」という証明をしてもらいます。この手続きの際にも、2名の証人が必要です。

特徴は以下の通り。

メリットとしては内容を秘密にできる点ですが、検認が必要で、原本管理を自分でしなければならないため、当然ながら紛失や改ざんのリスクが起きます。

デメリット部分が多いので、近年は他の形式に比べて利用者は減少しています。

 

証人として認められる人とは

遺言書に立ち会う証人には、法的な要件が定められています。以下に該当する方は、証人になることができません。

簡単に言えば、遺言によって利益を得る可能性がある人や、公証人と利害関係がある人は証人にはなれません。これは中立性を保つための配慮です。

 

証人の主な役割

証人として立ち会う際には、ただそこにいるだけではなく、次のような役割が求められます。

とくに公正証書遺言では、これらの判断が非常に重要です。後に裁判になった際、証人が証言を求められるケースもあります。
出頭要請を受けた場合、基本的には断ることはできません。

 

証人の選び方と注意点

では、実際に誰を証人として選べばよいのでしょうか。以下に代表的な候補を紹介します。
 

(1)親族を選ぶ場合

 
親しい関係にある親族は依頼しやすく、費用も発生しないことが多いです。ただし、推定相続人やその配偶者・直系親族は不可なので注意しましょう。

また、内容によっては親族間でトラブルになる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。

 

(2)友人を選ぶ場合

 
友人は法的に利害関係が生じにくいため、中立性が保ちやすく、証人に適しています。

長年の信頼関係がある相手なら、遺言の内容も尊重してくれるでしょう。ただし、将来的に裁判などに巻き込まれる可能性もある点は認識しておきたいところです。

 

(3)専門家に依頼する場合

 
弁護士や司法書士、税理士などの専門家を証人に選ぶこともできます。中立性や守秘義務が保証され、内容についてのアドバイスも得られるため、安心感は大きいでしょう。

その分、費用はかかりますが、信頼性を重視するなら有力な選択肢です。

 

(4)公証役場で紹介を受ける場合

 
証人が見つからない場合は、公証役場に依頼すれば紹介してもらえます。1人あたりの手数料は6,000〜7,000円ほど(地域や財産の内容によって変動あり)。

専門家に個別で依頼するよりも安価です。

 

まとめ

遺言は、故人の最終メッセージとも言える大切なものです。そして、そこに関わる証人の存在もまた、遺言の信頼性を支える要の一つです。

親しい人に頼むか、専門家に依頼するか、どの選択がベストかは人それぞれですが、「その人が本当に適任かどうか」をよく考えて決めることが、トラブルのない円満な相続への第一歩です。

少しの手間をかけることで、大切な想いをしっかりと未来に託すことができるでしょう。

 

 


 
相続手続き・相続税対策・遺言書作成・生前贈与など、相続に関するお悩みは(株)FP財産総合研究所までご相談ください。

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生前贈与は両親や祖父母が子や孫に対して、「生きているうちに」お金を渡す行為のことです。

うまく活用することで、相続財産を減らし、最終的に遺族が払う相続税を抑えることができます。

通常、生前贈与には「年間110万円まで非課税」という基礎控除があり、それを超えた分に贈与税がかかります。しかし、実はこの「贈与税」がかからないケースが他にも存在します。それが「扶養義務者からの都度贈与」です。

今回は、知っておくと節税につながる「都度贈与の仕組み」について、その根拠も含めて解説いたします。

 

生前贈与とは?基本のルールをおさらい

生前贈与とは、亡くなる前に自分の財産(お金や不動産など)を家族などに渡すことをいいます。(渡す相手は贈与者の自由です。)

相続と違い、生前に意思を持って財産を移転できるため、相続税対策としてよく利用されています。

生前贈与には、以下の形があります。

 

(1)暦年課税(通常の生前贈与)

1月1日~12月31日までの1年間に、1人あたり110万円まで非課税になる制度。超えた部分には贈与税がかかります。

こちらがいわゆる通常の生前贈与です。なお、1年間の贈与額が110万円以下の場合、贈与税は課せられませんし、申告も不要です。

 

(2)相続時精算課税

こちらは、子供や孫に対しての贈与が2,500万円まで非課税になる制度です。

控除額が高くお得に思えますが、贈与された資産は贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合計した金額から相続税額を計算し、相続税として納税しなければなりません。

つまり、払うべき税金を相続まで延期する制度であり、2,500万円までが完全に無税になるわけではありません。

この制度は早期の財産移転を促進させるために創設された制度で、相続前にまとまった資金を実子や孫に贈与したい場合に利用されます。

 

(3)特例制度を利用した贈与

生前贈与にも、各要件を満たすことで高額の控除が可能となる特例制度があります。

例として住宅取得のための資金、教育資金、結婚・子育て資金など。各制度には細かい要件があるので注意が必要です。

なお、特例を利用して贈与税が無税となっても、申告は必要です。

 

贈与税がかからない「扶養義務者からの都度の贈与」とは?

前述した贈与の方法も非常に有効ですが、今回注目したいのは、それ以外でも贈与税がかからない「例外的なケース」があるということです。

それは扶養義務者が生活や教育を目的として、必要なお金を都度に渡す贈与です。

贈与者が受贈者の扶養義務者で、受贈者の生活や教育のためにされる贈与には税金がかかりません。国税庁のHPにも贈与税がかからないケースの一例として記載されています。

★参考:国税庁HP

 
この仕組みは、法律に基づいた正式な税制上の取り扱いであり、決して「抜け道」ではありません。適切に利用すれば、贈与税の負担を避けながら、子や孫の生活をサポートできます。

 

「扶養義務者」とは誰のことか

扶養義務者とは、以下のような家族関係にある人を指します。

つまり、祖父母が孫に生活費を援助したり、親が子供の教育費を負担したりするのは、贈与税の対象にはならないのです。ただし、これにはいくつかの重要な条件があります。

 

非課税となる条件は「都度・必要な額」であること

都度贈与のポイントは、「必要な時に、必要な額のみを渡す」ということです。例として、以下のようなケースは非課税になります。

 
逆を言えば、一括でまとめて多くのお金を渡したり、使い道が明確ではない資金を贈与すると、贈与税が課税される可能性があります。

上記のようなケースでは贈与の課税対象になります。

 

非課税となる資金の範囲

資金の範囲は大きく分けて生活費と教育費になります。
どちらも具体的な用途が細かく決められています。

(1)生活費として非課税になるもの

生活費は必要な範囲内の金額でなければなりません。生活費を過剰に超える仕送りをしている場合は、超過分に対して贈与税が課税されます。

 

(2)教育費として非課税になるもの

こちらも必要な範囲内を都度贈与すれば税金はかかりません。しかし、祖父が幼稚園に入園した孫に対して大学までの教育費をまとめて渡すのはダメです。

まとまった資金を一括で渡したいのであれば、贈与の特例制度を利用した方が良いでしょう。

 

まとめ

扶養義務者からの都度贈与は非課税です。正しい方法で行えば贈与税は一切かかりません。ただし、「一括ではなく、都度必要な分だけ」という原則を忘れずに運用しましょう。

将来的により大きな財産を移転したいと考えている場合、非課税の特例制度(教育資金一括贈与、住宅資金の贈与など)や、生前贈与の計画的な活用も検討するとよいでしょう。

大きな金額の贈与を検討する際には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。制度を正しく理解し、安心して大切な家族に資産を渡していきましょう。

 

 


 
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相続では親が住んでいた家を相続するケースがあります。

遺族の誰かがその家に住まない場合は「空き家」となってしまいます。空き家のまま放置してしまうと、固定資産税もかかりますし、他にも様々な問題が発生します

特に老朽化した家は、倒壊の危険性や、周囲環境への悪影響も大きいため、放置することは避けなければなりません

実際、日本の国内には利用されていない空き家が多くあり、社会問題にもなっています。

こういった状況から、国は相続や遺贈によって取得した空き家を売却する際に、一定条件を満たせば「譲渡所得から最大3,000万円を控除できる」特例制度を設けています。

相続で取得した空き家を持て余している方、売却を検討している方にとっては、ぜひ活用したい制度です。

 

空き家を放置することで起きる問題

空き家は管理が不十分であることが多く、建物やその周辺の環境の劣化が進みやすいと言えます。よって、以下のようなリスクを持っています。

上記のようなリスクを避けるため、空き家の活用・処分については早めに検討しなければなりません。選択肢としては以下のようなものがあります。

この中で、売却を考える場合、「空き家特例」を利用することで、大幅な節税も可能となります

 

空き家特例とは?最大3,000万円が控除される制度

空き家特例は、相続や遺贈で取得した被相続人が住んでいた空き家やその土地を一定期間内に売却すれば、譲渡所得額から最大3,000万円を控除できる制度です。

制度を利用する場合、空き家の要件、売却時の状況要件を満たさなければなりません。

譲渡所得は次の計算式で求められます。
譲渡取得=譲渡価格(収入金額)−必要経費(取得費+譲渡費用)−特別控除額

もし、不動産の取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を概算取得費としても問題ありません。

 

空き家特例の要件

(1)家屋の要件

この特例はその名前の通り「空き家となった相続不動産」の処理を促すための制度です。よって、適用可能な家屋は、故人が一人で暮らしていた住宅だけとなります。

 

(2)譲渡する際の要件

特例対象となる家屋は売却金額が1億円を超えないものだけです。売却が複数回の場合や複数の相続人で売る場合、各売却金額の合算で判定します。

 

その他のポイント

(1)被相続人が老人ホームに入所していた場合

被相続人が老人ホームに入所していた場合も条件付きで制度利用ができます。

 

(2)リフォームの必要はあるのか

特例対象となる不動産は1981(昭和56)年5月31日以前に建てられたものです。

これは旧耐震基準で建築されたものであり、現在の基準を満たしません。

以前の制度ではそのまま売却しても特例適用にならず、売主側が耐震補強もしくは更地にして売却する必要がありました。

ですが、令和6年の改正で、「売却時点で耐震リフォームや解体が済んでいなくても、譲渡後の翌年2月15日までに買主側が処置を完了すればOK」というルールになりました。

この変更は解体費用を出せない相続人にとって、空き家を売却しやすくなったと言えます。

 

(3)制度利用の期限日

空き家特例は元々、令和5年12月31日で終了でしたが、4年間延長することになりました。

よって、令和9年12月31日まで適用が出来るようになっています。

 

(4)3人以上の相続人が譲渡する場合は控除額が減額

複数相続人が譲渡をしても、各々で特例の適用が可能です。

しかし、3人以上の相続人で譲渡する場合、各々2,000万円までが控除の上限となります。

 

確定申告の際の注意点

この特例を使って不動産を売却した場合、確定申告時にはさまざまな書類の提出が必要です。たとえば、被相続人が一人で住んでいたことを証明する書類や、耐震改修の証明書、建物の登記事項証明書などです。

申告ミスや書類の不備があると、特例が適用されないこともあるため、不安がある場合は税理士に相談して申告を依頼することをお勧めします。

 

まとめ

空き家をそのままにしておくと様々な問題を抱えることとなります。早めに対処することも大事ですが、適切な制度を活用して、大切な相続財産を無駄なく活かしましょう。

 

 


 
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相続税には、一定の条件を満たすことで大きな節税が可能となる「小規模宅地等の特例」という制度があります。この制度を利用すれば、相続する土地の評価額を最大80%まで減額することができ、非常に大きな節税効果を得ることが可能です。

たとえば、評価額が1億円である土地でも、この特例を適用すれば評価額は2,000万円まで圧縮されるので、相続税の負担が大幅に軽減されます。ただし、減額幅が大きい反面、同制度を利用するための要件は細かく定められています。誰でもが安易に使えるわけではないのです。

小規模宅地等の特例が創られた目的は、故人(被相続人)の自宅や営んでいた事業に関する土地に高額な相続税が課されることで、生活を共にしていた相続人が住まいを失ったり、事業を継続できなくなるような事態を避けるためです。

遺族の生活を守る観点から設けられた制度ですから、対象となる土地の利用状況や相続人の関係性・居住状況などによって適用可否が判断されるのです。

なお、この特例の対象となるのはあくまで「土地」のみであり、建物部分には適用されない点には注意が必要です。

 

小規模宅地等の特例は故人が老人ホームに入所していても適用可能

小規模宅地等の特例では「特定居住用宅地(居住用に使っていた宅地)」で申請する場合、前提条件として「故人もしくは生計を一にする親族が住んでいた土地」でなければなりません。

しかし、故人が老人ホームで最期を迎えられる場合があります。近年では多いケースですが、このような場合も特例が適用できるかどうか気になりますよね。

実は故人が老人ホームに入所されていても、一定要件を満たせば小規模宅地等の特例が使えるのです

まずは故人の条件についてです。

老人ホームへ入所していたのであれば、本人が要介護・要支援認定を受けていなければなりません。健康な状態で入居していても、特例の適用は受けられないのです。

入所する老人ホームも「老人福祉法や介護保険法に規定される施設」でなければなりません。無許可営業の老人ホームですと適用外となってしまいます。

そして、老人ホーム入所後に、空き家になった自宅を事業地や賃貸用として利用していないことが条件となります。これは、土地を事業用や貸付用にしてしまうと、特定居住用宅地として認められなくなるからです。特例の適用は可能ですが、減額率や適用範囲が変わってくるので注意しましょう。

 

小規模宅地等の特例が使える具体的なケース例

故人の適用条件が該当したら、次は実際の適用例を見てみましょう。

制度が適用されるかどうかは、被相続人や相続人の居住状況・関係性によって異なります。以下に代表的な4つのケースをご紹介します。

ケース①:配偶者が自宅に住み続けている場合
夫が老人ホームに入所し、妻が引き続き自宅に住み続けていたケースです。

→配偶者が土地を相続する場合、特例は無条件で適用可能です。しかも、配偶者には「相続後も引き続き住み続ける」という条件はありません。つまり、生前中に一緒に住んでいなくてもOKですし、相続後に自宅をすぐに売却しても問題ありません。

ケース②:同居していた子供が相続する場合
父が老人ホームに入所し、子供がそのまま自宅に住み続けていたケースです。

→子供が自宅を引き継ぎ、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)まで居住を継続していれば適用可能です。

ケース③:夫婦ともに施設に入所していたが、自宅は空き家
夫婦そろって施設に入所し、自宅が空き家となっていた場合でも、配偶者が相続すれば特例の対象になります。

ケース④:別居していた子供=「家なき子」が相続する場合
親が施設に入り、自宅が空き家となった。別居していた子供がその空き家を相続するケースです。

→相続人が「家なき子特例」に該当すれば、特例の適用が可能です。

 
「家なき子特例」とは?
以下の条件を満たす相続人が対象です。

 

自宅を賃貸物件にしていた場合、減額率が変化

故人が老人ホームに入所した後、自宅を第三者に貸していた場合、特定居住用宅地等ではなく、貸付事業用宅地として、小規模宅地等の特例を使うことができます。
ただし、貸付事業用宅地等だと、土地200㎡まで評価額が50%減額となります。また、貸す期間は3年以上となります。

 

入所していた場合の添付書類

故人が老人ホームに入所していたら、特例適用のために、小規模宅地等の特例適用の添付書類に加えて、以下の書類も添付して提出します。

 

まとめ

小規模宅地等の特例は故人が老人ホームに入所していても適用されます。

ただし適用される条件として、要介護認定または要支援認定を受けていたこと、認可された老人ホーム(福祉施設等)に入所していたことに加えて、相続人の要件も満たす必要があります。

要件についてもっと知りたい方は、専門の税理士に相談してください。

 

 


 
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故人の財産には、土地が含まれる場合が多いです。件数としては「自宅が建てられている土地」が最も多いですが、中には「賃貸用のアパートの土地」や、「事業用の土地」の場合もあります。

土地は、車や貴金属と比較すると高額になりやすいので、相続税が生じる可能性も高くなります。そのため、覚えておきたい制度が「小規模宅地等の特例」です。

同制度は、相続する土地の評価額を80%もおさえることができます

 

小規模宅地等の特例の概要

相続が発生すると、遺産の総額次第で相続税が生じる場合があります。特に不動産、なかでも土地は高額になりやすいので、相続税額も大きくなりがちです。

そんな中、相続税の軽減に大きな効果を発揮するのが「小規模宅地等の特例」です。

この特例は、一定の条件を満たすことで、「相続税の対象となる土地の評価額を最大80%まで減額できる」制度です。評価額が下がるということは、支払うべき相続税そのものも大きく減るということになり、節税となります。

ケースバイケースですが、土地を相続すると、数百万円〜数千万円という高額な税金が発生することがあります。もし、相続人自身の財産が少なく、かつ故人の遺産に現金・預貯金がなければ、相続税を払うためにその土地を手放さなければならなくなる場合もありえます。

故人の自宅に一緒に住んでいた配偶者や子供がいる場合は、住む場所がなくなる可能性もあります。そういったことを防ぐために、被相続人が所有していた一部の土地については、一定条件を満たす限り、相続税評価額の大幅な減額が認められているのです。

ただし、この制度を適用するには土地の種類や使用状況、相続人の関係性や居住実態など、さまざまな細かい要件をクリアしなければなりません

 

適用される土地の要件

(1)対象の土地

 
小規模宅地等の特例で対象となる土地は、主に以下の3種類に分けられます。

このうち、遺産の中に最も多いのが「特定居住用宅地」です。事業用地や賃貸用の土地を持っている方は少ないですが、自宅の建っている土地を持つ方は多いからです。

なお、別荘やセカンドハウスのような一時的に使用されていた土地は、小規模宅地等の特例の対象にはなりません。

また、対象の土地であっても相続が始まってから相続税の申告期限(10カ月)までの間にその土地を売却してしまうと、適用不可となります。特例を活用するのであれば、その期間中に引き続き該当地を利用する必要があるということです。

 

(2)面積と評価額の減額率

 
前述した対象となる土地の面積には、それぞれ上限が定められています。

面積が上限を超えれば、上限面積分だけ評価額が減になります。

例えば、500㎡の居住用宅地が1億円で評価されていた場合、減額の対象となるのは上限の330㎡までです。

1億円-1億円÷500㎡×330㎡×0.8=4,720万円
と、評価額は約4,720万円まで下がることになります。全体として80%減とはなりませんが、それでもかなりの減額になります。

日本の一般的な戸建て住宅は、土地の広さが130㎡前後のケースが多く、一般家庭であれば、この上限に収まることがほとんどです。

貸付用の土地は減額率が低くお得感がないように見えますが、そもそも賃貸物件は相続時の評価計算方法自体に控除があるので、バランスが取れているとも言えます。

 

取得者の要件(特定居住用宅地の場合)

特定居住用宅地の場合、取得者(その土地を引き継ぐ相続人・受遺者)に以下の要件があります。

 

(1)配偶者

 
被相続人の配偶者が土地を取得する場合、特別な条件はなく、無条件で特例の適用を受けることができます。

生前に別居していた場合でも問題ありません。さらに、相続後にすぐ売却しても特例の適用が外れることはありません。

 

(2)同居親族

 
被相続人と一緒に住んでいた親族が相続する場合は、相続税の申告期限まで引き続きその土地に住み続ける必要があります。

この場合の同居の定義は、単なる住民票の一致ではなく、実際の生活拠点が同じであったかどうかが判断されます。

極端な例ですが、亡くなる直前の数日間だけ同居していたとしても、「その実態が確認できれば」特例の対象になります。ただし、相続後の10カ月間はそのまま住み続けなければなりません。

亡くなる前の居住期間は決まっていないものの、相続開始後の10ヶ月間はそこに住み続けなければいけないという点には注意です。

 

(3)その他の親族(家なき子特例)

 
被相続人と同居していなかった親族でも、特例を受けられる場合があります。いわゆる「家なき子特例」と呼ばれるもので、次のような条件をすべて満たす必要があります。

同居している他の相続人がいないという要件から、配偶者のいない故人が、一人で自宅に住んでいたような場合が該当します。

こちらの場合でも、相続開始後の10ヶ月間は該当の家に住み続けなければなりません。

 

小規模宅地等の特例では申告義務がある

特例を使う場合、たとえ相続税が発生しないケースでも、税務署に申告を行う必要があります。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、これ以下であれば通常は申告不要ですが、小規模宅地等の特例を受けたい場合は、控除の有無にかかわらず必ず申告が必要になります。

手続きが漏れてしまうと、特例の適用が認められず、結果として高額な追徴課税を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

 

まとめ

小規模宅地等の特例は、非常に効果的な相続税対策ですが、適用にはさまざまな条件があります。

土地の利用目的や取得者の属性など、細かい部分まで把握していないと正しく活用できません。

適切に利用すれば数百万円単位の節税も可能になるため、土地の相続が関わる場合は、できるだけ早いうちから、専門の税理士に相談することをおすすめします。

 

 


 
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相続では、現金や不動産だけでなく、著作権やゴルフ会員権などの「権利」も財産として扱われ、相続税の対象となります。その権利には「電話加入権」もあります。

現在ではスマホの普及で固定電話も少なくなり、故人の財産の中に電話加入権が含まれるケースは稀ですが、電話加入権がある場合は、承継・中止の手続きと、申告のための相続税評価をしなければなりません。

相続税評価について、電話加入権は一般動産に含まれるので、原則的には個別評価となります。

ただし、現在では家庭用財産にまとめて一括で評価することとなっています

 

電話加入権とは

電話加入権は、NTT(NTT東日本またはNTT西日本)のアナログ回線と契約する権利です。契約により回線が引きこまれれば、他の利用者と通話できる仕組みになっています。

なお、施設設置負担金というものがありますが、これは電話加入権と同じ意味を持ちます。施設負担金とは、加入者回線の建設費用の一部を前払い的に負担する仕組みです。負担金となっているものの、利用者の間での売買取引ができるため、「権利」ともされているのです。

戦後復興時より電話回線の普及が進んだため、電話加入権の所有者は日本全国にいます。

 

電話加入権は相続財産

電話加入権は相続財産となります。ただし、相続財産となるのは、その回線を引き続き使用する場合です

引き継ぐ場合は相続財産として、相続税の課税対象になります。評価方法について、以前では以下の方法で価額を算出していました。

 
しかしながら、現在ではこれらの評価方法は廃止されています。なぜなら、近年では、電話加入権の取引相場が存在せず、国税庁の定める標準価格も10年以上、1500円(全国一律価格)から変わっていないからです。

要するに電話加入権をわざわざ個別評価する必要はないというわけです

そのため、電話加入権は、基本的に1500円とし、他の家庭用財産に含めて一括評価します
 

★参考:国税庁HP

 
なお、加入権の取引が盛んだった頃は、「100番のような呼称しやすい番号」、「4989番などの嫌がる人が多い番号」などが「特殊番号」とされており、売買実例や精通者意見価格等を参考に評価していましたが、これも現在では廃止されています。

 

相続開始後の手続き

故人の自宅に電話がある場合、NTTに問い合わせるか、請求書を確認しましょう。加入権の有無が明確になったら、その権利を引き継ぐか、解約するかを選択します。
 

(1)承継の場合

 
法定相続人が電話加入権を引き継ぐ場合(同じ回線を引き続き使う場合)、NTTへ名義変更の手続きをします。

申請書に加え、相続人の本人確認書類、故人の死亡診断書、戸籍謄本などが必要ですが、手数料は発生しません。

詳しい手続きは、NTT東日本の公式サイト等で確認ください。

★参考:NTT東日本 名義変更のお手続きについて

 

(2)解約の場合

 
電話回線の利用が不要であれば、手続きにより権利を抹消します。

解約手続きでも本人確認書類や死亡診断書などが必要となりますが、解約後は回線使用料や工事費の負担はなくなります。

 

(3)一時利用停止の場合

 
電話加入権の権利を保有したい場合、利用停止という選択もあります。

この方法では、権利は持ったまま最大10年間の利用停止が認められます。5年ごとに更新が必要ですが、利用停止中は使用料が発生しません。

 

相続税申告書への記載方法

電話加入権を相続するのであれば、少額であっても申告します。ただし、前述したように近年における標準価格は全国で1500円ですから、ほかの家庭用財産と一緒に、まとめて費用を計上することが一般的です。

なお、電話加入権自体は安いですが、他の家財を含めて考えるのであれば、評価額は10~50万円程度になります。前回のコラムでも説明しましたが、家財一式として一括で計上する場合、その金額は点数や内容によって変えるべきです。

 

まとめ

電話加入権は、相続財産の中でも少額であり、引き継ぎや抹消の手続きも決して難しくありません。ただし、相続財産である以上、手続きは忘れないようにしましょう。

 

 


 
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