「遺産の相続」というと、配偶者や子供といった故人と近しい親族だけの話だと思われがちです。しかし、実は親族でない方にも遺産を渡すことはできるのです

法的な婚姻関係にないパートナーや、老後の世話をしてくれた友人、あるいは慈善団体など、血縁を超えた相手に財産を渡すこと。これを可能にするのが「遺言」であり、そこで指定された財産の受取人を「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。

今回は、この「受遺者」の仕組みと知っておきたいリスクについて解説します。

 

実は誰でもなれる受遺者

通常、民法で定められた「法定相続人」にしか遺産を受け取る権利はありません。どれだけ故人と親密であっても法定相続人になれるのは血族のみだからです。

しかし、故人が生前に遺言書を作成し、「〇〇に財産を遺贈(いぞう)する」と書き残すことで、血族でなくとも「遺産をもらえる権利」が発生します。

受遺者になるための資格制限はありません。友人や知人はもちろん、子供の配偶者、内縁の妻・夫、さらには法人(会社やNPO団体など)であっても受遺者として指定することが可能です。

 

受遺者として指定されても遺産をもらえない場合がある

受遺者であっても、「相続欠格事由」に該当してしまうと、その権利を失います。具体的には相続における秩序を乱すような行為で、以下のようなものになります。

  • 故意に被相続人や他の相続人を死亡させる、または死亡させようとして刑に処せられた
  • 被相続人が殺害された事実を知りながら、告訴、告発をしなかった(ただし、まだ子供で弁別がない場合や、殺害者が自身の配偶者や直系血族であった場合を除く)
  • 被相続人に対し詐欺や強迫を行い、遺言の作成・撤回・取消し・変更等を妨げた
  • 詐欺や強迫によって、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた
  • 相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿を行った

 

受遺者には「2つのタイプ」がある

(1)特定受遺者:「指定された財産だけ」をもらう人

 
「〇〇銀行の預金をAに遺贈する」「自宅の土地建物をBに遺贈する」といったように、具体的な財産を指定して受け取る人を指します。

特定受遺者の最大の利点(受遺者本人にとって)は「リスクが低い」ことです。あくまで指定されたプラスの財産を受け取るだけなので、故人に借金があったとしても、原則として返済義務を負うことはありません。

また、他の相続人と話し合う「遺産分割協議」に参加する必要がないため、精神的な負担も軽く済みます。「財産はいらない」と思った場合の手続きも簡単で、相続人等にその旨を伝えるだけで完了します。これはいつでも可能で、期限もありません。

 

(2)包括受遺者:指定された割合を受け取る人

 
「遺産の3分の1をDに遺贈する」といったように、財産の具体的な中身ではなく「割合」で指定された人を指します。

民法上、包括受遺者は「相続人と同一の権利義務を有する」と定義されています。これは非常に重い意味を持ちます。

まず、プラスの財産だけでなく、借金や未払金などの「マイナスの財産」も指定された割合に応じて引き継がなければなりません。さらに、具体的にどの財産をもらうかが決まっていないため、親族である法定相続人たちの中に混ざり、「遺産分割協議」に参加して合意を得る必要があります。全くの部外者が親族会議に参加するため、感情的な対立を生むケースも少なくありません。

また、受遺者としての権利を放棄する場合、相続人と同じ厳格なルールが適用され、自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをする必要があります。これを過ぎると、「借金を含めて財産を引き継ぐことにした」とみなされます。

 

「相続人」と「受遺者」の決定的な違い

遺産を受け取る立場であっても、相続人と受遺者では法的な違いがあります。
 

(1)代襲相続がない

 
代襲相続とは法定相続人(例えば子供)が親より先に亡くなっていた場合、その権利は孫へと引き継がれる制度です。受遺者にはこの制度が適用されません。

もし、遺言で指名されていた受遺者が、遺言者よりも先に亡くなってしまった場合、その遺言部分は無効となり、受遺者の子供が権利を引き継ぐこともありません。

受遺者の子供に権利を継がせたい場合は、遺言者が遺言書に「もしAが先に死亡していた場合は、Aの妻Bに遺贈する」といった予備的な指定をしておく必要があります。

 

(2)受遺者には「2割加算」ルールがある

 
財産を受け取れば当然「相続税」を払う可能性がありますが、受遺者が被相続人の「配偶者」や「一親等の血族(子供・親)」以外である場合、相続税額が2割増しになります。

兄弟姉妹が相続する場合や、孫(養子縁組なし)が遺贈を受ける場合、そして全くの他人が受遺者となる場合は、この「2割加算」の対象です。通常の相続よりもキャッシュアウトが多くなるため、納税資金の確保には注意が必要です。

 

(3)遺留分侵害のリスク

 
兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限の遺産取り分が保障される「遺留分」があります。もし、「愛人に全財産を遺贈する」といった極端な遺言がなされた場合、残された家族は受遺者に対して「遺留分侵害額請求」をすることができます。

これにより、受遺者は後から金銭での支払いを求められる可能性があります。

 

まとめ

遺言を活用した「受遺者」への遺贈は、家族の形にとらわれない財産承継の手段です。恩人への感謝を形にしたり、事実婚のパートナーの生活を守るために有効です。

ただし、「包括受遺者」として指定された場合は、借金の承継や遺産分割協議への参加といった負担も生じるので注意です。また、相続税の2割加算や遺留分トラブルといった金銭的なリスクも潜んでいます。

「もらえるからラッキー」と安易に考えるのではなく、財産の内容と自身の立場(特定か包括か)を正しく理解し、相続税対策も含めて専門家の助言を仰ぐことが、円満な承継への鍵となります。

 

 


 
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