相続税の支払いから絶対に逃げられない理由とは【相続税の時効】

相続財産が基礎控除額を上回る場合には、相続税の申告手続きと支払いが必要になります。
相続税の金額は相続財産に応じて決まります。相続税には特例控除もあるので、それらを利用して支払額を抑えることもできますが、それでも相続税額が高い、遺産に現金資産がないといった場合には納税が困難となるケースがあります。
一括での納税が困難であっても、通常であれば延納や物納といった制度を利用して支払いをしていきますが、中には支払い自体を拒否する方もいます。
支払いを拒否する考えとしては「そもそも親が築いた財産に税金をかけるのは理不尽だ」という税制への反発もあれば、「税務署も全案件を調べきれないのでは」といった「見つからなければ大丈夫」と考える方もいます。
確かに、相続税の確定と納税義務には時効が設けられていますが、基本的に税務署は支払い逃れを許しません。
逆に相続税の支払いをしないままでいると、後々に多額の追徴課税を受けるリスクを負うことになります。
相続税の申告と納付の期限
まず相続税の申告と納付の期限について説明いたします。申告と納付は同じ期限が設けられており、「納税者が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となっています。
相続開始を知った日とは、「納税者である相続人が被相続人の死亡を知った」かつ「自分がその相続の相続人であることを知った」日です。
被相続人や他の家族と疎遠であまり連絡を取らなかったり、海外在住の場合は、相続開始日と相続開始を知る日が異なるケースがあります。
しかしながら、「相続の開始を知る」のはほとんどの場合、相続開始日と同じタイミングですので、「相続開始を知った日=相続開始日」と覚えておきましょう。
「知った日」が大幅に遅れていた場合、証拠として手紙等の郵便物を残しておくか、口頭で知った場合には事実関係をメモにまとめておくことが大切です。
相続税の時効は二つある
相続税の時効については二つの時効があります。
(1)除斥期間
まずは「除斥期間」です。税務署は申告義務があるにもかかわらず無申告あるいは申告漏れをした方には、課税処分を命じますが、それができるのは除斥期間内となります。
つまり、除斥期間を過ぎてしまうと、税務署は相続税の賦課ができなくなります。賦課権の消滅は、納税義務者側から主張せずとも自動で成立します。
除斥期間は相続税の法定申告期限の翌日から、原則「5年」となっています。しかし、「偽りその他不正の行為」によって税額を免れたり、還付を受けた場合は7年に延長されます。
不正行為とは、相続財産を故意に隠したり、財産に関する書類を改ざん・偽造した場合などを指します。また、「申告義務があると分かっていたのに申告しなかった」ことが明らかである場合も、期間は7年に延長されます。
除斥期間には中断や停止はなく、税務署がどのように動いても期間の進行は止まりません。そのため、期間を過ぎれば自動的に時効が成立します。
(2)徴収権の時効
もう一つは徴収権です。これはそのままの意味で先述の賦課によって確定した相続税を回収できる権利です。
徴収権の時効は、賦課決定から5年間です。この期間を過ぎると、税務署は催促や財産差押えなどの強制的な徴収を行うことができなくなります。
徴収権の時効も、納税者側から主張しなくても自動的に成立しますが、こちらには中断や停止が存在します。
国税庁による催促や差押えなどの手続きが行われると、時効の進行が止まったり、起算日が巻き戻されたりします。これにより、実質的には徴収権の時効は延々と先延ばしにされる可能性があります。
時効が成立する可能性は非常に低い
こうした相続税の時効制度を踏まえると、実際に時効が成立して相続税の支払いを免れる可能性はほとんどありません。
税務署は相続税調査のプロであり、被相続人の死亡情報から銀行口座の預金移動など、資産の動きを詳しく把握しています。
特に預金の入出金履歴は長期間にわたり遡って調べることができ、怪しい動きがあればさらに詳細な調査が行われます。最終的には税務調査を実施し、無申告や申告漏れを発見します。
現金のまま自宅で保管しておくタンス預金等も、実はバレやすく、見逃されることはありません。タンス預金が税務調査で見つかった場合、悪質と判断されれば、重い追徴を課される可能性も高いのです。
基本的には除斥期間内に課税処分が行われ、その後、徴収期間内に督促や差押えがされるため、最終的には納税を免れることはできません。
相続税の申告期限はあっという間にやって来る
相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。10ヶ月と聞くと余裕がありそうに思えますが、期限は思ったよりも早くにやってきます。
これは相続ではやらなくてはならない作業がたくさんあるからです。
通夜、葬儀、戸籍の収集、財産調査、遺言書の検認等々、各手続きは一つ一つ時間がかかり、すぐに終わるものでもありません。
そのため、相続税の申告に間に合わなくなってしまう可能性は十分あるのです。もし、期限を過ぎてしまった場合、本来の相続税に加えて無申告加算税・延滞税を納めなければなりません。
また、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」など、大幅に税額を減らせる制度も期限内申告が条件です。これらを活用するためにも、期限内の申告・納付が大切です。
まとめ
相続税の時効は2つに区分され、それぞれ原則5年で完成します。しかし、期限があると言っても、実際には時効が成立するケースはありません。
「黙っていれば大丈夫」という考えは非常に危険です。
相続税は必ず期限内に正しく申告・納付することが大切です。もし期限内に間に合わないかもしれないと感じたら、早めに税理士に相談しましょう。
税理士に相談することで、正確な申告はもちろん納付についても延納・物納といった制度の活用を含めた適切な対応が可能になります。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。