相続では親が住んでいた家を相続するケースがあります。

遺族の誰かがその家に住まない場合は「空き家」となってしまいます。空き家のまま放置してしまうと、固定資産税もかかりますし、他にも様々な問題が発生します

特に老朽化した家は、倒壊の危険性や、周囲環境への悪影響も大きいため、放置することは避けなければなりません

実際、日本の国内には利用されていない空き家が多くあり、社会問題にもなっています。

こういった状況から、国は相続や遺贈によって取得した空き家を売却する際に、一定条件を満たせば「譲渡所得から最大3,000万円を控除できる」特例制度を設けています。

相続で取得した空き家を持て余している方、売却を検討している方にとっては、ぜひ活用したい制度です。

 

空き家を放置することで起きる問題

空き家は管理が不十分であることが多く、建物やその周辺の環境の劣化が進みやすいと言えます。よって、以下のようなリスクを持っています。

  • 建物の老朽化:日々の手入れがされないことで、屋根や外壁、基礎部分が急速に傷みます。傷んでいくと資産価値はどんどん下がり、売却も難しくなっていきます。
  • 治安の悪化:人が住んでいない家は、不法侵入者や空き巣のターゲットになりやすく、犯罪の温床になることもあります。
  • 景観の悪化:建物周辺の雑草が生い茂ったり、外観が朽ちてくることで、近隣住民にも迷惑がかかります。
  • 損害賠償責任の可能性:建物の老朽化が進めば、家が倒壊する可能性があります。倒壊時に隣家などに被害を及ぼした場合、損害賠償を求められるリスクもあります。

上記のようなリスクを避けるため、空き家の活用・処分については早めに検討しなければなりません。選択肢としては以下のようなものがあります。

  • 家を売却する
  • 建物を解体して土地のみ売却する
  • 賃貸に出して活用する
  • 更地にして駐車場とする

この中で、売却を考える場合、「空き家特例」を利用することで、大幅な節税も可能となります

 

空き家特例とは?最大3,000万円が控除される制度

空き家特例は、相続や遺贈で取得した被相続人が住んでいた空き家やその土地を一定期間内に売却すれば、譲渡所得額から最大3,000万円を控除できる制度です。

制度を利用する場合、空き家の要件、売却時の状況要件を満たさなければなりません。

譲渡所得は次の計算式で求められます。
譲渡取得=譲渡価格(収入金額)−必要経費(取得費+譲渡費用)−特別控除額

  • 取得費…不動産の購入価格や購入時の諸経費(仲介手数料、登記費用等々)。
  • 譲渡費用…不動産売却時にかかった費用(不動産業者への仲介手数料、測量費など)です。

もし、不動産の取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を概算取得費としても問題ありません。

 

空き家特例の要件

(1)家屋の要件

  • 相続開始前に被相続人が一人で暮らしていた自宅
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた区分所有建築物以外の建物
  • 相続後、その建物を居住・賃貸・事業用に使用していないこと
  • 空き家を相続または遺贈によって取得していること

この特例はその名前の通り「空き家となった相続不動産」の処理を促すための制度です。よって、適用可能な家屋は、故人が一人で暮らしていた住宅だけとなります。

 

(2)譲渡する際の要件

  • 譲渡対価額の合計が1億円以下
  • 耐震リフォーム済もしくは建物を取り壊した状態で売却する
  • 相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売った
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていない
  • 売却先は子供や配偶者以外の第三者であること

特例対象となる家屋は売却金額が1億円を超えないものだけです。売却が複数回の場合や複数の相続人で売る場合、各売却金額の合算で判定します。

 

その他のポイント

(1)被相続人が老人ホームに入所していた場合

被相続人が老人ホームに入所していた場合も条件付きで制度利用ができます。

  • 被相続人が介護保険法に規定する要介護・要支援認定を受けていた
  • 相続開始直前まで老人ホーム等に入所していた
  • 老人ホーム等への入所時から相続開始直前まで対象家屋が事業、貸付、被相続人以外の居住の用に供されていたことがない

 

(2)リフォームの必要はあるのか

特例対象となる不動産は1981(昭和56)年5月31日以前に建てられたものです。

これは旧耐震基準で建築されたものであり、現在の基準を満たしません。

以前の制度ではそのまま売却しても特例適用にならず、売主側が耐震補強もしくは更地にして売却する必要がありました。

ですが、令和6年の改正で、「売却時点で耐震リフォームや解体が済んでいなくても、譲渡後の翌年2月15日までに買主側が処置を完了すればOK」というルールになりました。

この変更は解体費用を出せない相続人にとって、空き家を売却しやすくなったと言えます。

 

(3)制度利用の期限日

空き家特例は元々、令和5年12月31日で終了でしたが、4年間延長することになりました。

よって、令和9年12月31日まで適用が出来るようになっています。

 

(4)3人以上の相続人が譲渡する場合は控除額が減額

複数相続人が譲渡をしても、各々で特例の適用が可能です。

しかし、3人以上の相続人で譲渡する場合、各々2,000万円までが控除の上限となります。

 

確定申告の際の注意点

この特例を使って不動産を売却した場合、確定申告時にはさまざまな書類の提出が必要です。たとえば、被相続人が一人で住んでいたことを証明する書類や、耐震改修の証明書、建物の登記事項証明書などです。

申告ミスや書類の不備があると、特例が適用されないこともあるため、不安がある場合は税理士に相談して申告を依頼することをお勧めします。

 

まとめ

  • 空き家を相続した場合、放置すると様々なリスク(倒壊、犯罪、景観悪化、損害賠償など)がある
  • 空き家を売却する際には「空き家特例」を使うことで譲渡所得から最大3,000万円が控除され、税負担を大きく減らせる
  • 特例の適用には建物の築年数や使用状況、売却時の条件など厳密な要件を満たす必要がある
  • 書類の準備が煩雑なため、確定申告は専門家のサポートを受けると安心

空き家をそのままにしておくと様々な問題を抱えることとなります。早めに対処することも大事ですが、適切な制度を活用して、大切な相続財産を無駄なく活かしましょう。

 

 


 
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