電話加入権は相続財産 相続時の手続き等を解説

相続では、現金や不動産だけでなく、著作権やゴルフ会員権などの「権利」も財産として扱われ、相続税の対象となります。その権利には「電話加入権」もあります。
現在ではスマホの普及で固定電話も少なくなり、故人の財産の中に電話加入権が含まれるケースは稀ですが、電話加入権がある場合は、承継・中止の手続きと、申告のための相続税評価をしなければなりません。
相続税評価について、電話加入権は一般動産に含まれるので、原則的には個別評価となります。
ただし、現在では家庭用財産にまとめて一括で評価することとなっています。
電話加入権とは
電話加入権は、NTT(NTT東日本またはNTT西日本)のアナログ回線と契約する権利です。契約により回線が引きこまれれば、他の利用者と通話できる仕組みになっています。
なお、施設設置負担金というものがありますが、これは電話加入権と同じ意味を持ちます。施設負担金とは、加入者回線の建設費用の一部を前払い的に負担する仕組みです。負担金となっているものの、利用者の間での売買取引ができるため、「権利」ともされているのです。
戦後復興時より電話回線の普及が進んだため、電話加入権の所有者は日本全国にいます。
電話加入権は相続財産
電話加入権は相続財産となります。ただし、相続財産となるのは、その回線を引き続き使用する場合です。
引き継ぐ場合は相続財産として、相続税の課税対象になります。評価方法について、以前では以下の方法で価額を算出していました。
- 取引相場がある電話加入権…課税時期における通常の取引価額によって評価
- 取引相場がない電話加入権…売買実例価額等を基準に、電話取扱局ごとに国税局長が定める標準価額を採用する
- 特殊番号の電話加入権…上記二つのどちらかを元に評価した金額をベースとして、売買実例価額や精通者意見の価格を参考に評価額を決める
しかしながら、現在ではこれらの評価方法は廃止されています。なぜなら、近年では、電話加入権の取引相場が存在せず、国税庁の定める標準価格も10年以上、1500円(全国一律価格)から変わっていないからです。
要するに電話加入権をわざわざ個別評価する必要はないというわけです。
そのため、電話加入権は、基本的に1500円とし、他の家庭用財産に含めて一括評価します。
なお、加入権の取引が盛んだった頃は、「100番のような呼称しやすい番号」、「4989番などの嫌がる人が多い番号」などが「特殊番号」とされており、売買実例や精通者意見価格等を参考に評価していましたが、これも現在では廃止されています。
相続開始後の手続き
故人の自宅に電話がある場合、NTTに問い合わせるか、請求書を確認しましょう。加入権の有無が明確になったら、その権利を引き継ぐか、解約するかを選択します。
(1)承継の場合
法定相続人が電話加入権を引き継ぐ場合(同じ回線を引き続き使う場合)、NTTへ名義変更の手続きをします。
申請書に加え、相続人の本人確認書類、故人の死亡診断書、戸籍謄本などが必要ですが、手数料は発生しません。
詳しい手続きは、NTT東日本の公式サイト等で確認ください。
(2)解約の場合
電話回線の利用が不要であれば、手続きにより権利を抹消します。
解約手続きでも本人確認書類や死亡診断書などが必要となりますが、解約後は回線使用料や工事費の負担はなくなります。
(3)一時利用停止の場合
電話加入権の権利を保有したい場合、利用停止という選択もあります。
この方法では、権利は持ったまま最大10年間の利用停止が認められます。5年ごとに更新が必要ですが、利用停止中は使用料が発生しません。
相続税申告書への記載方法
電話加入権を相続するのであれば、少額であっても申告します。ただし、前述したように近年における標準価格は全国で1500円ですから、ほかの家庭用財産と一緒に、まとめて費用を計上することが一般的です。
なお、電話加入権自体は安いですが、他の家財を含めて考えるのであれば、評価額は10~50万円程度になります。前回のコラムでも説明しましたが、家財一式として一括で計上する場合、その金額は点数や内容によって変えるべきです。
まとめ
電話加入権は、相続財産の中でも少額であり、引き継ぎや抹消の手続きも決して難しくありません。ただし、相続財産である以上、手続きは忘れないようにしましょう。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。