高齢になると、認知症にかかるリスクが高くなっていきます。認知症になれば、日常生活が困難になり、法的な手続きについても様々な問題が起こります。

そもそも、法的な手続きは、意思能力がある状態でしかできません。意思能力がなければ、法律行為の効力要件を満たさないからです。

そういった点も考慮すれば、相続において相続人の一人が認知症を患っている場合、遺産分割協議等に重大な影響を及ぼします

 

相続人が認知症のケースも多い

相続では被相続人のみならず、相続人も認知症を患っていたというケースがあります。

よくあるのは、被相続人の配偶者が認知症のケースです。冒頭でも述べたとおり、認知症リスクは年齢によって上がります。被相続人が高齢ですと、その配偶者も高齢であることが多いため、認知症を患っている場合が多くなります。

なお、認知症は40歳の初老期段階で発症することもあるので、年齢がある程度離れている配偶者や、被相続人の子供であっても、認知症にかかっている場合もあります。

 

認知症=判断能力がないわけではない

相続人が認知症を患っており判断能力に問題がある場合、遺産分割協議の参加等、法的な手続きは無効とされてしまいます

ただし、認知症と診断されていれば、判断能力が無いとも言い切れません。認知症は軽度なものから重度なものまであるからです。

よって、認知症であっても、レベルが軽度で、判断能力に問題がなければ遺産分割協議の参加もできます。判断能力の有無は、医者から診断書をもらっておくと良いでしょう。

 

相続人が認知症だった場合に起こる問題点

(1)遺産分割協議への参加ができない

 
遺言書によって財産分割の指定がない場合、遺産分割協議を開く必要があります。

協議を完了させるには相続人全員の合意を得なければなりません。よって、一部の相続人が不参加ですと、協議結果は無効となります。

また、相続人の一人が病気などで判断能力が低下している場合も同様です。判断能力がなければ、法的な手続きができないからです。遺産分割協議での合意も無効です。

遺産分割協議が完了しなければ、預貯金の凍結解除ができませんし、相続不動産の名義変更もできません。

なお、認知症の相続人に代わって他の相続人が遺産分割協議書への署名をすると私文書偽造罪に問われる可能性があります。

 

(2)相続放棄できない

 
遺産分割協議への参加同様に、判断能力がなければ、相続放棄もできません。

他の相続人が代理で申し立てをしようとしても、家庭裁判所が受理しないのです。

 

法的手続きをするには成年後見制度の利用が必要

重度の認知症を患らっている場合、自らの意思で遺産分割協議に参加することも、相続放棄をすることもできません。

手続きをするには、「成年後見制度」の利用が必須となります

成年後見制度は、認知症などで自身の財産管理が困難な方に代わって、後見人が財産管理や重要な契約などをする制度です。

 

実は問題の多い成年後見制度

(1)家族が後見人になれるわけではない

 
成年後見人になるには特別な資格は不要ですが、誰がなるかは裁判所の判断に委ねられます

親族を成年後見人候補者として希望したとしても、第三者の専門家が選任される可能性があります。近年では、親族が選任される割合は減少傾向にあります。

そして、一度選任された後見人の変更は余程の理由がない限り認められていません。

家族は裁判所から選任された後見人と長く付き合っていくことになります。

なお、家族が後見人になれたとしても、遺産分割に代理人として参加できません。後見人も相続人の場合、利益相反関係になるからです。

よって、遺産分割協議のために再び家庭裁判所に申し立てをして、特別代理人を選任しなければなりません。

 

(2)成年後見人に対する報酬も必要

 
成年後見人は裁判所が決めるため、外部の専門家が選任された場合には、報酬を払わなければなりません

これは一生涯続くので、今後収入が増える見込みがなく、貯金から医療費や生活費が毎月目減りしてしまう高齢の相続人にとってかなりの負担にもなってしまいます。

 

まとめ

相続人に重度の認知症の方がいる場合、遺産分割協議等、相続手続きができません。成年後見制度を利用すれば良いですが、同制度はデメリットも多く、問題も多いのです。

そのため、前もって遺言を用意しておいた方が良いと言えます

遺言があれば、遺産分割協議をしなくて良いので、ご家族に認知症の方がいても問題ありません。口座凍結の解除や不動産名義変更もかなり進めやすくなります。

メリットも多いので、できる限り作成しておいた方が良いのです。

 

 


 
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