相続において、もし相続人が一人だけだった場合は、その方が手続きをします。しかし、相続人が数名いる場合、各相続人が協力して手続きを進めていく必要があります。

とは言っても、各相続人は大抵の場合、違う地域に住んでいます。特に遠方に住んでいると、レスポンスが遅くなる可能性が出てきます。

手続きの中には期限付きのものもあるので、先延ばしにしてしまうと大きなリスクとなります。よって、可能な限り、取り掛かれるものから早めに手をつけたいところです。

実は、相続手続きの中には相続人単独でできるものもあります。ここで言う単独でできるものとは、他の相続人の許可が不要なものです。

よって、動ける人がそれらの手続きを進めたほうが良いのです。

 

単独でできる相続の手続きその1:遺言書の確認

遺言書があるかないかで手続きは大きく変わります。そのため、相続ではまず故人が遺言書を残していないか確認しなければなりません。

この遺言の確認については他の相続人の同意を得る必要はありません。ただし、遺言書は形式によって、探し方も異なります。
 

(1)公正証書遺言・秘密証書遺言の場合

 
公正証書遺言・秘密証書遺言の場合、作成の過程で公証役場を通します。そのため、「遺言検索システム」で照会が可能です。

遺言検索システムは、全国の公証役場で利用できます。基本的に相続人であればシステムを使えますが、遺言者との関係を証明する以下の書類が必要です。

  • 遺言者の死亡書類(除籍謄本等)
  • 利用者と遺言者の繋がりが確認できる戸籍謄本等
  • 相続人本人(システム利用者)の顔写真付き本人確認資料+認印

代理人であってもシステムを利用できますが、その場合、先ほどの書類に加えて相続人の実印で押印した委任状等が必要となるので注意しましょう。

検索した結果、公正証書遺言があると分かったときには、内容を確認しましょう。内容の確認は原本が保管されている公証役場にて手続きをします。(郵送での請求も可能です。)

なお、公正証書遺言は原本が役場に保管されていますが、秘密証書遺言は、原本が遺言者の管理となります。つまり、秘密証書遺言はシステムによって遺言書の有無だけの確認となります

原本は遺言者の自宅などから直接探し出さなければなりません。原本が見つからなければ、内容がわからず、遺言書の効力も生じません

 

(2)自筆証書遺言で法務局の保管制度を利用している場合

 
自筆証書遺言では、法務局で原本を保管できます。遺言者がその保管制度を利用していた場合は、法務局に行きましょう。

相続人や受遺者であれば相続開始後に全国の遺言書保管所にてモニターで遺言書の閲覧が可能です。ただし、原本閲覧は遺言書が保管されている遺言書保管所だけです。

閲覧請求には以下の書類を用意します。

  • 遺言者の死亡書類(除籍謄本など)
  • 相続人(利用者)の住民票の写し
  • 相続人(利用者)と遺言者の繋がりが確認できる戸籍謄本
  • 相続人(利用者)の顔写真付き本人確認資料

相続人や受遺者が遺言書の閲覧をした場合、遺言書保管所の方から他の相続人に遺言書を保管している旨を連絡してくれます。

遺言者が保管制度を利用していたかどうかが不明でも、請求をすれば遺言書保管の有無は分かります。証明書の請求は全国の遺言書保管所で可能です。

 

(3)自筆証書遺言を自己保管している場合

 
自筆証書遺言で保管制度を利用していない場合、遺言書は遺言者本人が管理しています。その場合、実物を見つけ出す以外に方法がありません。

自宅に置いている場合もあれば、知人に預けている場合もあります。当然ですが、原本が見つからなければ、遺言書の効力は生じません

 

単独でできる相続の手続きその2:財産調査

財産調査は、相続財産の引き継ぎ方法を選択する上でも、相続税の申告においても重要な作業です。

相続人が知らない財産は意外と多いのです。銀行口座はもちろん、不動産、有価証券、生命保険や損害保険、車、他人に貸し借りしたお金についてまで、調べなければなりません。

この相続財産の調査は相続人単独でできます。

財産調査にあたり、最低限必要な書類は以下です。

  • 遺言者の死亡書類(戸籍・除籍謄本など)
  • 利用者と遺言者の繋がりが確認できる戸籍謄本
  • 利用者の顔写真付きの身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)

遺産全容を明らかにする財産調査はとても重要です。しかし、時間も手間もかかるため、早急に取り掛かりましょう。時間が取れない場合は、専門家に任せましょう。

 

単独でできる相続の手続きその3:相続放棄

相続放棄は相続権を手放すことです。相続権がなくなるので財産取得はできません。

相続では全てのケースでプラスの財産が上回るわけではありません。被相続人が生前に多額の借金を抱えていた場合、そのまま財産を引き継いでしまうと相続人が返済に苦しむことになります。

そのようなケースにおいて、相続放棄が選択される場合もあります。

相続放棄については、各相続人が自分の意思で選択の判断をするので、他相続人の許可は不要です。

相続放棄をする場合、以下の書類を用意し、家庭裁判所に申し立てをします。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申し立て人の戸籍謄本

相続放棄は、自身が相続開始を知ってからから3ヶ月以内にしなければなりません(熟慮期間内)。

「財産調査が進んでいない」といった、相応の理由がある場合には、期間延長の申請も可能ですが、原則として期限を過ぎないように注意しましょう。

 

まとめ

相続人が単独でできる手続きはご紹介したように三つあります。相続の手続きには期限付きのものもあるので、できることから取りかかった方が良いでしょう。

ただし、故人の葬儀や法要で忙しく、なかなか手続きに取り掛かれない場合もあります。そんな方は、相続専門の税理士に手続きを代行してもらうことを検討しましょう。

報酬はかかってしまいますが、手続きを放置するとリスクが大きくなります。

また、相続のプロが手続きをした方が、相続人本人の負担もありませんし、手続き上のミスも起こりません。特に相続税の申告はミスをすると追徴課税となってしまうので、税理士に代行を頼んだ方が安心です。

なお、相続税の代理申告は税理士の専業ですので注意しましょう。

 

 


 
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