被相続人が亡くなった際に、遺産に株式が含まれる場合は決められた方法に従い、相続税価格を評価する必要があります。

本コラムでは、「非上場株式」における相続税評価の方法について解説いたします。

 

非上場株式とは

東京証券取引所など、証券取引所に上場していない企業の株式を指します。証券取引所で公開されていないため、一般の投資家が安易に売買できないものです。

多くのケースでは株式は会社のオーナー経営者や役員が保有しています。

 

非上場株式の評価方法

非上場株式は一般公開されないので、取引価格はありません。

そのため、株価は原則的に管理会社の財務状況から評価する必要があります。この点が、上場株式と比べて評価が難しいとされる点です。

具体的には三つの評価方法があります。
 

(1)類似業種比準方式

これは業種が同じか形態の近い上場企業の株価・配当金額・利益・純資産を参考にする評価方法です。基準となる数値のデータは国税庁が公表しています。

評価額は以下の通りに算出します。
類似した上場企業の株価 × 比準割合 × 調整率

比準割合は次の算式で計算します。
比準割合={(評価対象会社の1株当たりの配当金額/類似業種の1株当たりの配当金額)+(評価対象会社の1株当たりの年利益金額/類似業種の1株当たりの年利益金額)+(評価対象会社の1株当たりの純資産価格/類似業種の1株当たりの純資産価格)}/3

調整率は会社規模によって数値が以下のように異なります。
大会社は70%、中会社は60%、小会社は50%

 

(2)純資産価額方式

相続税評価額で求めた会社の純資産額から、評価の差額に対する税額を差し引いて評価する方法です。

数式は以下の通りです。
(資産の相続税評価額の合計 - 負債の相続税評価額の合計 - 評価差額に対する法人税等相当額)/発行済株式数

評価差額に対する法人税等相当額 =(相続税評価額による純資産価額-帳簿価額による純資産価額)×37%

 

(3)配当還元方式

被相続人が少数株主、もしくは会社の経営陣に属する人以外の方を対象とした評価方法です。
この方法は、類似業種比準方式や純資産価額方式よりも株式の評価は低くなります。

配当還元価額 =(1株あたりの年間配当額/10%)×(1株あたりの資本金等の額/50円)

 

株を相続する際の注意点

(1)準確定申告を忘れないこと

故人に一定の所得があった場合、故人に代わって相続人が確定申告をしなければなりません。これは準確定申告と言います。通常の確定申告とは異なり、相続開始日から4ヶ月までの期限となります。

被相続人が生前に株式の運用を特定口座もしくは一般口座で行っていたなら、所得税の準確定申告が必要です。

相続税申告よりも先に期限がきますので、こちらの手続きを忘れないようにしましょう。

 

(2)相続した株式の売却には譲渡所得税がかかる

相続した株式を売却する場合、売却益に税金がかかります。株式譲渡でもたらされた所得は単独で所得額を計算し、一律の税率を乗じて税額を算出しなければなりません。

納税額は以下の通りです
{売却代金-(取得費+手数料)}×20.315%※
※所得税及び復興特別所得税15.315%+住民税5%

ここの取得費は相続した時の金額ではなく、被相続人が株式を購入した際の価額になります。価格は取引報告書などで確認できると良いのですが、購入がかなり過去のものであると価額が分からない場合も多いでしょう。

その場合、取得費は「売却代金×5%」で計算します。しかしこの計算方法ですと、大半のケースにおいて利益が多額となって、高い税金を支払うことになるので注意が必要です。

なお、相続税の申告期限より3年以内の売却だった場合、納付した相続税の一部を所得税の計算上でマイナスにすることができます。これは相続税の「取得費加算の特例」といいます。

要するに相続税として支払った税金があるので、その分を考慮できるのです。取得費を上げることができれば、課税金額である譲渡所得を少なくできるので、かかる税金も安くなります。

取得費として加算する額は、以下の通りに算出します。
取得費加算総額=その者の相続税額×譲渡した資産の相続税評価額/その者の相続税の課税価格(債務控除前)

特例は要件を満たさないと適用できません。ご自身での申請が難しい場合は、専門家に相談した上で申請を代行してもらいましょう。

 

株の相続での節税相談は税理士へ

株式は上場株式と非上場株式では算出方法が異なります。特に今回説明した非上場株式ですと、算出方法が複雑のため、申告作業がとても大変になります。

評価が難しい場合は、相続専門の税理士への相談をお勧めいたします。

税理士に相談した場合、財産の状況や配当政策などを見直すことで、株の評価額を下げられる可能性もあります。(もちろん、できる対策は会社ごとに違いますが。)

上場株式の場合でも、相続税を減らすことができます。こちらも状況によって、取れる対策は変わってきますので、できれば相続が発生する前の早い段階から、相談した方が良いでしょう。

 

まとめ

今回は、「非上場株式」における相続税評価の方法について解説いたしました。

証券取引所で公開されていない非上場株式では取引価格が存在しないため、相続税評価が難しくなります。

難しいと思ったら、迷わず税理士を頼ってください。報酬はかかってしまいますが、複雑な税務をすぐに終わらせることができ、節税対策にもなるのでメリットは大きいでしょう。

 

 


 
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