債務は相続財産から控除可能 債務控除の対象とそうでないもの
相続財産には金銭・不動産といった「プラス」の財産だけでなく、借金などの「マイナス」の財産もあります。マイナスの財産は債務として、相続人の負担となってしまいます。
よって、相続税評価ではこれらマイナスの財産をプラス財産から差し引いて、評価額を計算します。評価額から差し引かれるので、その分相続税も安くなるこの仕組みは「債務控除」といいます。
計算としては単純ですが、どういったものが債務控除対象なのか、どういった方が適用できるのか、分かりにくい部分もあります。
本コラムでは、それら債務控除について詳しく解説いたします。
債務控除とは
相続税額を算出する過程として、まず遺産の総額から「基礎控除」を差し引きます。
そして、被相続人に借金などの「債務」があった場合、これも総額より差し引きます。遺産総額が減れば、相続税額も減るので当然ながら税負担が軽減されます。
この仕組みが「債務控除」です。
債務控除に当てはまるものとしては、「相続時に存在」し、「確実と認められるもの」に限られます。わかりやすいのは被相続人の借金ですが、未納付の税金や、滞納している光熱費も対象となります。
債務控除を活用するには申告が必要
債務控除を受けるためには、相続税申告書の第13表に控除対象の債務と、費用を記載して、申告をしなければなりません。
債務控除と基礎控除と合わせて、財産総額を超えるので申告が不要とはならないので注意が必要です。
例えば、財産総額が1億円、基礎控除が3,600万円、債務控除が7,000万円のケースだと、基礎控除よりも財産総額が高いので、申告は必要になります。
債務控除を活用できる人とは
債務控除を活用できる人は、相続人と包括受遺者になります。
包括受遺者とは遺言によって相続財産の遺贈を受ける際に、財産に対して一定の割合分を取得する方を指します。
これら包括受遺者と相続人はプラスの財産だけでなくマイナス財産も一定割合分承継しなければならない。そのため債務控除が認められているのです。
逆に指定された権利のみ承継する特定受遺者には、債務控除は認められていません。
相続放棄をした方や相続権のない方も、同様に債務の控除が認められていませんが、相続放棄者には葬式費用に関して、例外的に控除が認められます。
死亡保険金は相続放棄者でも受け取れるので、その方が葬式費用を負担していた場合は債務控除を適用できます。
債務控除の対象
(1)借入金
被相続人が生前に借りたお金で支払いが済んでいないものは債務控除対象です。
借入金や住宅ローンが該当します。
家族から借りていたお金も同様ですが、借入の経緯、借りた金額がわかる書類などが必要です。借入の事実が第三者に証明できないと、税務署に債務控除と判断してもらえないからです。
(2)連帯債務
夫婦や親子など、2者以上が連帯して負担する債務も、負担金額が明らかな部分については債務控除の対象になります。
(3)未払い分の医療費
被相続人が支払うべきもので、支払いの済んでいない入院費や治療費も債務控除の対象です。
死亡診断書についても債務控除の対象です。ただし、保険金請求等を理由に遺族が追加発行する死亡診断書は対象ではありません。
(4)準確定申告で支払う所得税や消費税
故人の生前所得等における税金関連は債務控除対象です。
準確定申告は手続き期限があるので注意しましょう。手続きは法定相続人の誰がしても問題ありません。
(5)固定資産税
不動産に課税される固定資産税で被相続人が亡くなった時点で未納付のものについては控除可能です。
被相続人が8月に亡くなったケースでは、同年12月の3期分と翌年2月の4期分が未納付となるので、2回分は債務控除の対象になります。
また、それ以前であっても被相続人が滞納していた分、それにより課せられる延滞金も対象です。
(6)預かり敷金・保証金の控除
被相続人が賃貸アパートやマンションを運営していた場合、入居者から一時的に預かっている敷金や保証金も債務に該当するので、控除の対象です。
償却がある場合にはその部分を抜いた金額が控除対象です。事前に不動産賃貸借契約書の内容を確認しておきましょう。
(7)水道光熱費
被相続人の住居の水道光熱費で支払いが済んでいないものについては、生前の部分のみ債務控除対象です。相続開始後にかかる費用は相続人間での負担になります。
住宅などを相続後に使わないのであれば、早めに停止手続きをしましょう。
(8) 建築やリフォーム等の未払金
建築や増築、リフォーム代については、工事の進捗によって扱いが変わります。
既に引き渡しが完了しており、お金のみ未払い状態であるなら、全額が債務控除となります。
(9)葬儀費用
葬式費用も債務控除の対象です。
- 死亡診断書の費用
- 火葬や埋葬、納骨に要する費用
- 通夜の費用
- 飲食代、葬儀場までの交通費
- お寺や神社に払う費用
- 遺体・遺骨の運搬費用
これ以外のもの、香典返しのお金や、お墓の購入費は対象外となります。
債務が多すぎる場合は相続放棄も検討すること
すでに述べたように相続財産には被相続人の負債も含まれます。その金額が金銭や不動産などの合計額を上回る場合、そのまま財産を相続すると、相続人にとって大きな負担となります。
負債のみ受け取らないという選択は残念ながらできません。
負債額が大きいと、相続後に返済ができず自己破産しなければならない可能性もあります。
このように、相続で大きな不利益を被ることが明確な場合、「相続放棄」を検討します。相続放棄は相続人としての資格を捨て、財産取得をしないことです。
ただし、相続放棄ができるのは「熟慮期間」内で、自身が相続人であることを知ってから3ヶ月以内です。期限を過ぎてしまうと、自動的に相続を「単純承認」したという扱いになり、相続放棄ができませんから、早期にどうすべきか検討してください。
まとめ
被相続人が亡くなった際、借金などの債務がある際には、相続財産から控除して相続税を安くできます。
どんなものが対象なのかは本記事で説明した通りです。
詳しく知りたい方や、相続税の節税相談がしたい場合は、弊所までお問い合わせください。初回の相談は無料です。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。