前回のコラムで教育資金一括贈与の特例を解説しました。

★参考記事:教育資金一括贈与の特例とは 令和5年度改正で何が変わった

 
条件を満たすことで高額の非課税枠が使える贈与制度は教育資金だけでなく、結婚や子育て用の資金にも存在します。

結婚式費用は一般的に400〜500万円とされており、かなりの費用負担をすることになります。
結婚後の出産や育児についても、出産に伴う医療費、保育料や託児費等、こちらも高額の負担があります。

そのため、結婚や子育て用の資金については条件付きで贈与特例が用意されています。
要件を満たせば最大1,000万円まで贈与税が非課税となります。

 

結婚・子育て資金の一括贈与とは

結婚・子育て資金の一括贈与」は直系尊属から結婚および子育て資金の贈与を受けた場合、最大1,000万円の控除が受けられる制度です。

直系尊属のため、受贈者は両親か祖父母になります。

同制度は資金対象の広さが特徴です。
教育資金と違って、結婚・子育ての両方がカバーされているので、制度利用による恩恵は大きいでしょう。

非課税枠内で贈与すると、その分相続税課税の財産が減るので、節税対策にもなります。

ただし、贈与として渡したお金が余った場合は贈与税が課税されます
また、使う前に贈与者が亡くなった場合は遺産総額に加算され、相続税対象となる点にも注意です

 

利用期限

結婚・子育て資金の一括贈与は、2025(令和7)年3月31日までとなっています。

令和5年の税制改正で適用期間が2年間延長されています。

 

結婚資金の範囲とは

(1)対象資金

 
結婚資金に含まれるお金は、「結婚式費用」と「新居に関する費用」の二つに分かれます。

結婚式費用は会場代や衣装、写真撮影など一般的な結婚式をあげるためのものが対象となります。
新居に関する費用については、新居契約の敷金・礼金や、引越し費用が該当します。

結婚式費用…会場費用・衣装代・ビデオ撮影代・引き出物代など
新居費用…敷金・礼金・仲介手数料・契約更新料、引越し代など

 
これらの結婚資金の上限は300万円までとなっています。

 

(2)対象外の資金

 
結婚式費用に結婚指輪代や新婚旅行代は含まれません。

新居に関する費用も、家具代や光熱費、インターネットの開通費用は対象ではありません。

 

子育て資金の範囲とは

(1)対象資金

 
子育て費用は「出産費用」と「育児費用」で構成されます。
資金対象範囲が広いので様々なものに使えます。

出産費用…不妊治療費、妊婦検診費、入院費用、薬剤費、産後ケア費用など
育児費用…子供の医療費、保育園などの入園費、託児費用など

 
これらの資金上限は1,000万円までです。
ただし、結婚関連資金との合計額であることに注意してください

例えば、結婚式費用で300万円分使用したのであれば、子育て資金で非課税にできる上限は700万円までになります。

 

(2)対象外の資金

 
病院に通うための交通費や、処方箋に基づかない薬代などは含みません。

また、オムツやベビーフードなどの子ども用品の購入代金も対象外です。

 

適用するための要件

(1)贈与者と受贈者の要件

 
贈与者は受贈者の直系尊属(曽祖父母や祖父母・父母)であること。

受贈者は18歳以上50歳未満で、前年の合計所得金額が1,000万円以下でなければなりません。

なお、最大1,000万円の非課税枠は、受贈者一人が使用できる上限額です。
母親から1,000万円、祖父から1,000万円貰えば、半分は贈与税がかかります。

 

(2)金融機関で専用口座を開く

 
教育資金の一括贈与と同じように、こちらも取り扱いのある金融機関で専用口座を開設しなければなりません
結婚・子育て資金の専用口座を取り扱っているかどうかは、事前に必ず問い合わせをしましょう。

口座の引き出しには領収書などが必要になるので、他の用途で引き出すことは不可能です。

 

令和5年度税制改正のポイント

令和5年度税制改正により、残額の贈与税計算が変わっています。

贈与者が50歳になった際に贈与したお金が余っていた場合は、残額に対して贈与税が課税されますが、改正後には「一般贈与財産として」贈与税の計算を行うこととされました。


以前では、受贈者は直系尊属から贈与を受けた成人であることから、特例贈与財産として低い税率で計算して良いことになっていました。
しかし、税率が低くなれば、節税目的の贈与が増えるので、法改正によって一般贈与財産として贈与税の計算をすることになったのです。

なお、贈与者が亡くなった時点での残額は相続税対象ですが、受贈者が「孫」や「ひ孫」など(子以外の直系卑属)である場合は、相続税額の2割加算が適用されます。

 

まとめ

同制度は要件があるものの、最大1,000万円までの一括贈与が可能です。
年間110万円まで非課税となる暦年贈与との併用も可能なので、単年で1,110万円を無税で贈与することもできます。

しかし、贈与額が大きすぎて資金残額が多くなった場合には、高額の税金負担を課せられる怖れがあります。
また、金融機関で専用口座を開設しなければならず、手間もかかります。

ケースによっては、メリットが得られる場合もありますが、安易に使うのは危険です。
相続税専門家に事前に相談することをお勧めいたします。

 

 


 
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