遺言書は手間暇かけて書いても、遺族の方が相続時に発見しなければ効力を持ちません。
遺言書がなければ、相続財産の分配は遺産分割協議にて決めることになります。

しかし、苦労して協議をまとめた後に遺言書が出てくるというケースがあります。
この時、遺言は協議結果とは違う内容である可能性が高いでしょう。

そうなった場合は、どちらを優先させるべきなのでしょうか。

 

遺産分割協議と遺言書の優先度

最初に答えを言いますと、遺言書は故人の最期の意思であり最大限尊重されなければなりません。
したがって、遺産分割協議の結果よりも、優先されます。

苦労して協議をまとめた後であっても、遺言書が出てくれば、基本的には遺言内容に従って財産を分割することとなります

 

状況次第では遺言に従わなくて良い場合も

遺言書内容は遺産分割協議結果よりも優先されますが、相続人全員での合意が取れた場合は遺言に従う必要はありません

強い効力を持つ遺言ですが、財産を受け取るのは残された家族ですから、それら全員が納得すれば遺産分割協議の結果を採用しても良いのです。

 

遺言に従わなければならないケース

相続人全員での合意が取れた場合は遺言に従う必要はありませんが、以下のケースでは別です。
 

(1)受遺者がいる場合

 
遺言書の中で法定相続人以外の方(受遺者)にも財産を渡す旨が記されている場合、基本的には遺言内容にしたがって分割が行われます。(受遺者の利益を侵害することになるためです。)

受遺者も遺産分割協議結果に合意するのであれば、遺言どおりに遺産を分けなくて良いです。

 

(2) 遺言執行者がいる場合

 
遺言執行者がいる状況で、遺言と異なる内容の遺産分割を行いたい場合、遺言執行者の同意も必要です。

遺言執行者は、相続人および受遺者の合意が、遺言趣旨に反しないものであれば、同意をしたとしても、執行者義務に反したとはいえないでしょう。

 

(3)遺言により遺産分割が禁止されている場合

 
遺言では、相続開始時から5年以内の間、遺産分割の禁止を指定できます。

禁止の指定がされている場合、遺産分割はできませんので、期間中の遺産分割協議そのものが無効です。

 

遺言書は早急に発見されるように工夫を

遺言書は遺言者の死亡後、遺族によって早急に発見されるのが理想です。
発見が遅れれば、相続手続きの手間も余計にかかります。そうなれば、遺族にとっては負担となります。

相続時にすぐに発見される方法としては以下のものがあります。

  • 遺族に遺言の存在と保管場所を伝えておく
  • 遺言執行者を指定しておく
  • 証人が必要な公正証書遺言を選択しておいて、証人に伝言を頼む

 
書いたら終わりではなく、相続開始時に遺族がすぐに見つけられるように手を打っておきましょう。

 

遺言書の紛失にも注意する

遺族によって早急に発見されることも大切ですが、相続までに遺言を紛失しないことも重要です。
紛失を防ぐには以下の二点の方法がお勧めです。
 

(1)自筆証書遺言の保管制度の利用

 
自筆証書遺言は作成費用がかからず、個人での作成が可能なため、採用する方が多い遺言書です。
ただし、相続開始時に発見されないことや、紛失、第三者による改ざんのリスクも高いと言えます。

これらのリスクを無くすために、法務局で自筆証書遺言を保管する「自筆証書遺言の保管制度」を利用する方法があります。
同制度では、原本が公的機関に保存されるので、紛失や改ざんのリスクがなくなる上、相続発生後の検認手続きも要らなくなります。

保管制度を利用するのであれば、保管先を遺族に伝えておくと良いでしょう。

 

(2)公正証書遺言の利用

 
公正証書遺言は、公証役場にて公証人に作成を代行してもらいます。
公証人が作成するので、様式不備によって遺言書が無効になりませんし、相続開始後の検認も不要です。

また、公正証書遺言のメリットとして原本が公証役場で保管されるので、紛失や第三者による文書改ざんの心配も不要です。
証人を用意するなど、作成に手間はかかりますが、その分受けるメリットも大きいのです。

 

相続人は遺言書の有無をしっかりと確認しましょう

相続人側も、相続手続きではまず遺言書の有無を確認しましょう。
遺産分割協議後に遺言書が出てくると、一から財産分配をやり直すことになってしまいます。

遺品を整理しつつ、遺言書が保管されていそうな場所を念入りに調べてください。

なお、遺言書を見つけたら、その場で開封せずに法律で決められた手順を守ります。
自筆証書遺言などは、家庭裁判所で検認の手続きをしなくてはならないので、注意しましょう。

検認について…検認は、裁判所が遺言書現況を明らかにして偽造・変造を防ぐ手続きです。遺言書の存在を相続人や受遺者に通達する意味もあります。検認をせずに勝手に遺言を開封すると過料の処分を受ける可能性があります。また検認の済んでいない遺言書だと、相続登記や口座の名義変更もできません。

 

まとめ

後に遺言書が見つかっても、相続人と受遺者、執行人全員の合意があれば遺産分割協議をすることは可能です。

ただし、遺言書が後から見つかると、ほとんどの場合、遺産分割はやり直しになります。
都合よく全員が「遺産分割協議のままで行こう」というのもハードルが高いからです。

遺産分割がやり直しとなれば、二度手間になるため、相続手続きを進める前に遺言書があるかしっかりと確認したいところです。

 

 


 
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