相続税申告期限までに遺産分割協議が完了していない場合の対応方法
故人が生前に遺言書を書いていない場合は、「遺産分割協議」によって遺産の配分や方法を決定します。(遺言書があっても、法定相続人と受遺者が合意すれば遺産分割協議で配分を決定しても良いです。)
遺産分割協議は、法定相続人間のものであり、親族同士の話し合いですから、円満に解決される場合もありますが、大きな争いとなる可能性もあります。中には泥沼化し、数年経っても遺産配分が決まらないケースもあります。
配分が決まらないと厄介なのが、相続税の申告と納付です。
相続税の申告と納付の期限は遺産分割協議の結果の如何を問わず、相続開始後からカウントされるからです。期限を破ってしまうと、追徴課税となります。
相続税申告と納付の期限
相続税の申告と納付は相続人が「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となっています。例えば、2023年1月2日に相続開始を知った場合、2023年11月2日までに税務署で相続税の申告書を提出し、同時に納税も完了しなければなりません。
もし、期限を過ぎてしまうと、申告を怠ったことによる「無申告加算税」や納付が遅れたことによる「延滞税」が課せられ、従来の金額よりも多い税金を払うこととなります。
なお、相続税申告には特殊な事例がある場合のみ、期限を延ばせるようになっていますが、安易な理由による延長は認められません。
特に、「家族間で分割協議が終わっていないから」という理由では税務署も延長を認めないでしょう。よって、期限内に申告と納付は必ず終わらせるべきなのです。
相続税申告には時間がかかる
相続税の申告は思ったよりも時間がかかります。
被相続人が亡くなった時点で保有していた財産や債務を確認しなければなりませんし、不動産や株式などは相続税評価のために複雑な計算を用いるからです。
それらに遺産分割協議も加わるとなると、期限に間に合わなくなる可能性は高いと言えるでしょう。
申告期限に間に合わなさそうな場合の対処法
遺産分割協議が思ったように進まなくても、相続税の申告・納税期限には間に合わせなくてはなりません。
では、どうすれば良いのかというと、「遺産は法定相続分に従って分割した」とし、相続税の申告と納付をします。
概算の申告・納税にはなりますが、加算税および延滞税を払うことは避けられます。なお、一部の控除制度が使えないので、大抵の場合は本来の税額よりも高い金額で申告と納税をします。
控除制度とは特定要件を満たすことで利用できるもので、遺産分割が終わっていないと適用できません。
主に以下のものがあります。
- 相続税の配偶者控除…被相続人の配偶者が取得する財産は最大1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分まで非課税にできる
- 小規模宅地等の特例…自宅や貸付用として利用している土地については相続税評価額を最大80%まで減額できる
これらの制度は税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」提出していれば、後々、遺産分割協議がまとまった際に申告書を再提出することで、適用可能となります。
申告期限後3年以内に遺産分割が完了しないなら、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月が経つ前に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。
やむを得ない事由は、「遺産分割で訴訟等がある」、「調停もしくは審判の申立てが行われている」、「遺言で遺産分割が禁止されている」といったものが該当します。
それらが解決した際に、その日の翌日から4か月以内に遺産分割を行う必要があります。
遺産分割協議が終わらない事のデメリット
前述したように遺産分割が終了しなくても、相続税の申告と納付をしなければなりません。
そして、様々なデメリットを考慮すると、分割協議は申告期限までに完了させておいて、本来の税額を申告した方が良いと言えるのです。
遺産分割協議が完了しない場合、相続税額は一旦、法定相続割合に応じた割合で算出し、申告することになります。
そして、遺産分割完了後に実際に分配された財産額に従い、相続税の申告を再度します。
結果的に申告の回数が2回となるわけですから、その分は手間になります。
また、還付の手続きをしないと納め過ぎた税金は返ってこないので、損となります。
まとめ
遺産分割協議が終わっていなくても、相続税の申告と納付期限は守らなくてはなりません。
くれぐれも他の手続きに気を取られて期限を過ぎないように注意しておきましょう。
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平成4年税理士試験合格。平成11年社会保険労務士試験合格。
さいたま市内の会計事務所に勤務後、現在地にて事務所開設。
平成20年㈱FP財産総合研究所を設立、令和元年不動産鑑定業者登録。
税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、FP1級技能士などの資格経験を生かして、主に資産運用・不動産の有効活用・相続対策等の相談を不動産業者、資産家から多数受けています。年間2回ほど北本市役所にて税務相談員を担当させていただいております。