相続にも様々なケースがあります。中には、幼いお子さんを残して亡くなる方もいるでしょう。

そのような場合、残されるお子さんの今後の生活も気がかりですが、何より相続税も心配になります。子供の将来を考えたときに、1円でも多くの財産を残してあげたいと思うのが親心でしょう。

相続税では、遺族の生活を保障する観点から、いくつかの優遇制度が設けられています。その中に「未成年者控除」という、未成年者が相続人となる場合に、その方が払う相続税が減額となる仕組みがあります。

 

相続税の未成年者控除とは

相続における未成年者控除とは、未成年者である相続人が遺産を取得する際に相続税が減額される制度です

控除額は「相続人が満18歳になるまでの年数×10万円」で計算します。

控除が適用されるのは基本的には未成年者が払う相続税のみですが、もし該当相続人の相続税が控除額を下回る場合、その差し引いた金額を未成年者の「扶養義務者」が払う相続税からも減額することも可能です。

例えば、成年者の兄と未成年者の弟の計2名が法定相続人となった場合、弟の未成年者控除のうち差し引けなかった残額がある場合、兄の相続税額から控除することができます。

 

控除の適用要件

未成年者控除が適用されるには以下の要件全てを満たす必要があります。

  • 取得した遺産は相続で引き継いだものや遺贈によるものとする
  • 遺産を取得する未成年者は法定相続人である
  • 相続人が財産を取得した時点で満18歳未満
  • 相続開始時点で日本に住所がある
    (上記に該当しない場合は日本国籍を持っていて、相続人か被相続人が相続前5年以内に日本に住所を有している)

 
相続人の年齢については、財産取得時に18歳の誕生日を迎えていなければ未成年者控除の適用が可能です。

なお、以前では成年者の年齢は20歳でしたが、現在では民法改正法によって成人年齢が18歳となっているので、適用年齢が下がっています

また、母親のお腹の中にいる胎児についても、無事に生まれてきたことを条件に未成年者控除の適用が認められます。この場合、控除額は満額の180万円となります。

 

控除額の計算方法

未成年者控除は以下の順番で計算していきます。

①未成年者の相続税額からの控除
②未成年者の扶養義務者の相続税額からの控除

 
数式から見てもわかるように相続人の年齢が若ければ若いほど控除額は大きくなっていきます。もし、18歳に達するまでの年数が1年未満や1年未満の端数があるときには、これを1年として計算します。(端数は切り上げとなります。)
 

【計算例】
相続人が未成年者(6歳)の弟と成年者の兄の2人で、それぞれの相続税額が100万円の場合

①未成年者の控除額については(18歳−6歳)×10万円=120万円となるので
未成年者の相続税額は控除額を差し引き100万円−120万円=▲20万円となり
相続税はかからない計算となります。

未成年者控除額が相続税額を上回る場合は、扶養者に当たる相続人の相続税額からも控除できるので、成年者の兄が弟の扶養義務者の場合は②の未成年者の扶養義務者の相続税額からの控除は▲20万円となり
兄の相続税額100万円-20万円=80万円となります。

 

未成年者が相続する場合の注意点

未成年者は原則として法律行為を行えません

相続における遺産分割や相続放棄も法律行為に当たるので、原則、未成年者は代理人を立てて遺産分割協議等に参加することになります。

この代理人は「法定代理人」と「特別代理人」の2つがあります。

法定代理人は未成年者に代わって法律行為をする方を指します。基本的には親等が代理人になりますが、親も相続人だと「利益相反行為(一方の利益が生じると自身が代理した者に不利益が生じること)」となり法定代理人にはなれません。

よって、その場合は法定代理人ではなく、家庭裁判所への手続きで選任する特別代理人を立てる必要があります。

 

まとめ

相続人が未成年者の場合、優遇措置として相続税額が控除される制度を利用できます。

扶養義務者の申告額も減額できるので、覚えておきましょう。

 

 


 
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